皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。
さて、前回は統一体というのは合氣道の稽古において非常に重要な位置を占めていて、しかも古い稽古ではシステムとしてちゃんと組み込まれていたというお話をしました。
具体的には合氣道の準備運動の中に座禅、古神道の天の鳥船の行や振魂の行などがそのシステムをなしていたということでした。
なお、この古いシステムでは、統一体をつくる基礎として座禅を使っていますが、当会ではより応用がきく中国武術の立禅を採用しています。そこで今回はその立禅を紹介したいと思います。
このブログでわかること
合氣道の準備運動に組み込まれている禅の真の意図が理解できます。さらに、その意図をより効果的に実現できる立禅のやり方を覚えていただくことができ、より一段と高い稽古ができるようになります。また統一体が理解できることで様々な方面で応用ができるようになります。
目次
・立禅の意義
・立禅の注意点
・立禅のやり方
・立禅の完成度チェック法
・立禅と日常の姿勢と統一体
立禅の意義
合氣道の準備運動で座禅が組み入れられている道場があると思います。ところがどうして座禅をするのかということについてはかなり曖昧に精神統一の一つと教えらえることが多いように思います。
古い合氣道では準備運動の中に、システムの一環として座禅、天の鳥船の行、振魂の行が入っています。これは後にくる形稽古にリンクできるように一連のつながりをもって組み立てられていて、ここを理解していると呼吸力と呼ばれる力が得られやすくなります。
当会ではその流れに従いつつも座禅の代わりに立禅を採用しています。その第一の理由は、座禅より統一体が自覚しやすい点です。具体的には立禅は統一体になっているかどうかのチェックが容易なのです。
中国武術では立禅を站椿(たんとう)と呼んで必ず稽古の中に含まれています。站椿では足腰の鍛錬も含まれていますが、当会では統一体を作る目的で行っていますのであまり低い姿勢での立禅は行っていません。
この項の最後として立禅のメリットを挙げておきます。
・身体の安定感が養われる
・精神が非常に安定する(はっきりと自覚できる)
・内臓の働きが良くなる
・集中力がつく
立禅の姿勢は注意が必要!
立禅のやり方を説明する前に、立禅での姿勢での大切な点について説明します。といいますのは、スポーツ科学で言われる正しい姿勢と立禅での正しい姿勢があまりにも違うため誤った立禅をしないように誤解を最初に避けておくために「立禅での姿勢」について最初に話します。
一般的に正しい姿勢というのは、下図の右側の図のようにヒップアップ (骨盤を前傾) し、背骨がきれいなS字を描く姿勢です。
一方、立禅の姿勢は、下図の左側の図のように背骨が縦に直線に並ぶように立ちます。 この立ち方では、地面からの力が損失無く直接リアルタイムで時間損失無く伝わることで、地面の力を借りて安定が得やすいというところにあり、合氣道独自の力の呼吸力を出す基礎でもあります。
ただし飛んだり跳ねたりするには向かない姿勢でもあります。飛んだり跳ねたりする場合は、やはり西洋式の良い姿勢の方が 、背骨に直接掛かる圧力をS字で上下方向にたわむことで吸収して分散させ、圧迫骨折などの危険から免れる 効果があります。
ですから場面によって使い分けが必要です。
立禅のやり方
前項の背骨をまっすぐに立てるということを踏まえて、立禅のやり方を説明していきます。
まず足幅は肩幅に開き、左右の足を平行になるように立ちます(ハの字や逆ハの字は無効)。
膝を少し曲げ(体力のない人は軽く曲げる程度で良い)、骨盤を後傾(性器を前に突き出すようなしぐさ)させて、背骨をまっすぐに立てます。基準ですが、どれぐらい真っ直ぐにするかといいますと、柱のコーナーに背骨を当て、尾骶骨から首の元まで隙間がなくなる位にします。はじめは多くの人は腰当たりが浮き、指が入りますが、密着できるように訓練が必要です。
さらに体が前後に傾斜しないように、まっすぐ立てて、手を真下に垂らし、掌を少し反らして力を籠めます。
中国武術の立禅(站椿)で多いのが手を前に向かい合わせにするのが多いですが、当会では、太極拳のある流派の初級の立禅に習い地面を感じることができるように下に腕を垂らします。
これは合氣道の基本である一教での腕を抑えたときの呼吸力をつけるためでもあります。
視線は前方に向け、視野を広くとり、周りの状況を広く見渡せるようにします。目は半眼といって、目を細めます。
立禅の完成度チェック法
立禅がうまくできていると、身体は統一体となり非常に安定した姿勢となります。そこで統一体のチェックとして、左右の真横から力を加えてみます。その際、押した側にふらつかずどっしりとした感覚があればOKです。
次に手を折れない腕を作る際のように気が入っているのをイメージしてもらい、チェックする人に腕を上方に力を加えてもらいます。体がぶれず、チェックする側の人がかなりの重さを感じたなら、腕の状態はOKです。
立禅と日常の姿勢と統一体
立禅を指導しますと、日常の生活や運動する際にこれをどう取り入れるかという質問がときどきありますので、ここではそれに対する回答を述べたいと思います。
立禅は飽くまでも安定性を感じるための立ち方であり、中国武術の特殊な力である勁や合氣道の呼吸力が最も習得しやすい形であるというだけで、実際は様々な姿勢それぞれに統一体といえる姿勢があります。
例えば横になった場合、立禅の姿勢は有効になりません。しかし、呼吸力は横になった状態でも発揮することができます。これはこれで、立禅で得られた感覚を使用して寝た状態で最大の統一体をつくることで可能になるのです。
このように、大切なポイントは統一体ができることで、立禅の姿勢ではありません。別の言い方をすれば、西洋スポーツ式の姿勢ではその姿勢の中にも統一体と呼べるものがあります。西洋スポーツでも、一流の選手は一流の統一体を作って行っているものです。
ちなみに、立禅は静止したままで行いますが、動きのある場合もその中での安定した統一体があります。古い合氣道をはじめ当会では、天の鳥船(あめのとりふね)の行や振魂(ふるたま/ふりたま)の行で動きの中で統一体を作る指導をしています。
この様に立禅の姿勢に余り拘りすぎると場合によっては安定を無くす原因にもなりますので注意が必要です。大切なのは目的です。立禅の目的は統一体を自覚するためのもので、この立禅が統一体を作るのに非常に優れた方法だということです。
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今回は、古い合氣道のシステムである禅⇒天の鳥船の行⇒振魂に連なる最初の禅の部分で大切な統一体の作り方を立禅を例に説明しました。次回は天の鳥船の行に関して述べるつもりです。
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