骨の技術2(肩甲骨)

一般の合気道の道場ではあまりいわれない(と聞いています)ですが、井口師範は、「合気道の技を行うのに肩(肩甲骨)の位置が非常に大切」とおっしゃいました。

堂々と胸を張って構えていると、雄々しく強そうに見え、見ていてすがすがしく感じられます。ですから、そのように構えておられる合気道師範の方もYoutubeなど見ていますとときどきいらっしゃいます。

ところが、井口師範は、「肩を後ろにずらすのはよくない。背中が丸くなるのが良い」とおっしゃられました。前回でも述べましたが、首は曲げずまっすぐ伸び、背筋もまっすぐとして、肩甲骨を前にずらして丸めよということです。

肩甲骨の位置がどれだけ重要かというのは次の実験をしてみるとわかります。

①受けの両手を後ろからつかみます。
②領とをつかまれたまま、受けは、胸を張ったきれいな姿勢を取ります。
③取りは受けの両手を、斜め下後方に引っ張ります。
④受け逆らおうとしても、簡単に後ろに倒すことができます。

⑤次に、①と同じく受けの両手をつかみます。
⑥受けは、胸を凹ませるように肩甲骨の位置を前に滑らせます。
⑦取りは受けの両手を、③と同様に斜め下後方に引っ張ります。
⑧受けが逆らおうとすると、後方に倒すことができません。

このように肩甲骨の位置が後方にひかれていると、後方に対して非常に弱くなります。
実はこれは、隅落としの大事な原理にもなっているのです。

さらに、大切なのは相手を押すとき、肩甲骨から直接相手の接点まで棒がでているつもりで、その棒を肩甲骨で押すように力をいれるというのも非常に大切な意識の持ち方です。そうすることで、肩甲骨は後方にずれず、また、体の構造上、前面に力を伝えるのに非常に強くなるからです。

肩甲骨から押された場合、受けは非常に大きな力と感じ、
「恐ろしいちからですね」
と、受けにういわれることがよくあります。こちら(取りの方)は、殆ど力をいれた感覚はないので、その反応に驚きます。

一般の合気道では、
  力をいれない=力を感じずふわっと投げられた
と思っている人が多いから、そういう反応をするのです。呼吸力とタイミングの技との区別がつかないのですね。

さらに、井口師範の指導する合気道の場合、運動エネルギーがのってきますので、座り技呼吸法などの呼吸技では、『途方もない力で押された』という印象をもちます。まるで10トントラックと軽トラが押し合いするぐらいの極端な差を感じるものです。

これを腕力と考えると、合気道の上達は遠いものとなるのです。開祖・植芝盛平翁先生の技を受けた人達は、「まるで雲を相手にしているようだった」とか「鋼鉄(はがね)のようになって、跳ね返された』とか全く矛盾することを言っていますが、実は、開祖自身、そんなに力をいれているおつもりではなかったのです。

本ブログを読んでいる合気道をしている人で肩甲骨を意識した人はいないと思いますので、半信半疑だとは思いますし、実際自分で行っても、巧くいかないかもしれません。そこで、嘘ばかり書いていると思われるかもしれません。でも、できるにはできる理由があります。それがコツというものです。それがわからないとできない人にはできないのです。

やはり、できる人に教わらないと、勘所がわからないのです。私は若い時分からそんなに運動神経がいい方ではありませんでしたが、井口師範に教えを受けることで、私はできるようになりました。わかる人に教われば、運動神経など関係ないのです。もし興味があるようでしたら、当会にお越しください。