津本陽氏の作品の中の井口師範

皆さんお元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、フェイスブックで、「井口師範が何故無名か?に答える」のリンクを張ったところ、井口師範から学んだことのある甲南大学合気道部のOBの方にコメントをいただき、津本陽氏の小説「黄金の天馬」(合氣道開祖伝)に井口師範が登場していることをご指摘いただきました。

確かに、井口師範に関する逸話の中で特に印象的なのは、津本陽氏の小説「黄金の天馬」に描かれたエピソードです。この小説は、合気道の開祖をモデルにした物語であり、井口師範がその中で重要な役割を果たしています。(P454~455)

物語の中で、井口師範は合気道の開祖に挑む場面が描かれています。これは殆ど実話をもとに書かれています。ある日、和歌山県の武徳殿で開祖が指導を行っている際、当時柔道四段であった井口師範はその場に現れ、開祖に挑戦しました。しかし、井口師範はその圧倒的な技術の前に手も足も出ず、瞬く間に制圧されてしまいます。柔道四段といえば柔道を志す人の中から本の一握りの人しか印可されない貴重な段位です。このエピソードは、当時でも井口師範がかなりの達人であったことを示すと同時に、合気道の奥深さを物語っています。

津本陽氏がこの小説を書いた背景には、井口師範の影響があります。実は、和歌山県出身の津本氏は井口師範の警察官時代の同僚である和歌山県警の田村氏とは彼を小説の主人公のモデルにするほど親しかったのです。田村氏は、井口師範の技術に感銘を受け、津本氏にその話を小説にするよう勧めました。津本氏は和歌山県在住の井口師範の存在に興味を持ち、合気道の達人としての井口師範の逸話を小説にすることにしたのです。

井口師範は、自身が小説の主人公になることを望まず、開祖の話を書くように津本氏に勧め、二代目道主に津本氏の協力を求めました。この謙虚さが、師の人間性を物語っています。そういった背景もあって、小説の中では井口雅博師範は「井田正浩」という名前で登場していますが、当時の井口師範の存在感を巧みに表現しています。

このように、井口師範は自らの名声を求めることなく、合気道の精神を尊重し、後世に伝えることに尽力しました。師の存在が小説の中に残ることで、弟子としては非常に嬉しく、誇りに思っています。

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