合氣道の「当て身」と呼吸力~安定した身体で生まれる打撃の秘密~

合氣道の当て身

合気道や古流柔術などの武道では、打撃技のことを「当て身」と呼びます。多くの武道にさまざまな当て身の技法がありますが、合気道の当て身は「呼吸力」という独特な力の出し方に特徴があります。

呼吸力とは何か?

呼吸力とは、単なる筋肉の力や息を吸ったり吐いたりする力ではありません。心と身体が一体となった状態から生まれる、特別な力のことです。私の師匠である井口師範は「呼吸力は天地の力を借りて行うもの」とよく話していました。つまり、合気道の当て身は、ただ腕を振り回すのではなく、体全体のバランスやエネルギーの流れを活かした打撃なのです。

安定した姿勢がすべての基本

呼吸力を発揮するためには、まず正しい姿勢が不可欠です。そのカギとなるのが「臍下丹田(せいかたんでん)」です。丹田は、おへそから三寸分下(東洋医学では親指の幅が1寸。親指の幅三つ分)の奥にあり、東洋医学では体のエネルギーの中心点とされています。ここを意識することで体の重心が安定し、物理的にも精神的にもしっかりと立つことができます。

さらに、丹田は3つあり、臍下丹田は下丹田といわれ、胸の膻中というツボの奥に中丹田、眉間の奥に上丹田があり、特に初心者は、上丹田、中丹田、下丹田を鉛直に一直線に並んで中心軸を作ることでより精度の高い当て身をするための姿勢を作ることができます。

なお、合氣道の技を行う際には、上中下の三丹田を結ぶ軸をあまり意識し過ぎると技に滞りが発生し、気の流れを阻害するので、当て身の稽古を行うときだけに注意すると良いでしょう。

当て身のための体の使い方

安定した姿勢ができたら、次は肘の使い方を覚えます。合気道の当て身では、「氣のライン」と「螺旋運動」が大きなポイントです。

  • 氣のライン
    これは、呼吸力が腕を通じて放出される理想的なラインのことです。たとえば男性の場合、右手では、右乳首の前方5~7寸(親指の幅5~7つ分)の位置に垂直に存在すると考えられています。このラインは、人体の中を流れる「陽明胃経」という経絡と重なり、東洋思想の「土」に属します。つまり、呼吸力は大地のエネルギーを借りることで生まれ、体の安定と力の流れを高めてくれるのです。
  • 螺旋運動
    肘の螺旋運動と聞くと複雑な動きをイメージするかもしれませんが、実際はわずかな捻り(約45度)です。見た目にはほとんど分かりませんが、この小さな動きが当て身の威力を大きく左右します。

実際の当て身の流れ

例えば中段突きの当て身を行う場合、まず拳を引かず、肘を軽く曲げた「折れない腕」の状態で前方に構えます。肘はやや外を向け、氣のラインに沿って滑り込ませるように下に向けながら打撃を加えます。この一連の動きの中で、小さな螺旋運動が威力を生み出します。

まとめ

合気道の当て身は、単なる力技ではなく、体の安定と「呼吸力」、そして「氣のライン」や「螺旋運動」といった独特な体の使い方によって生み出される打撃です。このことから、当て身の中に合氣道の極意が集約されているともいえます。これらのポイントを意識して「当て身」を稽古することで、より深い合気道の技を身につけることができる非常に大切な一人稽古用の形とも言えます。今、合氣道界では殆ど稽古されなくなった「当て身」の価値を再度見直してみる必要があるのではないでしょうか。

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合気道 「型」から「形」へ

こんにちは、皆さん。お元気ですか? 僕は今日もメチャクチャ元気です。

今回は、合氣道を学ぶ中で多くの人が一度は疑問に思う、「形(かた)」と「型(かた)」の違いについて、武道としての合氣道という立場から師匠の井口師範から学んだことを私自身の考えも交えてお話ししたいと思います。

「形」と「型」――その言葉が持つ意味

合氣道の教則本や稽古でよく目にする「形(かた)」という言葉。他の武道では「形」「型」とあまりこだわらないのが一般的のようなので、「どうして合氣道だけ『形』にこだわるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。実は、この違いには合氣道独自の哲学や稽古観が深く関わっています。

「型」とは何か

まず、「型」とは何でしょうか。型は、決められた順序や動作を正確に再現することに重点を置いた練習方法です。いわば「鋳型」のようなもので、誰がやっても同じ動作になるように決められています。これは伝統や技術を正確に継承するうえで非常に大切な役割を果たします。

「形」とは何か

一方、合氣道で使われる「形」は、単なる決まりきった動作の模倣ではありません。「形」には、固定されたものではなく、流動的で変化し続けるものというニュアンスが込められています。合氣道の創始者・植芝盛平翁は「合氣道は相手との調和を目指す武道であり、技は状況や相手によって常に変化する」と説きました。つまり、「形」とは、技の本質や原理を学びつつも、その時々の状況や相手との関係性に応じて柔軟に発展させていく、“型にはまらない型”なのです。

哲学としての「形」――調和と流れの象徴

合氣道の理念は「和合」や「調和」にあります。相手を打ち負かすのではなく、相手と一体となり、力をぶつけ合うことなく流れの中で技を生み出す――この精神が「形」という言葉に込められています。形稽古は、単なる動作の反復ではなく、呼吸、氣の流れ、心身の統一が一体となった状態を目指します。

例えば同じ「一教」でも、相手の力や動き、心の状態によって微妙に変化します。形は「守破離」の「守」にあたる基礎でありながらも、そこから「破」「離」へと発展し、個々の創造性や応用力が求められるのです。

動きの表現――「型」は再現、「形」は創造

他の武道では「型」にあまりこだわらない方もいるかもしれませんが、基本的には「型」は技術や動作の正確な再現を重視します。これは身体の使い方や間合い、力の伝達など、技術的な側面を磨くうえで非常に有効です。型を通じて基礎体力や集中力、精神力が養われます。

一方、合氣道の「形」は、基本動作や技の本質を学ぶ“出発点”であり、そこから自由に発展させることが奨励されます。形稽古で身につけるのは、単なる動作の模倣ではなく、「氣の流れ」や「呼吸力」、そして「相手とのつながり」といった目に見えない本質的な要素です。

教育的な視点――「形」が育む応用力と創造性

合氣道の形稽古は、基本動作(構え、体の変更、入り身転換、膝行、受身など)から始まり、相対での技の稽古へと発展します。形稽古を繰り返すことで、身体の使い方や間合い、呼吸の一致、心身の統一といった合氣道の本質が自然と身についていきます。

また、形稽古には「命のやり取り」という武道本来の緊張感があり、単なる運動やスポーツとは一線を画しています。形を通じて、技術だけでなく、心の在り方や精神性も磨かれていくのです。

なぜなら、合氣道の形を行うためには、単に身体操作の技術だけでなく、相手を受け入れ導くという心の働きも重要だからです。合氣道の形には、肉体的な要素も精神的要素も入っていて、それらが協調することで技が完成します。

開祖が試合を禁止し、形稽古にこだわったのはそのためです。形稽古では、技を行う「取り」と技を受ける「受け」の役割を明確にし、それぞれが自分の役割を全うし、超えないように行う必要があります。

これができて初めて「取り」と「受け」の氣の交流が可能になります。形稽古とは、取りと受けの氣の交流なのです。これが分からないと、単に「型」を演舞する、取りがまだ十分技が効いていないのに受けが勝手に倒れる、という意味のない稽古になりかねません。だからこそ、形稽古の意味をよく考え、受けも取りもそれぞれの役割を超えず全うすることが大切なのです。

形稽古の実践とその意味

合氣道の形稽古は、基本動作(構え、体の変更、入り身転換、膝行、受身など)から始まり、相対での技の稽古へと発展します。形稽古を繰り返すことで、身体の使い方や間合い、呼吸の一致、心身の統一といった合氣道の本質が自然と身についていきます。

また、形稽古には「命のやり取り」という武道本来の緊張感があり、単なる運動やスポーツとは一線を画しています。形を通じて、技術だけでなく、心の在り方や精神性も磨かれていくのです。

何故なら、合氣道の形を行うためには、単に身体操作の技術だけではなく、相手を受け入れ導くという心の働きも重要だからです。合氣道の形には、肉体的な要素も、精神的要素も入っていて、それらが協調することで技が完成するようになっています。

合氣道開祖は、試合を禁止し、形稽古にのみに拘ったのはそのためです。形稽古では、技を行う側である「取り」と技を受ける側の「受け」の役割を明確にし、それぞれが自分の役割を全うし、それを超えることがないように行う必要があります。

それが出来て初めて取りと受けの気の交流が可能になります。要するに形稽古とは取りと受けの気の交流なわけです。これが分からないと、取りがまだ十分技が効いていないにもかかわらず、受けが勝手に倒れたりという本来の武道である合氣道としては意味のない稽古となりかねません。そのため、武道としての合氣道を目指すなら、形稽古の意味を十分考えて、受け取りがそれぞれの役割を超えず全うすることを目指さなければなりません。

「形」と「型」を超えて――合氣道が目指すもの

合氣道が「形」という漢字にこだわるのは、技術の習得が形式的なものにとどまらず、深い理解と応用、そして調和の精神へとつながることを目指しているからです。

「型」は伝統を守るための大切な枠組みであり、「形」はその枠組みの中で自由に変化し、発展していくための道しるべです。合氣道の形稽古を通じて、僕たちは技の本質を学び、心身の調和を図り、日常生活や人間関係にも活かせる「生きた武道」を体現できるのです。

まとめ

合氣道で「形」と「型」にこだわるのは、単なる漢字の違いではありません。それは、合氣道が目指す「調和」「流れ」「創造性」といった本質を追求するためです。形の中にそれを体現し、技の中で心の在り方や人との関係性、そして自分自身の成長をも学ぶことができます。

合氣道修行者は、合氣道の形を行う際に、

  • 単なる「型」になっていないか?
  • 合氣道の「形」を「型」だけで十分と考えていないか?
  • 単なる「型」を万能視していないか?

こうしたことを常に意識してほしいと思います。

これから合氣道を学ぶ方も、長年稽古を続けている方も、「形」の持つ深い意味と可能性にぜひ目を向けてみてください。形を大切にし、その本質を探求することで、合氣道の稽古はより豊かで奥深いものとなるでしょう。

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合氣道の杖が開く、新しい「氣」の世界

井口師範から受け継いだ本質の技

こんにちは、皆さん。お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
さて、今回は私はこれまで合氣道の稽古を続ける中で、井口師範から伝授された「杖(じょう)」の技術と、その奥深い価値について考え続けてきました。今回は、合氣道の杖がなぜ今こそ見直されるべきなのか、そしてその真価がどこにあるのかを、私自身の体験と気づきを交えながら、合氣道を志す人に向けて語りたいと思います。

杖は「合氣道の本質」を体現する

合氣道の稽古で杖を手にする機会は、近年では減ってきているかもしれません。しかし、井口師範から学んだ杖術は、単なる武器術にとどまらず、合氣道の根本原理――「呼吸力」「氣の流れ」「螺旋運動」――を身体で理解するための最高の教材でした。

杖を使うことで、私たちは「中心(丹田)」の意識、全身の連動、そして相手との繋がりをより鮮明に体感できます。体術だけでは曖昧になりがちな「氣の流れ」や「呼吸力」が、杖を通して驚くほど明確に感じ取れる瞬間があるのです。

井口師範から受け継いだ「シンプルすぎる秘伝」

僕が井口師範から学んだ杖術は、たった3つの基礎に集約されていました。

  1.  基本的な杖の使い方
  2. 「呼吸力」を鍛える3つの対人稽古の形
  3. 「氣の流れ」を鍛える3つの対人稽古の形

この技術はあまりにもシンプルで、僕以外の他の師範の弟子たちはその価値に気づかず、軽視してしまったほどです。しかし、僕は繰り返し稽古する中で、「形の奥に隠された本質」に気づきました。井口師範は「この技術は秘匿せよ」と仰いましたが、師範が他界された今、その真価を伝えずに消えてしまうことを恐れ、僕の道場でも本腰を入れて伝える決意をしました。

「氣の流れ」の実体験――他流派との比較から見えたもの

僕が神道夢想流杖道の体験会に参加した際、型稽古が一通り終わった後、指導者の一人から「好きなように杖で掛かってきてください」と促されました。僕は半信半疑で、井口師範から学んだ「氣の流れ」の形を使ったところ、相手があっけなく吹き飛ばされてしまったのです。

この瞬間、僕は「井口師範から授かった技術は、他流派にも存在しない独自のものだ」と確信しました。神道夢想流の技術も素晴らしいものでしたが、合氣道の杖が目指す「氣の流れ」「呼吸力」「螺旋運動」とは根本的にアプローチが異なることを、身をもって知ったのです。

杖術が合氣道体術を深化させる理由

合氣道の杖術は、体術の理解を飛躍的に深めてくれます。たとえば、杖を操作する際には「中心の安定」「全身の連動」「相手との一体感」が不可欠です。これは体術で求められる要素と完全に一致しています。

さらに、杖を通じて「氣の流れ」を体感することで、体術の動きにも自然と「螺旋運動」や「呼吸力」が宿るようになります。実際、杖の稽古を重ねた後は、体術の技がより滑らかに、無駄なく決まるようになったことを実感しています。

今、なぜ杖なのか――合氣道の未来への提言

現代の合氣道では、杖の稽古が軽視されがちです。しかし、それは「合氣道の本質」から遠ざかる危険な兆候でもあります。形だけをなぞる稽古では、やがて本当に大切な「氣の修練」「呼吸力の体得」が失われてしまうでしょう。

僕は、井口師範から受け継いだ「シンプルすぎる奥義」を、今こそ多くの合氣道家に伝えたいと強く思っています。杖を通じて「氣の流れ」「呼吸力」「螺旋運動」を体感し、合氣道の本質に近づく――それこそが、現代合氣道に必要な「原点回帰」ではないでしょうか。

最後に

合氣道の杖は、単なる武器術ではありません。それは、あなた自身の「氣」を磨き、「呼吸力」を高め、「中心」を確立するための最高の道具です。
ぜひ道場で杖を手に取り、「本質の技」を感じるように稽古してみてください。あなたの合氣道が、さらに深く、自由に、そして力強く進化することを、心から願っています。

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合氣道における「氣の流れ」の探求

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
さて、今回は合氣道で重要な「氣の流れ」について述べたいと思います。合氣道修行者であれば誰もがふんわりとした技に憧れるものですが、それを実現するのが「氣の流れ」の技法です。最後までお読みいただければと思います。

「呼吸力」と「氣の流れ」

この違いは、開祖が意図した「呼吸力」と「氣の流れ」に起因していると考えられます。私の師匠、井口師範は、合氣道の極意として「呼吸力」「氣の流れ」「螺旋形」を挙げ、それぞれの意図を理解しながら技を行うことの重要性を教えてくれました。

  • 呼吸力を意図した技: 術者はそれほど力を出した感じがないが、受け手はまるで重機に巻き込まれるような強力な力を感じ、受け手は抵抗できずに投げられたり倒されたりします。
  • 氣の流れを意図した技: 空気のように捉えどころがなく、訳もわからずに倒されたり投げられたりする感覚です。

技の特性

「呼吸力」を意図した技は、大地と重力の力を借りており、術者が強い力を出している自覚がなくても、受け手は非常に強い力を感じます。一方、井口師範の「氣の流れ」の指導では、相手の「氣」を感じ取り、その「氣」に合わせて導くことが求められます。最も重要なのは、相手の力と衝突せずに自分の「氣」に相手の「氣」を乗せることです。

氣の流れを理解するための稽古

井口師範が伝えた杖の形を用いた稽古では、「呼吸力」を養成するものと、「気の流れ」を体感するものがあり、「気の流れ」を理解するには、後者の形が非常に効果的です。この形は時間にすると数秒で終わるシンプルですが、以下の手順で行います。

  1. 受けも取りも中段右構えを取ります。
  2. 取りが受けの杖を軽く横払いし、それを受けが止めます。
  3. 受けが杖を払おうとすると、取りはその力を吸収しつつ自分の杖を上方に上げ、接点をずらします。
  4. 接点を一尺(約30㎝)ずらし、右手が接点を超えたら、接点を支点に杖を回転させて相手の右側に移動し、左構えを取ります。最後に受けの顔面に杖の先端を突き込みます(寸止め)。

この稽古を通じて、「氣の流れ」の技がどのようなものかを理解できます。その後、通常の合氣道の形稽古を行う際に、受け手に逆らってもらい、受けの力を吸収しつつ導くことで、「氣の流れ」を活かした技の習得が可能になります。

(なお、この技は実際に受けてみないと感覚がわからないため、映像で確認しても理解ができません。)

技の奥行きと修行

「呼吸力」と「氣の流れ」の二つのアプローチを使い分けることで、同じ名前の技でも異なる表現ができ、技にさらなる奥行きを与えることができます。しかし、「呼吸力」「気の流れ」の技法の追求にも「これで終わり」という終点はありません。さらに、合氣道では、これだけではない様々な技法もあり、一生が修行と言えるような深い世界がいつまでも続きます。私たち合氣道修行者は、さらなる先を目指して稽古していきましょう。

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合気道の「折れない腕」技術について

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。さて、最近は整体の仕事について少し忙しくなり、ブログがなかなか更新できなくなり、ご無沙汰ですしています。

今回は、合氣道の基本として習う「折れない腕」がなぜ大切なのかについて話したいと思います。

合気道修行者の多くが知っている「折れない腕」という技術。しかし、実際にはこの技術を指導しない合気道指導者も存在するという話も耳にします。今回は「折れない腕」がどのような技術なのか、そしてその重要性や応用例について詳しく解説していきます。

「折れない腕」とは?

「折れない腕」とは、心身統一合気道の創始者である藤平光一師が合気会の師範部長に就任していた際に、気の出し方を指導する中で教えられた技術です。この技術は、相手に対して自分の腕を曲げさせないようにすることで、相手の力を無力化し、自分の技を成功させるための基本的な要素となります。

技のやり方

「折れない腕」の練習は、2人1組で行います。一方が「折れない腕」を作る役割を担い、もう一方がその腕をチェックする役割を果たします。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 腕を差し出す: 技を行う人が前に腕を差し出します。
  2. 力が入りやすいようにつかむ: チェックする人は相手の腕を力一杯に折り曲げられる体勢で相手の腕を掴みます。
  3. 気を通す: 技を行う人は掌を開き、腕に気を通し、手から気を放出させます。
  4. 力強く折っまげる: チェックする人が力いっぱいに相手の腕を肘で曲げようとつかみます。
  5. 成功の判断: チェックする人が力いっぱいに腕を折り曲げようとしても曲げられなければ、「折れない腕」は成功です。

この技術は、相手の力を受け流すだけでなく、自分自身の内面的な強さを引き出すための重要な練習でもあります。

「折れない腕」を知らない理由

多くの合気道修行者が「折れない腕」を習ったにもかかわらず、その利用法を理解できていない理由はいくつかあります。

  • 個人の応用力に依存: 「折れない腕」は基本的な技ではありますが、その利用法は個人の応用力に委ねられています。そのため、技を行う際にいつ、どこで使うのかを理解できていない修行者が多いのです。
  • 指導者の違い: 一部の指導者がこの技術を重視せず、他の技術に重点を置く場合もあります。これにより、修行者が「折れない腕」の重要性を認識する機会を失ってしまうことがあります。
  • 固定概念:「腕は曲げながら使う」という固定概念によって、「折れない腕」が使えないと思っている人が多いようです。腕は肩関節で曲がるだけでなく、回る(回旋できる)ということを理解していないため、三角筋を使って相手に対抗してしまいます。ところが肘を軽く曲げ(軽く屈曲)て、回旋すれば実は腕は思う以上に自由度が増えるのです。この腕の回旋運動を利用すれば、男女差のような多少の力の差があっても充分に使えます。

なお、世の中には平均的な力の十倍以上も出せる人間がある割合で存在します。このような特別な人はかなりの例外としても、2倍程度の力が出せる人はかなりいると思いますので、回旋運動で十分力を出せる訓練は必要と考えています

応用例

「折れない腕」は合気道の技の基本であり、さまざまなシチュエーションで利用できます。以下にいくつかの具体的な応用例を挙げてみましょう。

1. 力の差を超える

「折れない腕」を使うことで、片手取りや両手取り、さらには諸手取り(片手両手取り)などのシチュエーションで、男性と女性の力の差があっても、強く持たれても技をかけることが可能になります。この技術を習得することで、相手の力に左右されることなく、自分の技を実行することができます。

2. 打撃系攻撃への対応

「折れない腕」は、打撃系の攻撃に対しても有効です。相手の攻撃を受け流すことで、相手を金縛りにするような効果を発揮します。この技術を使うことで、相手の力を受け止めるのではなく、逆にその力を利用して自分の技に変換することができます。

まとめ

「折れない腕」は合気道における非常に重要な技術であり、基本的な技の一つです。この技術を習得することで、合気道の技をより効果的に使うことができるようになります。指導者によってはこの技術を教えない場合もありますが、その重要性を理解し、しっかりと練習することが大切です。

合気道の修行を通じて「折れない腕」をマスターし、さまざまな技に応用していくことで、より深い理解と技術の向上を目指しましょう。

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4月1日。空はどんより、でも心は晴れ。亡き師との不思議な再会。

皆さん、お元気ですか? 僕は今日も最高に元気です!

さて、4月1日は僕の合気道の師匠、故 井口雅博師範の命日。今年も、大切な師匠のお墓参りに行ってきました。

当日は、残念ながら空はどんよりとした曇り空。気温も14度と、春とは思えない少し肌寒い一日でした。昨年と同じように、朝9時50分に家を出発。車を走らせ、まず近くのスーパーヒダカヤへ。お供えのお花と、師匠が好きだったキリンラガービール…を探したのですが、見当たらず。今回は、キリン一番搾りの生ビールを代わりに買いました。師匠、許してくださいね。

お墓へ向かう途中、桃山町を通ると、鮮やかなピンク色の桃の花が満開!その美しさに目を奪われながら、師匠の眠る那賀町へと向かいました。曇り空だったのが本当に残念。せっかくの絶景を写真に収めることはできませんでしたが、今回は師匠のお墓の写真だけ、皆さんと分かち合いたいと思います。

合気道を長年続けていると、本当に不思議な体験をすることがあります。もう何十年も前に師匠から教わったはずの技が、ふとした瞬間に鮮明に蘇ってくるんです。

先日、僕が主宰するIAM護身術教室で螺旋の動きを教えていた時のこと。まるで師匠にそっと手を添えられたような、あの時の感触が突然よみがえってきたんです。無意識にその感触を再現してみると、今まで言葉でうまく説明できなかったこと、そして自分自身も気づいていなかった技の核心に、ハッと気づくことができたんです。本当に、師匠との繋がりを感じる、不思議な瞬間でした。

こうして、時を超えてもなお、井口師範と技を通して繋がることができる。今年も師匠のお墓の前で、その深い繋がりへの感謝と、これからも教えを受け継いでいけるよう、静かに手を合わせました。

僕もおかげさまで60歳をとうに過ぎ、ずいぶんな年になりました。それでも、師匠の偉大さには遠く及ばず、自分の才能のなさを痛感することもあります。師匠には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、少しでも師匠の教えに近づけるよう、これからも精進していく決意を新たにした一日でした。

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合気道の気と物理法則

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
2月25日の稽古では骨の技術の基本を稽古しました。骨の技術というのは人の骨格と物理的な身体の使い方を通して技をかけるものです。この記事は2つ前の記事と重なる内容のものを別の表現で書いてみました。

合気道は「気の武道」として知られていますが、僕たちの教室では、まず相手の骨格についての基礎知識を学ぶことから始めます。これは、人体の動きが骨格に基づいて行われるためです。

気というと、物理現象を超えたエネルギーと考える人が多いですが、僕たち人間は物理法則が支配する3次元の世界に生きています。そのため、気を使う武道でも物理法則を無視することはできません。

気は生命エネルギーであり、体内を流れる重要な要素です。合気道では、気の流れを意識し、無理のない「自然な動き」を重視しています。具体的には、気は水や空気のように流れやすい方向があり、それは人体に無理をしない方向です。このため、相手の骨格を理解することが、技を行う上で気の流れを理解するために不可欠です。

骨の技術とは?

僕たちが「骨の技術」と呼ぶこの概念は、物理法則を利用するための技術で、主に以下の3つの要素で構成されています。

  1. 物理学的原理
  2. 読み
  3. 合わせ

1. 物理学的原理

物理学的原理を活用した技術には、「呼吸力」「陽の技法」「陰の技法」があります。ここでは簡単に触れておきますが、「呼吸力」は地面とつながった力を相手に伝える技術、「陽の技法」は運動エネルギーを力として使う技術、「陰の技法」は作用反作用の法則を用いる技術です。これらは相手に力を伝えるための方法ですが、詳細な説明は別の機会に譲ります。

2. 読み

「読み」とは、相手の骨格の状態を観察し、どのように技をかけるかを判断することです。具体的には、相手の足元や肩、肘などの関節の位置を理解し、適切な動きを導き出します。

例えば、左構えから始める逆半身片手取り四方投げの流れを見てみましょう。この例は、あくまで四方投げを使った骨格を読む稽古であり、演武として行うものではありませんので、他の要素を省いている点にご注意ください。

  1. 畳縦一畳分離れて、取りと受けが左半身を前に相半身で相対する。
  2. 受けは、右手で取りの左手首をつかむ。
  3. 取りは、右手で相手の内側の手首をつかむ。
  4. 受けは、取りの動きを読んで四方投げを妨げるように力む。
  5. 取りは、つかんだ手首を受けの右足を軸に体が半時計周りに回転するように操作する。
  6. 受けの体が回転したら、受けの肘と肩を支点に無理のない円運動させるように折る。
  7. 相手の手が上がったら、すぐに一歩踏み込んで180度ターンする。

以上の動作で、5では足を読みながらどの方向に力を加えると相手がターンするかを、6では肘関節や肩関節を読み最低限の力で相手の肘を折るかがポイントとなります。

また、この四方投げのポイントは右手の持ち方で呼吸力が入るように持てるかどうかという点にあります。気の入った掴み手の呼吸力により、左足を踏み込んだ際に、物理的原理の陰の技法が効果を発揮して相手をさらに回転させ崩します。

3. 合わせ

「合わせ」とは、相手の力を感じ取り、その力との衝突を避ける技術です。多くの人は、ただ力を抜けば良いと思いがちですが、実際にはそれだけでは不十分です。力が抜けた状態になると気の流れが弱まり、いわゆる「気が抜けた状態」になり、攻撃に対して無防備になってしまいます。

合気道では、「気が入った状態」を理解するために「折れない腕」と呼ばれる技術を稽古します。これにより、腕に「気が入った状態」を理解でき、「合わせ」の技術の稽古が可能となります。「合わせ」を使うことで、相手の力と衝突せずに気を通すことができ、1の物理的技法がスムーズに適用でき、相手を自然な動きで導くことができるようになります。特に、片手取りや両手取りの技は、相手との力の衝突を避けるための稽古として非常に有効です。

IAM護身術教室では、「合わせ」の具体的な稽古方法として、自分の片手を相手に両手でつかんでもらって「折れない腕」を作りつつ、相手の力に衝突しない位置に持ってくるという稽古を行っています。

まとめ

IAM護身術教室の骨の技術は物理学的な考え方に着目した合気道の技の使用法ですが、それぞれが単独で使用するものではなく、一つの技の中にこれらの技術を如何に組み込み「自然な技」が実現できるかを目指して稽古しています。これにより、気の流れが自然に発生できるようになり、より自然な技が可能となります。合気道は「気の武道」と言いますが、それは気を使って相手を破壊するということではなく、気を使って相手を導く武道であり、それは物理的にも理にかなったものでもあります。

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【合気道秘伝】地の氣と繋がる

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、今年に入ってから、ご縁があり腰痛予防実践協会のお手伝いをさせて頂くことになり、中々ブログ更新が出来ていませんでした。

今回は、腰痛予防実践協会の理事長、八木先生の動画に私が出演させて頂いたので、そちらをご紹介したいと思います。

合気道に伝わる「呼吸力」の秘密

合気道では、師匠が弟子に「呼吸力を入れる」という儀式があります。

これは、地球の氣と人の氣を繋ぐ、非常に神秘的なものだとされてきました。

実際、私自身も長年その詳細を知りませんでした。

封印された秘儀、今こそ解き放つ時

この「呼吸力」は、一部の門弟にのみ伝えられる極秘伝であり、これまで表舞台に出ることはありませんでした。

しかし、これからの時代、日本人が日本の誇りを持って生きていく必要があると痛感し、この技術を様々な分野に応用できるよう発表することにしました。

その第一弾として、八木先生の動画に出演したというわけです。

呼吸力の正体がついに明らかに!

合気道では、この秘儀を受け、振魂の秘伝を授かると、多くの人が曖昧にしか理解していない「呼吸力」の正体がハッキリと分かるようになります。

ただし、今回公開しているやり方は、私が井口師範から受けたものとは少し異なります。

井口師範から教わったやり方は、左右の手それぞれで握手し、師範と私の繋いだ手と体で数字の8の字(または∞)を描くようにして、師範が握手した手に呼吸力を込めるというものでした。

このやり方だと、手が痛くなる上に、かなり慣れないと地の氣に繋がる感覚が得られにくいため、痛みなく手につなぐ、私独自のやり方を考案しました。

そして今回、遂にその方法を公開することにしたのです!

嘘だと思ったら、動画をご覧ください!

百聞は一見に如かず。

まずは、こちらの動画をご覧ください。

もし、あなたがあなたの師匠から「呼吸力を入れる」と言われて手を握られた場合、手の痛みではなく、自分の体にフォーカスし、氣を感じてみてください。そうすれば、身体が地と繋がり、非常に安定した体の状態となることがわかります。

しかし、意識を手の痛みに持ってくると、その痛みのため無意識で師匠から送られた氣がすべて手でシャットアウトしてしまい、地の氣と身体が結ばれません。

これは如何に師に忠誠心があるかという試練でもあったわけです。

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謹賀新年

皆さん、明けましておめでとうございます。
本年も素敵な年にいたしましょう。
皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

本年も合氣道の技の研究を進めていきたいとおもっております。

本年もどうかよろしくお願いします。

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合氣道と円運動

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
合氣道は円運動といわれますが、合氣道修行者にとってはかなり曖昧な表現だと思います。そこで、僕が学んだ合氣道での考え方を共有したいと思います。

このブログを読むと

武道を習得する際には、稽古を通じてさまざまな状況を経験し、その中で最適な動きを学ぶことが重要です。しかし、運動神経や相手を観察するセンスなど、多くの才能が必要です。そのため、本当に技を使えるのはごく一部の人だけです。特に、形稽古だけを行う合気道では、この問題が他の武道よりも大きいと感じます。このようなセンスの不足を補うためには、知識が必要です。ここでは、実際に行われている円運動について、その合理的な考え方を説明し、センスがなくても補える知識を提供します。

目次

・合氣道における円運動の理解
・円運動の重要性
・相手を導くための円運動
・相手を読むための二つの視点
・骨格の知識を活かす
・動く相手への応用
・まとめ

合氣道における円運動の理解

合氣道では「円運動」という概念がよく使われますが、単に円を描くように動くと、相手にその意図がすぐに伝わってしまいます。この原因は、相手のことを考えずに自分だけの円運動を行うからです。円運動は、相手をどう導くかを考慮することが重要です。

円運動の重要性

円運動の特徴は、移動半径を瞬時に変えられる点にあります。これにより、さまざまな方向に相手を導くことが可能です。これを聞くと「曲線運動」と混同されるかもしれませんが、円運動は円の中心を意識した動きの集まりであり、曲線運動とは異なります。合氣道における円運動と曲線運動の違いは、相手を考慮した曲線運動であるか、単なる曲線運動であるかにあります。

相手を導くための円運動

合氣道の円運動は、相手が動ける範囲でわずかな力を加えることで相手を導く技術です。つまり、相手の動きや力の方向を考慮し、それに合わせて利用することで、相手を自分の思う方向に導くことが合氣道の本質です。

相手を読むための二つの視点

相手を円運動に導くためには、以下の2つの視点が必要です。

  1. 相手の移動方向を見極めること
  2. 相手の骨格を理解し、ぶつからないようにすること

相手の移動方向を読むことは比較的容易ですが、骨格を読むことは意識しないと難しいです。まずは静止している相手を想定し、以下の2つの考え方を理解することが重要です。

【1】相手を一つの塊として捉える
相手を一つの物体と考え、接地面や角度を意識します。例えば、相手が足で立つ銅像のように捉え、その銅像を最小限の力で倒す方法を考えます。接地面を意識し、大きな円を描くように力を加えることで、相手を崩しやすくなります。

【2】相手の関節を中心に考える
人の動きは関節を中心に構成されています。相手を導く際には、相手の関節に負担をかけないように動かすことが重要です。これにより、相手の無意識な防衛反応を引き起こしにくくなります。相手は接点から来る力を基に体の態勢を整えようとしますが、こちらは関節に意識を置き、円運動をさせるように動かすことで、相手の認識に違いが生まれるため、相手は十分に力がだせなくなります。それによりこちらはそれほど力を使わなくても相手を動かすことができます。

そのため、相手の骨格の動きを理解しておくと非常に有利です。まずは肘関節など、単純な動きをする関節に注目して技を掛ける練習から始めましょう。

動く相手への応用

静止している相手に円の考えを適用できるようになったら、次は動く相手に対して技を掛ける練習をします。動く相手の場合、関節が移動するため、それに合わせた技をかける必要があります。このように、全体としては円運動にならない場合もありますが、関節を中心に考えることで、円運動になることが重要です。

まとめ

合氣道では、相手の骨格や動きを理解し、円運動を使って相手を導く技術が求められます。今回は、基本的な骨の読みの2つを紹介しましたが、実際の技ではまだ異なる骨の読みも必要になります。これら様々な要素を考慮しながら、相手を導くことが必要です。

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