合氣道における呼吸力の理解とその難しさ

皆さんお元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
今回は呼吸力とは何かということに迫ってみたいと思います。なお、呼吸力については様々な意見があり、僕自身はそれらを否定するつもりはありませんが、このブログでは井口師範に教えていただいた呼吸力について述べ、井口師範から伺ったことを記載するので、他の考えにたいする批判だと誤解されないようにお願いします。こういった考えもあるのかとお考えください。

目次

呼吸力の抽象性とその理解

合氣道では呼吸力が重要とされていますが、その実態は非常に抽象的で、修行者が自分で想像するしかないのが現状です。二代目道主の植芝吉祥丸氏は、「呼吸力とは、臍下丹田(重心)から気・身・体が一致して流れる力のこと」(『合気道入門』より)と述べています。また、私の師匠である井口師範は、「天地の気を中心で呼吸して得られる力が呼吸力」と言いました。しかし、どちらも抽象的で、具体的に呼吸力が体にどう作用するのかはわかりにくいです。

多くの合氣道修行者は、開祖やその弟子たちの言葉を元に自分なりに呼吸力を想像しています。そのため、私が井口師範から教わった呼吸力を見せると、ほとんどの人が「それは単なる筋力です。呼吸力とは違います」と言います。

井口師範から教わった呼吸力は、まるでブルドーザーのような絶対的な力で、圧倒的なパワーを感じました。ただし、呼吸力を使っている方はあまり力感がないためやった感じがしないのも特徴です。しかし、多くの修行者が期待する呼吸力は、受けた人がふわっとした感じを受ける念力のようなものです。

呼吸力がわかりにくい理由の一つは、合氣道の技にあります。一般的に合氣道では一つの技の中に何種類もの要素が含まれています。例えば井口師範の技には「呼吸力、気の流れ、螺旋形」の三つの要素が含まれており、それが井口師範の指導する合氣道の技です。そのため、特別な場合を除いては、呼吸力だけを単独で教えることはなく、技の中で体得するしかありません。

井口師範の指導と呼吸力の体感

井口師範も開祖から「呼吸力をやる」と言われて手を掴んでもらったり、呼吸力を示してもらったりしたことで体得したと話していました。私は幸運にも井口師範の稽古に参加する際、送迎を担当していました。そのおかげで、稽古の帰り道に個人的な指導を受ける機会を得ることができました。

井口師範は、呼吸力を示すために私と両手で握手をし、「これから呼吸力を与える」と言って、その感覚を伝えてくれました。その時、立っている時は足の裏、正座している時は脛を通じて地面と臍下丹田が繋がる感覚が生じました。これが「地の気を呼吸すること」なのだと直感しました。

地の気と繋がる感覚を得た後は、当て身の稽古を行い、正しくできているかをチェックしてもらいました。最初は当て身の稽古だけでしたが、毎日繰り返しているうちに、井口師範が示してくれた呼吸力を理解できるようになりました。

呼吸力が分かった当時、言葉ではうまく表現できず、他の道場の人に示しても「単なる力技」と勘違いされることが多かったのを思い出します。座り技呼吸法で呼吸力を示しても、「すごい筋力ですね」と言われるだけでした。

しかし、井口師範が亡くなって21年経った最近、「呼吸力がわかれば天之鳥船の行と振魂の行の意味が分かる」という井口師範の言葉からヒントを得て、呼吸力を説明できるようになりました。

呼吸力の種類とその鍛錬法

私がインスピレーションで得た呼吸力に関する解釈では、呼吸力には3種類あります。天の氣に繋がる呼吸力、地の氣に繋がる呼吸力、そして地の氣を水火の氣に変える呼吸力です。

具体的には、合氣道の技で最も大きな役割を果たすのが腕であり手です。手には左右がありますが、左の語源が「火足(ひた)り」で、右の語源が「み(水)極(き)」ということから、左手で扱う氣を火の氣、右手で扱う気を水の氣と当会では呼びます。そして、この手を使って氣を呼吸力に変えて相手に伝える際に、感覚で力の出方を感じ取ったとき、大きく分けると、垂直下方、垂直上方、水平方向に分かれます。

垂直下方に呼吸力を伝える場合は、まず天の氣と丹田をつないぎ、手から下方に呼吸力がでるように氣を手に伝えます。呼吸力を垂直上方に伝えたい場合は地の氣と丹田を繋ぎ手から上方に向かって呼吸力がでるように気を伝えます。さらに水平方向については、軸を意識する必要があります。軸は水火の呼吸力を実現するには正中線とは別に左右の乳首の位置の正中線と同じ深さにある軸を利用します。左の軸を火の軸、右の軸を水の軸と呼んでいます。水平方向の呼吸力を出すには、この軸をしっかりと立てて、地面と繋がり、そこで初めて左右の腕から氣を出して相手に伝えます。

このように氣を使って呼吸力に変換すると、その力は相手にとって非常に大きな力と感じるようになります。この鍛錬方法が天鳥船の行であり振魂の行であるのです。振魂の行は天の氣と地の氣の両方に繋がる行法で、天之鳥船の行は地の氣を水火の氣に変える行法です。さらに合氣道の技においては水平方向の水火の氣の扱い方が重要であるため座り技呼吸力鍛錬法が合氣道では用意されています。この座り技呼吸力鍛錬法は現在は座り技呼吸法と呼ばれていて、一つの形となって稽古されていますが、非常に重要な稽古です。

ただ、大切なポイントとして合気道の形では単に呼吸力だけを使うものではなく、さまざまな要素が入っているという点です。ですから、どの部分で呼吸力が使われるのかというのが分かりにくくなっているため呼吸力というものが曖昧になってしまっているのだと思います。

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