形稽古の「受け」の大切さ

合気道は形稽古を中心に行う武術ですが、合気道において、形稽古で技を掛ける側を「取り(捕り)」、掛けられる側を「受け」と呼びます。そして、合気道は「受けが極意」と言われることがあります。

「受けが自ら倒れ、投げられてあげること」と誤解される方が非常に多いように思われます。確かに、演武を見せるとき、多くの師範はそのような弟子を非常に好む傾向がありますので、皆さんもそう考えるのも無理はありません。

しかし、井口師範は、
「技の稽古では、正しい動きをしたときだけ、正しい反応をしてあげないとあかん。技がより完成できるように導いてあげるのが正しい受け」
と、言われていました。

演武では、多くの観客がいますので、「取り」に恥をかかせるわけにはいきませんから、技が効いていなくても、勝手に派手に倒れて、「取り」を引き立ててあげる必要はありますが、稽古の際は、そのような心配りは、逆に修行者の技の向上を妨げる以外なにものでもないということです。

また、井口師範は
「曰く、僕は、合気道を極めるため、できる限り翁先生の受けをとらせていただいた。それで合気道の呼吸(極意)を会得したんや。翁先生に受けを取らせていただくために、常に努力をし、常にどうしたらいいか考え、常に行動していたんや。一流になりたかったら一流の人の呼吸をもらわなあかん。だから、東京に行ったら、必ず翁先生や藤平先生にくっついて、いつも呼吸をもらう努力をしていたんや」
と、話されています。

このように能動的な「受け」は、合気道にかかわる特別な感覚を受け取るために非常に大切だと井口師範はおっしゃっておられました。

要するに、教えるときも、教えを受けるときも、特別な感覚を肌で直に味わえるようにするのが正しい「受け」だということです。

しかし、その特別な感覚を味わうには、非常に才能が必要だと私は思います。ですから、才能のない私は、井口師範のその感覚を理解するのに非常に時間がかかりました。

そこで、その感覚を、言葉に変え、理論的に理解しやすいレベルにしようと試み、井口師範の秘伝を4種類に分け、物理学、生理学、心理学の3つの分野で分類して、感覚を頭でも理解しやすいようにしました。それが、骨の技術、皮膚の技術、皮膚感覚の技術、空間感覚の技術という当会独自の4種類の秘伝となっています。頭で感覚が理解できると、直接手をとってあげることで、上達の速度が飛躍します。

私が10年以上かっかた技術でも、合気道未経験の女性が半年(週2回の稽古ベース)でできるようになったのは当会ホームページでも紹介している通りです。

ですから、当会ではその感覚の伝授を大切にするため、私は自分の知っている感覚をできるかぎり、直接すべての会員の方に伝えられるよう全員の手をとることを心がけています。

本ブログを見ている合気道の修行者の方もできる限り、師範を初めとする技術が優れた人の技を受けるようにし、その感覚に注視してください。

もし感覚に興味がある合気道修行者の方で、当会の技術に興味のある方で、師範や仲間の人に顔がさすと都合の悪い方は、個人指導の方をお受けいただければいいと思います。個人指導ではビデオのアップは行っておりません。

以下では、空間感覚と皮膚感覚の技術が身につくように、受けをとっています。映像の受けは、演武とみれば、お世辞にも上手な受けとは言えません。それどころか、演武だと「超下手くそ」とののしられるのがおちです。ところが、感覚重視の稽古ではこのようにポイントだけ絞って受けてあげないといけないこともあります。綺麗に受けを取ってしまうと、効いていなくても、効いた気になるからです。