【形稽古のプロセス5:伝える】陰の技法

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、今日は前回の物理的技法の続きの陰の技法についてお話しします。

 


陰の技法の原理は作用と反作用!

 

陰の技法を端的に説明すると、相手に運動エネルギーを与えようとするときに、与える運動エネルギーと真逆に重心を移動する技術です。

例えば、前にいる相手をさらに自分の前方に押したいと思うと、自分の重心を後方に引くことをします。

特に打撃系の武道や格闘技をした人がこれを聞くと、『後ろに重心を引くと、相手に追い込まれるのでは?!』と考えるでしょう。

何故なら、陰の技法というのは、一般の素手による格闘技や武道では使われない技術だと思います。

ですから、打撃系の武道や格闘技を行っている人からすると非合理で、まるで役に立たないような印象を与える技術なので、軽く見えるかもしれません。

しかし、武器を用いる武道では、術者は知らず知らずの内に使っている技術です。

これは、中学の理科の力学で既に学んでいる原理で、非常に合理的で科学的な現象を使っているのです。

作用・反作用というのを学んだ経験があると思いますが、相手に力を与えようとすると、その力の分の反作用が自分に返ってくるというものです。

この作用・反作用の原理を利用して、これを自分の体内で作用と反作用の力を作るのが陰の技法です。

ですから、例えば相手を前に押す場合、体を後方に引くのではなく、上半身は前進、下半身は後進するので、後ろに後退するというものではないのです。


陰の技法は中丹田を使う!!

陰の技法の理屈は分かっていただいたと思いますが、実際にやってみると、殆どの人が今までに経験したことのない動きのため、中々思うようにできないのが現状です。

というのは、相手を前に押すために、重心を後方に移動するという動作をすると、どうしても体全体が後方に引けてしまい、相手に力を及ぼすということができません。

この理由は、実は多くの人は無意識で多かれ少なかれ、臍下丹田という下腹部にある下丹田を使うことに慣れて、下丹田の移動に全身が従うためです。

一方、この陰の技法では、下丹田を使う一方で、中丹田も同時に使います。

ただ、単に中丹田と下丹田を反対方向に移動させればよいというモノではありません。

大切なのは、「気を自分の後方に引かない」ということです。気が後ろに引ければ、前方の敵に簡単に追い込まれます。

ですから、中丹田で相手の気を受け止め、弾き飛ばすためには、常に中丹田を相手の方向に向ける意識が必要になります。

ですから、下丹田を後方に送るときも、下丹田を前方に送るときも中丹田は前方に向かう必要があるのです。

 


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「【形稽古のプロセス5:伝える】陰の技法」への7件のフィードバック

  1. はじめまして。

    最近武術を研究し始めたものです。
    いつも参考にさせていただいております。

    ところで、陰の技法の絵のことですが、
    下丹田を後退させて反作用を作り出すのはわかりますが、
    下丹田だけ後退させて、腰とか膝は後ろに下がらないで前に出る方が強い力が出せるのではと思うのですが。

    考え方、あるいは技が違いますか?

    1. 多分、陰の打法や技法をシステマ的な打法と混同されているのだと思います。

      確かに当会の核の気による打撃は貴殿がおっしゃるような使い方をする場合もありますが、陰の技法は全く違います。

      強い力を出すには、反作用を大きくするほど、作用が大きくなるので、質量はできるだけ後ろに下げる方が都合がいいのです。

      これは、例えば、鉄の杖(じょう)や鉄の棒などのような5キロ~十数キロあるような棒を瞬間的に前に突き出してみるとこの意味が分かります。

      実は、当会の基本も鉄の杖(じょう)の素振りにあります。

  2. 返信ありがとうございます。

    システマは知らないのですが、僕の習った十字勁と比較しました。

    陽の打法に陰の打法を続けてやってみました。
    確かに威力が出るんですね。納得しました。
    ただ、打った後、居着いてしまいますので、研究してみます。

    ところで、いつも絵がよくわかるので感心しています。
    自分で描かれているのですか?

    8月2日の陽の打法と陰の打法の絵も正確な感じでよくわかりやすいですね。
    残念ながら、核の気の打法はどういうものか、まだイメージがつかめてないのでわかりませんが…。すいません。

    1. 技にこだわりがあり、人に頼んでも自分のイメージと違うものになっちゃうので、絵は自分で描いています。

      それから核の気については、指導の方でも非常に苦慮しています。

      最近になって数年やっている弟子たちもようやくできるようになってはきているのですが、彼らも他の人に伝えるのに大変苦労しているみたいです。

      見た目ボクシングの手打ち見たいなのですが、打つと突き抜けるのです。

      ただ、これができるようになると、手打ちと突き抜ける打ち方の違いは見て判断できるので、出来る弟子たちも、出来ない弟子に指導するとき、「できた」「できていない」というしか指導ができないと困っています。

  3. 絵で伝えることができるのは素晴らしいですね。

    核の気の打法はいろいろ調べましたが、わかりませんでした。
    ドアが開くイメージだと、相手の力を足裏に流してから、こちらの力を伝えるというものかなと思ったんですが、違いますね?

    中国拳法には、いろいろな発勁方法がありますが、核の気の打法に近いものはあるのですか?

  4. 私の方でも実は核の気の打法については、明らかになっていないのです。

    ただ、井口師範より教わり、そのような打撃法を行うと、ボクシングでいわれる手打ちのような悪い打ち方に見えても、実のところ強い打撃がでるのが意味がわかっていません。

    何故ただ軽く出したパンチが、効くパンチになるのかまだ解明できていない状況です。

    そのため、弟子に伝えるのも一苦労しています。
    ただ、軽く出した私のパンチが強いといわれることと、核の気ができる弟子のパンチがかなり効くという事実しかわかっていないのです。

    正直いって、出来る弟子のパンチを一度ミット越しで受けてみて、二度と受けたくないという印象を持ちました。

  5. 返信ありがとうございます。

    ちょっと想像がつきませんが、
    原理がわからないけど、できる技があるのですね。

    人間の身体は不思議ですね。

    p.s. 近鉄難波駅の話は、よく奈良線を利用するだけに人ごとではない気がします。

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