11月12日(火曜日)と13日(水曜日)2日に渡り、東京より空手の師範の方が来られ、合気道の達人の井口師範の秘伝を学んでいかれました。
個人指導の依頼を受けた際、合気道の私が、当身の専門家、しかも空手の師範の方に、とても当身を指導するのはおこがましいと思っておりました。
そこで、当身は大まかな説明をやって、皮膚の技術を習得していただこうと考えておりました。しかし、当日、当身の原理を説明しましたところ、空手の師範の方が日ごろ疑問に思っていた部分と一致し、それが解消できたととても喜んでいただけました。
ちなみに、合気道の当身では、腕力を使って拳を運ぶのではなく、気の流れ(体幹の運動で運動エネルギー)を作って、気の流れにしたがって、肘で拳(拳からから前腕を一つのかたまりとします)を運ぶと発想をします。
要するに、合気道の当身は、運動エネルギー主体で、その運動エネルギーによって、手が運ばれる動きになります。このようにすると、脱力感があり、力感がありませんので、ある意味頼りなく感じます。そのため、腕力で拳を運んだ方が、スピード感、充実感があり、多くの方は、腕力に傾くのも無理はないかと思います。
このように説明をすると、打ち出し方が若干違うだけで、大した違いが無いように聞こえると思いますが、実際に、40kgの砂を満たした砂袋を打つと、この違いが極端にでます。
40kgの砂が満たされていると、砂袋はコンクリートのように、固くなっていますので、腕の力だけで、拳を加速して拳を打ち込むと、日ごろ鍛えておられても、衝撃が即座に手首に帰って来、手首が折れそうになります。それだけでなく、手で加速したパンチは、手だけが動くため、砂袋を動かせるエネルギーが無いので、砂袋は1センチほどゆれるだけです。
一方、体幹に運動エネルギーを作ってから、拳を加速した場合は、砂袋に手が触れた瞬間、運動エネルギーが先に、砂袋に伝わるため、思ったほど衝撃が手首に帰って来ず、砂袋が大きく揺れます。
空手の師範の方もこれを体験され、
「空手の奥儀に、肘と膝が大切とありましたが、これのことだったのですね」
と、おっしゃられ、長い間、疑問だったことがようやく分かったと言っておられました。
空手でも古来の稽古では、巻きわらを打ち、その時に一体感を感じたといわれていますが、このような奥儀が残っているところから、抵抗のあるものを無数に打っている中で、自然と運動エネルギーを生み出してから、拳を肘に乗せて運ぶというような突き方を、昔の人は、身に着けておられたのでしょう。
こう書くと、合気道の当身式のやり方がいいことばかりのように思われるでしょうが、実際に、それを指導すると、
『先ず体が動いてからパンチがでるのなら、簡単に予測されてしまうではないか』
と多くの人は考えてしまいます。その結果、腕力に頼るパンチになってしまうのです。
それが落とし穴です。実は、運動エネルギーを作った時点では、パンチの飛ぶ方向がまだ決まっていないのです。肘で拳を運ぶつもりでいると、パンチを出している際でも、パンチの軌道が変えられます。極端にいうと、パンチ当たる寸前までコントロールできるということです。ですから、相手に当たる少し前に当てる場所をきめてやると、相手はどこを突かれるかわかりませんので受けるのが非常に困難になります。
ですから、当然ですが、パンチの軌道を相手に悟られない技術も必要になり、その技術も当会には存在します。当会では、「指導者の言うことが絶対だから」という発想はありません。「稽古していたらその内わかる」式な指導は出来る限り避けるようにしており、修行者に実際に確かめて、納得していただいて稽古を行っていただきます。
正直いいまして、私は空手のまったくの素人ではありません。在籍期間は3年ほどですが、合気道の修行の合間に、週1のペースで極真会館に通った経験があります。それでも、空手の師範の方に比べますと、空手に触れた程度ですので、今回の個人指導で、合気道と空手の共通する原理を再確認でき、とてもいい勉強になりました。
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