皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気といいたいのですが、若干調子が悪いです。実は少し前までダウンしていました。そのためしばらくブログが更新できませんでした。そのダウンの原因は強烈な合氣道の当て身を食らったことで、その翌日から熱を出して寝込んでしまったのです。
僕はかなり自分の腹の強さには自信をもっていましたが、弟子に完全に打ち破られました。 弟子のひとりの入り身突きががなり上達したので、どれぐらいのものかと思い腹で受けてみたのが間違いのもとでした。
過去の経験からどうやら脾臓を痛めたようです。以前脾臓を痛め3週間入院したことがありますが、症状が非常に似ています。
よくよく考えてみると、僕は合氣道の完成域の当て身を直接受けたことが無かったのですが、ここまで利くとは思ってもみませんでした。
今回はこの恐ろしい威力を持つ入り身突きについて述べたいと思います。
このブログでわかること
入り身突きは一見すると、相手の攻撃に合わせて入り身をして当て身を加えるという非常にシンプルな技です。ところが、これを正しく行うと非常に大きなダメージを相手に与える技になります。このブログでは、入り身突きで正しい打ち方ができるための基礎を述べ、そのポイントを明確にすることで誰でも護身術につかえるレベルの強烈な入り身突きができるように解説します。非常にメリットの大きい技術ですので、合氣道初心者から中級者の方まで是非最後までお読みいただくとよいと思います。
目次
・入り身突きとは
・入り身突きのやり方
・入り身突きのポイント
・入り身突きの稽古のメリット
入り身突きとは
入り身突きとは、当会では「相手の攻撃に合わせて相手の外側に入り、当て身を行う技術」を指します。やり方は非常にシンプルです。
①相手と畳一枚分(一間)離れて相対する
②受けが正面突きまたは正面打ちを仕掛ける
③攻撃が当たる寸前に入り身をして相手に打撃(当て身)を行う
入り身突きは近年の合氣道では殆ど使われない技術じゃないかと思います。同門でない人としては、第2代目の故・吉祥丸道主がときどき剣取りや杖取りの演武の際に行われていた技術です。同門といっても僕自身も道場で稽古したのではなく、師匠である井口師範から個人的に教わった技術です。
この技術を稽古することでさまざまなメリットがあります。詳細については後半で述べています。
入り身突きのやり方
以下では一人稽古でできる入り身突きのやり方を説明します。
①半身の構えで構える
②前側の足をセンターラインより外に移動し、統一体を作る
③身体を安定させたまま後ろ側の足を外にまわし、当て身。
入り身突きのポイント
入り身突きに関していえば、先ず一人稽古を徹底的に行うと良いでしょう。そして入り身突きのポイントが把握できた時点で二人稽古を行うと良いと思います。
【一人稽古】
入り身突きの一人稽古では3つのポイントに留意して稽古する必要があります。やり方は前節で説明した通りですが、単にその動作を繰り返すだけでは大抵は悪い形が身について終わるだけです。そこで3つのポイントを説明します。
一つ目のポイントというのは、前節で説明した一人で行う形をやる際に、統一体を養成するという意図を持つことです。動きを覚えるのではなく統一体というきっちりと軸を意識した強固な姿勢を作るという意思をしっかりと持つ必要があります。
二つ目のポイントとは、移動する第一歩が重要です。その一歩から丁寧に統一体を作る意思で踏み出す必要があり、踏み出し終わりでは確かな軸(左が前なら、3つの軸の内の左軸)を作ります。
3つ目のポイントはその軸を保ちながら、後ろ側の足を引き、相手のセンターラインの軸に対して最も強い力が出せる角度で体の位置を決め、確実な統一体を作ることです。この3つもポイントを意識し、統一体が出来て初めて当て身を行います。
【二人稽古】
確実に入り身突きができるようになったら、次は二人稽古に入ります。二人稽古の際は、特に重要なのは受けに回る方、要するに最初に攻撃する人の意識が非常に大切です。
合氣道は、本来の相手との距離は一間(畳の縦一畳分)です。この距離は攻撃する人からするとかなり離れているように思いますが、実はこの距離はかなり実用的に設定された距離なのです。
運動生理学によると、人間の反応に要する時間というのはおよそ0.5秒と言われています。一般の成人男性が静止状態からスタートした際に0.5秒で到達できる距離が2mです。昔の人間であれば、その身長を考えると畳一枚分と考えられるわけです。
しかし多くの格闘技ではもっと狭い距離感で戦いますので、疑問に思った人もいるでしょうが、そもそも現代の格闘技というのはルールに則って行うものです。そして相手の戦う方法もわかっています。しかし、本来の武道というのは、各流派、各門派でそれぞれ秘伝があり、闘いになったとき相手がどのような戦闘法で来るか分からないというところからスタートです。ですから不用意に敵に近づくようなことはできないわけです。
こういった点は合氣道にも残っていて、護身を考える上でも相手との距離を意識することは非常に大切で、相手が2m以内に入った時点では、武道的には常に先を取っておく必要があり、師匠である井口師範は「相手が迫ったら、氣の流れを途切らせれず、常に相手より先を動いている必要がある」と言っていました。
話はそれましたが、二人稽古ですが、受けの人は距離感をしっかり守った上で、しっかりと取りの人に当たるように攻撃を仕掛ける必要があります。しかも、気をしっかりと出して打ち出す必要があります。
その上で、取りは相手の氣の変化をとらえ、入り身をして、当て身を行います。ただし、統一体を作った当て身を実際に当てると肋骨が折れるだけではすまないので、当たる手前で止める必要があります。いわゆる寸止めというものです。
入り身突きの稽古のメリット
入り身突きを稽古することには多大なメリットがあります。まずは一人稽古ができることです。そしてペアでの稽古においても様々なメリットもありますので、併用して稽古を行うことをお奨めします。それぞれの稽古におけるメリットは次の通りです。
【一人稽古でのメリット】
①入り身突きでは合氣道の稽古が一人でできる
②工夫次第でさまざまな統一体の稽古ができる
③呼吸力を発揮するための統一体の稽古となる
④どのような態勢で呼吸力が発揮できるかがわかる
①については説明の必要はないでしょう。②についてですが、単に形として稽古するだけでなく、例えば入り身突きで当て身を入れる際の統一体をより完成度を上げるために、例えば、当て身を入れる手前の統一体と同じ体の形を作って壁を叩いたり、押したりする稽古など非常に有効な稽古となります。③と④というのは非常に近いものですが、投げなどでも統一体は非常に大切ですが、入り身突きで瞬間に統一体を作る稽古をしていると、投げの際にもこの経験が活きてきます。
【二人稽古でのメリット】
①合氣道に必要な距離感が身につく
②相手の気を読む稽古ができる
③物理的な攻撃のタイミングが理解できる
④攻撃ラインを外す技術(さばき)が身につく
⑤ 合氣道の各種技で呼吸力を発揮するタイミングがわかる
①の距離感については既に述べた通りで、必ず相手と相対するときは畳一枚分で行うことです。②についても受けが打つという気をはっきりと出して行うことで相手の気を読む稽古となります。③については、相手とのタイミングのやり取りが身につきます。④については何度も繰り返すことで、小さな動きで躱す技術が身につきます。⑤は相手が攻めるくるという状況で、相手の力の発揮するポイントをずらして技をかけるのが本来の合氣道の技ですので、タイミングを読む稽古により投げ技などで活かされるようになります。
◆ ◆ ◆
日本の多くの道場ではあまり当て身のやり方を説明しないと聞いています。道場によれば師範が「人を傷つける当て身のような危険な技は教えていないし、教えるつもりもない」と言って、基本の正面打ち、横面打ち、正面突きのやり方も指導することなく、見よう見真似でやるようにいわれます。
しかし、例えば毒蛇の毒に対しては毒を研究する必要があるように、こういった攻撃技も正しいやり方を学び、その特性を知っておく必要があると僕は考えます。
空手や中国拳法を学んだ経験から申しますと、空手、拳法、ボクシングなどの連打の経験がないと、次の攻撃すら気にしないような技の掛け方をしてしまいます。これは僕だけではなく多くの合氣道修行者が陥る問題ではないかと思います。
このような思いをもっておられる合氣道修行者も少なからずいると思います。そんな方は今回の記事を読んでいただいて、ひそかに一人稽古をされると良いと思います。一年も続けているときっと技に大きな変化がでてくるでしょう。
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