第4番目の技術(空間感覚)の応用

最近、空間感覚の技術の応用の稽古ばかりやっています。
空間感覚の技術というのは、当会では第4番目の技術で、第3番目の皮膚感覚の技術の上位技術となっています。この第4番目の技術は、第2番目の皮膚の技術を基本とする技でも効果がでます。

映像は、皮膚の技術でできる座り技呼吸法ですが、これに空間感覚の技術を入れると、もっと力が不要になります。

合気道の秘伝の同時使用

当会に伝わる井口師範の合気道の秘伝は、当会では次の4つに分類して指導しています。
①骨の技術(物理学的な技術群)
②皮膚の技術(生理学的な反応を利用する技術群)
③皮膚感覚の技術(①と②を同時にしようした技術群)
④空間感覚の技術(心理学的なトリックを利用した技術群)

今までは、それぞれ個別に指導しておりましたが、実際使用するのを想定した場合①~④を組み合わせて行います。この組み合わせをお弟子さんたちに説明するのはかなり難しいと思っていましたが、杖(じょう)の稽古を導入してから、お弟子さんたちの感覚が敏感になり、上記の技術を同時に組み合わせて用いても使えるようになっているようです。

しかも、まだ稽古3ヶ月の初心者の方も、十分ついてこられています。初心者の人の才能も関係があるのかもしれませんが、これは杖(じょう)の稽古によるところが多いものと思われます。合気道にとって杖の稽古は非常に効果が高いので、ブログを読まれている合気道修行者の方も杖を稽古することをお薦めします。

ただし、神道夢想流を稽古されている合気道修行者の方が多いとききますが、神道夢想流は一度しか経験していないので一概にいえませんが、神道夢想流では、このような感覚が身につくかどうか私は疑問に思っています。

今回は、下の映像のような秘伝混合の稽古を行いましたが、映像を見てもわかるとおり、秘伝の同時使用をいきなり求めても、皆さん十分付いてこられているようです。ただ、映像を見て秘伝を見て取れる方以外は、映像を見ただけで再現はかなり難しいと思います。

合気道の幹を育てる

「何事も中心が大事、中心を見失ってはいけない。中心と言うのは、合気道を木で例えれば、幹にあたるもの。幹を育て、大木とならないといけない。枝葉を見て木と思ってはいけない。枝葉とは、片手取り小手返しとか、それぞれの技のこと。落ち葉や落ち枝をいくら集めても木にはならない。根をしっかり張って、大きな幹を育てることこそ肝心」

この前、お弟子さんたちを指導をしていて、井口師範がおっしゃった言葉を思い出しました。

ところで、一般の道場の稽古では、この“中心”すなわち“幹を育てること”を稽古をするのはとても難しいと思います。それは、井口師範が指導されていた稽古でも同じです。

と、言うのは、道場の稽古は、師範の演武を見取り、個々の技を弟子たちが互いに繰り返し稽古を行います。このとき、お互いに技をやりあうのが、“中心”が何であるが理解できていないもの同士であるというのが大きな問題なのです。これでは“中心”となる技術が習得できません。

その点、私はとても幸運でした。私は井口師範の送迎をしていて、お送りする際に、見つけた空き地や閉店したスーパーの駐車場で、井口師範に直々にご指導を受ける機会を持つことができたからです。

このことは非常に大切なことでした。技の勘所が、直々に教えていただけたことで、何が“中心”であるかを理解できました。そして、この“中心”こそが、当会で教えている技術であり、井口師範が言われている秘伝です。

この秘伝は、井口師範より口で伝えるというより、感覚で伝えていただきました。ところが、このように折角師匠が自ら感覚を伝えて頂いても、私のような才能のない人間にとっては、師匠の秘伝は分かりづらく習得するのにかなり時間がかかりました。

ですから、私は当会の会員には出来る限り直接手を取って、この感覚を伝え、常に状態のチェックをするようにするとともに、秘伝を理論的に説明し頭でも理解していただけるようにしています。

それで、会員の方々の“幹(中心)”の成長速度は、私と比べると十倍~数十倍の早さに達しています。女性会員の一年と比較しても、私の合気道歴十年のときではできなかったことを簡単にやってのけていましたので……。

また、この合気道の“幹”は、他の武術でも“幹”になります。先日、東京からこられた空手暦40年の師範も、当会の秘伝を、空手の“幹”として育てつつあるのは、前回のブログで書きました。

合気道を中心に修行してきた私としては、どちらかといえば、空手家の方や中国拳法家の方よりも、できれば合気道修行者に、幹を育てて行っていただきたいと思っています。

でも、現状は、幹を育てようとしない合気道家より、この幹を育てたいと考える他の武道家を応援したいとも思っているのも事実です。

東京からの来客

東京の空手の師範の方が来られました。今回で2回目です。前回は半年以上前の11月の中旬でした。その際に教授した秘伝の内、特に骨の技術を自宅に砂袋を買って徹底的に研鑽され、こちらに今回こられました。

そこで、研鑽の結果を確かめるということで、私はミットを構え、パンチを受けてみました。身体をある程度低くし、衝撃に備えて受けたのですが、予想以上に強く、思わず後方に押されてしまい、たまたま後ろに立てかけてあった杖(じょう)で足を挫いてしまいたした。

これを受けて初めて、この空手の師範の方のどれだけ熱心に研鑽されたか伺い知ることができました。そのことをこの方にお話ししますと、「何十年も空手の稽古をしてきましたが、最高のパワーがだせたのが若いころでした。しかし、ここ最近になって、パンチの質が変ってきたのを自覚しています。効かせどころがわかり、様々なタイミングでパンチが打ち出せるようになってきました。その結果動き全てに余裕がでてきました。すべて秘伝を教わったお蔭です」
とおっしゃれました。

よくよく話しを伺うと、骨の技術の第一式を徹底的に稽古されたとのことです。コツコツと一意専心頑張られたのでしょう。それで私の予想をはるかに上回る威力を持っていたのです。

次に、骨の技術の第二式をやっていただきました。タイミングが少し違っていました。第二式はタイミングが非常に大切ですので、少し訂正させていただきましたが、すぐにできるようになりました。もし第二式の稽古も徹底的に稽古していたら、その癖を訂正するのにかなり時間が掛かったでしょう。不安があった技術を自己流に行わず、第一式のみに専心したのが正解だったようです。

さらに、骨の技術奥伝の第一式と第二式を混合した技術も教授しました。第一式の稽古を徹底的にし完成していたのが功を奏して、驚くほどすぐに使えるようになりました。この技術は、第一式よりもさらに効果が高くなるのですが、新しい秘伝が必要で、中心軸とは別の軸を使った技術となり、この習得には一式の習熟具合の高さが必要になります。

ここまでは骨の技術の問題ですが、骨の技術だけでは、武器を持った相手や、2人以上の相手はできません。これにはどうしても空間感覚の技術が必要になりますが、実は、この2人以上の相手をする場合の空間感覚の技術には、どうしても皮膚感覚の技術で使われる感覚が必要です。

皮膚感覚の技術の伝授のため、少し杖(じょう)の稽古を行いました。杖の稽古で、皮膚感覚のフィーリングを掴んでいただいたので、空間感覚の技術の勝速日の秘伝を教授いたしました。

さすがに空手の師範、皮膚感覚、空間感覚の秘伝の本質を理解されたようで、次回にお会いするときに楽しみです。

合気道に用いる「呼吸」という言葉

合気道には、呼吸力、呼吸法、呼吸技、呼吸投げなどのように「呼吸」とついた言葉がでてきますが、「呼吸」がついているので、どのように息を吸って、どのように息を吐くかということに意識が囚われている人がたまにいるようです。

確かに、世間一般に、呼吸というと、酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出す動作のことを意味します。そこで、技をかけるときは、「ハーっと吐け」と指導する人もいる様ですが、これは誤った認識です。

合気道における「呼吸」というのは、昔の人が使ってきた「息(いき)」という意味と解釈しないといけません。今でも武道や芸道では、「息」ということばが使われるときは、「芸道や武道の深い要領」のことを意味します。特に武道や武術の場合、言い換えると「極意」をさしているのです。ですから、合気道でいう「呼吸」というのは、この「息」の意味、要するに「極意」という意味で使われている訳です。

呼吸力というのは、極意を体得した特別な力ということになります。要するに、体全体が協調して出る統一力といった方がいいかもしれません。ただし、井口師範の言われる呼吸力とは、統一した力がでるようになった人が、さらにその力を限界まで鍛え上げた特別な力をさしていましたが、一般の合気道では、それは呼吸力の差を生み出しているもので、単に呼吸力は統一された力だと考えた方がいいと思います。

さらに、技や法となると、その呼吸力の上に、術理に則る必要がでてきます。そしてその術理も極意の一つですから、これも「息」すなわち「呼吸」を意味するものです。いくら呼吸力が強くても、術理を破るやり方ですと、当然「呼吸」とはいえないですし、法や技とは言えませんし、そういう力ですと相手を破壊しかねません。それでは、平和の精神に基づいた合気道精神からも逸脱します。

ですから、呼吸法といっても、息の吸い方と吐き方ではないのです。座り技呼吸法で、息を腹式呼吸でハーっと吐きながらやっても、効かないものは効きません。「まだ呼吸が浅いから」というわけではないのです。統一力である呼吸力と術理の二本柱がちゃんとできているかどうかが効く決め手となるのです。

たまに、道場などで、合気道の何年も先輩になる人が初心者相手に、さも知っているように息を吐いて技をかけるように言うことがあるようですが、それは、多分、中国拳法の本でも見て、息を吐きながら行う発勁という動作を意識しているのだと思います。

しかし、合気道と中国拳法では学び方が違います。根本的な違いは、合気道における拳や足による当て身は、補助的な役割しか持っていませんが、一方、中国拳法では、拳や足での当て身は破壊を目的にしたものであるということです。ですから、中国拳法には手足による破壊ための独自の気の理論があり、その上での腹式呼吸(爆発呼吸)を行っているのですから、「息を吐くと強い」というものではありません。

ですから合気道修行者はその当たりをよく理解して、心身の統一と術理の二本柱にした合気道の技の研鑽を行っていただきたいと思います。