皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です!
前回の記事を読まれた方は、もうすでに、氣の流れと呼吸力の違いが理解できたと思います。合氣道の誤解は開祖・植芝盛平翁先生が用いた呼吸力と氣の流れを同じものだと誤解して全国に伝わったところにあります。井口師範から受けた呼吸力は「やっている方はそれほど力感がないのに、どうしても敵わないと思わせる絶対的な力」でした。
これがわかると、盛平翁先生は立ち木を呼吸力で抜いたといわれますが、なるほどと理解できるでしょう。
そうすると
「強い呼吸力が欲しい!」
合氣道を志す方なら、誰もがそう願うはずです。私も初心者の頃、井口師範から受ける「まるで巨大な機械に巻き込まれるような圧倒的な力」に驚愕し、どうにかしてあの力を手に入れようと試行錯誤しました。
その過程で私が手を出したのが、バーベルを用いた筋力トレーニングでした。しかし、そこには武道の質を根本から損なう巨大な落とし穴が潜んでいたのです。
今回は、師範からの一喝をきっかけに私が気づいた、合氣道の呼吸力を生み出すための「正しい筋肉の使い方」を解説します。
「意識の集中」が氣の流れを止める
かつて井口師範から「バーベルなど持ち上げているのか?」と動きの硬さを指摘されたとき、その本質は**「氣の流れ(連動)の断絶」**にありました。
筋トレの鉄則は「鍛えたい部位に意識を集中させること」です。しかし、武道の動きはその真逆。歩く動作一つとっても、私たちは一々「どの筋肉を動かそう」とは考えません。手足から全身が勝手に協調し、効率的に連動するのが自然な姿です。
この「体内でのスムーズな連動の感覚」こそが、合氣道における「氣の流れ」の正体です。 部分への集中は、この全体的な連動をバラバラに破壊してしまうのです。
能動筋:氣の流れを塞ぐ「壁」
能動筋とは、脳の指令で「自ら縮もうとする」筋肉のことです。
- 役割: 力を入れ、重いものを持ち上げるための「エンジン」。
- 武道的な弊害: 筋肉が収縮すると関節が固定されます。さらに「この筋肉を使おう」と意識が一点に集まると、そこで氣が切断されます。呼吸力に不可欠な「接点から大地への繋がり」が寸断され、筋肉がエネルギーを遮断する**「壁」**になってしまうのです。
これがいわゆる「力み(りきみ)」の正体です。
受動筋(構造):大地の力を伝える「パイプ」
一方、合氣道の呼吸力を支えるのは「受動筋(じゅどうきん)」です。
- 役割: 自ら動くのではなく、重力や相手の圧力に対して「骨格を維持する」ために働く筋肉。
- 武道的なメリット: 筋肉が縮むのではなく「しなやかに張る」ため、身体が一本の強固な芯となります。これにより、大地の反力をロスなく相手に伝える「パイプ」の役割を果たします。
第1章でお伝えした「最適な骨の位置」を支え、大地と自分を一体化させてくれるのが、この受動筋なのです。
師範の教え:「岩」を運ぶ感覚
井口師範はこう仰いました。 「身体を鍛えるなら、せめて持ちにくい自然の大きな岩を持ち上げて鍛えなさい」
バーベルのように整った道具は、特定の筋肉(能動筋)だけを追い込むことができてしまいます。しかし、歪な形の岩を運ぶには、全身の筋肉が複雑に「協調」し、受動的に構造を支えざるを得ません。
師範の真意は、「特定の筋肉に頼らず、全身を連動させる肉体を作れ」ということにあったのです。
現代のジム通いを「武道の修行」に変えるコツ
もしあなたがジムに通っているなら、バーベルを筋肉を膨らませる道具ではなく、**「受動筋を養う計器」**として扱ってみてください。
- 「軽く感じるフォーム」を探す: 能動筋で強引に持ち上げると重量は重く感じますが、骨格が整い、受動筋で重さを大地に逃がせると、ふっと軽く感じる「黄金のポイント」が見つかります。
- 「全体」で受ける: 特定の部位を意識せず、指先から足裏まで一本のラインを通すようにトレーニングします。
※もちろん、能動筋トレーニングは衝撃に強い身体を最速で作る方法でもあります。もし筋肉を大きくしたいなら、この「連動の大切さ」を理解した上で、スポーツ動作などの正しいフォーム練習を併用すれば、弊害を最小限に抑えられるはずです。
当て身(壁叩き)によるハードウェアの強化
「見かけの筋肉」と「打撃力」は別物です。 中国武術の達人も「バーベルで鍛えた筋肉は打撃の邪魔になる」と説いています。沖縄空手の「巻き藁突き」も、実はこの受動筋を鍛えるための稽古にほかなりません。
私もかつて力任せに壁を叩いて入院しましたが、それは能動筋でぶつかった結果、衝撃が自分に返ってきたからです。受動筋によって大地と繋がり、衝撃を地へ逃がす感覚を保ったまま、徐々に負荷を上げていく。これにより、巨大な氣(エネルギー)を通しても壊れない「武道の器」が完成します。
私の打撃は見た目こそ地味ですが、軽く突いただけで「なぜこんなに重いのか」と驚かれるのは、この受動筋の働きによるものなのです。
結び:感覚が先、強化は後
筋肉の太さと、呼吸力(身体の運用)を混同してはいけません。
- 感覚(OS): 船漕ぎ運動などで、受動筋の感覚を掴む。(氣の流れ)
- 強化(ハードウェア): その感覚を維持したまま、当て身などで負荷をかける。
この順番が絶対です。意識を筋肉の中に閉じ込めるのではなく、筋肉を通じて大地と対話する。それが、井口合氣道が教える肉体改造の極意です。
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