皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。
当ブログでは、現在はその体の段階について述べいます。体の段階は次の気の段階の準備段階ですので非常に大切な段階です。この段階では自分の身体の使い方と自分と相手との関係を知ることを目的にしています。
今回は天鳥船(あめのとりふね)の行です。天鳥船の行とは合気道で稽古に取り入れられている船漕ぎ運動のことです。
このブログで分かること
船漕ぎ運動は 天鳥船の行と言って古神道の行から来ていますが、宗教的な意味だけではなく、合氣道の立ち技において非常に有用な技術が隠されています。
このブログでは天鳥船の武道的意味を明確にすることで、重要性と物理的な有効性を理解していただきます。また合氣道を行う上で天鳥船の行が如何に重要かということがわかるとともに、合氣道の技を行うさまざまなヒントが得られます。
1.天鳥船とはどんなものかわかる
2.天鳥船の物理的、実用的意味が理解できる。
3.足の三角の秘伝の重要性が理解できる
4.筋力によらない運動エネルギーを使ったやり方がわかる
5.足腰の安定感を感じられない悩みが解消
目次
・天鳥船とは?
・ 天鳥船は足の三角の秘伝の稽古だった!
・重さを伝えるのが天鳥船!
・天鳥船のよくある誤解!
天鳥船(あめのとりふね)とは?!
天の鳥船とは、合氣道の道場で準備運動の際によく行われている船漕ぎ運動のことです。天の鳥船というのは本来は明治時代の古神道家の川面凡児師が伝えた禊の行を 大本教の出口王仁三郎師 によって合氣道開祖・植芝盛平翁先生が伝えられと言われています。
ここでは古神道の行としての詳しいやり方は述べず、骨の技術すなわち物理的な技術としての天の鳥船の優位性を述べていきます。
合氣道の道場によっては天鳥船の行を採用していないところもあると聞きますので、合氣道を開祖・植芝盛平翁先生が天鳥船の行を行っておられる写真を下に示します。
この天鳥船というのは、基本的には神秘行の一つで、魂を奮い立たせて霊的な能力を強化するのを目的にするものだそうで、振魂(ふりたま)という瞑想法を伴って行われるていたそうです。
僕が師匠・井口師範からお教えいただいた天鳥船に関する内容は臍下丹田にある気を動作に合わせて腕から手に流し、さらにその気を引き戻すということを繰り返すことで自分の気を強化するというものでした(下の連続写真参照)。
以前もここまでの内容を本ブログでも公開したことがありますが、今回はさらに天鳥船の秘密を公開していきたいと思います。
天鳥船は足の三角の秘伝の稽古だった!
天鳥船の行を行うとわかると思いますが、翁先生がされているように身体が前後させて漕ぎ運動を行ってみるとかなり足腰がふらつくのがわかると思います。
ところがこの船漕ぎ動作の①~③の動作部分に足の三角の秘伝を適応してみると非常に安定するのがわかると思います。さらに 全身運動の最終動作 を示した下の写真を見ていただくと、翁先生の足の形が、まさしく前回示した足の三角の秘伝のポジションを取っているのに気づかれるのではないかと思います。
翁先生の膝の動きが袴をはいているため見えませんが膝の曲がりからも足の三角のポジションを取っているのが理解できると思います。読者の多くの方もご存じの通り合氣道で袴を履く理由として足の動きを隠すためだといわれています。要するに袴を履くことで膝の動きが見えないわけです。
合氣道修行者の多くの方は袴で足の動きを隠すといわれているが一体何を隠しているのかと日ごろ考えられた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 実は足の三角の秘伝による膝の動きを隠しているのです。
僕の師匠・井口雅博師範も「曰く! 天鳥船の行が非常に大切!」とよくおっしゃっていおられました。でも僕自身は長い間その理由がわかりませんでした。井口師範から合気道の立ち方のご指導をいただいたときに足の三角の秘伝をお教えいただいたのですが、天鳥船と結びつくことは実は長い間なかったからです。
僕は天鳥船をやっているとどうしても足腰がふらつきを感じることが多々ありました。それで安定するようにといろいろと稽古をしている中、あるとき井口師範から教わった足の三角の秘伝を行ったところ非常に安定することがわかったのです。それで初めて天鳥船では足の三角の秘伝を使っているということが分かった訳です。
しかも、足の三角の秘伝という膝の使い方が非常に大切で秘伝だからそれを隠すために袴をはいているともいえるのだと気づいたのです。
ですから前回、足の三角の秘伝をご紹介したとき、多分誰もあまり意識していなかった割には秘伝といわれるほど大したものと感じなかったのではないでしょうか? 余りにも普通の内容なので軽く見られた方もいらっしゃると思うのですが、実は非常に重要なのです。
この足の三角の秘伝を使って足の底から膝を倒すことによって運動がおこるのを意識するだけで今まで安定しなかった天鳥船の動作が安定するのが体感できると思いますので、この足の使い方を是非覚えていただきたいと思います。
重さを伝えるのが天鳥船!
さらに、この天の鳥船の行は武道的な動きとしては、足の三角の秘伝の実践的稽古になるだけではなく、力を重みとして伝達する稽古としても非常に大切です。
下の写真は翁先生の動きの前半部分である前進動作をしめしています。翁先生の腕の動きに注目していただくと、体が前に出てから腕が前に出ています。体の動きが起こって初めてその動きを手に伝えているということです。
当会ではこの体が動いてから力を伝えることを「陽の技法」あるいは「陽の技術」と呼んでいます。この陽の技術は体の重みを相手に伝える方法です。
この陽の技術を使えば人を簡単に引っ張ることができるようになります。例えば、下図のようにしっかりと手首を握られた状態で天鳥船の①~③の動きをした場合を例にとりますと、もし技の掛け手の腕に全く力が入っていないで、船漕ぎ運動の①~③を行えば、持ち手は図のように前に飛ばされます。
ところが①の段階で技の掛け手の腕に力が入っていると相手を前に送り出すことができません。というのは腕に力が入っていると掛け手の意図が最初から技の受け手に伝わってしまうからいつ引っ張られるかわかるため簡単に抵抗されてしまうからです。
実は力が入るというのは腕力だけで相手を引っ張っているのです。この動作のコツは体が動いてから自然に任せるように相手に力を伝えることにあります。すると腕力を使わずに相手に動きを伝えることができます。
では何故腕力で引っ張るよりもこちらの方が有効なのでしょうか? これは実は中学の理科で勉強した力学のなかで運動エネルギーといういのを学んだと思いますが、この運動エネルギーが相手に伝わるのです。
もう少しわかりやすい例でいうと、例えば10キロの鉄の玉をゆっくり投げてもらった場合を考えてください。いくらゆっくりといえどもこれを手でキャッチしようと思いませんね。
なぜなら皆さんは体験的に10キロもの鉄の塊が飛んでくること自体非常に危険だとわかっているからです。ですから自分の体重と同じ重さの鉄の塊がゆっくりでも飛んでくるとどれだけ恐ろしいかはどなたでも理解できると思います。
このように体重というのは動くと実は大きな力を生み出しているのです。人間が動くと大したことのないように感じられますが、鉄の塊と置き換えたときにその威力たるや想像できると思います。
天鳥船のよくある誤解!
読者の中には道場の稽古で天鳥船をやっている人もいらっしゃると思いますが、案外何も意識せずに行っている人がかなりいらっしゃるのではないでしょうか?
よくある誤解された動作として下図のように上体だけを反ったり傾けたりして行っている場合があります。確かにこのようにすると足腰は安定するのですが、上記の内容でお分かりの通り合氣道の技に使えるようになることはありません。
合氣道で技に使えるようになるにはやはり、足の三角の秘伝を使って重心が前後する必要があります。このように足の三角の秘伝あるいは天鳥船の行は合氣道での動きを生み出す中核としての意義がある訳です。
この天鳥船の稽古を続けることにより合氣道での動き出す瞬間や衝撃を伝える瞬間に足の三角の秘伝を使えるようになると、急激な動きができたり、ゆっくりした当身(パンチ)でも相手が驚くような威力を出したりすることができるようになります。
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如何でしたでしょうか? たかが船漕ぎ運動と軽く見られていた方もかなりいらっしゃったのではないでしょうか? しかしここまで読まれた方は船漕ぎ運動は実は袴で隠すほど大切な足の使い方を習得する稽古方法であったということがわかったのではないかと思います。
次回はこの足の三角の秘伝をもう少し深堀りしていきたいと思います。さらに足の三角の秘伝を使えるようになるための方法について述べたいと思います。
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