皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
さて、故・井口師範が指導した合気道は5つの段階を通って学ぶということを今までお話しました。それは形(かた)・体(たい)・気(き)・意(い)・神(しん)とあるということでした。そして形の段階は合気道で行う形を素直に学んで覚える段階で、体の段階は自分がどう動くと相手にどう影響がでるかということと相手をどう導くと相手がどう動くかという2点を体レベルで覚えるまで行うということでした。
さらに、体の段階で大切なのはその大前提をしっかり意識して行うことだということをお話しました。その大前提とは「相手にこちらの意図を察知されない」 です。要するにこちらがしようとすることを相手に読まれてはいけません。
前回は相手に察知されない最も大切なこととして目をあげました。今回は「接触点」ということをお話しします。今回の内容では「脱力の本当の意味」と「それは誰でも可能である」ということを納得していただける記事にするつもりです。さらに言えば「合わせる」とは何か?を説明したいと思います。
このブログで分かること
1.相手と接点を持つ大切さ
2.脱力や合わせや導きの意味
3.人の動作の仕組みと欠点を利用すること
目次
・結局合気道では接触が大切
・合わせの重要性
・合わせの大切なポイント
・人の動作とは一種のプログラム
・強く捕まれたときどうなんているか?
・相手の安定状態に対する対策
合気道では接触が大切
合気道の形稽古では高段者の技を除いては必ず相手に触れることを大切にします。ともすれば気で投げると言って触れずに投げることが合気道の最終目的のように誤解されている方もいらっしゃいますが、気で投げるというのはどちらかというと心理学的な技術なので万人に効く技術ではありません。
ちなみにプロ格闘家といえば、格闘技の申し子のような天才たちです。もし触れずに気だけで相手を完全に制することができるなら必ず天才であるプロ格闘家の中からそのような人物が現れるはずですが、そのような人物は一人もいないのです。こういう事実からも気だけであらゆる相手を制することができるというのはあり得ないわけです。
ですから合気道をかじって気を稽古したからといってもプロ格闘家の練習量の比ではありません。ですから我々合気道修行者もこの点を鑑みて良識ある態度で稽古に臨まなければなりません。もし護身術として合気道を考えておられるなら、漫画のかめはめ波のような 気という万能のエネルギーにあこがれるのではなく、地道に相手と接触することを考えて稽古に励む方が効率的だと思います。
ちなみに合気道にはかめはめ波のような技術として「遠当て」という当身が存在しますが、これは相対した相手の特定の状況において心理学的アプローチと生理学的アプローチを同時に行う技術で、かめはめ波のように物理的衝撃を与えるものではありませんし万能でもありません。あくまでも単なる技術の一つにしかすぎません。
合気道はやはり相手に触れることによって相手と和合する技術を学ぶものなのです。
合わせの重要性
合気道では相手に触れるということが如何に大切かという話をしましたが、次にこの触れている点である接点について述べてみましょう。
接点ですが相手と自分を分ける境界点ではないということを理解する必要があります。接点は相手の情報を受け取る点であり、合気道でとても大切な物理的に合わせを行える非常に大切な点です。
そこで合わせとは何かというと、相手の力の方向を読みそれに合わせることで相手とのぶつかりを消滅させる技術です。これにより脱力感が得られます。
何故ぶつかりを消滅させる必要があるのかというと、ぶつかりが出来た時点で相手はこちらの行おうとすることが事前にキャッチできてしまうからです。そうなると腕力が強い方が勝つという単なる力対力の勝負となってしまいます。
合わせの大切なポイント
合わせにおいて最も大切なのがその接触点がソフトであるということです。多くの方はこれを脱力と呼びますが、当会では敢えて「ソフトな接触点」といい「ぶつかりの無い状況を作る」と説明します。
何故なら脱力というと「全く力を抜くこと」「筋肉を使わないこと」と腑抜け状態のこととと勘違いされている方がいるからです。腕を動かすには必ず筋肉が働いていないといけません。特に体の段階では「体は骨と筋肉を使って関節で動く」ということを肝に銘じておかなければなりません。
それを前提に「如何に効率的に相手を動かすか?」ということを実現する必要があるのです。そのために、先ずは「ぶつからない状態」というのは物理的に可能だということを理解していただく必要があります。
それからもう一点大切なポイントですが、運動生理学的な理由から、相手がこちらの動きが読めないときこちらの動きに反応するのに0.5秒かかるという点です。これを反応速度といいますが、これがあるために合気道では相手を投げることができるのです。
こういったことで相手に事前にこちらの動きを察知されないためにも相手とのぶつかりがない状態にしておく必要があります。
人の動作とは一種のプログラム
人の体はご存じのように関節部で骨が折れ曲がるようにできています。それを筋肉でコントロールしているわけですが、このコントロールは伸ばすか縮めるかのどちらか一方で行っています。
また人は同時に様々な筋肉をコントロールするということができませんので、ある目的を持った一連の動きをプログラムとして自動的に発動しています。プログラムだと言うと「人間はロボットじゃない!」と嫌う方もいらっしゃいますので「身につけている」と言い換えるとご理解いただけると思います。
一つの動作というのは「意識」と「一連の筋肉動作」の合わせたものとして身につけているのです。ですから一つの動作には「想定」があり、その「想定」に従って体を動かしているのです。
例えば、片手取りの形というのは相手の手首を掴むという一つの動作な訳です。片手取りを行う人は必ず相手の手首を掴むという想定の元で相手の手首を掴みに行くわけです。
強くつかまれたときどうなっているか?
通常の合気道の形稽古では 相手の手をがっちりと本気でつかむことがありません。これは本気でつかむと 技がかからなくなるため形稽古ができないからです。前項では相手の状態について述べましたが、ここではがっちりと強くつかまれた場合お互いの応対についてもう少し見ていきましょう。
そのために受けの人が本気でがっちりと相手の手首を掴む場合を想定します。その場合、通常人間の反応として受けの人(掴む側の人)は最も安定した位置で相手の手首を掴もうします。
しかも相手はこちらが相手を支えることを前提に持ちに来ますので、こちらもつい無意識に相手の力に対抗して持たせいる状態になっています。これによりぶつかりができ、相手がより安定するため、こちらの腕力が相手の腕力を凌駕していなければ 相手の腕を動かすのは当然不可能となってしまいます。
さらに、相手がこの安定した状態になり、こちらが相手を支えているぶつかった状態からは脱力が非常に出来にくい状態になっているのです。だから多くの人が「脱力は難しい」と言われるゆえんです。
相手の安定状態に対する対策
ではこの状態から抜け出す方法があるのでしょうか? その前に一つご質問をしたいと思います。相手が安定している状態から力を入れるということを何故するのか? どうして相手の優位な点から出発する必要があるのでしょうか?という2点です。
といいますのは、実はこの質問に盲点が隠れています。何故なら、相手の安定点よりも少し外(一寸/3cm)に誘導すると相手の力が有効にならない場所があるからです。さらに言えば相手の力に乗ってそこに誘導すれば簡単に相手をコントロールすることが出来る点があるわけです。
このように相手の力の入らない範囲に相手を誘導するのも実は合気道では「合わせる」といいます。「合わせる」というのは持たれたのぶつかりを失くすだけではなく、相手が加える力の方向に合わせて動き相手が気づかない内に安定している場所からずらすということも入っているのです。
そのため合わすというのが非常に難しいと思われているわけです。ぶっちゃけ合わせるには
・相手とぶつからない状態にする
・相手の力の入らない位置に誘導する
という2段階の動作を行う必要があるということです。
ですから筋力を使うという点では、筋肉を全く使っていないのではなく、相手の力に合わせて筋肉を使っているので当然ぶつかり感がありません。本当に脱力した腑抜け状態ではないという点が「合わせ」の大切なポイントです。
要は本当に力を抜いているのではなく触れた部分がぶつからない状態で脱力しているような感覚があるというだけです。これが所謂「脱力」の正体で腑抜けになるということではありません。
今回は「相手に悟らせない」ために相手との接触点の扱い方である「合わせる」という点についてご説明しました。次回はこの「合わせる」というのをさらに詳しく深掘りしていきたいと思います。
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はじめまして、ブログ楽しく読めました。先生が書かれていることは全て真実の秘伝だと思います。
ぜひシステマ大阪の大西インストラクター
yspcの渡邊インストラクターに会ってみてください。
かなり共通するところが多いです。
ただ私の感想ですが、ジークンドーの動きよりシステマの動きの方が合気道の技には親和性があると思います。
ウィリアムさん
コメントありがとうございました。システマは非常に興味があります。
システマでは動きを止めてはいけないといいますね。僕の師匠・井口師範も同じことを言われていました。
合気道ではそれを「氣の流れ」と言って「気の流れを切ってはいけない!」とよく注意されたものです。
確かに合氣道と似ている部分がたくさんありますね。
ぜひ機会があれば大阪のシステマの方にお会いしたいと思います。
ありがとうございます。