【体の段階】合気道で使う力

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の師匠・井口師範はあるとき「合気道では5つの段階を通って学ぶ」とお話しくださいました。その5つの段階とは形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 です。

形の段階は形を教えてもらった通り行う段階で多くの方が取り組んでいるものです。ところがこの後多くの修行者はいきなり気の段階に入ろうとしますが、実は気の段階に入る前にどうしても体の段階の稽古をしておく必要があるのです。

体の段階の稽古には2つの段階があり、最初が自分の身体の使い方を理解する段階であり、2つ目めは自分の動きがどのように相手に影響を与えるかを知る段階です。

このブログでは前回までは体の段階を行う上でもっとも必要な概念を説明しました。それは「相手に悟られない動きをする」ということでした。そしてもう一つは体の段階の最終目標である「相手のバランスを奪う」ための基本的な考え方について述べました。

今回からはこれらの基礎知識を元に体の段階の技術を深掘りしていきたいと思います。今回は合気道で使う力とはどのようなものかについてお話したいと思います。

このブログで分かること

・合気道で用いる力とはどのような力か?
・脱力とはどのようなものか?
・合わせとは何か?
・合気道の物理的な考え方の大切さ
・合気道の運動生理学での考え方
・合気道の心理学での考え方

目次

合気道で用いる力とは
筋肉が働かないと動くことすらできない
問題は腕力の変化
腕力の変化をつくらない脱力
合気道の運動生理学
合気道の心理学

合気道で用いる力とは

「合気道の技に用いる力とは?」という質問に対してすぐ帰って来る言葉として「呼吸力」があげられます。ところが「呼吸力とはどんなものか?」という質問に対して的確に答えられないというのが多くの方の現状ではないでしょうか。

或いは様々な師範の様々な回答を見てどれが正しいのかと思ってしまう人もいるかもしれません。人によると呼吸力を「気の力」という人もおられます。ところが「気とは何か?」というと非常に曖昧な返事が返ってきてまるで煙に巻かれたような感じではっきりと分かったとは言い難い状況になるのではないでしょうか。

このように科学的な説明のできない力では万人が万人とも理解するというのは非常に難しいものと言えます。確かに人知を超えた力といえる存在は僕の経験からもあるのは事実ですし、量子力学的を引っ張り出してくるとどんな不思議なことがあってもおかしくはありません。

しかし、スキルとして常に使う という点を目指すのであれば、誰にでも繰り返し再現性がある必要があるという点から当会では科学的アプローチができる力で技を考え、その上で生理学的現象や心理学的現象を考慮した上で技を研究する必要があると考えます。

ですから、当会で扱う合気道に用いる力とは筋力運動エネルギーの2種類です。ここでいう力というのは厳密には物理学の力の定義とは異なりますが数学的な計算で示すものではないので読者の方にはご理解をお願いしたいと思います。

筋肉が働かないと動くことすらできない!

合気道修行者の中には筋力を否定する人がいますので、筋力というと 不思議に思う人がいるかもしれません。一般的に合気道の道場では筋力を使わないようにと指導され、脱力するように言われます。

ところが達人でさえ筋電図を取るとやはり筋肉は働いているのです。ですから人間が生きているうえでは科学的には筋肉を全く使わないという状態はあり得ないのです。

僕は昔のある日に突然全身の筋肉が筋肉弛緩状態になったことがあります。意識があるのに突然体が倒れ全く体が動かない状態になったのです。当時も僕は合気道をしていましたので気を意識して動こうとしましたが、立つころはもちろん手足を動かすこともできませんでした。

実は病院に行って分かったのですが、この原因になったのは高価な栄養ドリンクを毎日飲んでいたせいなのです。当時とある会社で勤めていて深夜残業がかなり続き、睡眠不足を補うため高価な栄養ドリンクを毎日飲んで体に鞭打って仕事をしていたのです。するとある日突然パタッと倒れてしてしまったのでした。

栄養ドリンクにはカフェインなど神経を高ぶらせる薬品が多数入っていますが、睡眠不足のため体が寝ることを要求しているのを無理に神経を高ぶらせて起きていたので限界が来て精神が起きているが体が眠っているという状態になってしまったわけです。よく言われる金縛りの状態と同じことが目覚めている間に起こったのです。

この時の経験から体の力が抜けると気が流れているなどイメージをしても動かないということが分かりました。このように筋肉が完全に弛緩した状態だと人間は倒れてしまうのですね。ですから合気道の技を正しく行っているという状況では必要な筋力を最小限度適切に使っていることに他なりません。

問題は腕力の変化

前項では筋力が必要といいましたが、それでもどうしても納得いかないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか? それは「肩の力を抜くと上手くいった」「腕の力を抜くと上手くいった」という経験がある方ではないでしょうか? 

合氣道の技においても筋力を使うと言っていますが、だからと言ってウェイトトレーニングを合気道に導入すべきと言っているのではありません。それだと体格や体力が優れた人が技ができるという結論になります。

当会では技が効かないのは相手に自分の意図が読まれているからと考えています。これは体の段階の大前提の「相手にこちらの意図を読ませない」という点を思い出してください。

合気道では相手を投げるのに通常手を使います。ところがこの手を普通に使うとこちらがしようとしている情報が相手に洩れてしまうのです。すると相手はこちらの動きを察知して対応できてしまいます。それだと技が効きません。

実は人間の手というのは様々な器用な動きが要求されていますので微妙な動きが出来るようになっています。その為に微妙な筋肉の動きで相手がこちらがやろうとする情報をキャッチしてしまうわけです。

そのためには腕の筋肉の変化を作らない必要があります。これが力を抜けという理由なのです。だから腑抜けになってしまえということではありません。筋力の変化のない腕を作ってそれに体幹の力や運動エネルギーを伝えるのです。

腕力の変化を作らない脱力

ここまで読まれている方は、当会では脱力を完全に否定していると思われたのではないでしょうか? 合気道ではよく力を抜くことを指導されます。では多くの道場ではありもしないことを言っているのでしょうか?

そうではありません。脱力には2種類あります。一つは消極的な脱力ともう一つは積極的な脱力です。消極的な脱力というのは全く何も力をいれていない腑抜け状態をさし、積極的な脱力とは当会では合わせと言い相手の力の方向に動きを合わせて相手と力のぶつかりがない状態を作ることをいいます。

合気道でいう脱力とは本当に筋力を全く使わない腑抜け状態をつくることではありません。合わせを使った積極的脱力を指すのです。(なお、この合わせについては2022年4月6日の記事4月10日の記事に詳しく紹介していますのでご参照ください)

ぶつかりがあれば必ずそこに関連する筋肉がアクティブ(有効)になっています。さらに次に動作を行うにはそのアクティブになった筋肉をさらに使う必要があるため相手は簡単に次の動きが判断できてしまうのです。

さらに合わせの目的は、相手の力の方向に自ら積極的に合わせることでぶつかった状態を回避することでこちらのアクティブになった筋肉がどれであるかを相手に読ませないようにすることにあります。ですから当会でいう脱力とは合わせのことであり、相手と力がぶつかっていない状態をつくることで、単なる力の抜けた腑抜け状態とは一線を画します。

何故、腑抜け状態ではいけないかというと護身術を必要とするような場面の場合は相手の攻撃は様々の展開を見せますので腑抜け状態でいるとアッという間にやらてしまうことになるからです。

例えば相手が手首を取りにくる場合、ただ手首を握って終わりではないのです。何らかの目的があって手首を掴むのですから、ただの腑抜けのようにすると相手に体までもっていかれます。この点が腑抜けではいけないという理由です。

合気道の運動生理学

次に合わせにより作られた脱力を如何に利用するかを述べたいと思います。

ところで、運動生理学では人間が反応するのに認知してから0.5秒かかると言われています。それを反応速度といいますが、これを利用して技に掛けると相手はこちらの動きに十分対応できずコントロールを許してしまいます。要するに相手にこちらの意図が読めなければ技が上手くいくということです。

実はこれは腑抜け状態からでも同じことができます。具体的な例でいえば、相手に手首を掴ませてコチラは腑抜け状態にして脱力をしいきなり相手の予知できな方向に手を上げると相手は対抗ができず手を握ったままついてくるというようなことが起こります。

確かにこれを見せられると、腑抜け状態の脱力でも技が使えるという印象を与えてしまいますが、これは単なるパフォーマンスにしかすぎません。様々な攻撃が次々と繰り出される中でこのような技術はとても使えるものではありませんので誤解が無いように理解してください。飽くまでも合わせを使った積極的脱力状態からこれを使うということです。

合気道の心理学

ところで反応速度を利用したこのテクニックですが合気道修行者の方の中にはどうしても上手くできない方もいらっしゃいます。その原因は相手との接している場所(例えば握られている手首)に意識が行っているからです。

例えば手首を握られている状態で手を上げようとした場合に手首を意識して上げようと考えた時点で相手はこちらの意図を読みます。何故なら持たれている部分を僅かにでも意識してしまうと自分の手の筋肉が微妙に反応して筋力の変化を作ってしまうからです。その結果、相手はこちらが手を挙げる前に既に意図を読みとり、手を挙げる妨害ができるようになります。

ですから手を挙げるときは行き先のみ意識して挙げる必要があります。そのための心理的テクニックとしては次の2種類あります。
1.手を挙げる最終地点に視線を向ける
2.手をパッと開いて意識を指先に集中する

このどちらかもしくは両方行って、自分の意識が完全に相手との接点から離れると相手はこちらの動きが読めなくなります。要は相手も自分も騙して「相手との接点が無いがごとく振舞う」ことなのです。これにより体の段階での大前提「相手に情報を与えない」ということがどれだけ大切かと理解できるのではないでしょうか。

◆   ◆   ◆

今回の内容は気という概念に頼ることなく筋力を使って合気道の技ができるということを説明しました。今回は
・合気道で用いる力とはどのような力か?
・脱力とはどのようなものか?
・合わせとは何か?
・合気道の物理的な考え方の大切さ
・合気道の運動生理学での考え方
・合気道の心理学での考え方
などを説明しました。このように体の段階ではできる限り物理的な方面で技を解析し、物質的な動きで相手に影響を与えるということを徹底的に学びます。これにより気の段階に入ったとき点と点が線になりより客観的な観察ができるようなります。さらにはその上の意の段階に進むときにこの体の段階での理解が非常に大切になるのです。

次回は腕の筋力を有効に使う方法として合気道でよく言われる折れない腕について話したいと思います。これは 呼吸法などでも使え る技術なので是非理論的に理解しておく必要があります。

最後までお読みいただいた読者の方々有難うございました。

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