「当会の技術について」カテゴリーアーカイブ

合氣道の3つのプロセスとは?!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、前回は氣と姿勢についてお話ししました。それは自分自身だけの問題でしたが、相手との関係性という視点に立ったときに、合気道の技には共通する基本的な3つのプロセスがありますが、今回はこのプロセスついて述べたいと思います。

このブログでわかること

相手との関係性という視点に立ったとき、合気道のすべての技は共通するプロセスで行われています。ところが、それらはバラバラに聞くことがあっても、プロセスとして余り語られないのが現状だと思います。今回は合氣道でよく聞くことばが、実はプロセスの一部であるということを明らかにすることによって、技の流れを理解し、それにより技をより深められるようになれます。是非最後までお読みください。

目次

・合氣道の技に共通の3つのプロセス
・「受け入れ」とは?!
・「合わせ」とは?!
・「導き」とは?!

合氣道の技に共通の3つのプロセス

合氣道の技を相手との関係性という立場に立ってみた場合、根本的な原理となるプロセスがあることが分かります。それは下記の⓵~③のを示すプロセスです。
①「受け入れ」の段階
②「合わせ」の段階
③「導き」の段階

この3つの段階で合気道の技がプロセスとして構成されています。ですから、相手との関係性から見るとすべての技はこの3つの段階を踏んで行われています。これは指導されている時よく耳にすることばじゃないでしょうか? 「合気道は戦わない! 相手を受け入れなさい」「自分勝手な技を行ってはだめです。合わせなさい」「無理やり持っていてはだめです。相手を導くのです」などです。しかし、バラバラに聞くと非常にあいまいで、抽象的な言葉にしかとれないのではないでしょうか?

しかし、これらの言葉は合氣道の技のプロセスとして非常に重要な意味を持っています。では、何故プロセスとして説明しないのかというと、実は合氣道の技の中に、このプロセスが何度も出現するから、その都度一番必要なことをいうとバラバラな表現になってしまします。

「受け入れ」とは?!

合氣道の最大の特徴は 、技を行う上で 先ず相手を受け入れることから始まる点にあります。相手を敵とせずに、敵味方を超えて相手をそのまま受け入れるところから始まるのが合氣道なのです。

これは精神論でもモラルの話でもありません。「受け入れ」は純粋な技術です。「受け入れ」というのは相手の氣や力を一旦自分の中に取り入れることをいいます。

例をあげますと、僕たちは立禅というものを取り入れていますが、立禅のチェックとして、真横から押してもらって安定しているか見ます。このとき大切なのが相手の力を受け入れるということです。軸が出来ていて相手の力を受け入れるとその力は自分の身体を通って落ち足から逃げていきます。その結果、非常に安定した身体となります。

ところが、初心者の場合、ありがちなのが押される力に逆らって体を押し返そうとすることです。すると軸がぶれ、簡単に押されてしまいます。ですから大切なポイントとして、一旦相手を受け入れることが大切です。

では、短刀や木剣を持った相手だとどうするのかという問題がのこりますが、人が攻撃しようとすると最初に氣がでます。その気をまずは受け入れるので、わざわざ相手の武器に当たる必要はありません。

「合わせ」とは?!

一般的に世間の人たちの合氣道の技の印象というのは相手の動きに合わせて、相手の力を利用し相手を制する護身術というものだと思います。ところが、合氣道の「合わせ」というのは単に相手の動きに合わせることを意味していません。

僕の師匠の井口師範は「合わせるといのは、相手とぶつからない状態を作ること」とおっしゃいました。ですから「合わせ」とは自分と相手の力や氣がぶつからない状態を作ることとを意味しています。

「合わせ」の真逆が「ぶつける」です。相手の力や気にぶつかった状態を作りますと、相手がこちらの情報や意図が非常に読みやすくなります。

一方、全くぶつからない状態、すなわち「合わせ」の状態を作るとこちらの情報は相手のへ殆ど行かなくなります。運動生理学では人間は何か判断してから動くまを反応速度といいますが、およそ0.5だそうです。情報が読めなければ、こちらの動きに0.5秒遅れて反応するということになります。その結果、こちらが技が繰り出されれば相手は当然対処できず技に掛ってしまうのです。

「導き」とは?!

合気道の初心者であっても、指導者が良ければ、比較的簡単に「合わせ」という動作ができると思います。しかし、その後、投げ技や固め技に入る際に力がぶつかって中々先に行けない合氣道修行者も多いのではないでしょうか?

次に必要なのは「導き」という要素です。導きとは、合わせた状態を保ちながら相手を投げたり、固めたりすることを指します。

具体的に言うと、例えば投げる場合、 「導き」とは、相手を一番倒れやすい位置に誘導することを指します。そのためには、相手の骨格を意識し、関節に無理をかけずにバランスを崩し、相手が倒れたくなる方向を見つけ出してそこに連れていく意識が重要です。

以上が合氣道jの3つのプロセスの説明です。合氣道の3つのプロセス「受け入れ」「合わせ」「導き」がすべてが調和という言葉で表すことができるとすでに気づかれた方も多いと思います。この調和をとれた状態を合氣道では「自然」といいます。そして、無意識でこの「自然」な状態を作れるようになるのを目指すのが合氣道だと僕は学びました。

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氣と姿勢はなぜ関係あるのか?

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

合気道においてなぜ姿勢が重要なのか、皆さんも疑問に思ったことはありませんか? 今回はその「氣」と姿勢の関係についてテーマにしたいと思います。この記事では、合気道での姿勢の重要性についてお話しします。

本ブログでわかること

合気道では姿勢が非常に大切ですが、「氣」という未知のエネルギーを使うので、姿勢が関係ないのではないかと思われる方もいるかもしれません。実際、氣はあらゆる不可思議なことが可能だとも言われていますが、その可能性と限界についても考察し、幻想と現実の違いを理解した上で、なぜ姿勢が重要なのかを説明します。 これにより、これまで氣に意識を向けても上達しなかった人が、より効率的に技を身につける方法が分かるようになるでしょう。

目次

氣の限界
氣と姿勢
正しい骨格の考え方と姿勢

氣の限界

「氣」とは、未知の宇宙エネルギーであり、それをコントロールすると物理的な現象を無視して行動できるとされています。仙人はその例です。彼らは空を飛び、水中に住み、姿を消し、一瞬で遠くへ飛ぶことができ、物理的な制約を超えた存在とされています。僕自身は仙人に会ったことはありませんが、彼らの存在を否定する証拠もありません。

タオイズムと呼ばれる思想では、あらゆるものは神(シン)・氣・精でできていると言われています。したがって、人だけでなくすべてのものに氣が存在していると言えます。そして、神・氣・精を生み出しているのは陰と陽の相対的な作用を持つ「徳」という存在で、さらに相対世界を超えたところに「道(タオ)」があるとされています。つまり、仙人とはタオを体得した人かタオに何らかの形でアクセスできる人のことで、相対世界を超えるところから氣を扱って、不可能なことを可能にしたり、あるいはあらゆることが可能になるのです。 ゲームを例にとればゲームプレーヤとシステム管理者との関係のようなものです。

このように考えると、私たちが仙人のような超越した存在ではない限り、周囲の物事の氣にも影響されると言えます。例えば、机の脚に鍛えていない足をぶつけると痛いのは、机の脚の氣の状態が足の氣の状態より強いためです。つまり、物体それぞれが持つ氣の状態が影響するのです。

しかも、私たちの氣には限界があります。たとえ氣を強く意識したとしても、物理的な制約を超えることはできません。例えば、空から落ちてくる巨大な隕石に当たれば即死します。氣で表現すると、人間の氣では隕石の状態を変えることはできず、物理的な影響を受けるということです。これが私たちの氣の限界です。

結論として、私たちは物理世界で生きている以上、物体それぞれが持つ物理的特性によって氣が影響される存在です。したがって、超越した存在でない限り、空を飛ぶことはできず、強い物理的な衝撃に遭うと死んでしまう可能性があるのです。私たち合気道修行者は、氣を使って超えられるものと超えられないものの限界を理解し、見据える必要があると言えるでしょう。

氣と姿勢

前述したように、私たちは物理的な制約を受けているため、どれだけ氣を使おうとも、その制約を超えることは難しいと説明しました。つまり、物理法則も氣の状態を示しているということです。だからこそ、私たち合氣道修行者はそれを理解した上で、氣を有効に利用する必要があるのです。

言い換えると、氣の状態で決まる物理的特性をうまく活用し、自分自身の氣を有効に使うことが重要なのです。具体的には、身体を氣を扱いやすい状態に整えるために、正しい骨格の使い方が大切です。だからこそ、合気道では姿勢が重要なのです。

私たちの道場では、具体的には物理的な氣の特性を考慮した姿勢の作り方を指導しています。一般的に言われる「胸を張り、背筋を伸ばした正しい姿勢」にこだわるのではなく、実際に技を使いやすい姿勢を重視しています。つまり、合理的で効果的な姿勢にフォーカスしているのです。

正しい骨格の考え方と姿勢

合気道に求められる姿勢というのはどういう姿勢かといいますと、合気道ではさまざまな技があり、しかも技の中で時々刻々と変わるため一概にどの姿勢が正しいとは言えません。

しかし、基本的に基準となる姿勢というのがありますし、共通のルールもあります。今回はそのルールに関して簡単なポイントだけお話ししたいと思います。

最も大切なのは丹田です。実は丹田というと人体には3つあり、上丹田、中丹田、下丹田なのですが、まず姿勢を意識する場合最も大切なのが下丹田である臍下丹田です。位置は臍より3寸下といわれています。ちなみに寸というのは3センチのことでなく、漢方医学で用いる単位で、人の親指の幅が1寸となります。この丹田の位置を意識することが姿勢作りで最も大切です。

次に大切なのが体軸です。私が学んだ合気道では3つの体軸があります。正面からみると中央と両乳首あたりの3つのラインを必要に応じて利用します。ですからどの軸を使うかで身体の使い方が変わってきます。丹田と体軸の関係は、まず丹田を意識して丹田がそれぞれの体軸をささえるという意識を持ち、身体をコントロールします。

さらに骨格で大切なのは、足腰の強さです。足腰が弱いと軸を保つことができません。特に左右2つの軸のいずれかを使う場合、片足で軸を支えることになるため足腰の強さは非常に大切になります。

そして合氣道の技の多くは手で氣を伝えるため、肩甲骨の使い方が非常に大切になります。とくに前側に手を出すときは肩甲骨が開いて前に移動する必要があり、また後方に相手を引く動作をする場合は、肩甲骨が背中で閉じる必要があります。

これらをうまくコントロールして、力を出すときは骨で骨を支えるような形で力を骨に連動するように伝えます。すると相手に大きな力を伝えるとともに気を伝達することができるようになるのです。

以上が氣を利用できる姿勢に関する最低限必要なことです。まだまだ言い足りませんが、基本をまず理解して技を組み立てることで技の掛け方がかなり変わります。

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技の効果を最大にする振魂の秘密

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

皆さんは 合氣道の準備運動に含まれる 振魂(ふるたま、ふりたま)には神道的な意義と武道的な意義の2つがあるのはご存じですか?  神道的な意義というのは瞑想や禅の役割を持っているというのは皆さんもご存じとおもいますが、武道的な意義についてはあまりご存じではないと思いますので、今回は武道的な意義について述べたいと思います。

本ブログでわかること

合氣道で振魂の武道的意義がわかった上で、それを意識して稽古していると、武道的な身体の使い方ができるようになり、技の効き目が非常に大きくなります。本ブログで説明する振魂の武道的意義をよく理解したうえで、振魂を行うことで技に大きな変化がでてきますので、是非最後まで読んで振魂の武道的意義を理解してください。

目次

振魂と合氣道との結びつき
振魂で力を得るポイント
振魂のポイントがわかると何ができるか?

振魂と合氣道との結びつき

振魂とは、古神道の瞑想法であり禊(みそぎ)の行でありますが、合氣道においても重要な位置を占めています。古神道家の山田雅晴氏は『古神道の行法と科学』の中で、「振魂は自分の魂を奮(振る)い立たせ気の力を強くすることで天地自然の中でけがれ(気枯れ)てきた生命力(霊力)をリフレッシュさせ、パワーアップをはかるために行う」と述べています。

合氣道においても、かつては準備運動の一環として「天の鳥船の行(船漕ぎ運動)」と「振魂」が行われていました。合氣道の二代目道主である植芝吉祥丸氏は、『絵説 合氣道入門』において、「この運動は、創始者が日本の古書にある故事にならい、練習の初めに、この動きで心身を清め、練習中、誤ちがないよう天に祈ったところから始まった」と述べています。

振魂は本来、精神面に作用する行法でありましたが、僕の師である井口師範は、「それ(精神面)だけじゃない。振魂が分かれば呼吸力が出るようになり技に繋がるんや」とおっしゃっていました。

僕はその言葉を聞いた時、「振魂を稽古することで霊力が高まり、気のパワーがアップすると驚くべき力が手に入るのだろう」と解釈していました。

しかし、実際にはそうではありませんでした。振魂の原理が分かった現在に分かったことは、井口師範は感覚的な方で具体的な説明は少なかったのですが、師範がおっしゃった断片的な情報から振魂に関しては特殊な霊力のようなものを持たなくても呼吸力が向上すると言われていたようです。

振魂で力を得るポイント

まず振魂をしらない読者の方に振魂のやり方を示しておきます。足を肩幅よりやや広く開いて立ち手で玉印(ぎょくいん)を組んで上下に振ります。ここまでは一般で行われている振魂のやり方です。

次に、武道的な意義を持った振魂について解説します。これには熟練度に応じて2段階のやり方があります。

【一段階目】
一段階目のやり方も殆ど一般的な振魂と同じですが、体が垂直に上下するよう膝の屈伸が伴います。膝の屈伸ですが手の動きに連動するように行う必要があります。そのポイントは、手を上に振るときは膝を緩めわずかに体を垂直に落下させ、手を下におろすときは膝を伸ばすようにし体を垂直にわずかに上昇させます。見た目はただ小さく膝を屈伸することで体を震わせているようにしっか見えませんが、このポイントが非常に大切です。

一段階目の振魂が確実にできるようになる目安は 、自分の中心軸で天地から気が入ってくるとともに手に気が抜ける感覚が起こってくると正しくできてきた証拠です。科学的な説明をすると、身体で起こる運動エネルギーが手に伝わることでそのような感覚が出ると思っていただくと良いと思います。

【二段階目】
二段階目では、徐々に上下の揺れを無くしていくようにし、最終的には全く膝の屈伸を行わず手だけを上下するようにします。ここで大変重要なポイントは、手を振るだけで、一段階目に感じた感覚に持っていくことです。

以上が振魂で力を得るポイントです。

振魂のポイントがわかると何ができるか?

ここまで読まれた読者の方は、「では振魂で感覚がわかるとどうなるのだろうか?」と疑問を持たれたことでしょう。まず下の画像をみてください。

これは 僕が人差し指を弟子の一人に持たせ振魂で下に手を下すときの感覚を指に伝えたときに起した現象です。井口師範の言われている「振魂の原理」がわかると人差し指のような弱い部分を持たれても相手に技をかけることができるようになります。

このような画像を示すと、反応は2つあると思います。一つは批判的な反応、もう一つは好意的な反応だと思います。
 ①批判的な反応として弟子がわざとかかっている
 ②好意的な反応として特殊な能力で技をかけている

好意的に受け取っていただいた方には感謝したいと思います。しかし、この技術は僕だけができることではありません。あくまでも技術ですので、誰でも再現可能な技術で霊力など特殊な能力は一切必要がないのです。

次の動画を見て下さい。二人にこの技を伝授していますが、かかった時間は本の3分ぐらいです(動画は端折っていますので1分半となっています)。当然二人は当会の黒帯ですが、初めての技ですので最初は全く分かっていませんが、原理が分かると二人ともすぐに使えるようになっている点に注目してください。

このように武道的意義をこめて振魂を稽古すると誰でもこういうことができるようになります。師匠はこれを「天地の氣を使う」とおっしゃっておられましたが、天地の氣が理解できなくても感覚がわかれば誰でもできるようになります。是非皆さんも振魂の稽古を真剣に行っていただきたいと思います。

また今回の内容を踏まえて前回の「気とは何か?」を読まれるとさらに理解ができるのではないかと思います。

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氣とは何か?!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、 今回は「氣とは何か?」というテーマでお話ししたいと思います。ただし、合気道という一分野の僕が理解できている範囲での氣について、個人的な意見を述べます。誤解のないようにお伝えしておきたいのは、僕の主張だけが絶対的に正しいという意図はありませんので、どうぞご了承ください。

本ブログでわかること

合氣道では「氣」という言葉がよく使われますが、その意味は非常に曖昧で、また個人によって主張が大きく異なるように感じます。そこで、このブログでは僕が考える最も現実的な気の考え方を紹介します。これによって、実際の合気道の技において「気」の概念をどのように応用するかが理解できるようになり、技術の向上にも繋がるでしょう。ぜひ最後までこのブログをお読みください。

目次

人知を超えた「氣」とは?!
物理世界と「氣」
タオイズムにおける「氣」
気をどう活かすか?!

人知を超えた「氣」とは?!

僕は合気道の達人である井口雅博師範に生前、「氣」という概念について何度か質問をしたことがあります。しかし、その時はまったく理解できませんでした。なぜなら、「氣」には人の理解を超えた部分とそうでない部分があり、それぞれの性質が相互に矛盾しており、理解を妨げる要素があるからです。

まず、人の理解を超えた部分についてお話しします。この話は以前にもこのブログで触れたことがあるかもしれませんが、気の説明に必要なのでしばらくお付き合いください。

ある時、僕は合氣道の師匠である井口師範に「氣とは何ですか?」と聞きました。すると、師範は僕に木剣を手に持たせて「後ろから打ってきなさい」と指示しました。しかし、誰でもそうだと思いますが、僕は他人を後ろから木剣で打つなんてできるわけありませんでした。だから最初は井口師範に当たる直前で木剣を打ち込むのをやめるることにしました。木剣が師範に最接近したとき師範は僅かに動いたのです。その瞬間、不思議なことですが自分の体が前に引っ張られるような感覚がしました。 師範は見ていないにも関わらず木剣が自分に近づいたのをキャッチして動いたわけです。私がそう気づいた次の瞬間 、「バカもん! ちゃんと木剣を振り切れ!」と師範は僕を叱りつけました。

このことで師範は木剣を確実に避けることができるとのだと僕は理解しました。そこで二度目に僕は思い切り木剣を師範めがけて打ち込みましたところ、体がふっと浮いたかと思うと、気づけば地面に転がっていました。

「これが気や! わかったか?」と師範が言いました。そう言われても、正直なところ僕には全く理解できませんでしたが、迫力に圧倒されて「はい」と答えてしまいました。ただ、人の理解を超えたものが存在するということは理解できました。

物理世界と「氣」

次に、合気道の技に応用できる、物理現象のレベルでの「氣」についてお話ししましょう。

ある時、僕は井口師範に「氣を使って人間は車に勝てるようになるのですか?」と質問しました。すると師範は「氣は人間だけが持つものではないんや!」と答えました。

師範によれば、車が動いているだけで既にその中には「氣」が存在しているそうです。そして車は「氣」の流れに従って動いており、その流れを止めるには相応の「氣」の力が必要ですが、一般の人間にはそれは不可能だとのことでした。

さらに具体的に言うと、すべての物体は「氣」を持っており、その「氣」によって状態が保たれているそうです。例えば、山の上に大きな岩があるとしましょう。その岩がその場所に留まっているのは、その静止した状態を保つ「氣」が存在しているからです。岩を動かすには非常に大きな力が必要です。しかし、何かしらの原因で岩が転がり始め、山の下に向かって落ち始めると、その方向に向かって落ちるという「氣」の状態が生まれ、さらに「気」の流れが生じて加速されていきます。そして、もはや誰もその動きを止めることができなくなります。

この例からもわかるように、自然が持つ「気」の力は非常に強力であり、人間のわずかな「気」の扱いだけでは簡単に自然の「気」の力を超えることはできないのだと、井口師範は教えてくれました。合気道とは、その自然の「氣」の力に近づくために修練するものなのです。要するに、物理現象も「氣」の変化であるということです。

但し、「氣」というのは物理現象だけでなく、様々な現象で起こりえます。例えば、スポーツや球技などにおいても、何故か勢いをもったチームや人は日ごろの実力をはるかに凌駕する力を発揮することがありますが、この現象も「氣」の現象と捉えることができます。このようにあらゆる物事の後ろに「氣」が存在すると思われます。

タオイズムにおける「氣」

合気道は古神道と密接に関連している武道であり、合気道における「氣」は日本の「氣」の思想に基づいていますが、日本の「氣」の思想は非常に曖昧で理解しにくいものです。そこで、合氣道の技において「氣」を利用する際には、中国のタオイズムにおける「氣」の思想に触れておくと良いと考えています。

タオイズムでは「万物は神(しん)、気、精で成り立っている」という考え方があります。タオイズムは中国の古代哲学・宗教であり、自然の法則や宇宙の原理を追求する思想です。

タオイズムでは、「タオ(道)」と呼ばれる絶対的な存在が宇宙の根源であり、万物の基礎とされています。このタオから派生して神(神霊)や気、精が生じ、宇宙や人間を形作ると考えられています。

「神(しん)」は宇宙の霊的な存在や神聖な力や法を指し、自然現象や事物に宿っています。一方、「氣」は万物に内在するエネルギーや生命力を表し、物質的なものから霊的なものまで幅広く存在するとされています。また、「精」は生命力や生命の本質を指し、人間の精神や魂、体内のエネルギーと関連付けられています。

このように、タオイズムでは万物が神、気、精という要素から成り立っており、簡単に言えば、神は指向性や法則を示す意思、気は神に基づいてすべてを成り立たせる力、精はそれを具現化する力と捉えられています。

したがって、「氣」とは、指向性や法則に従って万物を成り立たせる力であり、流れであると言えます。合気道では、「氣」を意図を実現する力ととらえ、「氣の流れ」を生み出すことで技となると考えます。

「氣」をどう技に活かすか?

さらに、具体的に「氣」を技を活かそうとする場合、この「氣の流れ」を物理学的現象、生理学的現象、心理学的現象に分類し、それらを理解した上で統合して技として活用することが重要です。したがって、当会では合気道の技をこれらの分類に基づいて説明しています。

当会ではこれらの3つの現象を以下の4つのカテゴリーに分け技術として修練しています。
1骨の技術
2皮膚の技術
3皮膚感覚の技術
4空間感覚の技術

これらに関しての詳しい内容は過去の記事を参考にしていただければと思います。

なお、 僕が最初にあげた合気道における人間の理解を超えた「氣」の例について、それは「氣を感知できる能力」と捉えることができると思います。言い換えると、人間の能力の範囲内で実現可能かもしれませんが、 「誰でもできる護身術」を目指す当会では それはやはり一部の人間しか実現できな特殊な能力であると考えています。

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自然な技は物理の法則に従う

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、前回は何年も続く合氣道の初心状態から抜け出すにはということでお話ししました。今回はその続きで物理の法則に従うということを深掘りしていきたいと思います。

本ブログでわかること

合気道の基本は物理の法則に従うといっても具体的にわからないという人が多いと思います。今回は具体的にどのように物理の法則に従って技に活かしていければ良いかということで次の順で説明していきたいと思います。

1.物理の法則に従うための2つの考え方
2.骨格の読み方
3.力学的な考え方

このブログでは、合氣道の効率的な技の掛け方がわかるとともに、誰でもスムーズに自然に近い演武が可能となり、また護身術としても使えるようになりますので是非最後までお読みいただければと思います。

目次

・物理の法則に従うための2つの考え方
・骨格の読み方とは?
・力学で考える
・バラバラには使わない

物理の法則に従うための2つの考え方

合気道で物理の法則に従うための2つの考え方というのは次の通りです。

1.骨格から考える
2.力学で考える

1つ目の骨格を読むという点から説明していきましょう。人間の体は、骨によって支えらえています。動きは全て関節を中心に体が動くわけです。 一部の流派では関節を破壊するために逆関節を極めるものもありますが、 基本的に合氣道の技は関節の動きに沿って技をかけるもので構成されています。ですから関節を無視して技をかけることはできません。そのために骨格の知識が必要で、そこから技を考える必要があります。

2つ目の力学を使うということですが、合氣道ではよく例に出される「梃子の原理」を使うというだけでなく、動く物体に関する力学なども大切です。運動エネルギー、作用反作用の原理、力の合成などの基本知識を知っているとかなり技が広がります。

骨格から考えるとは

合氣道では先ず相手のバランスを崩してから技をかけるのが基本になります。 しかし、実際に技を行う際に相手のバランスを崩そうとすると非常に難しく感じます。その結果 ややもすると崩しながら技をかけようとしまいがちです。

この大きな原因の一つに相手の骨格を考えていないというところにあるようです。二足で立つ人間というのは実は非常に不安定な存在ですから本当はバランスを崩しやすいはずなのです。それは 人形を立たせると指一本でも簡単に倒せるという事実からもわかります。人間が安定して立っていられるのは脳が自動的に状況を判断して常にバランス修正をしているためです。

そのため大きく崩そうとすれば即座に脳が反応して一歩踏み出してバランスを取ろうとします。これが相手を崩す難しさです。そこで相手のバランスを奪うにはどうするかという、実は「半バランス状態にしてから導く」というプロセスで相手を崩します。

分かりやすい例でいいますと、下図のように相手を後ろに崩す場合、相手には後ろに一歩踏み込んでほしくありません。そこで両踵を支点にして相手を後方に少しだけ崩します。さらに膝の曲がりを考えながら安全に尻が地面に付く軌道に導いてやると相手は勝手に倒れます。

ポイントは相手が一歩踏み出さないように反崩しの状態して、そこから相手が膝を折りやすくするにはどう持っていくかと考えることで、抵抗なく相手は投げられてくれるようになります。何故なら、このようにすると脳はより動かない安全にバランスを取る方を選択してしまうからです。

これは骨格から考えることの本の一例です。膝、股関節、肩関節、肘関節、手首の関節など技をかける際に考慮すべき個所がたくさんあります。基本的にはこれらをもとにして如何に導くかという思考を常にもつだけで、骨格を無視した動きとはならないのです。下の動画は腕の関節をどのように読むかという一例です。

力学で考える

一概に人間の体は物体でできているので力学で技を考えることができるといわれても、どのように考えていいのかわからないのが普通だと思います。普通合氣道の道場でよく言われるのが支点・力点・作用点を使った「梃子の原理を使う」という発想でしょうか?

ところが、梃子の原理を追求していても中々技に応用するアイデアが出てきません。それよりも、運動エネルギーで考えることの方が有用です。合氣道では動きを止めず技を行うことを氣の流れを途切れずに行えといいますが、実はこれは運動エネルギーを利用することでもあるのです。

例えば、例えば人の体重と同様の60キロの鉄の塊が紐にぶら下がっていて左右に揺れているとします。これが自分の方に向かってきたとするとかなり恐怖を感じますが、運動エネルギーの凄さは誰もが経験的には知っているものです。相手が人となると甘く見てしまいますが、運動エネルギーを効率的に使えれば技を行う際に非常に大きな味方になります。

当会では運動エネルギーを効率的に使うための技術として陽の技術と陰の技術というのを指導しますが、これらは相手に如何にぶつからず効率的に運動エネルギーを伝えて崩すかというための技術です。

さらに核の氣という技術がありますが、これは作用反作用の法則を巧みに利用する技術でもあります。このように運動エネルギーの使い方を身体に落とし込めると技を行う上で非常に大きな助けとなります。

バラバラには使わない

以上の2つの基本的な考えは個別に私用するという問題ではなく、両者を複合して適切に使う必要があります。そのため特に骨格の読みは無意識レベルまで落とし込む必要があります。

技をかける際に、「こっちの方向」など読んでいると技をかけるまでに余分に時間がかかってしまいますので、上記の映像の一教で使えるようになれば、小手返しや四方投げでも同様の稽古を行うなどさまざまな方面で応用を広げていく必要があります。

このようにして感覚を研ぎ澄まし、物理法則での技ができるようになることが非常に大切です。当会ではそれを体の段階と呼んでいます。

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最短で初心の域から抜け出す方法

皆さん、お元気ですか? 僕は今日もメチャクチャ元気です。

僕のyoutube動画を見た方や、アマゾンキンドルの電子ブック「力の弱い人でもできる護身術」の読者の方やこのブログの読者の方から時々「何年も合気度をしているが中々初心の域からぬけだせない」と相談のメールを受け取ることがあります。実は僕は合氣道を何年も稽古をしましたが中々初心の域を抜け出すことができませんでした。そういった悩みを抱えている人が多いと思います。 そこで今回は合氣道を最短で初心者から抜け出す方法について解説していきます。

なおここでの解説は、形から如何に実用的な技術に変えていくかという観点に立って述べていますので、全くの初心者の方はまず形を確実に覚えて動けるようになってから本ブログの内容を参考に初心の域を超えてください。

本ブログでわかること

合氣道でどうやったら初心の域から抜け出せるのか? 僕も合氣道を始めたころはそうだったのですが、武道では考えるより慣れよといってコツは教わるがあまり理屈的なことはタブーとされていますので、何年修行しても中々初心の域を抜け出せませんでした。現在はYoutubeやブログなどでさまざまな方が合氣道のテクニックなど公開していますのでそれらを使って学んでいくことができるといっても、

・そもそも最初にどう稽古すればよいのか?
・それが正しくできているのか?
・効率的に稽古する順番?

このように悩んでいる方は結構多くいると思います。今回のブログでは、こういった悩みを持たれている僕のように長い間初心者の域から出られなかった方に最速で初心者の域から抜け出せるヒントとなる内容を紹介していきたいと思います。

目次

●先ずはどう稽古すればよいのか
●正しくできているか?
●効率的に稽古する順番は?
●今回のまとめ

先ずはどう稽古すればよいのか

まずは「氣さえマスターすれば達人になれる」という発想を止める必要があります。 初心の域を超えるにはこの世界は物理世界の法則に従っているということを理解することから始めます。

別に唯物論を語るつもりもありませんが、超常現象を引き起こす氣を使うという発想ではこの物理世界と対極の考えに陥ってしまい、物理世界は低次元とか思ってしまうとより技の習得が困難になります。それよりも物理世界の法則を味方につけるという発想が大切です。

そして、氣で起こるといわれいる超常現象的な技も実は物理学、生理学、心理学で十分説明しうるものもが多数存在します。そこで合理的に実現しやすいメソッドを採用すべきです。

・物理の法則を味方につける
・生理学的な反応を味方につける
・心理学的な反応を味方につける

ということから始める必要があります。

正しくできているか?

どの技のどの部分が 物理学、生理学、心理学的な解釈ができるのかという知識が必要になります。この点については、ご自分で研究されるか、本ブログの過去の記事を読まれると良いと思います。

当会では、物理学的な解釈ができる技術を骨の技術と呼び、生理学的な解釈がでものを皮膚の技術、さらに皮膚の技術を一歩進めたものに皮膚感覚の技術、心理学的な解釈ができるものを空間感覚の技術と分けています。

先ず、物理学的な考えとしては、

  1. 相手をどの方向に導けばくずれるかを理解する
  2. 相手の骨格の無理のない方向を読み取る
  3. 相手に技をかけるのは筋力でなく、運動エネルギー

という3つの考えで、優れた人の技を観察するとよいでしょう。

次に、生理学的な考えとしては、

  1. 相手の反応を引き起こすにはどう接触するか?
  2. 自分が如何に動けば相手が思うように反応するか?
  3. 相手に反撃をさせない動きは?

最後に心理学的な考えとしては、

  1. 基本はマジックと同じ心理トリックだと理解する
  2. 相手に錯覚を起こさせるにはどうした動きをするか?
  3. 相手の不意を突く動きはどうしたら良いか?

自分の考えが正しいかどうかのご判断には以上の考えが必要になります。

効率的に稽古する順番は?

一般的に「氣」さえが分かれば合氣道が上達するといわれています。しかし氣は目に見えませんし、人によって言うことが違うこともよくあります。そういったあいまいなものを獲得するというのは非常に難しいと思います。

まず大切なのは物理学、物理的にに相手を崩すにはどのように崩すかを知ることが第一です。次に、生理学上の性質を知ること、最後に心理学上の性質、心理学上の性質というのはマジックなどが非常に参考になると思います。

最後に氣についてですが、これは非常にあいまいなので、それぞれの経験によるものになると思います。僕も氣とはこれだという答えはありません。こういう話もあります。

僕も実は師匠に「氣とは何ですか?」と聞いたとき、後ろから木剣で頭を打つように言われ、仕方なく打っていったら見えていないにもかかわらず絶妙なタイミングで避けられた結果、バランスを崩してひっくり返ったという経験があるのですが、師匠に「これが氣や! 分かったか?」と言われましたが意味がわかりませんでしたが、雰囲気的に「はい」と答えてしまいました。

今回のまとめ

最後に、もう一度初心の域をでるためにどうすれば良いかをまとめると次のようになります。

  • 物理学、生理学、心理学を味方につける
  • 物理学、生理学、心理学で説明できるかを考える
  • 物理学、生理学、心理学順で技を構成していく

よくある間違いとしては、僕も経験があるのですが、先輩や周りの人の中に教えたがり屋の人がよくいて、その意見を聞いてしまうということがよくあります。その人たちが言っている通りにできているのならよいですが、想像で話すことの方が多かったように感じます。

まずは実際に言葉通りにできるかどうか確かめて技に逆らってみるということで確認する必要もありますが、多くの場合嫌われると思いますので注意してください。

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相手に繋がる!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、合氣道では「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と言われることがあると思います。かなり抽象的すぎる言葉だと僕は思います。今回はこの相手と繋がるということについて話していきたいと思います。

本ブログでわかること

「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と指導されることが合氣道ではありますが、実は抽象的な概念ではなく繋がる為の技術があるのです。

さらに、この繋がる技術も物理的につながる場合と感覚的に繋がる場合の2種類あります。本ブログではその違いを明らかにしつつ、さらに詳しく踏み込んで説明します。もしあなたが、指導者に「相手と一体になりなさい」 「相手と繋がりなさい」 と言われたが 、あまりにも抽象的すぎて「果たしてどうすれば良いのだろう?」と悩まれたことがあるなら、最後まで読むことで多くのヒントが得られます。

目次

●2つの「相手に繋がる」技術
●物理的に繋がる技術とは
●感覚的に繋がる技術とは

2つの「相手に繋がる」技術

僕の学んだ合氣道では相手と繋がる技術として次の2種類ありました。
 ①物理的に繋がる技術
 ②感覚的に繋がる技術

物理的に繋がる技術というのは呼吸力を用いる技術で、呼吸力を用いるためには統一体を作る必要があります。また、感覚的に繋がるというのは氣の流れを用いる技術です。氣の流れについては2種類あります。一つは自分の体内で氣の流れを感じるものと体外で氣の流れを感じるものの2種類です。

物理的に繋がる技術とは?!

①の物理的に繋がる技術の要は「呼吸力」にあります。この技術で技を受けた人はまるで重機とでも相手してるかのように圧倒的な力の差を感じるか、もしくは力が全く出せない状態に持っていかれていると感じます。

この理由は人間は二足歩行という点にあります。具体的にいいますと、二足で立つというの非常に不安定な状態にあるということで、人間は安定を保つために、常に状況を判断して最適に立てるように無意識で調整しています。

その不安定さを示すものとして、子供が遊ぶ人形があります。誰もが子供のころ遊んだと思いますが、人形を立てるというのはかなり難しく、ちょっとした振動でも簡単に倒れてしまいます。このように2足というのは非常に不安定な立ち方なのです。

そして武道では相手に対してより強く立つにはどうするかという点が非常に大切になります。そのため合氣道では統一体を作り、相手の力を一度受け入れ相手の力を地面に流れるようにします。これにより地面から自分の力が返ってくるように相手はなります。こちらはその力に自分の腕力を少しのせてやると勝手に相手はバランスを失ってしまうわけです。

この統一体を作る上で大切な点は、「相手と独立する」という点です。「相手と繋がる」と言いながら独立するとは少し変に聞こえるかもしれませんが、相手と支え合うと相手も安定しますので、相手に支えられる状況を作ってはいけません。

そのためまずは相手と独立した姿勢で決して相手に寄りかかることが無い姿勢をし統一体を作り、相手の力を感じたならすぐに相手の力を受け入れるように意識をすると、相手の力は地面へと流れます。これが相手と繋がった状態といいます。

要するに、相手の力が自分の体を通して流れ地面に達する状態にするのが物理的に繋がる技術です。しかも武道として成り立つためには相手には統一体にさせないようにする必要があります。

感覚的に繋がる技術とは?!

次に②の感覚的に繋がるというものに2種類あるとおなししました。まず、体内で氣の流れを感じる技術ですが、当会では皮膚感覚の技術と名付けて稽古しています。

皮膚感覚の技術というのは、相手と軽い接触をした状態で相手を導き崩す技術です。この技術で崩された人は、軽く触れられているだけなのに何故か崩れるという感覚を受けます。大概の人は意味が分からず、不思議さによって何故か笑いが出てくるというような技です。

実はこの技を行うためには、まず自分の体内で氣の繋がりを作っておく必要があります。多くの場合は、左右の手を繋げていることが多いですが、場合によれば足と手をつないだりすることもあります。そのため技を行う前に準備が必要な技です。

僕は実は整体のセラピストもやっているのですが、その視点からこの繋がりを筋膜のテンションではないかとみています。しかも、自分の内部で作った筋膜のテンションは、相手の皮膚に引っ掛けるだけで、相手の筋膜にテンションを伝えることができるので、あたかも外部からコントロールされているかのようになると考えています。

ですから気を感じるような超能力が無い人でも、この筋膜のテンションが意識できれば、相手と繋がることができるようになります。ただ、体内で繋がる感覚をすぐに起こせるように日ごろから筋膜のテンションを感じる稽古しておく必要があります。

2つ目の体外で氣の流れる感覚を使うという方ですが、僕はこれは生理学的な反応と心理学的な反応をミックスした感覚と考えています。

人間の目を機能的に分けると、中心視野と周辺視野に分かれていますが、周辺視野では見るというより感じるという感覚の方が強いのです。周辺視野は動く物体をとらえることに発達した視野ですので、これに意識を置くとかなり微妙な運動を感じることができます。この微妙な動きの感覚を使って相手の初動をとらえることができると、相手の動きに合わすことができるようになります。そうすると、相手と繋がった感覚を目で感じることができるようになります。

これが体外での気を感じることに通じるものだと僕は考えています。確かに、もっと第六感的な超感覚というのはあるのは否定しませんし、僕の師匠はそれを感じることができましたから、もっと深いものがあるのは確かですが、目の機能を使った感覚の捉え方であればだれでも実現可能だと思います。

今回は僕の感覚的な内容をお伝えしたので、考えが違う方もいらっしゃるかもしれませんが、ヒントになった方もいらっしゃるのではないかと思います。

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ひたすらの繰り返しが奇跡を起こす!

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、僕は少年時代、小学校から大学まで、もともとは学年でもトップクラスの運動オンチでした。そんな僕は実質は26歳から合氣道を本格的に学んで、現在は武道家をやっていますが、当時の僕からするとまさに奇跡としか言いようがありません。今回は過去を振り返ってみて、この奇跡が何故起こったのかを考えてみたいと思います。読者の方々の参考にもなると思いますので、良ければ最後までお読みください。

本ブログでわかること

武道では何度も何度も繰り返す稽古が大切という話を聞きますが、一つのことをひたすら続けると本当にありえないことが自分の身の上に起こります。少年時代の超運動オンチだった僕が元格闘家を含めいろいろな武道経験者に合氣道の技術を教えています。この僕を変えたのは、他の武道やボクシングなどでは手打ちと蔑まれるような一見非常識と思われる当て身の稽古をただひたすら続けたからです。その結果、奇跡が起こった訳ですが、そこから得られた極めて重要なことをお話ししたいと思います。技の上達が今一度と思われている人は是非参考にしてください。

目次

・今何を思っているかで将来が決まる
・師の言いつけをひたすら守った結果
・ショボいと思った当て身は実は凄かった
・奇跡が起こった理由

今何を思っているかで将来が決まる

中学校や高校では学年に一人や二人はいると思いますが、何の障害も持っていないにも関わらずどうしようもないほどスポーツができない生徒がいます。僕のその中の一人でした。

そんな僕は人生で2度合氣道に挑戦しています。1度目が22歳の時でした。しかし2年程して指導員の先生に上達が全くできず退会を促されました。2度目は26歳の時で、永遠のわが師・故井口雅博師範に入門したのがそれです。

1度目の合氣道を志した理由は「健康になるため」でした。ただ立ってだけでも30分すら持たないほど体が弱かったため、氣という生体エネルギーが高まる合氣道をすると健康になるといわれたからです。しかし、そんな軟弱な体を持つ僕にとってはたった1時間の合氣道の稽古は僕を苦しめただけで、何も得るものがありませんでした。

2度目は、暴行を受けたことで、「沢山の人が見ていても誰も助けてくれる人はいない。自分の身は自分で守るしかない」と思い、井口師範に入門しました。そして、2年もすると普通の人並みの健康を手にいれました。

僕の体を健康にした原因として、この2つの合氣道の違いはどこにあったのかというと、結論からいうと、2回目に良い師に巡り合えたからではなく、考え方の違いにあったと思います。

1度目の合氣道は、「健康になるため」というのを裏を返せば「今健康でない」という意識からきています。一方「身を守るために技を少しでも身に付けたい」という思いには「今健康でない」という意識が全くなかったわけです。

技を何としても身に付けたいという思いから、不調で寝ていても壁を押すなど稽古をしていたぐらいです。その結果、技が身につく体に少しずつ変わって行き、技が身につくために最終的には病魔まで追い出してしまったわけです。

師の言いつけをひたすら守った結果

僕の行う打撃は他の武道やボクシングでいう単なる手打ちです。しかしそれがわが師・故井口雅博師範から教わった打撃法でした。下の映像から見ても僕のパンチはただの手打ちでしかありませんが、元格闘家の人が後方に飛ばされています。

僕がこの打撃法の練習をしているのを見た多くの人は「そんな手打ちのパンチを練習しても意味がない」とよく言ったものでした。

しかし、僕の勝手な解釈では、当て身を「合氣道は投げがメインなので、軽い打撃で牽制して投げの補助を行うもの」としていたのでしたので、師匠の方法で良いと考えていたのです。

そして毎日毎日ひたすら手打ちの打撃の稽古をしたものでした。するとある日、体に芯が通る感覚ができてきました。その感覚を使うと、何故かあまり力を使わず人が投げれるようになったのでした。合氣道でいういわゆる呼吸力が出てきたというものです。

僕は師匠はこのために、僕に当て身の稽古をひたすらするように言ったのだとそのとき理解しました。

ショボいと思った当て身は実は凄かった

僕は長い間、合氣道の当て身は手打ちだから大したことが無いと真剣に思っていました。ところが師匠が亡くなり、喪に服して3年経ち、合氣道をもう一度始めようと思ったのですが、師匠と肩を並べられるような先生を探しましたが見つけることができず、結局合氣道はあきらめ打撃系格闘技であるジークンドーをすることにしました。

やはり、40代に入ってからの打撃系格闘技では、片目の見えないハンディを持つ僕にとっては非常に負担が大きいものでした。特に若い人を相手にするスパーリングでは、体力負けをしてしまうことが度々ありました。

そんなある日、パンチングミットに打撃を打ち込む稽古をしていたとき、体力に限界を感じ、手抜きで思わず合氣道の当て身をだしてしまったのです。要するに手打ちでミットを叩いたわけです。すると、ミットを持っていたパートナー役の人が、「何ですか? 急に打撃が強くなりましたが、疲れたようにしていましたが、実は体力を温存していたのですね?」と言ってきたのです。

僕は手を抜いて楽な合氣道の当て身に変えただけだったので非常に驚きました。それで、ジークンドーのパンチングのトレーニングで、疲れてきたら合氣道の当て身を行うということをやり出したのです。ここにきて初めて他の打撃系の人たちに手打ちと蔑まれる合氣道の当ては実は凄いと実感し始めたのです。

それからしばらくして、ジークンドーでスパーリングを行ったとき、相手が空手の高段者と当たりました。僕は短期決戦でないと勝てないと思い、相手の打撃に合わせて入り身で入り軽いけん制のつもりで相手の胸に突きを行いました。

すると相手が2メート後方に吹っ飛んでドンという大きな音とともに尻もちをつきました。これには会員が全員おどろき、側でスパーリングをしていた人たちも一端動きを止めて、私たちの方を見ました。隣でスパーリングをしていた人が大きな声で「合氣道! すげー」と叫んだぐらいです。でも一番驚いたのは当の本人、僕だったのです。何故ならコチラは全く実感がなかったからです。このとき初めて合氣道の当て身がこれほど恐ろしいものかと知ったのです。

そしてIAM護身術として合氣道を教えている今、以前に中国拳法の達人の先生が「太極拳では食勁と言って、師の打撃を直接身体に受けることを行います。師の打撃を受けると、感覚が分かり打撃力が師に近づくのです」と言っていたことから、僕も弟子にときどき本の軽くお腹に打撃をするのですが、多くの弟子がその日に腹を下したと言うのですが、それは大げさに言っているのだろうと勝手に思っていました。

そして、先日、弟子のひとりの当て身の軸が非常に整ってきているの見て、「随分と良くなりましたね。じゃあ、僕のお腹に当てて見てください」と言って、打撃を直接受けたところ、かなりの衝撃が内部まで入ってきて、内臓にダメージを感じました。

最悪だったのが翌日です。38度ぐらいの熱が出、一週間後熱がおさまってからも身体が非常にだるいという体調不良が2週間も続きました。打撃をもらった日より3週間前には空手の黒帯の身長190センチ、体重100キロ以上の巨漢のパンチを鳩尾(みぞおち)にもらっても平気だったのですが、弟子の当て身は鳩尾を外して打ったにもかかわらず、打たれた瞬間、約2,3秒声がかすれ、さらには腹に思い鈍痛が残りました。

これによって合氣道の当て身というのは非常に恐ろしいと痛感しました。僕の場合、ただひたすら師匠の言われるままに稽古を行い、壁や立木や電信柱を叩き続け、何年もかかってコツと思われるものを掴んだのです。やはり継続は力といいますが、他の武道で手打ちと蔑まれる打ち方でも継続していると奇跡が起こるのです。

でも、 剛柔流空手の四段 の師匠が手打ちのような当て身を教えること自体をよくよく考えてみますとそこには訳があったのは明白ですよね。今冷静に考えるとさすが達人、凄い意味があったのですね。

奇跡が起こった理由

ここで、超運動オンチの僕が当て身を稽古をひたすら行うことで、身体が健康になり、しかも様々な武道経験者にも指導できるというようになったという奇跡が起こった理由としては次の2点だけだと思います。

①優れた師匠のいわれる通り改変することもなく稽古を行った
②ひたすら稽古を何年も続けた

①についてですが、師匠の弟子となった人は何人かいますが、当て身について言及する人がいません。というのは僕ほど当て身の稽古を行った人がいないからだと思います。

師匠が指導した当て身は見た目は他の武道の人に蔑まれるいわゆる「手打ち」ですから、こんなの稽古しても意味がないと誰もが思うのです。ところが、僕は運動オンチという劣等感から、ひたすら一人稽古ができる当て身に打ち込んだのです。このお陰で当て身のコツを体得し、今は簡単に多くの弟子たちに指導できるようになりました。

②については、師匠はあまり理由も話さないし、師匠から打撃も受けたことがありません。「僕の打撃は本の軽く小突いただけでも致命傷を負わすから、そう簡単に出せんのや」と師匠はいい、師匠の打撃を経験したことが一度もありませんでした。

ただ、私の打撃を見て、その都度指示を出すだけでしたので、多分多くの弟子の人たちは師匠の前ではいうことを聞いていても、毎日ひたすら稽古をすることが無かったのだと思います。

しかし、何年も稽古している内に、身体が安定し軸ができるのを感じ取れるようになりました。そしてこれが合氣道でいう呼吸力という特殊な力だったのです。

もともと空手もしていた師匠がこのような当て身を教えること自体を考えると、師匠もやはり合氣道開祖のいうように当て身をひたすら稽古した証でもあるのだと思います。そして一つのことをひたすら稽古する意味を伝えたかったのだと思います。

「三年かけても良師を探せ」 という中国のことわざがあるそうですが、私の当て身の例からも、次元が違う一般常識と異なる技術を学ぶときはそれを体得した師の存在は絶対に必要だと思います。地図やガイドが無くして見知らぬ山の頂上には登れないということですね

こういった点からも井口雅博師範とご縁ができたことは本当に良かったと思っています。

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メリットが多い入り身突き

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気といいたいのですが、若干調子が悪いです。実は少し前までダウンしていました。そのためしばらくブログが更新できませんでした。そのダウンの原因は強烈な合氣道の当て身を食らったことで、その翌日から熱を出して寝込んでしまったのです。

僕はかなり自分の腹の強さには自信をもっていましたが、弟子に完全に打ち破られました。 弟子のひとりの入り身突きががなり上達したので、どれぐらいのものかと思い腹で受けてみたのが間違いのもとでした。

過去の経験からどうやら脾臓を痛めたようです。以前脾臓を痛め3週間入院したことがありますが、症状が非常に似ています。

よくよく考えてみると、僕は合氣道の完成域の当て身を直接受けたことが無かったのですが、ここまで利くとは思ってもみませんでした。

今回はこの恐ろしい威力を持つ入り身突きについて述べたいと思います。

このブログでわかること

入り身突きは一見すると、相手の攻撃に合わせて入り身をして当て身を加えるという非常にシンプルな技です。ところが、これを正しく行うと非常に大きなダメージを相手に与える技になります。このブログでは、入り身突きで正しい打ち方ができるための基礎を述べ、そのポイントを明確にすることで誰でも護身術につかえるレベルの強烈な入り身突きができるように解説します。非常にメリットの大きい技術ですので、合氣道初心者から中級者の方まで是非最後までお読みいただくとよいと思います。

目次

入り身突きとは
入り身突きのやり方
入り身突きのポイント
入り身突きの稽古のメリット

入り身突きとは

入り身突きとは、当会では「相手の攻撃に合わせて相手の外側に入り、当て身を行う技術」を指します。やり方は非常にシンプルです。

①相手と畳一枚分(一間)離れて相対する
②受けが正面突きまたは正面打ちを仕掛ける
③攻撃が当たる寸前に入り身をして相手に打撃(当て身)を行う

入り身突きは近年の合氣道では殆ど使われない技術じゃないかと思います。同門でない人としては、第2代目の故・吉祥丸道主がときどき剣取りや杖取りの演武の際に行われていた技術です。同門といっても僕自身も道場で稽古したのではなく、師匠である井口師範から個人的に教わった技術です。

この技術を稽古することでさまざまなメリットがあります。詳細については後半で述べています。

入り身突きのやり方

以下では一人稽古でできる入り身突きのやり方を説明します。

①半身の構えで構える
②前側の足をセンターラインより外に移動し、統一体を作る
③身体を安定させたまま後ろ側の足を外にまわし、当て身。

  足運びの図

入り身突きのポイント

入り身突きに関していえば、先ず一人稽古を徹底的に行うと良いでしょう。そして入り身突きのポイントが把握できた時点で二人稽古を行うと良いと思います。

【一人稽古】
入り身突きの一人稽古では3つのポイントに留意して稽古する必要があります。やり方は前節で説明した通りですが、単にその動作を繰り返すだけでは大抵は悪い形が身について終わるだけです。そこで3つのポイントを説明します。

一つ目のポイントというのは、前節で説明した一人で行う形をやる際に、統一体を養成するという意図を持つことです。動きを覚えるのではなく統一体というきっちりと軸を意識した強固な姿勢を作るという意思をしっかりと持つ必要があります。

二つ目のポイントとは、移動する第一歩が重要です。その一歩から丁寧に統一体を作る意思で踏み出す必要があり、踏み出し終わりでは確かな軸(左が前なら、3つの軸の内の左軸)を作ります。

3つ目のポイントはその軸を保ちながら、後ろ側の足を引き、相手のセンターラインの軸に対して最も強い力が出せる角度で体の位置を決め、確実な統一体を作ることです。この3つもポイントを意識し、統一体が出来て初めて当て身を行います。

【二人稽古】
確実に入り身突きができるようになったら、次は二人稽古に入ります。二人稽古の際は、特に重要なのは受けに回る方、要するに最初に攻撃する人の意識が非常に大切です。

合氣道は、本来の相手との距離は一間(畳の縦一畳分)です。この距離は攻撃する人からするとかなり離れているように思いますが、実はこの距離はかなり実用的に設定された距離なのです。

運動生理学によると、人間の反応に要する時間というのはおよそ0.5秒と言われています。一般の成人男性が静止状態からスタートした際に0.5秒で到達できる距離が2mです。昔の人間であれば、その身長を考えると畳一枚分と考えられるわけです。

しかし多くの格闘技ではもっと狭い距離感で戦いますので、疑問に思った人もいるでしょうが、そもそも現代の格闘技というのはルールに則って行うものです。そして相手の戦う方法もわかっています。しかし、本来の武道というのは、各流派、各門派でそれぞれ秘伝があり、闘いになったとき相手がどのような戦闘法で来るか分からないというところからスタートです。ですから不用意に敵に近づくようなことはできないわけです。

こういった点は合氣道にも残っていて、護身を考える上でも相手との距離を意識することは非常に大切で、相手が2m以内に入った時点では、武道的には常に先を取っておく必要があり、師匠である井口師範は「相手が迫ったら、氣の流れを途切らせれず、常に相手より先を動いている必要がある」と言っていました。

話はそれましたが、二人稽古ですが、受けの人は距離感をしっかり守った上で、しっかりと取りの人に当たるように攻撃を仕掛ける必要があります。しかも、気をしっかりと出して打ち出す必要があります。

その上で、取りは相手の氣の変化をとらえ、入り身をして、当て身を行います。ただし、統一体を作った当て身を実際に当てると肋骨が折れるだけではすまないので、当たる手前で止める必要があります。いわゆる寸止めというものです。

入り身突きの稽古のメリット

入り身突きを稽古することには多大なメリットがあります。まずは一人稽古ができることです。そしてペアでの稽古においても様々なメリットもありますので、併用して稽古を行うことをお奨めします。それぞれの稽古におけるメリットは次の通りです。

【一人稽古でのメリット】
①入り身突きでは合氣道の稽古が一人でできる
②工夫次第でさまざまな統一体の稽古ができる
③呼吸力を発揮するための統一体の稽古となる
④どのような態勢で呼吸力が発揮できるかがわかる

①については説明の必要はないでしょう。②についてですが、単に形として稽古するだけでなく、例えば入り身突きで当て身を入れる際の統一体をより完成度を上げるために、例えば、当て身を入れる手前の統一体と同じ体の形を作って壁を叩いたり、押したりする稽古など非常に有効な稽古となります。③と④というのは非常に近いものですが、投げなどでも統一体は非常に大切ですが、入り身突きで瞬間に統一体を作る稽古をしていると、投げの際にもこの経験が活きてきます。

【二人稽古でのメリット】
①合氣道に必要な距離感が身につく
②相手の気を読む稽古ができる
③物理的な攻撃のタイミングが理解できる
④攻撃ラインを外す技術(さばき)が身につく
⑤ 合氣道の各種技で呼吸力を発揮するタイミングがわかる

①の距離感については既に述べた通りで、必ず相手と相対するときは畳一枚分で行うことです。②についても受けが打つという気をはっきりと出して行うことで相手の気を読む稽古となります。③については、相手とのタイミングのやり取りが身につきます。④については何度も繰り返すことで、小さな動きで躱す技術が身につきます。⑤は相手が攻めるくるという状況で、相手の力の発揮するポイントをずらして技をかけるのが本来の合氣道の技ですので、タイミングを読む稽古により投げ技などで活かされるようになります。

  ◆   ◆   ◆

日本の多くの道場ではあまり当て身のやり方を説明しないと聞いています。道場によれば師範が「人を傷つける当て身のような危険な技は教えていないし、教えるつもりもない」と言って、基本の正面打ち、横面打ち、正面突きのやり方も指導することなく、見よう見真似でやるようにいわれます。

しかし、例えば毒蛇の毒に対しては毒を研究する必要があるように、こういった攻撃技も正しいやり方を学び、その特性を知っておく必要があると僕は考えます。

空手や中国拳法を学んだ経験から申しますと、空手、拳法、ボクシングなどの連打の経験がないと、次の攻撃すら気にしないような技の掛け方をしてしまいます。これは僕だけではなく多くの合氣道修行者が陥る問題ではないかと思います。

このような思いをもっておられる合氣道修行者も少なからずいると思います。そんな方は今回の記事を読んでいただいて、ひそかに一人稽古をされると良いと思います。一年も続けているときっと技に大きな変化がでてくるでしょう。

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合氣道で当て身を重大視すべき理由

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、今回は一般の合氣道では殆ど重視されていない合氣道の打撃法である「当て身」の重要性について述べていきたいと思います。今回から何度かに渡り当て身を解説していきたいと思います。今回はその概要を説明します。

このブログでわかること

当て身は合氣道の技を行うために相手をけん制するだけのものではありません。当て身の稽古を行うことで合氣道の技に与える様々なメリットがあります。このメリットを知ることは合氣道の技の大きな向上につながります。特に当て身の指導を受けていない合氣道修行者の人には、 当て身の基本が身につくように、 手の作り方から基本的な知識を今回は述べますので、是非最後までお読みください。

目次

当て身の稽古の利点
当て身の基本の手刀と拳について
軸の考え方
実際の軸の使い方
当て身が合氣道の基礎となる理由

当て身の稽古の利点

当て身の稽古の利点を上げますと次のようになります。

①一人稽古ができる
②軸を使った統一体を作るタイミングの習得
③当て身を知ることは打撃技の対策となる
④身体の正しい運用の仕方がわかる
⑤ 合氣道の氣の技術が向上する

 合氣道修行者の大きな悩みはやはり一人で効率的な稽古ができないことではないでしょうか? しかし、当て身は一人で稽古できるものです。というかむしろ一人で稽古した方が稽古がし易いといえます。

 合氣道の技で呼吸力を使うには統一体が出来ている必要があります。しかし、稽古相手がいる場合、どうしても意識が相手に向かい、統一体を作ることより相手をどうにかしようとしてしまいがちになり、統一体を作る稽古が中々できません。しかし、一人稽古でできる当て身の場合、姿勢など十分注意して統一体を作ることを意識しつつ自分のペースで稽古ができます。それにより強固な統一体を作り、それを形稽古で活かすことができるようになります。

ファンタジーに出てくるように何でも効くポーションというのは実際には存在しません。毒の対策には毒をよく知り、それを中和する対策が必要です。それと同じように、打撃を知らずして打撃に対応するのは不可能です。ですから合氣道の打撃である当て身を深く知ることは護身の上でも非常に大切です。

打撃法というのは、単に暴力を振るうということではなく、そこには技術が存在します。その中には身体のバランスの取り方、タイミング、心身統一など様々な要素が含まれています。当然、それらには投げ技に関係する要素もあり、身体の運用の基本が当て身では学べます。

当て身は動さが非常に単純なため、氣の運用法も投げに比べ非常に単純です。ですから当て身で氣の運用を学んでおいてそれを投げに応用する方が非常に早道だといえます。

当て身の基本の手刀と拳について

一般的に多くの合氣道の道場では当て身が割合軽視されているようです。ひどい場合には拳の握り方や手刀の使い方すら教わらないケースがあると聞きます。しかし、 当て身は 、身体の動きをシンプルに表現する非常に大切な動作の一つでもあります

合氣道の当て身には、拳、手刀、肘、肩を使います。古い時代では蹴り技も稽古したといわれていますが、合氣道では主に手刀(てがたな)と拳(こぶし)が基本となりますのでここではそれらを説明します。

まず手刀です。師匠の井口師範の指導した手刀で説明します。指を開き、気を籠めます。このとき指は打撃をした時に衝撃でお互いにぶち当たらないように図のように指は揃えないで開きます。氣を籠めるというのは、 少し力を加えられても動かない程度に 指を一本一本の張りを強くします。

拳の作り方は、小指から順に強く握っていき、最後親指で包み込んだら、ふっと力を抜き2~3ミリほど緩ませてから、拳の内側に籠った氣が拳の外側に回るように氣を張ります。こうすることで、拳の内側に向かった氣を拳の外側を覆うように意識することで、固いものを殴っても氣で吸収することができるようになります。

そうすることで相手の頭蓋骨を叩いて骨折するということが少なくなりますが、それでも万が一のためにその手で毎日固いものを叩きある程度慣れておく必要もあるとのことです。ただし、合氣道の場合は当て身は空手や拳法のように主体ではなく一撃必殺を目指すわけではないので、強くするかどうかは後は趣味の問題になるでしょう。

軸の考え方

合氣道では体軸が3本あると考えます。身体の正中線を通った軸と、両乳首に沿った2本の線です。基本的には、正面打ちは正中線を使い、それ以外の当て身は、右手での打撃は右側の体軸、左手での打撃は左側の体軸を用います。

*各自軸の使い方に口伝あり

実際の軸の使い方

合氣道で当て身を実際に行う際は次の2点をまずに決めて行う必要があります。

①どの軸を使うか
②どう氣(力)を流すか

合氣道の当て身は、基本的に地球から氣を借りて行うので、この2点を意識することが非常に大切です。

軸とその軸を中心とする回転運動を連想する人がおられるかもしれませんが、当て身で使用するのは、統一体を作るのに使う天地を貫く軸です。

そのため最初に軸を決め、その軸での統一体を作り、それから地面とつないで地球の氣を借ります。ここでは氣と言いましたが、実際は科学的に解釈した場合、軸の使い方によって地面からの力を使う場合と地球の重力を使う場合の2通りあります。

この2点を決めるだけで、軽く出したパンチや手刀でもかなりの打撃力を示します。この2点が正しくできると、ボクシングで悪い例と言われる「手打ち」のパンチですら女性でも強力な打撃力を実現します。

当て身が合氣道の基礎となる理由

合氣道での当て身を行う場合、即座に軸を決め、その軸で統一体を作る必要があります。統一体は合氣道の各技において必須の条件ですので、当て身の稽古で瞬時に統一体を作る訓練ができていると当然、投げ技や固め技において、どういった形で統一体を作ると良いかというのが判断できるようになります。その結果、合氣道の技の効き目がかなり向上します。

ですから、当て身の運用は、単に相手をけん制するだけのモノではなく、投げ技においても身体の使い方という点においては、当て身の運用と同様に軸に対して統一体を作るため、同一と言えます。ですから、一人稽古で当て身の稽古をするのは形における投げ技を正しく運用するために必要な基礎力を身に付けるのに非常に有効なわけです。

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いかがでしたでしょうか? 当て身の一人稽古の大切さがわかっていただいたのではないでしょうか? 次回は、最も一人稽古がしやすい入り身突きについてお話ししたいと思います。

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