呼吸力と合氣道と古神道の儀式

皆さんお元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。
今回は前回の呼吸力の続きで古神道の儀式との結びつきについて書きました。

このブログでは

開祖が存命のころには天の鳥船の行や振魂の行が準備運動にふくまれていましたが、これを省く道場が多い現在、わが師の井口師範から教わったそれらの武術的意義を明らかにしたいと思います。口伝については述べられませんが、師は「呼吸力が分かれば、天の鳥船の行と振魂の行の意味がわかる」と述べており、それらは武道的な意義があることを示唆していました。このブログではそういった背景と武道的意義について述べることで今後の合気道修行者の人の参考になればと書きました。

目次

古神道の行法と現在の合気道の脱宗教

最近の合気道では、開祖が行っていた宗教的な儀式の行法を省く傾向があるようです。特に、かつて合氣道の準備運動に含まれていた古神道の行法である「天の鳥船の行」や「振魂の行」を行わない道場が多いようです。例え行っていても「天の鳥船の行」と言わず「船漕ぎ運動」と言って行っているようです。

しかし、合氣道は元来「氣」を合わせる道であり、天地水火の氣を丹田に取り込みそれと調和することを修練する武道です。一方、神道は天地に存在するすべての神を敬い、天地の氣を摂取し、水火の氣を身体に具現化し、自らを「火水(かみ)」となす道です。そのため、神道の要素を否定すると、合氣道本来の成り立ちが損なわれるように思います。

開祖存命のころの合氣道で扱う「氣」という概念は、人知を超えた神秘的なものであり、神道的な要素を含んでいました。しかし、開祖他界後は、日本語では「気」を心の持ち方としても解釈できるため、修行者それぞれの解釈に任せて宗教色を排除しているのでしょう。

呼吸力と技の関係

合氣道では呼吸力が非常に重要です。呼吸力については実は科学的な解釈も可能ですが、僕の経験では、神秘的な力として捉えた方が呼吸力は出しやすくなっています。そのため、天の氣や地の氣、水火の氣を意識する方が、呼吸力が安定して発揮することができ、氣1を意識した方が有効です。

合氣道の技では、相手との接触部分を「合わせる」技術で、力のぶつかりを避けることが求められます。呼吸力を物理的・身体操作的に技術として行うと、接触点での力がぶつかりやすくなり、十分な呼吸力を出すことができず技がうまくかかりません。一方、氣を意識することで、接触点から意識が外れることで接触点での力のぶつかり感を削減でき、呼吸力が伝わり技がスムーズにかかります。

この点で、天地水火の氣を意識する「天の鳥船の行」や「振魂の行」は非常に重要です。井口師範もこれらの行を重視していました。天の鳥船の行については、下の映像で比較すると古神道家の山田誠人氏の実演映像と開祖の実演映像ではかなり異なる点から推察できる点は、開祖の実演はは武道用に改良しているように見えます。理由は、井口師範から聞いた水火の氣の武術的運用の秘伝が開祖の天の鳥船の行の動きに入っているからです。

古神道家の天の鳥船の行

開祖の天の鳥船の行

古神道の行の武術的秘伝と意図

振魂の行には、井口師範の秘伝があり、そこには武道的な意義が含まれています。この秘伝は一人稽古で行い、道場での稽古や人前では秘伝を隠すために足を使わず手だけを振るように指導されました。開祖の映像でも、開祖は足の屈伸は行っていませんので秘伝を隠している可能性があります。

当会では、井口師範の秘伝に基づいて振魂の行を行っています。これにより、天の氣と地の氣の繋がり方が理解できるようになります。実際には、天の氣や地の氣という表現を使わなくても科学的に説明できる部分もありますが、氣として感じる方がより確実にできるのです。重要なヒントを上げるとすると、手を振るタイミングと足を屈伸するタイミングに口伝があるという点にあります。

井口師範が天の鳥船の行や振魂の行に武道的な意図を付け加えたのではなく、開祖が古神道の行法を単なる神道の儀式としてだけでなく、武道的な意図を隠して行っていた可能性が非常に高いと考えられます。

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(注)

  1. 井口師範は氣については単に氣と話し、時折、気分で「天地水火の氣」や「天地の氣」「水火の氣」というような表現をしたかと思うと、氣と言わずに「天から力をもらったらええだけや」とか「地から力をもらうんや」などその都度表現が変わったため、氣に関しては師匠亡き後も研究を続け科学的・理論的な構築に数十年費やしました。その結果、天地の軸を中心に据え、上方向の力を出すときは地の氣を使い、下方向の力を出すときには天の氣を使い、水平方向の力を出すときは水火の氣を使うということがわかりました。 ↩︎