一般に、合気道では、受けは、正面打ち、横面打ち、正面突きなどの当身を行います。しかし、この当身に対してあまりにも無頓着な人が多いのではないでしょうか。いい加減な当身では、相手の技術の向上を助ける受けの役割がなされません。その理由をここで述べたいと思います。それには、当身が「当たる」ということに関して、井口師範から教わったことをお聞きいただきたいと思います。
井口師範は、当身が“当たる”という場合、3種類あるといわれました。
①偶然に当たったとき
②攻撃者の気と被攻撃者の気が重なったとき
③攻撃者の心が被攻撃者を確実に捕らえているとき
①については、もう言うまでもありませんね。また、③は非常に稀で、秘伝のある武道で特別な稽古を何年もした人か天才の技術です。また、③は、技術さがかなりある場合にも起こります。そこで、もっとも一般的な②について少し詳しく説明したいとおもいます。
ます、攻撃者が相手にパンチを当てるという状況を考えますと、次の段階でパンチが出、相手にヒットします。
Ⅰ. 攻撃者は、パンチを打ちとうと思う
Ⅱ. 攻撃者は、当てる場所を意識する(気を出す・気を当てる)
Ⅲ. 攻撃者は、パンチを打ち出す
Ⅳ. 攻撃者が、Ⅲの次の瞬間、「当たる」と感じる
Ⅴ. 被攻撃者も「当てられた」と感じる
Ⅵ. 攻撃者のパンチが当たる
この6つの段階で、パンチがあたります。
ところが、Ⅴの段階で、受け手は「あっ、当たった」と感じれば、Ⅵでパンチが当たりますが、「外れた」と感じれば、パンチをよけることができます。大切なポイントは、「外れた」と思うのではなく「外れた」と感じることです。ですから、いくら思おうとしても、考えてもダメです。
そして、この感覚を利用すると非常に面白いことができるのがわかります。これが分かると、当身ではありませんが、例えば、剣取りの技術もなるほどと納得できます。当会の空間感覚の技術というのは、そういう感覚(心理)を利用するもので、秘伝を細かく習ってみるとかなり利用範囲があります。ですから、ある意味で、空間感覚の技術とは、心理学でもあるわけです。
ですから、合気道で稽古する際は、攻撃役の受けの人が、しっかりと気を当ててから攻撃をしてあげないといけません。初めから、相手のいない方向に攻撃する人や相手に当たらないように攻撃する人が時々見かけますが、これではまったく稽古にはなりませんので、しっかりと当てるつもりで、当たる前に寸止めで止めてあげるという操作ができないといけません。その点に注意して受けをする人は、当身を行う必要があります。