合気道上達の秘訣

私の合気道の師匠である井口師範は、よく「相手と一つになれ」と指導されていました。

しかし、私はその感覚がよく理解できす随分と悩みました。「相手と一つになる」という感覚は、技の全ての状況で、非常に適切な表現です。ですから、ある程度わかるようになると「なるほど、その通りだ」と思いますが、出来ない段階の人にとっては、あまりにも抽象的過ぎる表現でまったく理解できないのが当然だと思います。

もう既にお亡くなりになっているのですが、合気道の達人で、たくさん本を出版され、多くの一流のスポーツ選手を育てた氣の研究会の藤平光一師範も、特別才能の無い普通の人の指導には随分と難儀されておられたと聞いています。

このように分かっている人から見ると、当たり前のことでも、普通の人にとっては難解きわまりないのです。

この理由は、「実際」と「感覚」にズレがあるため、指導者が話すことが、実際の動きと違いが生じるからです。

例えば、ある技で入り身で入る場合、感覚的に45度だと思っても、実際はまったく違う場合もあります。しかし、実際できるようになると45度に感じのです。これは円転の理についてもいえます。正確に円に動くと力がぶつかって上手くいきませんが、完全な円を描いているような感覚で動くと上手く行きます。この場合、物理的に見て、実際は円になってはいません。

ですから、ただ指導者の話を聞いて、すぐにそれが出来る人は、その感覚の通り動ける人で、その感覚を理解できる人です。要するに才能が有る人というわけです。一方、普通の人は、言われた通りしていると、全然出来ません。

そこで、自分にできないと思ったら、指導者の言うことを、自分なりに分析・整理することが大切です。そのために、さまざまなヒントになることを、本やネットで情報を集めたり、さまざまな武術の人と交流したりし、徹底的に考え抜き、整理するといいと思います。案外ヒントはその辺に落ちているものです。

「勝手なことをあれこれ考えず、ただ師範のいうことを素直に聞いて、コツコツ稽古していればいつか必ずできるようになる」ということをよく耳にしますが、そういうことをいう人が本当に師範と同じように出来ているかというと、よく観察すれば分かりますが、そうではないことが多いのではないでしょうか。

そして、できるようになった時点で、指導者に技に間違い無いかチェックしていただくことが最もいいのではないでしょうか。

とにかく、合気道で行き詰ったら、情報を集め、取捨選択して、整理し、分析することだと思います。そのためには、合気道にこだわらず、役に立つと思われる情報を集めることだと思います。