相手に繋がる!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、合氣道では「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と言われることがあると思います。かなり抽象的すぎる言葉だと僕は思います。今回はこの相手と繋がるということについて話していきたいと思います。

本ブログでわかること

「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と指導されることが合氣道ではありますが、実は抽象的な概念ではなく繋がる為の技術があるのです。

さらに、この繋がる技術も物理的につながる場合と感覚的に繋がる場合の2種類あります。本ブログではその違いを明らかにしつつ、さらに詳しく踏み込んで説明します。もしあなたが、指導者に「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と言われたが 、あまりにも抽象的すぎて「果たしてどうすれば良いのだろう?」と悩まれたことがあるなら、最後まで読むことで多くのヒントが得られます。

目次

●2つの「相手に繋がる」技術
●物理的に繋がる技術とは
●感覚的に繋がる技術とは

2つの「相手に繋がる」技術

僕の学んだ合氣道では相手と繋がる技術として次の2種類ありました。
 ①物理的に繋がる技術
 ②感覚的に繋がる技術

物理的に繋がる技術というのは呼吸力を用いる技術で、呼吸力を用いるためには統一体を作る必要があります。また、感覚的に繋がるというのは氣の流れを用いる技術です。氣の流れについては2種類あります。一つは自分の体内で氣の流れを感じるものと体外で氣の流れを感じるものの2種類です。

物理的に繋がる技術とは?!

①の物理的に繋がる技術の要は「呼吸力」にあります。この技術で技を受けた人はまるで重機とでも相手してるかのように圧倒的な力の差を感じるか、もしくは力が全く出せない状態に持っていかれていると感じます。

この理由は人間は二足歩行という点にあります。具体的にいいますと、二足で立つというの非常に不安定な状態にあるということで、人間は安定を保つために、常に状況を判断して最適に立てるように無意識で調整しています。

その不安定さを示すものとして、子供が遊ぶ人形があります。誰もが子供のころ遊んだと思いますが、人形を立てるというのはかなり難しく、ちょっとした振動でも簡単に倒れてしまいます。このように2足というのは非常に不安定な立ち方なのです。

そして武道では相手に対してより強く立つにはどうするかという点が非常に大切になります。そのため合氣道では統一体を作り、相手の力を一度受け入れ相手の力を地面に流れるようにします。これにより地面から自分の力が返ってくるように相手はなります。こちらはその力に自分の腕力を少しのせてやると勝手に相手はバランスを失ってしまうわけです。

この統一体を作る上で大切な点は、「相手と独立する」という点です。「相手と繋がる」と言いながら独立するとは少し変に聞こえるかもしれませんが、相手と支え合うと相手も安定しますので、相手に支えられる状況を作ってはいけません。

そのためまずは相手と独立した姿勢で決して相手に寄りかかることが無い姿勢をし統一体を作り、相手の力を感じたならすぐに相手の力を受け入れるように意識をすると、相手の力は地面へと流れます。これが相手と繋がった状態といいます。

要するに、相手の力が自分の体を通して流れ地面に達する状態にするのが物理的に繋がる技術です。しかも武道として成り立つためには相手には統一体にさせないようにする必要があります。

感覚的に繋がる技術とは?!

次に②の感覚的に繋がるというものに2種類あるとおなししました。まず、体内で氣の流れを感じる技術ですが、当会では皮膚感覚の技術と名付けて稽古しています。

皮膚感覚の技術というのは、相手と軽い接触をした状態で相手を導き崩す技術です。この技術で崩された人は、軽く触れられているだけなのに何故か崩れるという感覚を受けます。大概の人は意味が分からず、不思議さによって何故か笑いが出てくるというような技です。

実はこの技を行うためには、まず自分の体内で氣の繋がりを作っておく必要があります。多くの場合は、左右の手を繋げていることが多いですが、場合によれば足と手をつないだりすることもあります。そのため技を行う前に準備が必要な技です。

僕は実は整体のセラピストもやっているのですが、その視点からこの繋がりを筋膜のテンションではないかとみています。しかも、自分の内部で作った筋膜のテンションは、相手の皮膚に引っ掛けるだけで、相手の筋膜にテンションを伝えることができるので、あたかも外部からコントロールされているかのようになると考えています。

ですから気を感じるような超能力が無い人でも、この筋膜のテンションが意識できれば、相手と繋がることができるようになります。ただ、体内で繋がる感覚をすぐに起こせるように日ごろから筋膜のテンションを感じる稽古しておく必要があります。

2つ目の体外で氣の流れる感覚を使うという方ですが、僕はこれは生理学的な反応と心理学的な反応をミックスした感覚と考えています。

人間の目を機能的に分けると、中心視野と周辺視野に分かれていますが、周辺視野では見るというより感じるという感覚の方が強いのです。周辺視野は動く物体をとらえることに発達した視野ですので、これに意識を置くとかなり微妙な運動を感じることができます。この微妙な動きの感覚を使って相手の初動をとらえることができると、相手の動きに合わすことができるようになります。そうすると、相手と繋がった感覚を目で感じることができるようになります。

これが体外での気を感じることに通じるものだと僕は考えています。確かに、もっと第六感的な超感覚というのはあるのは否定しませんし、僕の師匠はそれを感じることができましたから、もっと深いものがあるのは確かですが、目の機能を使った感覚の捉え方であればだれでも実現可能だと思います。

今回は僕の感覚的な内容をお伝えしたので、考えが違う方もいらっしゃるかもしれませんが、ヒントになった方もいらっしゃるのではないかと思います。

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ひたすらの繰り返しが奇跡を起こす!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、僕は少年時代、小学校から大学まで、もともとは学年でもトップクラスの運動オンチでした。そんな僕は実質は26歳から合氣道を本格的に学んで、現在は武道家をやっていますが、当時の僕からするとまさに奇跡としか言いようがありません。今回は過去を振り返ってみて、この奇跡が何故起こったのかを考えてみたいと思います。読者の方々の参考にもなると思いますので、良ければ最後までお読みください。

本ブログでわかること

武道では何度も何度も繰り返す稽古が大切という話を聞きますが、一つのことをひたすら続けると本当にありえないことが自分の身の上に起こります。少年時代の超運動オンチだった僕が元格闘家を含めいろいろな武道経験者に合氣道の技術を教えています。この僕を変えたのは、他の武道やボクシングなどでは手打ちと蔑まれるような一見非常識と思われる当て身の稽古をただひたすら続けたからです。その結果、奇跡が起こった訳ですが、そこから得られた極めて重要なことをお話ししたいと思います。技の上達が今一度と思われている人は是非参考にしてください。

目次

・今何を思っているかで将来が決まる
・師の言いつけをひたすら守った結果
・ショボいと思った当て身は実は凄かった
・奇跡が起こった理由

今何を思っているかで将来が決まる

中学校や高校では学年に一人や二人はいると思いますが、何の障害も持っていないにも関わらずどうしようもないほどスポーツができない生徒がいます。僕のその中の一人でした。

そんな僕は人生で2度合氣道に挑戦しています。1度目が22歳の時でした。しかし2年程して指導員の先生に上達が全くできず退会を促されました。2度目は26歳の時で、永遠のわが師・故井口雅博師範に入門したのがそれです。

1度目の合氣道を志した理由は「健康になるため」でした。ただ立ってだけでも30分すら持たないほど体が弱かったため、氣という生体エネルギーが高まる合氣道をすると健康になるといわれたからです。しかし、そんな軟弱な体を持つ僕にとってはたった1時間の合氣道の稽古は僕を苦しめただけで、何も得るものがありませんでした。

2度目は、暴行を受けたことで、「沢山の人が見ていても誰も助けてくれる人はいない。自分の身は自分で守るしかない」と思い、井口師範に入門しました。そして、2年もすると普通の人並みの健康を手にいれました。

僕の体を健康にした原因として、この2つの合氣道の違いはどこにあったのかというと、結論からいうと、2回目に良い師に巡り合えたからではなく、考え方の違いにあったと思います。

1度目の合氣道は、「健康になるため」というのを裏を返せば「今健康でない」という意識からきています。一方「身を守るために技を少しでも身に付けたい」という思いには「今健康でない」という意識が全くなかったわけです。

技を何としても身に付けたいという思いから、不調で寝ていても壁を押すなど稽古をしていたぐらいです。その結果、技が身につく体に少しずつ変わって行き、技が身につくために最終的には病魔まで追い出してしまったわけです。

師の言いつけをひたすら守った結果

僕の行う打撃は他の武道やボクシングでいう単なる手打ちです。しかしそれがわが師・故井口雅博師範から教わった打撃法でした。下の映像から見ても僕のパンチはただの手打ちでしかありませんが、元格闘家の人が後方に飛ばされています。

僕がこの打撃法の練習をしているのを見た多くの人は「そんな手打ちのパンチを練習しても意味がない」とよく言ったものでした。

しかし、僕の勝手な解釈では、当て身を「合氣道は投げがメインなので、軽い打撃で牽制して投げの補助を行うもの」としていたのでしたので、師匠の方法で良いと考えていたのです。

そして毎日毎日ひたすら手打ちの打撃の稽古をしたものでした。するとある日、体に芯が通る感覚ができてきました。その感覚を使うと、何故かあまり力を使わず人が投げれるようになったのでした。合氣道でいういわゆる呼吸力が出てきたというものです。

僕は師匠はこのために、僕に当て身の稽古をひたすらするように言ったのだとそのとき理解しました。

ショボいと思った当て身は実は凄かった

僕は長い間、合氣道の当て身は手打ちだから大したことが無いと真剣に思っていました。ところが師匠が亡くなり、喪に服して3年経ち、合氣道をもう一度始めようと思ったのですが、師匠と肩を並べられるような先生を探しましたが見つけることができず、結局合氣道はあきらめ打撃系格闘技であるジークンドーをすることにしました。

やはり、40代に入ってからの打撃系格闘技では、片目の見えないハンディを持つ僕にとっては非常に負担が大きいものでした。特に若い人を相手にするスパーリングでは、体力負けをしてしまうことが度々ありました。

そんなある日、パンチングミットに打撃を打ち込む稽古をしていたとき、体力に限界を感じ、手抜きで思わず合氣道の当て身をだしてしまったのです。要するに手打ちでミットを叩いたわけです。すると、ミットを持っていたパートナー役の人が、「何ですか? 急に打撃が強くなりましたが、疲れたようにしていましたが、実は体力を温存していたのですね?」と言ってきたのです。

僕は手を抜いて楽な合氣道の当て身に変えただけだったので非常に驚きました。それで、ジークンドーのパンチングのトレーニングで、疲れてきたら合氣道の当て身を行うということをやり出したのです。ここにきて初めて他の打撃系の人たちに手打ちと蔑まれる合氣道の当ては実は凄いと実感し始めたのです。

それからしばらくして、ジークンドーでスパーリングを行ったとき、相手が空手の高段者と当たりました。僕は短期決戦でないと勝てないと思い、相手の打撃に合わせて入り身で入り軽いけん制のつもりで相手の胸に突きを行いました。

すると相手が2メート後方に吹っ飛んでドンという大きな音とともに尻もちをつきました。これには会員が全員おどろき、側でスパーリングをしていた人たちも一端動きを止めて、私たちの方を見ました。隣でスパーリングをしていた人が大きな声で「合氣道! すげー」と叫んだぐらいです。でも一番驚いたのは当の本人、僕だったのです。何故ならコチラは全く実感がなかったからです。このとき初めて合氣道の当て身がこれほど恐ろしいものかと知ったのです。

そしてIAM護身術として合氣道を教えている今、以前に中国拳法の達人の先生が「太極拳では食勁と言って、師の打撃を直接身体に受けることを行います。師の打撃を受けると、感覚が分かり打撃力が師に近づくのです」と言っていたことから、僕も弟子にときどき本の軽くお腹に打撃をするのですが、多くの弟子がその日に腹を下したと言うのですが、それは大げさに言っているのだろうと勝手に思っていました。

そして、先日、弟子のひとりの当て身の軸が非常に整ってきているの見て、「随分と良くなりましたね。じゃあ、僕のお腹に当てて見てください」と言って、打撃を直接受けたところ、かなりの衝撃が内部まで入ってきて、内臓にダメージを感じました。

最悪だったのが翌日です。38度ぐらいの熱が出、一週間後熱がおさまってからも身体が非常にだるいという体調不良が2週間も続きました。打撃をもらった日より3週間前には空手の黒帯の身長190センチ、体重100キロ以上の巨漢のパンチを鳩尾(みぞおち)にもらっても平気だったのですが、弟子の当て身は鳩尾を外して打ったにもかかわらず、打たれた瞬間、約2,3秒声がかすれ、さらには腹に思い鈍痛が残りました。

これによって合氣道の当て身というのは非常に恐ろしいと痛感しました。僕の場合、ただひたすら師匠の言われるままに稽古を行い、壁や立木や電信柱を叩き続け、何年もかかってコツと思われるものを掴んだのです。やはり継続は力といいますが、他の武道で手打ちと蔑まれる打ち方でも継続していると奇跡が起こるのです。

でも、 剛柔流空手の四段 の師匠が手打ちのような当て身を教えること自体をよくよく考えてみますとそこには訳があったのは明白ですよね。今冷静に考えるとさすが達人、凄い意味があったのですね。

奇跡が起こった理由

ここで、超運動オンチの僕が当て身を稽古をひたすら行うことで、身体が健康になり、しかも様々な武道経験者にも指導できるというようになったという奇跡が起こった理由としては次の2点だけだと思います。

①優れた師匠のいわれる通り改変することもなく稽古を行った
②ひたすら稽古を何年も続けた

①についてですが、師匠の弟子となった人は何人かいますが、当て身について言及する人がいません。というのは僕ほど当て身の稽古を行った人がいないからだと思います。

師匠が指導した当て身は見た目は他の武道の人に蔑まれるいわゆる「手打ち」ですから、こんなの稽古しても意味がないと誰もが思うのです。ところが、僕は運動オンチという劣等感から、ひたすら一人稽古ができる当て身に打ち込んだのです。このお陰で当て身のコツを体得し、今は簡単に多くの弟子たちに指導できるようになりました。

②については、師匠はあまり理由も話さないし、師匠から打撃も受けたことがありません。「僕の打撃は本の軽く小突いただけでも致命傷を負わすから、そう簡単に出せんのや」と師匠はいい、師匠の打撃を経験したことが一度もありませんでした。

ただ、私の打撃を見て、その都度指示を出すだけでしたので、多分多くの弟子の人たちは師匠の前ではいうことを聞いていても、毎日ひたすら稽古をすることが無かったのだと思います。

しかし、何年も稽古している内に、身体が安定し軸ができるのを感じ取れるようになりました。そしてこれが合氣道でいう呼吸力という特殊な力だったのです。

もともと空手もしていた師匠がこのような当て身を教えること自体を考えると、師匠もやはり合氣道開祖のいうように当て身をひたすら稽古した証でもあるのだと思います。そして一つのことをひたすら稽古する意味を伝えたかったのだと思います。

「三年かけても良師を探せ」 という中国のことわざがあるそうですが、私の当て身の例からも、次元が違う一般常識と異なる技術を学ぶときはそれを体得した師の存在は絶対に必要だと思います。地図やガイドが無くして見知らぬ山の頂上には登れないということですね

こういった点からも井口雅博師範とご縁ができたことは本当に良かったと思っています。

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メリットが多い入り身突き

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気といいたいのですが、若干調子が悪いです。実は少し前までダウンしていました。そのためしばらくブログが更新できませんでした。そのダウンの原因は強烈な合氣道の当て身を食らったことで、その翌日から熱を出して寝込んでしまったのです。

僕はかなり自分の腹の強さには自信をもっていましたが、弟子に完全に打ち破られました。 弟子のひとりの入り身突きががなり上達したので、どれぐらいのものかと思い腹で受けてみたのが間違いのもとでした。

過去の経験からどうやら脾臓を痛めたようです。以前脾臓を痛め3週間入院したことがありますが、症状が非常に似ています。

よくよく考えてみると、僕は合氣道の完成域の当て身を直接受けたことが無かったのですが、ここまで利くとは思ってもみませんでした。

今回はこの恐ろしい威力を持つ入り身突きについて述べたいと思います。

このブログでわかること

入り身突きは一見すると、相手の攻撃に合わせて入り身をして当て身を加えるという非常にシンプルな技です。ところが、これを正しく行うと非常に大きなダメージを相手に与える技になります。このブログでは、入り身突きで正しい打ち方ができるための基礎を述べ、そのポイントを明確にすることで誰でも護身術につかえるレベルの強烈な入り身突きができるように解説します。非常にメリットの大きい技術ですので、合氣道初心者から中級者の方まで是非最後までお読みいただくとよいと思います。

目次

入り身突きとは
入り身突きのやり方
入り身突きのポイント
入り身突きの稽古のメリット

入り身突きとは

入り身突きとは、当会では「相手の攻撃に合わせて相手の外側に入り、当て身を行う技術」を指します。やり方は非常にシンプルです。

①相手と畳一枚分(一間)離れて相対する
②受けが正面突きまたは正面打ちを仕掛ける
③攻撃が当たる寸前に入り身をして相手に打撃(当て身)を行う

入り身突きは近年の合氣道では殆ど使われない技術じゃないかと思います。同門でない人としては、第2代目の故・吉祥丸道主がときどき剣取りや杖取りの演武の際に行われていた技術です。同門といっても僕自身も道場で稽古したのではなく、師匠である井口師範から個人的に教わった技術です。

この技術を稽古することでさまざまなメリットがあります。詳細については後半で述べています。

入り身突きのやり方

以下では一人稽古でできる入り身突きのやり方を説明します。

①半身の構えで構える
②前側の足をセンターラインより外に移動し、統一体を作る
③身体を安定させたまま後ろ側の足を外にまわし、当て身。

  足運びの図

入り身突きのポイント

入り身突きに関していえば、先ず一人稽古を徹底的に行うと良いでしょう。そして入り身突きのポイントが把握できた時点で二人稽古を行うと良いと思います。

【一人稽古】
入り身突きの一人稽古では3つのポイントに留意して稽古する必要があります。やり方は前節で説明した通りですが、単にその動作を繰り返すだけでは大抵は悪い形が身について終わるだけです。そこで3つのポイントを説明します。

一つ目のポイントというのは、前節で説明した一人で行う形をやる際に、統一体を養成するという意図を持つことです。動きを覚えるのではなく統一体というきっちりと軸を意識した強固な姿勢を作るという意思をしっかりと持つ必要があります。

二つ目のポイントとは、移動する第一歩が重要です。その一歩から丁寧に統一体を作る意思で踏み出す必要があり、踏み出し終わりでは確かな軸(左が前なら、3つの軸の内の左軸)を作ります。

3つ目のポイントはその軸を保ちながら、後ろ側の足を引き、相手のセンターラインの軸に対して最も強い力が出せる角度で体の位置を決め、確実な統一体を作ることです。この3つもポイントを意識し、統一体が出来て初めて当て身を行います。

【二人稽古】
確実に入り身突きができるようになったら、次は二人稽古に入ります。二人稽古の際は、特に重要なのは受けに回る方、要するに最初に攻撃する人の意識が非常に大切です。

合氣道は、本来の相手との距離は一間(畳の縦一畳分)です。この距離は攻撃する人からするとかなり離れているように思いますが、実はこの距離はかなり実用的に設定された距離なのです。

運動生理学によると、人間の反応に要する時間というのはおよそ0.5秒と言われています。一般の成人男性が静止状態からスタートした際に0.5秒で到達できる距離が2mです。昔の人間であれば、その身長を考えると畳一枚分と考えられるわけです。

しかし多くの格闘技ではもっと狭い距離感で戦いますので、疑問に思った人もいるでしょうが、そもそも現代の格闘技というのはルールに則って行うものです。そして相手の戦う方法もわかっています。しかし、本来の武道というのは、各流派、各門派でそれぞれ秘伝があり、闘いになったとき相手がどのような戦闘法で来るか分からないというところからスタートです。ですから不用意に敵に近づくようなことはできないわけです。

こういった点は合氣道にも残っていて、護身を考える上でも相手との距離を意識することは非常に大切で、相手が2m以内に入った時点では、武道的には常に先を取っておく必要があり、師匠である井口師範は「相手が迫ったら、氣の流れを途切らせれず、常に相手より先を動いている必要がある」と言っていました。

話はそれましたが、二人稽古ですが、受けの人は距離感をしっかり守った上で、しっかりと取りの人に当たるように攻撃を仕掛ける必要があります。しかも、気をしっかりと出して打ち出す必要があります。

その上で、取りは相手の氣の変化をとらえ、入り身をして、当て身を行います。ただし、統一体を作った当て身を実際に当てると肋骨が折れるだけではすまないので、当たる手前で止める必要があります。いわゆる寸止めというものです。

入り身突きの稽古のメリット

入り身突きを稽古することには多大なメリットがあります。まずは一人稽古ができることです。そしてペアでの稽古においても様々なメリットもありますので、併用して稽古を行うことをお奨めします。それぞれの稽古におけるメリットは次の通りです。

【一人稽古でのメリット】
①入り身突きでは合氣道の稽古が一人でできる
②工夫次第でさまざまな統一体の稽古ができる
③呼吸力を発揮するための統一体の稽古となる
④どのような態勢で呼吸力が発揮できるかがわかる

①については説明の必要はないでしょう。②についてですが、単に形として稽古するだけでなく、例えば入り身突きで当て身を入れる際の統一体をより完成度を上げるために、例えば、当て身を入れる手前の統一体と同じ体の形を作って壁を叩いたり、押したりする稽古など非常に有効な稽古となります。③と④というのは非常に近いものですが、投げなどでも統一体は非常に大切ですが、入り身突きで瞬間に統一体を作る稽古をしていると、投げの際にもこの経験が活きてきます。

【二人稽古でのメリット】
①合氣道に必要な距離感が身につく
②相手の気を読む稽古ができる
③物理的な攻撃のタイミングが理解できる
④攻撃ラインを外す技術(さばき)が身につく
⑤ 合氣道の各種技で呼吸力を発揮するタイミングがわかる

①の距離感については既に述べた通りで、必ず相手と相対するときは畳一枚分で行うことです。②についても受けが打つという気をはっきりと出して行うことで相手の気を読む稽古となります。③については、相手とのタイミングのやり取りが身につきます。④については何度も繰り返すことで、小さな動きで躱す技術が身につきます。⑤は相手が攻めるくるという状況で、相手の力の発揮するポイントをずらして技をかけるのが本来の合氣道の技ですので、タイミングを読む稽古により投げ技などで活かされるようになります。

  ◆   ◆   ◆

日本の多くの道場ではあまり当て身のやり方を説明しないと聞いています。道場によれば師範が「人を傷つける当て身のような危険な技は教えていないし、教えるつもりもない」と言って、基本の正面打ち、横面打ち、正面突きのやり方も指導することなく、見よう見真似でやるようにいわれます。

しかし、例えば毒蛇の毒に対しては毒を研究する必要があるように、こういった攻撃技も正しいやり方を学び、その特性を知っておく必要があると僕は考えます。

空手や中国拳法を学んだ経験から申しますと、空手、拳法、ボクシングなどの連打の経験がないと、次の攻撃すら気にしないような技の掛け方をしてしまいます。これは僕だけではなく多くの合氣道修行者が陥る問題ではないかと思います。

このような思いをもっておられる合氣道修行者も少なからずいると思います。そんな方は今回の記事を読んでいただいて、ひそかに一人稽古をされると良いと思います。一年も続けているときっと技に大きな変化がでてくるでしょう。

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