合気道では片手取り、両手取り、諸手取りなどの技があります。
「相手に手を持たれたら」と説明されることが多いと思います。
しかし、井口師範は
「相手に手を持たれたらもう遅い。相手に手を持たせないといけない」
と言われました。
これを読まれている人の中に
「なるほど! 相手の『先を取る』のか!」と思う人もいると思います。
そう考えた人は合気道を武道としてとらえている方だと思います。確かにその通りです。
しかし、『先を取る』というのはその通りですが、「それだけを聞いても、具体的に持たせるというのはどうするのか?」という問題がのこっています。
多分どうしていいのかわからない人が多いのではないでしょうか?
これでは、99.9%の人は技の質は全く変わりません。
ではどう『先』を取るかというとですが、実に話は簡単で、『先を取る』には、単に相手に持たれたときに『脱力』するだけです。
しかし、本当に力をダラーンと抜いてしまったら技なんかかけられません。前にもお話ししましたが『脱力』といっても本当に力を抜いてしまうわけではありません。飽くまでも、自分自身に『脱力感』があるようにするとういことです。この具体的な技術を合気道では『合わせ』といいます。当会では『骨の技術の合わせ』と呼んでさらに具体的な方法を稽古します。
「でも、『脱力感』というのがどんな感じかわからない」と言われる方もいらっしゃるでしょう。それを知るには『脱力感』の反対は何かと考えていただければいいと思います。
以前にお話ししたように「脱力感」の反対は「ぶつかり感」ですね。相手の力にぶつかっている感覚があるのが「脱力感」の反対です。
このぶつかった状態を具体的にいうと、肩の筋肉にあたる三角筋、力こぶの上腕二頭筋の緊張があり、力が入っていると感じる感覚です。
実は、この状態は非常に危険です。何故なら、三角筋や上腕二頭筋の緊張は接触点を通じていち早く相手に伝わります。そうなると、相手からこれから自分がどのように動くかというのが手に取るように分かりやすくなります。これでは相手に技を掛けるということはできなくなります。
合気道の技を成功させるにはポイントは、「情報遮断。相手にこちらの意図を読ませないこと」ですから、『ぶつかり感』があるということはまるきり反対のことをしているということですので、この『ぶつかり感』をなくした『脱力感』が合気道の技を成功させる最大のポイントとなる訳です。
言い方を変えると『脱力』するのは、「相手にこちらの情報を遮断する」という意図があるのです。