天の氣、地の氣、水火の氣

皆さん、こんにちは!
お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

皆さんは、「氣」って分かりますか? 

アニメやマンガでは誇張され過ぎた「氣」を表現されていて、武道界でも多くの誤解があるように思います。

実は「氣」の概念は多くの分野に広がっていて、様々な「氣」の形態があります。東洋医学ですら同じ視点にたった氣でも数種類もあり、別の視点も存在します。これは、単に「氣」と言った場合は抽象度が非常に高い言葉であり、様々な分野で「氣」が用いられますが、それぞれにおいて異なる「氣」と考えた方が武道では役に立ちます。

そこで、今回は当会指導している呼吸力で用いる「氣」というものに限定してお話ししたいと思います。

1. 師の教えと、私の無謀な失敗

井口合氣道において「呼吸力」とは、天地に充満する氣で相手と繋がり、大自然のエネルギーを自らの力に変えることを指します。

私の師・井口雅博師範は、「この氣を武道に利用するには、それを受け入れる強靭な身体が必要だ」と説かれ、そのための修行として「硬いものを打つ当て身の稽古」を重視されていました。

若かった私は、その言葉の真意を理解せぬまま、毎日コンクリートの壁を掌底で叩き続けました。しかし、待っていたのは達人の境地ではなく、身体の崩壊でした。脾臓が腫れ上がり、40度近い高熱。2週間の入院生活を余儀なくされたのです。

今なら分かります。当時の私は、「氣の使い方(身体の構造)」を知らぬまま、ただ物理的な衝撃を自分の内臓へ溜め込んでいたのです。

2. 「ドラゴンボール」の幻想を捨てる

当時、私は「氣」を宇宙から降ってくる神秘的な高次元エネルギーか、あるいはアニメ『ドラゴンボール』のような未知の異次元パワーだと勘違いしていました。

井口師範は天才的な感覚の持ち主で、氣を自在に操ります。しかし、そのプロセスを言葉で説明されることはありませんでした。そのため、私は勝手な解釈を加え、力任せに壁と衝突していたのです。

入院という絶望の中で、私は「天の鳥船(あめのとりふね)の行」を徹底的に見直し、ついに一つの真実に辿り着きました。合氣道で扱う氣とは、東洋医学でいう「健康のための氣(営気や衛気)」とは全く別物である、ということです。

3. 武道独自のエネルギー変換理論「天地水火の氣」

私が発見したのは、「骨を整えることで大地の力を物理的に変換する」という技術体系でした。

  • 地の氣: 東洋医学のような「食事から得る氣」ではなく、足裏から直接取り込む「地球の反作用(鉛直上方への力)」
  • 天の氣: 重力のように、上から下へ(鉛直下方)と働かせる力。
  • 水火(すいか)の氣: 地から突き上げた力を、身体という構造体を通じて「水平方向」へ変換した力。

垂直の力を水平に変える——。この変換こそが合氣道の呼吸力の威力の正体です。私はこれを、左手なら「火の氣」右手なら「水の氣」と定義しました。

4. 身体を「エネルギーの通り道」に変える

この「水火の氣」を使い、地面と身体が正しく繋がった状態で当て身を行うと、驚くべきことが起こります。

打撃の瞬間に発生する凄まじい反動エネルギーは、自分の身体に蓄積されることなく、骨格を通じてそのまま「地」へと逃げていきます。つまり、身体が衝撃を吸収するのではなく、地面へと受け流す「パイプ」になるのです。

この感覚を掴んで初めて、古くから伝わる行法の意味が解けました。

  • 「船漕ぎ運動」は、地の氣を水火の氣に変え、水平に伝える感覚を養うためのもの。
  • 「振魂(ふりたま)」は、天地の氣を身体に通す感覚を養うためのもの。

これらは決して精神的な儀式ではなく、極めて科学的なトレーニングだったのです。

5. 抽象度を下げ、凡人が達人へ至る道

武道の達人や禅の高僧は、よく「すべては一つである」と語ります。しかし、その言葉はあまりに抽象度が高く、我々凡人には掴みどころがありません。

天才ではない私たちがその高みへ昇るには、「抽象度を下げて理解する」というプロセスが不可欠です。「天地水火」という具体的な物理現象として氣を捉え、低い段階から一つずつ身に付けていく。

「氣」を魔法の霧のようなものから、「骨格によるエネルギー変換技術」へと落とし込むこと。これこそが、コンクリートの壁と入院生活が私に教えてくれた、真の修行の入り口でした。

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合氣道の技を高める「氣」の捉え方 〜物理現象と骨の技術〜

僕の師である井口雅博師範は、常に「合氣道は自然の理(ことわり)を体現するもの」と説かれていました。

自然の理とは、僕たちが生きるこの世界の物理法則そのものです。したがって、合氣道の修行者は、物理現象と密接に関係している「氣」の特性を正しく理解し、活用できなければなりません。

今回は、合氣道の技を一段上のレベルへ引き上げるための、物理と氣の関係性についてお話しします。

1. 氣は「超能力」ではなく「自然のエネルギー」

日本では古来より、この世界は「目に見える世界(現世:うつしよ)」と「目に見えない世界」が表裏一体となって成り立っていると考えられてきました。氣とは、その「目に見えない世界」から現世を動かしているエネルギーを指します。

「氣」と聞くと、空中浮遊や壁抜けのような超常現象をイメージする方もいるかもしれません。しかし現実は、僕たちは物理法則に縛られた世界に生きています。武道において大切なのは、空想の魔法を追い求めることではなく、物理現象と氣の関わりを深く理解し、それを技に利用することなのです。

2. 「骨の技術」が氣の通り道を作る

身体を支えているのは骨ですが、実は「骨をどう使うか」に氣の流れが大きく関わっています

骨格を最も効率的なポジションに配置できたとき、氣は最大化して流れます。つまり、正しい姿勢やポジションの確保こそが、氣を通すための絶対条件なのです。当会ではこれを「骨の技術」と呼び、稽古の根幹として最も重視しています。

自立した「中心軸」を立てる

初心者が陥りやすい失敗の一つに、技の際、無意識に相手に寄りかかってしまう(支えを求めてしまう)ことがあります。 この寄りかかられた感覚は相手にとって次の動作を知る手がかりとなり、抵抗される原因となります。合氣道において相手との「氣の結び」は不可欠ですが、自分のバランスまで相手に依存してはいけません。まずは自分の軸を相手から独立して立てること。この軸が確立されて初めて、天地から流れる氣を実感できるようになります。

他人の意見や期待に振り回されることなく、自分の考えや感情を大切にすることで、健全な人間関係を築くことを自分軸を立てると言われますが、人間関係のような心理的な関係だけでなく、武道においても自立した中心軸を持つことが非常に大切であり、相手に寄りかかることは如何に危険であるかが、人間関係のような心理的な関係からもわかると思います。

「折れない腕」と「当て身」の重要性

次に重要なのがポジションです。心身統一合氣道の創始者・藤平光一師範が提唱された「折れない腕」は、あらゆる合氣道の技の場面で必要になります。よく合氣道家がこの折れない腕 を氣を流すとどれだけ強いかというパフォーマンスを実演するためにつかいますが、実は、これは単なるパフォーマンスだけでは、この感覚こそが非常に重要なのです。

これは、どのような態勢や身体のポジションで氣がながれるかを示す一つの形です。まずは折れない腕の感覚を習得して、そこから合氣道の形稽古の中にどう入れるかが最も大切なのです。

実は、この感覚を習得するための近道は、実は現在では省略されがちな「合氣道独自の当て身」の稽古にあります。正しい位置(ポジション)を知り、軸を意識することで、初めて自然の理にかなった技が生まれるのです。

3. 「氣の流れ」はコントロールされた運動エネルギー

物理学の世界では、物体の動きを「運動エネルギー」と呼びます。合氣道における「氣の流れ」とは、この運動エネルギーを完全にコントロールし、意図した方向へ流していくことを指します。見えない世界で起こった氣の流れがこの物理世界に具現したエネルギーが運動エネルギーです。

「意識(意)」によってエネルギーを丹田から腕を通して相手へと通していく。この氣の流れで大切なのは「折れない腕」です。「折れない腕」は、ホースでいうと出口に相当します。ホースの出口をしっかり絞ると水は遠くに飛びますが、同様にしっかりと折れない腕ができれば、そこに氣の流れに加わることで、技は圧倒的な効果を発揮します。

まとめ:なぜ合氣道に「氣」が必要なのか

合氣道において氣を扱う最大のメリットは、以下の2点に集約されます。

  • 相手に動きを読ませない(筋力による予備動作を消す)
  • 単なる腕力を超えた威力を生む

氣を物理的な身体操作と融合させることで、合氣道は真の「武道」としての完成度を高めていきます。まずは自分の「軸」を意識することから、日々の稽古を深めていきましょう。


【ピックアップ】

なぜ「当て身」の稽古が重要なのか?

合氣道では、現在あまり当て身(打撃)を稽古しない道場も増えていますが、当会では「折れない腕」と「ポジション」を習得する最短ルートとして重視しています。

筋力を使ったパンチと合氣道の当て身は、根本的なメカニズムが異なります。これはフォームは異なりますが中国武術の寸勁のやり方に似ています。ただし、合氣道の当て身は相手を破壊するのが目的ではなく、統一体(身体のもっとも整った状態)を一瞬でつくるために稽古を行うのが目的で、合氣道では唯一ひとり稽古ができる稽古方法ですので、中国武術のように一撃で人を殺傷できる威力は求めません。

① 筋力(能動筋)で打つパンチの特徴

一般的な筋肉を使ったパンチは、見た目は非常に力強い印象を与えます。筋肉を縮めて加速させる「能動筋」を主導に使います。この打ち方では、衝撃力を上げるためには当たった瞬間に自分の体が相手に寄りかかる(相手に支えてもらう)形にする必要があり、打撃を躱され空振りをすると身体のバランスを崩す恐れがあります。

② 合氣道の当て身(受動筋と骨の活用)の特徴

一方、合氣道の当て身は、見た目はボクシングの最も良くないパンチとされる「手打ち」と違いがなく、威力もないように見えますが、見た目以上に威力があります。やり方は当たる瞬間に「折れない腕」の形が完成し、腕全体が一つの物体として、 撞木(しゅもく)(鐘をつく木のこと)で釣鐘を突くように打撃を行います。

  • 地面との連結: 筋肉を力ませるのではなく、骨格を整えることで「受動筋(姿勢を維持する筋肉)」が働き、当たった瞬間の衝撃が自分の足元を通り、一瞬で地面まで突き抜けます。
  • 地面が自分を支える: つまり、相手に打撃が当たった瞬間から、自分の体は相手ではなく「地面」によって支えられている状態です。要するに地面からの反作用を利用しています。

以上の理由から、例え、当て身を躱されても身体は崩れず、次の技に移行しやすくなります。

③ 「衝撃の長さ」が重さを生む

物理学的に見ると、筋肉で弾くようなパンチよりも、一瞬の衝撃力(最大値)自体は小さいかもしれません。しかし、地面と連結した当て身は、「相手に衝撃が伝わっている時間」が格段に長いという特徴があります。

  • パンチ: 「バン!」と大きな音を立て弾くような衝撃。
  • 当て身: 「ドォォォン」と、相手の芯まで突き抜けるような重い衝撃。

この「衝撃時間の長さ」によって、相手に与える破壊のエネルギーが大きくなり、筋力で行うパンチより数倍も重い打撃が実現します。この体の使い方を覚えると、相手の予想を裏切る為、相手は姿勢を崩され、簡単に技が掛けられることになります。

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