【体の段階】バランスを奪うには?!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

形の段階とは形を学んだ通りできるようになることでしたが、今当ブログでは体の段階について述べており、この体の段階は合気道の修行を進めるに当たって非常に大切な段階です。これはさらに自分の身体の使い方を理解する段階、自分と相手との関係を知る段階の2段階となっています。その2つの段階に共通する大前提として「相手に読ませない」という ことがあると説明しました。その大前提で目の使い方接触点の使い方(合わせ)が 最も大切な要素ということもお話しました 。

今回は体の段階で習得すべき非常に大切な「相手のバランスを奪うこと」について述べたいとと思います。

このブログで分かること

1.武道でバランスを奪うための基本的な考え方
2.バランスを奪う上でイメージすべきポイント

目次

バランスを奪うための基本原理
基本原理の合気道的利用法
思い込みの是正
腕力は使ってはいけない理由

バランスを奪うための基本原理

バランスを奪うことに関しては合気道だけでなく、柔道や少林寺拳法などで様々研究されていると思います。この項では一般的に言われているバランスを奪う基本原理についてお話をしたいと思います。

もう既にご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、一般的に立っている人のバランスを奪う場合、両足の一番安定している箇所を直線で結んだときその線と垂直な方向に崩すのが最もバランスを崩しやすいと言われています(下図)。

さらにこれ以外に相手を一本足に重心を移動してしまうというのも相手のバランスを奪う一つの方法です。例えば柔道では重心を片足に移してその足を掛けるなどの足技があげられます。

以上が一般に言われている相手を崩す方向はどこかを知る目安となる基本原理です。

基本原理の合気道的利用法

合気道でのこの基本原理をどのようにとらえるかということに話を進めて行きたいと思います。まず最も大切なポイントから述べていきましょう。

合気道の技を行う際、最も大切な点は相手のバランスを奪っておくことにある。僕の学んだ井口師範の合気道では特に独特の崩すポイントがあります。

そのポイントというのが、相手のバランスを奪う際に“相手を移動させない”ということです。要するに相手の足を固定した状態で相手のバランスを奪う点が大切になります。

具体的には 下図 のように、崩そうとした際に左の図のように移動させるのではなく、右の図のように足が移動せずに固定された状態でバランスを奪う必要がある訳です。

思い込みの是正

多分上記のことは誰でも理解できることだと思うのですが、では実際に相手のバランスを奪おうとすると上手くいかないという現実に突き当たりますが、これは何故かといいますと2つの理由が挙げられます。一つは術者の思い込みによる間違った方向への力の加え方、もう一つは術者の意図が相手に読まれている点です。

ここでは力の方向について考えていきましょう。僕が学んだ合気道では相手の足を固定したままでバランスを奪うためには、相手に加える力の方向が大切であると学びました。といいますのはそれを実現するために『この方向に引っ張れば崩れるだろう』という思い込みの方向に力を加えていることが非常に多いのです。ですから実際に加える必要がある方向と異なることをしているという点を理解する必要があります。

そこで話を分かりやすくするため、人ではなくロッカーを倒す場合を想定します。先ずは何の考えも無しで倒そうとする人の場合を考えてみましょう。そういう人は左の図の紫の矢印ように真横からロッカーを押してしまうでしょう。そうするとかなりの力で押しても倒れず、床面を滑って赤矢印のように移動するだけで終わってしまいます。

一方よく考えて倒す人の場合、ロッカーの下部の1辺を中心に円弧起動を描くように力を加えればロッカーは簡単に倒れるのが分かりますから右図のように斜め上にロッカーを押すとロッカーは図のように円弧を描いて簡単に倒ます。

このロッカーの例のように接地面の1辺を中心に円弧を描くように力を加えると最も効率的にロッカーを倒すことができるのが誰でも少し考えればわかることだと思います。しかもロッカーの例でもわかるように1辺を中心に倒すのに最適な方向というのが唯一つだけあるのです。

これは合気道で人を倒す場合も同様です。お分かりかと思いますがロッカーでの1辺に相当するのが両足を結んだ線になります。ところが実際の人体となるとその崩せるという唯一の方向となると勘違いをしてしまう方がかなりいらっしゃるのです。

それが思い込みの力の方向と言えます。相手を崩そうと思って導いたとき
・相手と力がぶつかって抵抗されてしまう
・相手の足が崩れる前に移動してしまう
などの状態になっている場合は確実に相手に加える力の方向が間違っているということです。

相手の両足を結ぶ直線を中心として相手のバランスを奪うにはロッカーの例と同じく、円弧を描くような方向に力を加える必要があります。

腕力を使ってはいけない理由

ところがこの理論通り行ってもうまく相手のバランスを奪うことができない場合があります。これは相手に自分がしようとしていることを読まれているからです。

その多くの原因が腕力を使ってやろうとするためです。前項では話を簡単にするため力をいう表現をしましたが、実は合気道ではこの力は腕力のことではありません。合気道で腕力を使わないで技を行う必要があるのです。

何故なら腕の筋肉を使うと相手にこちらの意図が読まれるからです。そこで特に合気道では足や体幹から伝わる力や運動エネルギーを使って相手に力を伝えます。

         三角筋

冒頭で体の段階は2つに分かれていて、最初の段階が自分の身体を理解する段階であるお話しましたが、少しでも相手にこちらの意図を読ませないために自分の動きをコントロールできるようになることが必要なわけです。

ちなみに、当会では初心者に足の力を伝える足の三角というやり方や舟漕ぎ運動などの陽の技法、反作用を利用する陰の技法、運動エネルギーを伝える体捌き、当身術(打撃法)、合わせの技術など稽古して自分の動きをコントロールする方法を教えています。

このように如何に相手に意図を悟られないという点に注意すれば相手のバランスを奪うことが可能になる訳です。そのような技法は実は当会が指導しているもの以外にもたくさんあるかと思いますので、読者の方も自分で工夫されると良いと思います。

ヒントとしては最も読まれやすいのは肩の筋肉である三角筋を使う動作です。ですから合気道では肩の力を抜いてとかいわれるのです。

今回は体の段階での最も大切な相手との関係の最終目標である相手のバランスを奪うということでお話しました。そしてこれを実現するためには、腕の筋肉を使う動作ではできないということを説明しました。そのためには体の段階の第一段階である自分の身体の動きを理解する必要があります。そして今回お話した相手のバランスを奪うという知識を使って自分の動きを相手にどう伝えるかという第二段階に入ることができます。

◆   ◆   ◆

そこで次回は体の段階の第一段階である自分の身体をどう操作するかという点で合気道に使う実際の力の問題についてお話したいと思います。

最後までお読みいただいた読者の方々有難うございました。

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【体の段階】合わせとは!後編

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範から教わった合気道では5つの段階を通って学ぶということをお話しました。それらは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

現在このブログでは体の段階について述べており、体の段階ではその前提として「相手に読まれない」ということでしたが、そのポイントの一つが目の使い方、前回から述べているのが二つ目の相手との接触点の使い方(合わせ)についてです。

今回は前回に引き続いて相手との接触点の扱いについてさらに深掘りをしていきたいと思います。前回は接触点はぶつからずに相手に合わすこととお話しましたが、今回はさらに具体的に述べていきます。

このブログで分かること

1.合気道での気の使い方を稽古する前に必要なこと
2.「脱力」「合わせる」「ぶつからない」などの意味と理由
3.実際の合わせるためのポイント

目次

・気を学ぶ前に学ぶこと!
・相手とぶつかる理由!
・合わせるとは?!
・上手く合わせられない理由!
・合わせを使ってもぶつかる時は?!
・それでもぶつかりが出る場合は?!

気を学ぶ前に学ぶこと!

合気道では一足飛びに気のことを考える修行者が多いとおもいますが、気の段階の前に先ず体の段階を通る必要があります。まずはその理由から述べていきたいと思います。

体の段階というのは、相手の体と自分の体、相手の動きと自分の動きなどの関係を理解する段階です。この段階を飛ばして気の段階に行く方で中々上達しない人の多くは気を自分だけの範囲での使用で終わってしまうからです。

合気道の技というのは相手と自分の2人の化合物なのです。相手というものを考えず気だけを考えてしまうと自分も相手も気が出ているので、結局相手に読まれてしまい技が思うよに効かないということになるわけです。

気を考える場合は相手にどのように気が入るかを知る必要があるのですが、その基礎を作るのが体の段階です。自分がどう動くと相手がどう動くか、相手を崩すにはどう考えるかなど工夫してそれが身について初めて気の段階に移ることで自分の気と相手の気を合わすことができそこで初めて技が効くということになります。

飽くまでも合気道の技は相手と自分を合わせるということが目的ですので、物理レベルで合わせる、すなわち物理である身体で如何に相手と合わせられるかが体の段階の目標な訳です。

相手とぶつかる理由

ではもう少し具体的に話を進めていきましょう。物理レベルで合わせるとはどういうことかという点についてお話します。

その例として、片手持ち回転投げの最初の捌きを考えてみましょう。下図はご片手持ち回転投げの一般的な捌きを示しています(この後にこの女性は相手の腕を上げ相手の側面に入る訳ですが本気でつかまれたときこの捌きまでが出来ない方が多いのでここでは割愛します)。この女性のように捌きをしようとした場合、相手が本気で捕まえていると②までいけない修行者が割といるのではないでしょうか? では何故上手くいけないのでしょうか? その理由をこれから述べていきたいと思います。

先ず相手とぶつかりを生じる理由を述べておきます。ぶつかりが生じる理由は己の無意識レベルで反応が起こっているからなのです。下の図は手首を掴まれたときのそれぞれの力の出方を現わしています。

手首を取に来ている人は赤の矢印の力を働かせます。すると無意識に手首を取られた人は紫の矢印の方に力を働かせてしまうのです。

この動作がわずかにでも起こると、結果としてわずかなぶつかりの初期段階が形成されます。すると手首を取られている人がこの時点でどこに手を移動しようとしても相手に逆らわれてしまうのです。

ではダラーンとして完全に脱力してみたらどうでしょう。確かにぶつかりはなくなりますが、そうすると相手の意のままになってしまいます。では一瞬完全に脱力してから動かしてみたらどうでしょう。動かそうとした瞬間に相手に読まれ動きが止められてしまうのではないでしょうか?

合わせるとは?!

動けば止められ、力を抜けば相手の意のままにされる。ではどうすれば良いのかというと、そこで合わせるという技術が出てくるのです。合わせるというのは単に腑抜けのように自分の力を抜くというものではありません。

相手の力を読みそれに乗って相手を不利な状態に持っていくことをいいます。ですから導くと表現する人もいます。実は合気道では脱力というのはこの合わせることを意味している言葉でもあるのです。それを図に示すと次のようになります

なお導くというと間違えて引っ張ると思っている方がいらっしゃいますが、あくまでも相手に持たれている接点で感じている感覚が変化してはいけません。変化があると必ず相手はこちらの動きを読んでしまいます。接点に変化がないように相手の動きに合わせて導くのです。そうすると脱力感が自分の中に現れます。

さらに「相手が押して来ない場合はどうするのか?」という質問が来るかもしれません。そのヒントは事項にありますのでご覧ください。ヒントは円運動で導くことです。

上手く合わせられない理由!

ところが上記のように相手の力を導くように行っても実際は上手くいきません。それは何故でしょうか?

それは相手の体の構造を無視しているからです。人間はご存じのように関節でできています。ですから、関節の可動範囲と違う動きをした時点でぶつかりができるのです。それが相手とぶつかる2つ目の理由です。

ですから相手の力に乗って合わせるためには、相手の関節がどのように動くかを理解しておく必要があります。そして下図のように相手の可動範囲を円軌道を描くように導いてあげる必要があるのです。特に大切な点は飽くまでも円軌道というのは相手の関節の固定点を基準に円軌道を描くということで、自分が勝手に円軌道を描くのではないという点に注意してください。相手が移動しているときは導く己の動きは円には決してなりません。

合わせを使ってもぶつかる時は?!

以上の要点に注意していざ技をかけてみるとやはり相手の力とぶつかる人がいます。それは心理的な円の方向と実際の円の方向とが異なるからです。

相手に技をかけたいという気持ちが相手とぶつかるという現象を生んでいます。『相手を倒そう』という気持ちによって自分の力が相手側に向いてしまい相手とぶつかるという現象を起こすのです(下図参照:相手の力(青)と自分が向かおうとする方向(赤)の力がぶつかるため)

ところが関節の固定点からすると実はもっと外に円運動をする必要があるのです。そして上手く円運動が起こると、それに連動して腕だけではなく他の部位も動いてしまいます。これは生理学的な現象ですので、相手は気づかない間にバランスが狂っていて力が入りにくい状態となっています。それにより相手を導くことができるようになるのです(下図:導かれた相手は実際の位置よりずれる)

それでもぶつかりが出る場合は?!

以上が力の要らない技ができる理由です。 なお今回の記事を読んでもなおぶつかりが生じる場合の多くは持たれた手首を見ていることが多いです。いくら体で相手への情報を遮断していても目で知らせていては意味がありません。決して接点は見てはいけません。

さらには、目を意識してもそれでもなおぶつかる人がいます。その原因は何かというと相手の力と合わせていないためです。多くは手首でぶつかりが生じています。それは数十グラムのぶつかりでも問題となります。ぶつかりが出た時点でこちらの変動は相手が読めるものとなるからです。それを注意してください。そこでもう一度「体の段階での大前提」の注意事項をあげておきます。

・目付け
・接点
  柔らかく当たらない
  相手の力に合わせて導く
  接点は相手の関節の固定点を中心に円運動

次回はもう少し体の段階について深掘りしていきます。ここまでお読みいただいた読者の方本当にありがとうございました。 もし記事がお役に立てたと思われたらぜひ下記のブログ村への投票をお願いします。

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【体の段階】合わせとは!前編

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、故・井口師範が指導した合気道は5つの段階を通って学ぶということを今までお話しました。それは形(かた)・体(たい)・気(き)・意(い)・神(しん)とあるということでした。そして形の段階は合気道で行う形を素直に学んで覚える段階で、体の段階は自分がどう動くと相手にどう影響がでるかということと相手をどう導くと相手がどう動くかという2点を体レベルで覚えるまで行うということでした。

さらに、体の段階で大切なのはその大前提をしっかり意識して行うことだということをお話しました。その大前提とは「相手にこちらの意図を察知されない」 です。要するにこちらがしようとすることを相手に読まれてはいけません。

前回は相手に察知されない最も大切なこととして目をあげました。今回は「接触点」ということをお話しします。今回の内容では「脱力の本当の意味」と「それは誰でも可能である」ということを納得していただける記事にするつもりです。さらに言えば「合わせる」とは何か?を説明したいと思います。

このブログで分かること

1.相手と接点を持つ大切さ
2.脱力や合わせや導きの意味
3.人の動作の仕組みと欠点を利用すること

目次

結局合気道では接触が大切
合わせの重要性
合わせの大切なポイント
人の動作とは一種のプログラム
強く捕まれたときどうなんているか?
相手の安定状態に対する対策

合気道では接触が大切

合気道の形稽古では高段者の技を除いては必ず相手に触れることを大切にします。ともすれば気で投げると言って触れずに投げることが合気道の最終目的のように誤解されている方もいらっしゃいますが、気で投げるというのはどちらかというと心理学的な技術なので万人に効く技術ではありません。

ちなみにプロ格闘家といえば、格闘技の申し子のような天才たちです。もし触れずに気だけで相手を完全に制することができるなら必ず天才であるプロ格闘家の中からそのような人物が現れるはずですが、そのような人物は一人もいないのです。こういう事実からも気だけであらゆる相手を制することができるというのはあり得ないわけです。

ですから合気道をかじって気を稽古したからといってもプロ格闘家の練習量の比ではありません。ですから我々合気道修行者もこの点を鑑みて良識ある態度で稽古に臨まなければなりません。もし護身術として合気道を考えておられるなら、漫画のかめはめ波のような 気という万能のエネルギーにあこがれるのではなく、地道に相手と接触することを考えて稽古に励む方が効率的だと思います。

ちなみに合気道にはかめはめ波のような技術として「遠当て」という当身が存在しますが、これは相対した相手の特定の状況において心理学的アプローチと生理学的アプローチを同時に行う技術で、かめはめ波のように物理的衝撃を与えるものではありませんし万能でもありません。あくまでも単なる技術の一つにしかすぎません。

合気道はやはり相手に触れることによって相手と和合する技術を学ぶものなのです。

合わせの重要性

合気道では相手に触れるということが如何に大切かという話をしましたが、次にこの触れている点である接点について述べてみましょう。

接点ですが相手と自分を分ける境界点ではないということを理解する必要があります。接点は相手の情報を受け取る点であり、合気道でとても大切な物理的に合わせを行える非常に大切な点です。

そこで合わせとは何かというと、相手の力の方向を読みそれに合わせることで相手とのぶつかりを消滅させる技術です。これにより脱力感が得られます。

何故ぶつかりを消滅させる必要があるのかというと、ぶつかりが出来た時点で相手はこちらの行おうとすることが事前にキャッチできてしまうからです。そうなると腕力が強い方が勝つという単なる力対力の勝負となってしまいます。

合わせの大切なポイント

合わせにおいて最も大切なのがその接触点がソフトであるということです。多くの方はこれを脱力と呼びますが、当会では敢えて「ソフトな接触点」といい「ぶつかりの無い状況を作る」と説明します。

何故なら脱力というと「全く力を抜くこと」「筋肉を使わないこと」と腑抜け状態のこととと勘違いされている方がいるからです。腕を動かすには必ず筋肉が働いていないといけません。特に体の段階では「体は骨と筋肉を使って関節で動く」ということを肝に銘じておかなければなりません。

それを前提に「如何に効率的に相手を動かすか?」ということを実現する必要があるのです。そのために、先ずは「ぶつからない状態」というのは物理的に可能だということを理解していただく必要があります。

それからもう一点大切なポイントですが、運動生理学的な理由から、相手がこちらの動きが読めないときこちらの動きに反応するのに0.5秒かかるという点です。これを反応速度といいますが、これがあるために合気道では相手を投げることができるのです。

こういったことで相手に事前にこちらの動きを察知されないためにも相手とのぶつかりがない状態にしておく必要があります。

人の動作とは一種のプログラム

人の体はご存じのように関節部で骨が折れ曲がるようにできています。それを筋肉でコントロールしているわけですが、このコントロールは伸ばすか縮めるかのどちらか一方で行っています。

また人は同時に様々な筋肉をコントロールするということができませんので、ある目的を持った一連の動きをプログラムとして自動的に発動しています。プログラムだと言うと「人間はロボットじゃない!」と嫌う方もいらっしゃいますので「身につけている」と言い換えるとご理解いただけると思います。

一つの動作というのは「意識」と「一連の筋肉動作」の合わせたものとして身につけているのです。ですから一つの動作には「想定」があり、その「想定」に従って体を動かしているのです。

例えば、片手取りの形というのは相手の手首を掴むという一つの動作な訳です。片手取りを行う人は必ず相手の手首を掴むという想定の元で相手の手首を掴みに行くわけです。

強くつかまれたときどうなっているか?

通常の合気道の形稽古では 相手の手をがっちりと本気でつかむことがありません。これは本気でつかむと 技がかからなくなるため形稽古ができないからです。前項では相手の状態について述べましたが、ここではがっちりと強くつかまれた場合お互いの応対についてもう少し見ていきましょう。

そのために受けの人が本気でがっちりと相手の手首を掴む場合を想定します。その場合、通常人間の反応として受けの人(掴む側の人)は最も安定した位置で相手の手首を掴もうします。

しかも相手はこちらが相手を支えることを前提に持ちに来ますので、こちらもつい無意識に相手の力に対抗して持たせいる状態になっています。これによりぶつかりができ、相手がより安定するため、こちらの腕力が相手の腕力を凌駕していなければ 相手の腕を動かすのは当然不可能となってしまいます。

さらに、相手がこの安定した状態になり、こちらが相手を支えているぶつかった状態からは脱力が非常に出来にくい状態になっているのです。だから多くの人が「脱力は難しい」と言われるゆえんです。

相手の安定状態に対する対策

ではこの状態から抜け出す方法があるのでしょうか? その前に一つご質問をしたいと思います。相手が安定している状態から力を入れるということを何故するのか? どうして相手の優位な点から出発する必要があるのでしょうか?という2点です。

といいますのは、実はこの質問に盲点が隠れています。何故なら、相手の安定点よりも少し外(一寸/3cm)に誘導すると相手の力が有効にならない場所があるからです。さらに言えば相手の力に乗ってそこに誘導すれば簡単に相手をコントロールすることが出来る点があるわけです。

このように相手の力の入らない範囲に相手を誘導するのも実は合気道では「合わせる」といいます。「合わせる」というのは持たれたのぶつかりを失くすだけではなく、相手が加える力の方向に合わせて動き相手が気づかない内に安定している場所からずらすということも入っているのです。

そのため合わすというのが非常に難しいと思われているわけです。ぶっちゃけ合わせるには
・相手とぶつからない状態にする
・相手の力の入らない位置に誘導する
という2段階の動作を行う必要があるということです。

ですから筋力を使うという点では、筋肉を全く使っていないのではなく、相手の力に合わせて筋肉を使っているので当然ぶつかり感がありません。本当に脱力した腑抜け状態ではないという点が「合わせ」の大切なポイントです。

要は本当に力を抜いているのではなく触れた部分がぶつからない状態で脱力しているような感覚があるというだけです。これが所謂「脱力」の正体で腑抜けになるということではありません。

今回は「相手に悟らせない」ために相手との接触点の扱い方である「合わせる」という点についてご説明しました。次回はこの「合わせる」というのをさらに詳しく深掘りしていきたいと思います。

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