【体の段階】船漕ぎ運動の秘密!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

当ブログでは、現在はその体の段階について述べいます。体の段階は次の気の段階の準備段階ですので非常に大切な段階です。この段階では自分の身体の使い方自分と相手との関係を知ることを目的にしています。

今回は天鳥船(あめのとりふね)の行です。天鳥船の行とは合気道で稽古に取り入れられている船漕ぎ運動のことです。

このブログで分かること

船漕ぎ運動は 天鳥船の行と言って古神道の行から来ていますが、宗教的な意味だけではなく、合氣道の立ち技において非常に有用な技術が隠されています。

このブログでは天鳥船の武道的意味を明確にすることで、重要性と物理的な有効性を理解していただきます。また合氣道を行う上で天鳥船の行が如何に重要かということがわかるとともに、合氣道の技を行うさまざまなヒントが得られます。

1.天鳥船とはどんなものかわかる
2.天鳥船の物理的、実用的意味が理解できる。
3.足の三角の秘伝の重要性が理解できる
4.筋力によらない運動エネルギーを使ったやり方がわかる
5.足腰の安定感を感じられない悩みが解消


目次

天鳥船とは?
 天鳥船は足の三角の秘伝の稽古だった!
重さを伝えるのが天鳥船!
天鳥船のよくある誤解!

天鳥船(あめのとりふね)とは?!

天の鳥船とは、合氣道の道場で準備運動の際によく行われている船漕ぎ運動のことです。天の鳥船というのは本来は明治時代の古神道家の川面凡児師が伝えた禊の行を 大本教の出口王仁三郎師 によって合氣道開祖・植芝盛平翁先生が伝えられと言われています。

ここでは古神道の行としての詳しいやり方は述べず、骨の技術すなわち物理的な技術としての天の鳥船の優位性を述べていきます。

合氣道の道場によっては天鳥船の行を採用していないところもあると聞きますので、合氣道を開祖・植芝盛平翁先生が天鳥船の行を行っておられる写真を下に示します。

この天鳥船というのは、基本的には神秘行の一つで、魂を奮い立たせて霊的な能力を強化するのを目的にするものだそうで、振魂(ふりたま)という瞑想法を伴って行われるていたそうです。

僕が師匠・井口師範からお教えいただいた天鳥船に関する内容は臍下丹田にある気を動作に合わせて腕から手に流し、さらにその気を引き戻すということを繰り返すことで自分の気を強化するというものでした(下の連続写真参照)。

以前もここまでの内容を本ブログでも公開したことがありますが、今回はさらに天鳥船の秘密を公開していきたいと思います。

天鳥船は足の三角の秘伝の稽古だった!

天鳥船の行を行うとわかると思いますが、翁先生がされているように身体が前後させて漕ぎ運動を行ってみるとかなり足腰がふらつくのがわかると思います。

ところがこの船漕ぎ動作の①~③の動作部分に足の三角の秘伝を適応してみると非常に安定するのがわかると思います。さらに 全身運動の最終動作 を示した下の写真を見ていただくと、翁先生の足の形が、まさしく前回示した足の三角の秘伝のポジションを取っているのに気づかれるのではないかと思います。

翁先生の膝の動きが袴をはいているため見えませんが膝の曲がりからも足の三角のポジションを取っているのが理解できると思います。読者の多くの方もご存じの通り合氣道で袴を履く理由として足の動きを隠すためだといわれています。要するに袴を履くことで膝の動きが見えないわけです。

合氣道修行者の多くの方は袴で足の動きを隠すといわれているが一体何を隠しているのかと日ごろ考えられた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 実は足の三角の秘伝による膝の動きを隠しているのです。

僕の師匠・井口雅博師範も「曰く! 天鳥船の行が非常に大切!」とよくおっしゃっていおられました。でも僕自身は長い間その理由がわかりませんでした。井口師範から合気道の立ち方のご指導をいただいたときに足の三角の秘伝をお教えいただいたのですが、天鳥船と結びつくことは実は長い間なかったからです。

僕は天鳥船をやっているとどうしても足腰がふらつきを感じることが多々ありました。それで安定するようにといろいろと稽古をしている中、あるとき井口師範から教わった足の三角の秘伝を行ったところ非常に安定することがわかったのです。それで初めて天鳥船では足の三角の秘伝を使っているということが分かった訳です。

しかも、足の三角の秘伝という膝の使い方が非常に大切で秘伝だからそれを隠すために袴をはいているともいえるのだと気づいたのです。

ですから前回、足の三角の秘伝をご紹介したとき、多分誰もあまり意識していなかった割には秘伝といわれるほど大したものと感じなかったのではないでしょうか? 余りにも普通の内容なので軽く見られた方もいらっしゃると思うのですが、実は非常に重要なのです。

この足の三角の秘伝を使って足の底から膝を倒すことによって運動がおこるのを意識するだけで今まで安定しなかった天鳥船の動作が安定するのが体感できると思いますので、この足の使い方を是非覚えていただきたいと思います。

重さを伝えるのが天鳥船!

さらに、この天の鳥船の行は武道的な動きとしては、足の三角の秘伝の実践的稽古になるだけではなく、力を重みとして伝達する稽古としても非常に大切です。

下の写真は翁先生の動きの前半部分である前進動作をしめしています。翁先生の腕の動きに注目していただくと、体が前に出てから腕が前に出ています。体の動きが起こって初めてその動きを手に伝えているということです。

当会ではこの体が動いてから力を伝えることを「陽の技法」あるいは「陽の技術」と呼んでいます。この陽の技術は体の重みを相手に伝える方法です。

この陽の技術を使えば人を簡単に引っ張ることができるようになります。例えば、下図のようにしっかりと手首を握られた状態で天鳥船の①~③の動きをした場合を例にとりますと、もし技の掛け手の腕に全く力が入っていないで、船漕ぎ運動の①~③を行えば、持ち手は図のように前に飛ばされます。

ところが①の段階で技の掛け手の腕に力が入っていると相手を前に送り出すことができません。というのは腕に力が入っていると掛け手の意図が最初から技の受け手に伝わってしまうからいつ引っ張られるかわかるため簡単に抵抗されてしまうからです。

実は力が入るというのは腕力だけで相手を引っ張っているのです。この動作のコツは体が動いてから自然に任せるように相手に力を伝えることにあります。すると腕力を使わずに相手に動きを伝えることができます。

では何故腕力で引っ張るよりもこちらの方が有効なのでしょうか? これは実は中学の理科で勉強した力学のなかで運動エネルギーといういのを学んだと思いますが、この運動エネルギーが相手に伝わるのです。

もう少しわかりやすい例でいうと、例えば10キロの鉄の玉をゆっくり投げてもらった場合を考えてください。いくらゆっくりといえどもこれを手でキャッチしようと思いませんね。

なぜなら皆さんは体験的に10キロもの鉄の塊が飛んでくること自体非常に危険だとわかっているからです。ですから自分の体重と同じ重さの鉄の塊がゆっくりでも飛んでくるとどれだけ恐ろしいかはどなたでも理解できると思います。

このように体重というのは動くと実は大きな力を生み出しているのです。人間が動くと大したことのないように感じられますが、鉄の塊と置き換えたときにその威力たるや想像できると思います。

天鳥船のよくある誤解!

読者の中には道場の稽古で天鳥船をやっている人もいらっしゃると思いますが、案外何も意識せずに行っている人がかなりいらっしゃるのではないでしょうか?

よくある誤解された動作として下図のように上体だけを反ったり傾けたりして行っている場合があります。確かにこのようにすると足腰は安定するのですが、上記の内容でお分かりの通り合氣道の技に使えるようになることはありません。

合氣道で技に使えるようになるにはやはり、足の三角の秘伝を使って重心が前後する必要があります。このように足の三角の秘伝あるいは天鳥船の行は合氣道での動きを生み出す中核としての意義がある訳です。

この天鳥船の稽古を続けることにより合氣道での動き出す瞬間や衝撃を伝える瞬間に足の三角の秘伝を使えるようになると、急激な動きができたり、ゆっくりした当身(パンチ)でも相手が驚くような威力を出したりすることができるようになります。

◆   ◆   ◆

如何でしたでしょうか? たかが船漕ぎ運動と軽く見られていた方もかなりいらっしゃったのではないでしょうか? しかしここまで読まれた方は船漕ぎ運動は実は袴で隠すほど大切な足の使い方を習得する稽古方法であったということがわかったのではないかと思います。

次回はこの足の三角の秘伝をもう少し深堀りしていきたいと思います。さらに足の三角の秘伝を使えるようになるための方法について述べたいと思います。

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【体の段階】強い力の伝え方!三角の秘伝

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

当ブログでは、現在はその体の段階について述べいます。体の段階は次の気の段階の準備段階ですので非常に大切な段階です。この段階では自分の身体の使い方自分と相手との関係を知ることを目的にしています。

今回は立ち技において相手に強い力を伝える原理をお伝えします。

このブログで分かること

合氣道では天地人を和合するといわれますが、今回のブログでは地と和合する意味が分かります。それは「地を味方につける」と言い換えることができるですが、これができるようになると地面とつながって連続的な力を作りだせるようになります。これを技のポイント・ポイントで使用すればかなり自分の技が大きく変化します。技の利きが今一つと悩んでおられる方は最後までお読みください。

1.連続的な力が出せるようになる。
2.安定した態勢で力が出せるようになる。
3.ポイント、ポイントで使用すると強力な武器となる

目次

一般的な力の出し方では良くない理由
地を味方にする足の三角の秘伝
押すだけが用途ではない!

一般的な力の出し方では良くない理由

合気道の師匠・井口師範は地を味方につけないといけないといわれました。それは地面とつながった感覚を身に着け、地面から力を借りて連続して作り出すということです。

一般的に、地面から力を借りるために普通の人は溜めを作って地面を蹴ります。ところがこのような力の生み出し方では溜めのタイミングを相手が読んでそれに合わせると相手はその力を殺すことができます。そうすることで簡単に対抗されてしまいます。

井口師範の指導した合気道ではこちらの意図が相手に察知されないことが重要でした。どんな高等技術をマスターしていても相手が知っているとその対策を取ることができます。

ところが相手が技を繰り出す瞬間までこちらの意図がわからない場合は相手は対策を取ることができません。これは運動生理学でいう反応速度によるものです。運動生理学では人が気づいて反応するのに0.5~0.7秒かかるといわれています。

ですから相手に意図さえ読まれなければ反応するのに時間差が生まれるということです。ですから相手にわかるような溜め動作を使うのは得策ではないということです。

地を味方につける足の三角秘伝

では地面を味方につけるにはどうしたら良いのでしょうか? 井口雅博師範はその方法を三角の秘伝として伝えてくださいました。

それは合氣道の基本的な立ち方に秘密があります。一般的に合氣道での立ち方は下図のような立ち方をします。これをレの字立ちとも呼ばれますが、後ろになる足の踵と親指、そして前になる足のつま先が三角になるように立ちます。

しかしこれが足の三角というのではありません。この立ち方にさらに秘伝が加わる訳です。実は足の三角というのは別にあるのです。それは後ろになる足の親指、踵、それに膝の三点を結んだ線が足の三角です(下図)。

そして膝を図のように前の下に倒すと体は強制的に前に進もうとします。

これは下図のようなドアに衝立(ついたて)をして、衝立を倒して釘でロックするとドアが開かなくなるのはご存じのことでしょうが、これと原理が同じです。

この足の三角の秘伝に折れない腕を併用すると地面から腕までつながる力の流れを感じます(下図)。これが地を味方につけるということです。これにより連続的な力が生み出せるわけです。物理学的で言えば足と地面の摩擦力を手に伝えているので連続的に力がかかるのです。

しかもこのやり方のメリットは相手を支えにしていないので、相手の態勢にかかわらず独立した安定性を保つことができる点です。

例えば押し合いをする場合を考えると、普通は相手の力とこちらの力で支えあいがあった上で力が上回った方が押し勝つようになりますので、このような場合ですと相手の支えが急になくなるともう片側はバランスを失ってしまいます。ところが足の三角の秘伝を使うと相手に支えてもらわなくても、安定した姿勢で相手を押すことができるので相手の支えがなくなってもこちらの態勢があまり崩れないのです。

地面が味方になる!

ただ足の三角の秘伝だけを聞くと『相手を押し続けるだけのことか!』と思う人がいるかもしれません。実は秘伝を受けた僕も『確かに強力だけれども単なるパフォーマンスで使うだけしか使えないな』と考え、 押すのには都合がいいが技の中では使えないものだと長い期間考えていました。

ところが師匠のご指示なので、仕方なくこの足の三角の秘伝を使う稽古を長い間続けていましたところ、あるとき相手に軽く当てた当身(パンチ)が予想以上にダメージを与えることに気づきました。要するにパンチが当たった瞬間にこの足の三角を無意識に使ていて パンチを打った瞬間に地面とつながり強いパンチがでるようになった たわけです。

このように、足の三角の秘伝を稽古していると体が覚えていて 思わぬところで 無意識に使うことが判明したわけです。実は足の三角の秘伝は当身だけではなく、技の決めのポイントで足の三角の秘伝が有効になってきます。物理学でいう作用・反作用が働く場面で安定した態勢で力が出せるので非常に有効な秘伝だったのです。

◆   ◆   ◆

秘伝といわれるものは非常に奥が深いものです。合氣道界で一般に広がっている折れない腕も秘伝級の 心身統一合氣道の藤平師範が教えた 技術です。問題は「折れない腕をどこで使うか?」ということなのです。三角の秘伝も一度聞けば『そんなの当たり前じゃないか』と思えるほどシンプルで『何が秘伝?』と思われる人もいるでしょう。このように秘伝とはシンプルなのですが問題は頭ではなく体で理解するということです。。

ですから一度聞くと前から知っていたような気になり、頭で納得するだけで軽くみてしまいます。そして多くの人は全く稽古をしません。稽古をしないと「あるときに気づく!」ということが起こりません。頭でわかるのと体でわかるのとは大きな違いがあるということです。

今回は足の三角の秘伝を話しました。 実はこの足の三角の秘伝は合気道の開祖・植芝盛平で重要と言われている稽古法に残っているのです。次回はそれについてお話ししたいと思います。それは天鳥船(あめのとりふね)といわれる稽古法です。いわゆる 船 漕ぎ運動といわれるものですが、天鳥船は単なる足の三角の秘伝の稽古だけではなく、合氣道で最も重要な動きも入っています。次回はこれを詳しく説明したいと思います。

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【体の段階】座り技呼吸法でなぜ力が入るか?

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

当ブログでは、現在は形がある程度理解できた人の次の段階である体の段階について述べいます。体の段階とは次の気の段階の準備段階であり合気道の修行を進めるに当たって非常に大切な段階で、自分の身体の使い方と自分と相手との関係を知るという2つの段階とから成り立っています。

今回は前回心身統一合氣道の故・藤平光一師範の提唱した折れない腕を気のイメージを使わないやり方をご説明しました。今回はこの折れない腕の使い方を座り技呼吸法(呼吸力鍛錬法)をご紹介したいと思います。座り技呼吸法で折れない腕を使うと様々な発見があり、これを研究する価値が非常にあります。今回はその内容をおおくりします。

このブログで分かること

このブログで分かることは、座り技呼吸法で腕に力がはいる根本原因がわかります。そのための対策法も同時に示すのでより効率のよい稽古ができるようになります。つい 肩に力が入ってしまう人や腕に力が入ってしまう人は最後までお読みいただけるとすべての問題が解消できます。

1.なぜ座り技呼吸法で力がはいるのかがわかる
2.力がはいる対策法がわかる
3.折れない腕の応用方がわかる
4.正しい体の使い方がわかる

目次

座り技呼吸法と折れない腕の関係
手首を持たれると起こる反射
反射の防止には腹圧が必要
力の伝え方

座り技呼吸法と折れない腕の関係

折れない腕ができるようになりましたら、次の段階として座り技呼吸法(正式名称:座り技呼吸力鍛錬法)に応用してみましょう。

座り技呼吸法の一般的な解説として「臍下丹田を意識して気を腕に伝えて腕に流すことで相手に気が流れ込み相手を倒す」ということではないでしょうか?

ですから感覚として折れない腕とほぼ同じということが言えます。ただ異なるのは、体幹の力を如何に折れない腕に伝えるかということです。

ところが、この折れない腕を座り技呼吸法に応用しようと思った際、実は大きな問題点があります。それは折れない腕では手首の下の部分で支えられていたのが、座り技呼吸法では手首の上の部分で持たれてしまうという点です。

この点で勝手が違って折れない腕ができていた人でも座り技呼吸法が上手くでいない状態に陥っている人がいます。その理由を次に話します。

手首を持たれると起こる反射

この座り技呼吸法というのは長年研鑽をしている有段者さえ腕力の差が大きい相手だと中々思うようにかけられません。ですから折れない腕の応用というとそれを否定される方もいらっしゃいます。

しかし、座り技呼吸法は原理的には折れない腕と同じなのです。そこでまず何故座り技呼吸法がうまくできないかという理由について説明していきましょう。ぶっちゃけ結論から言いますと動生理学で言われる反射を起こしていしまっているからなのです。

その反射とはどういうものなのかを少し詳しく説明していきましょう。相手が手首を取りに来たとき相手の力を感じるのは手首の一番上の部分なのですが、ここに力を感じると反射としてそれを押し返そうとする筋肉が働いてしまいます。その筋肉というのは所謂屈筋と呼ばれるもので、上腕二頭筋と肩の三角筋などです。

上腕二頭筋は所謂力こぶと言われる部位の筋肉で、肘を曲げるのに使用される筋肉で、図のような反応が起こるのです。上腕二頭筋は単に肘を曲げる筋肉ですので動きが単純で非常に読まれやすいという特徴があるのと同時に、術者からすると力強さを感じるため力が出ていると勘違いをしてしまいます。

さらに、上腕二頭筋が働くと次にこれに連動して肩の筋肉である三角筋が働きます。この筋肉は手首から非常に離れているので 作用点が遠くにあるため テコの原理から言うと非常に大きな力が必要となる筋肉です。ですからあまり複雑な動作ができない割には出力が小さいという問題がでます。

上腕二頭筋と三角筋が働くと次はこれを固定するため背中の筋肉が張り、結局背骨の起立筋が硬直させて腰の筋肉を反らせて対抗するという結果となります。こうなると動きがより単純化されてしまうのです。これでは相手を倒すことは当然できません。

以上が手首を上から抑えられそうになると起こる反射なのです。これが起こると伸筋の反対側の筋肉が緊張し折れない腕ができなくなるのです。

反射の防止には腹圧が必要

では反射を起こさないためにはどうするかという問題です。もうお分かりになった方もいらっしゃると思いますが、先ずは合わせを使って相手と力がぶつからない状態を作るということです。そして反応速度を利用して一気呵成に相手を倒すというのも一つの手です。

ところがこれでは今回のテーマの折れない腕を座り技呼吸法に応用するということにはなりません。座り技呼吸法に折れない腕の応用を考えると何故合氣道で使う力を呼吸法と呼ぶのかが分かります。

というのは座り技呼吸法では体幹を支えるため腹圧を使います。合氣道では丹田を意識するようにと言われますが、実際は丹田を意識することで腹圧を掛けるのです。腹圧は呼吸筋といわれる横隔膜でコントロールしますのでまさしく呼吸筋によって体幹を支えて作られる安定した状態から繰り出される力が呼吸力といえるのです。

腹圧というのは医学的には 腹腔内圧 と呼ばれ、 腹腔とは腹部の内臓を収める空間のことで、隔膜、骨盤底筋、腹横筋、脊柱部の多裂筋などのインナーマッスルで囲まれています。そして横隔膜が下がると腹部全体の筋肉が同時に収縮され、腹圧が高まります。

反射は上腕二頭筋から三角筋を通って背中の起立筋群が緊張するという現象でした。体の表層の筋力の緊張による現象です。ところが体の内部を安定し地面からの力を直接体から伝えることで、体表の緊張が起こり難くなるのです。

下図はその状況をモデル的に示したものです。反射が起こった場合は表層の筋肉だけが張るのでまるで板バネに取り付けらえた腕のようでバネの強さだけ押し返せるようなイメージですが、腹圧を使ったモデルでは相手の力を直接体幹から地面に逃がし、その反作用を利用して相手に返すということが可能になります。


腹圧を高めるには腹式呼吸の稽古が最適です。先ずは息を吐き切りお腹をへこませます。肛門を締め上げると同時にお腹を膨らませ息を吸い込みます。吸いきった時点で息をつめずに息を止めお腹に圧を加えます。これを繰り返します。肺の圧が高まると脳に圧力が行き悪影響がでますので くれぐれも息を止めた時に息をつめないでください。

腹式呼吸が思うようにできると次は逆式呼吸の段階にはいります。逆式呼吸は息を吐きながらお腹を膨らませ、息を吸う時にお腹をへこませるという呼吸法です。この呼吸法ができるようになると腹圧が自由に作り出せ、腹圧を上げたときパンチをされてもかなり耐えられるようになります。

力の伝え方

腹圧を自在に作れるようになったら体幹がかなり安定してきているので、その体幹の安定感をつかって地面の力を腕に伝えるようにします。

感覚的には腹圧を上げたとき丹田から上下八方に圧が広がるような感じで丹田からの力が腕に伝わるという感覚です。

さらに相手へ伝える力は自分の手首の下側、要するに相手が持っている指側から伝えます。間違えても自分の手首の上側を使おうとしないことです。手首の上に意識が行った時点で反射が起こり上腕二頭筋、三角筋、脊柱起立筋の緊張がおこります。

さらに良いイメージとしては相手の掌の皮が空いて方向に1センチ伸びるような感覚があるとかなり効果が発揮します。

とにかく座り技呼吸法のポイントを一言でいうと「意識のポイントは手首の下側」です。心身統一合気道の藤平師範も僕の師匠の井口師範も重みは下に感じるようにと言われていますが、ここに意識を置くことで、上記の屈筋群にかかる力がすべて解消されます。これが効くか効かないかのポイントなのです。

ただし皮膚の技術の秘伝という別のやり方もありますが、それについて述べるとまた長くなるので今回はここまでとしておきます。とにかく、意識するところを手首の上ではなく手首の下側だと覚えておき、そこを意識できるように動くことです。

◆   ◆   ◆

今回は折れない腕を座り技呼吸法で応用するやり方を説明しました。合氣道修行者の方がこのやり方を良く研究すると様々な気づきがあると思います。とくに折れない腕がさまざまな局面で使えるということもわかってくると思いますので是非研究することをお勧めします。

次回は立った状態での強い力の伝え方の秘伝について述べたいと思います。 最後までお読みいただいた読者の方々有難うございました。

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【体の段階】折れない腕

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

形の段階は形を教えてもらった通り行う段階で多くの方が取り組んでいるものです。ところがこの後多くの修行者はいきなり気の段階に入ろうとしますが、実は気の段階に入る前にどうしても体の段階の稽古をしておく必要があるのです。

体の段階の稽古には2つの段階があり、最初が自分の身体の使い方を理解する段階であり、2つ目めは自分の動きがどのように相手に影響を与えるかを知る段階です。

このブログでは前回までは体の段階を行う上でもっとも必要な概念を説明しました。それは「相手に悟られない動きをする」ということでした。そしてもう一つは体の段階の最終目標である「相手のバランスを奪う」ための基本的な考え方について述べました。

今回からはこれらの基礎知識を元に体の段階の技術を深掘りしていきたいと思います。今回は合気道で使う筋力に関連して合気道でよく言われる折れない腕について述べていきたいと思います。

このブログで分かること

折れない腕は合氣道界に割と普及している技術です。この技術の応用はたくさんありますが、中には中々できない方もよくいらっしゃいます。このブログでは氣という概念を使わず折れない腕の作り方を説明し、さらに折れない腕ができる理由も解明していきます。今まで折れない腕があまりよくわからない人は最後まで読むことでやり方がわかるようになります。

・ 誰でもできる 折れない腕
・折れない腕の原理
・気を使わない折れない腕の作り方

目次

折れない腕の作り方
折れない腕ができる理由
折れない腕のメリット
折れない腕から学ぶべきポイント

折れない腕の作り方

合氣道では 折れない腕 というスキルが存在しています。それは心身統一合氣道の故・藤平光一師範が合気道最大団体の合気会の師範部長をされているときに提唱しそれが合気道会に広がったものです。

折れない腕の基本的な考えは
「臍下丹田を意識し、手をリラックスせて、指から気がほとばしるとイメージをすると、腕に気が流れ、どんなに力を加えられても決して折ることができないぐらい強くなる」
というものです。

そしてこの折れない腕をパフォーマンスで行う場合に下図のように相手に腕力で腕を曲げるように試みてもらいます。もし折れない腕ができていたら相手がどれだけ力をいれようとも腕は今の字状態異常に曲がりません。

          折れない腕のパフォーマンス

折れない腕は実は藤平師範が気の存在を証明するために行ったパフォーマンスでしたが、実はこれは気ではない角度からも実際に行える技術なのです。当ブログでは現在は体の段階の技術を述べているので、折れない腕を気という概念を使わない別角度から説明をしたいと思います。

結論から言えば折れない腕というのは、伸筋のみを使い自分の腕で最高の筋力を使える状態を作りつつ、相手の生理学的欠点を利用することで相手に力を返す技術なのです。

  1. 丹田から鋼鉄の棒が出ていて手首をしっかりと支えていると想像します。
  2. 相手に両腕を支えて貰い力を入れる準備をしてもらいます。
  3. そこで丹田で鉄棒を押し出すようイメージしながらお腹を2,3センチ前に進ませて手首も前に進ませます。このとき注意すべき点は4つあります。
     ①手の筋肉を緊張させない
     ②足を使って腹を前に進ませる
     ③腰を反らしてお腹を突き出さない
     ⓸手首の下部を押し出すようにして力を返す
    以上を意識すると腹圧が上がり体幹が安定します。
  4. そこで相手に思い切り腕を曲げようとしてもらいます

以上で相手はあなたの腕を屈曲させることができなくなります。

折れない腕ができる理由

この簡単な理由は2つあります。一つは力を抜いたという感覚で腕の伸筋(腕を伸ばそうとする筋肉)が有効に働くために予想以上に力がでるためと、もう一つはお腹(体幹)からの力が前にでて、相手の力のベクトルをずらすため充分に力が入れられなくなるからです。

このように人間はわずかに狂ったバランスや条件が判断できなくなるため、非力な女性がこのパフォーマンスを行っても腕を強制的に屈曲できなくなるのです。これは飽くまでもパフォーマンスであって、この折れない腕ができるかどうかをチェックするもので技というたぐいのものではありません。

折れない腕のメリット

ここでこの折れない腕のメリットをあげると

  1. 相手が微妙に崩れていてベクトルをずらされていることに気づかない
  2. 自分の腕の筋力が変化しないことで意図が相手に読まれない
  3. 相手の想像を超える力が伝わる
  4. 非力な女性でも男性に使える

項目1についてはもう既に述べましたのでいう必要がありませんね。項目2についてですが、もっと相手にこちらの意図が読まれる原因となるのが腕の各筋肉の筋力の変化です。ですから相手との接点ではいかなる腕の筋肉の変化もできるだけ抑えるようにする必要があります。しかしこの折れない腕は固定するという点に意識を使っているため腕の筋肉に変化が起こり難いのです。

項目3についてですが、これも既に述べていますが相手は微妙にバランスを奪われているため充分に力が入らない上、腕の筋肉を微妙に使わないため変化がつかめない状況で、体幹からくる力を使われるため予想以上の力が相手に伝わります。

項目4は合わせを併用するとさらに力が不要になるため非力な女性でも男性に使えるということができます。特に足の三角秘伝で足の筋力を確実に相手に伝えるやり方や相手に誤認させる皮膚の技術の秘伝など覚えると非力な女性でも十分に男性に通用するようになります。

折れない腕から学ぶべきポイント

折れない腕から学ぶべきポイントとして、合気道のスキルというのは自分一人で行うことではないということです。折れない腕の特筆すべき点は、腕を気のパワーで強くするだけでなく、実は相手の重心を僅かにずらすことで相手に力が入らない状態を作り相手の力を相手に返すという手法を取っているという点です。

結局は、筋肉(伸筋)を有効に使いつつ、相手を崩すということを行っているのです。ただし術者の方にも相手を崩すという意識がないという点も大切です。相手を崩そうとする意識が働くと相手はそれを察知するからです。

しかも相手を崩そうとすると腕に妙な力が入りますので、急に折れない腕ができなくなるということも起こります。このように折れない腕を行うと合気道に必要な要素が浮き彫りになってくるのです。

・相手を崩そうと意識すると認識される
・折れない腕のようにこうすればこうなるという結果が大切
・気を意識することで筋肉が最善の状態になる
・気を意識するだけで体幹が整い丹田からの力がでる

このような点を意識して折れない腕を実践していただくと自分でもいろいろな発見があると思います。

◆   ◆   ◆

今回の内容は折れない腕を筋力や一般的ではない別の角度から説明しましたが、そこからいろいろなことが学べたのではないでしょう。次回は折れない腕の応用した座り技呼吸法について話したいと思います。

最後までお読みいただいた読者の方々有難うございました。

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【体の段階】合気道で使う力

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

形の段階は形を教えてもらった通り行う段階で多くの方が取り組んでいるものです。ところがこの後多くの修行者はいきなり気の段階に入ろうとしますが、実は気の段階に入る前にどうしても体の段階の稽古をしておく必要があるのです。

体の段階の稽古には2つの段階があり、最初が自分の身体の使い方を理解する段階であり、2つ目めは自分の動きがどのように相手に影響を与えるかを知る段階です。

このブログでは前回までは体の段階を行う上でもっとも必要な概念を説明しました。それは「相手に悟られない動きをする」ということでした。そしてもう一つは体の段階の最終目標である「相手のバランスを奪う」ための基本的な考え方について述べました。

今回からはこれらの基礎知識を元に体の段階の技術を深掘りしていきたいと思います。今回は合気道で使う力とはどのようなものかについてお話したいと思います。

このブログで分かること

・合気道で用いる力とはどのような力か?
・脱力とはどのようなものか?
・合わせとは何か?
・合気道の物理的な考え方の大切さ
・合気道の運動生理学での考え方
・合気道の心理学での考え方

目次

合気道で用いる力とは
筋肉が働かないと動くことすらできない
問題は腕力の変化
腕力の変化をつくらない脱力
合気道の運動生理学
合気道の心理学

合気道で用いる力とは

「合気道の技に用いる力とは?」という質問に対してすぐ帰って来る言葉として「呼吸力」があげられます。ところが「呼吸力とはどんなものか?」という質問に対して的確に答えられないというのが多くの方の現状ではないでしょうか。

或いは様々な師範の様々な回答を見てどれが正しいのかと思ってしまう人もいるかもしれません。人によると呼吸力を「気の力」という人もおられます。ところが「気とは何か?」というと非常に曖昧な返事が返ってきてまるで煙に巻かれたような感じではっきりと分かったとは言い難い状況になるのではないでしょうか。

このように科学的な説明のできない力では万人が万人とも理解するというのは非常に難しいものと言えます。確かに人知を超えた力といえる存在は僕の経験からもあるのは事実ですし、量子力学的を引っ張り出してくるとどんな不思議なことがあってもおかしくはありません。

しかし、スキルとして常に使う という点を目指すのであれば、誰にでも繰り返し再現性がある必要があるという点から当会では科学的アプローチができる力で技を考え、その上で生理学的現象や心理学的現象を考慮した上で技を研究する必要があると考えます。

ですから、当会で扱う合気道に用いる力とは筋力運動エネルギーの2種類です。ここでいう力というのは厳密には物理学の力の定義とは異なりますが数学的な計算で示すものではないので読者の方にはご理解をお願いしたいと思います。

筋肉が働かないと動くことすらできない!

合気道修行者の中には筋力を否定する人がいますので、筋力というと 不思議に思う人がいるかもしれません。一般的に合気道の道場では筋力を使わないようにと指導され、脱力するように言われます。

ところが達人でさえ筋電図を取るとやはり筋肉は働いているのです。ですから人間が生きているうえでは科学的には筋肉を全く使わないという状態はあり得ないのです。

僕は昔のある日に突然全身の筋肉が筋肉弛緩状態になったことがあります。意識があるのに突然体が倒れ全く体が動かない状態になったのです。当時も僕は合気道をしていましたので気を意識して動こうとしましたが、立つころはもちろん手足を動かすこともできませんでした。

実は病院に行って分かったのですが、この原因になったのは高価な栄養ドリンクを毎日飲んでいたせいなのです。当時とある会社で勤めていて深夜残業がかなり続き、睡眠不足を補うため高価な栄養ドリンクを毎日飲んで体に鞭打って仕事をしていたのです。するとある日突然パタッと倒れてしてしまったのでした。

栄養ドリンクにはカフェインなど神経を高ぶらせる薬品が多数入っていますが、睡眠不足のため体が寝ることを要求しているのを無理に神経を高ぶらせて起きていたので限界が来て精神が起きているが体が眠っているという状態になってしまったわけです。よく言われる金縛りの状態と同じことが目覚めている間に起こったのです。

この時の経験から体の力が抜けると気が流れているなどイメージをしても動かないということが分かりました。このように筋肉が完全に弛緩した状態だと人間は倒れてしまうのですね。ですから合気道の技を正しく行っているという状況では必要な筋力を最小限度適切に使っていることに他なりません。

問題は腕力の変化

前項では筋力が必要といいましたが、それでもどうしても納得いかないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか? それは「肩の力を抜くと上手くいった」「腕の力を抜くと上手くいった」という経験がある方ではないでしょうか? 

合氣道の技においても筋力を使うと言っていますが、だからと言ってウェイトトレーニングを合気道に導入すべきと言っているのではありません。それだと体格や体力が優れた人が技ができるという結論になります。

当会では技が効かないのは相手に自分の意図が読まれているからと考えています。これは体の段階の大前提の「相手にこちらの意図を読ませない」という点を思い出してください。

合気道では相手を投げるのに通常手を使います。ところがこの手を普通に使うとこちらがしようとしている情報が相手に洩れてしまうのです。すると相手はこちらの動きを察知して対応できてしまいます。それだと技が効きません。

実は人間の手というのは様々な器用な動きが要求されていますので微妙な動きが出来るようになっています。その為に微妙な筋肉の動きで相手がこちらがやろうとする情報をキャッチしてしまうわけです。

そのためには腕の筋肉の変化を作らない必要があります。これが力を抜けという理由なのです。だから腑抜けになってしまえということではありません。筋力の変化のない腕を作ってそれに体幹の力や運動エネルギーを伝えるのです。

腕力の変化を作らない脱力

ここまで読まれている方は、当会では脱力を完全に否定していると思われたのではないでしょうか? 合気道ではよく力を抜くことを指導されます。では多くの道場ではありもしないことを言っているのでしょうか?

そうではありません。脱力には2種類あります。一つは消極的な脱力ともう一つは積極的な脱力です。消極的な脱力というのは全く何も力をいれていない腑抜け状態をさし、積極的な脱力とは当会では合わせと言い相手の力の方向に動きを合わせて相手と力のぶつかりがない状態を作ることをいいます。

合気道でいう脱力とは本当に筋力を全く使わない腑抜け状態をつくることではありません。合わせを使った積極的脱力を指すのです。(なお、この合わせについては2022年4月6日の記事4月10日の記事に詳しく紹介していますのでご参照ください)

ぶつかりがあれば必ずそこに関連する筋肉がアクティブ(有効)になっています。さらに次に動作を行うにはそのアクティブになった筋肉をさらに使う必要があるため相手は簡単に次の動きが判断できてしまうのです。

さらに合わせの目的は、相手の力の方向に自ら積極的に合わせることでぶつかった状態を回避することでこちらのアクティブになった筋肉がどれであるかを相手に読ませないようにすることにあります。ですから当会でいう脱力とは合わせのことであり、相手と力がぶつかっていない状態をつくることで、単なる力の抜けた腑抜け状態とは一線を画します。

何故、腑抜け状態ではいけないかというと護身術を必要とするような場面の場合は相手の攻撃は様々の展開を見せますので腑抜け状態でいるとアッという間にやらてしまうことになるからです。

例えば相手が手首を取りにくる場合、ただ手首を握って終わりではないのです。何らかの目的があって手首を掴むのですから、ただの腑抜けのようにすると相手に体までもっていかれます。この点が腑抜けではいけないという理由です。

合気道の運動生理学

次に合わせにより作られた脱力を如何に利用するかを述べたいと思います。

ところで、運動生理学では人間が反応するのに認知してから0.5秒かかると言われています。それを反応速度といいますが、これを利用して技に掛けると相手はこちらの動きに十分対応できずコントロールを許してしまいます。要するに相手にこちらの意図が読めなければ技が上手くいくということです。

実はこれは腑抜け状態からでも同じことができます。具体的な例でいえば、相手に手首を掴ませてコチラは腑抜け状態にして脱力をしいきなり相手の予知できな方向に手を上げると相手は対抗ができず手を握ったままついてくるというようなことが起こります。

確かにこれを見せられると、腑抜け状態の脱力でも技が使えるという印象を与えてしまいますが、これは単なるパフォーマンスにしかすぎません。様々な攻撃が次々と繰り出される中でこのような技術はとても使えるものではありませんので誤解が無いように理解してください。飽くまでも合わせを使った積極的脱力状態からこれを使うということです。

合気道の心理学

ところで反応速度を利用したこのテクニックですが合気道修行者の方の中にはどうしても上手くできない方もいらっしゃいます。その原因は相手との接している場所(例えば握られている手首)に意識が行っているからです。

例えば手首を握られている状態で手を上げようとした場合に手首を意識して上げようと考えた時点で相手はこちらの意図を読みます。何故なら持たれている部分を僅かにでも意識してしまうと自分の手の筋肉が微妙に反応して筋力の変化を作ってしまうからです。その結果、相手はこちらが手を挙げる前に既に意図を読みとり、手を挙げる妨害ができるようになります。

ですから手を挙げるときは行き先のみ意識して挙げる必要があります。そのための心理的テクニックとしては次の2種類あります。
1.手を挙げる最終地点に視線を向ける
2.手をパッと開いて意識を指先に集中する

このどちらかもしくは両方行って、自分の意識が完全に相手との接点から離れると相手はこちらの動きが読めなくなります。要は相手も自分も騙して「相手との接点が無いがごとく振舞う」ことなのです。これにより体の段階での大前提「相手に情報を与えない」ということがどれだけ大切かと理解できるのではないでしょうか。

◆   ◆   ◆

今回の内容は気という概念に頼ることなく筋力を使って合気道の技ができるということを説明しました。今回は
・合気道で用いる力とはどのような力か?
・脱力とはどのようなものか?
・合わせとは何か?
・合気道の物理的な考え方の大切さ
・合気道の運動生理学での考え方
・合気道の心理学での考え方
などを説明しました。このように体の段階ではできる限り物理的な方面で技を解析し、物質的な動きで相手に影響を与えるということを徹底的に学びます。これにより気の段階に入ったとき点と点が線になりより客観的な観察ができるようなります。さらにはその上の意の段階に進むときにこの体の段階での理解が非常に大切になるのです。

次回は腕の筋力を有効に使う方法として合気道でよく言われる折れない腕について話したいと思います。これは 呼吸法などでも使え る技術なので是非理論的に理解しておく必要があります。

最後までお読みいただいた読者の方々有難うございました。

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