手首取りの技の意義について16

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!
さて、手首取りの技の意義について今回で16回目となりました。前回から相手の「外殻の気」のコントロールについて書いています。前回は、片手取り小手返しの技で説明をするということで話は終わりましたが、片手取り小手返しの技でどこで「外殻の気」をとっているのか分かったでしょうか?
前回の説明では、どこが「外殻の気」をとっているのかという部分が非常にわかりにくいと思いますが、今回の説明のため、もう一度前回の説明を載せておきます。

①先ず、左手首を相手の右手で捕まれた場合、己の右手で相手の顔面に当て身を入れる。
②すかさずその右手で相手の皮膚を撫でるように、相手の前腕に沿わせるとともに、左手を相手の右手から抜き取ります。
③沿わせた右手をそのままにして、左手で上から相手の手を小手返しをしやすい位置で軽く抑えます。それと同時に、左足を軸に相手に対して横になるように転換し、相手の手をつかみます。
④さらに逆ターンすると同時に小手返しを効かせ投げます。

上記の説明では実は3度「外殻の気」を取っています。
先ずは②の動作です。これは多くの人が分かったと思いますが、「相手の皮膚を撫でるように」とありますが、この点ですね。相手の皮膚を撫でるように取ると、不思議と相手の右手から左手が簡単に抜けます。ところが、左手を抜こうと相手を右手で思い切り抑えると、中々左手は抜けません。力の弱い女性なら全く歯が立たないことになるでしょう。

さらに2度目は、左手を抜いた後、右手をそのままに残したときです。これも右手をそこに残すことで相手の「外殻の気」が反応して、何故か相手は自分の右手を動かす気にならないのです。

さらに、3度目は左手で相手の右手を押さえる時です。このときもいきなりつかむのじゃなくただ、相手の手に置いておきます。そして逆ターンをしたときに初めて小手を決めるわけです。

を抜く際に、右手で相手の右手の「外殻の気」を捕らえています。「外殻の気」を捕らえる際は決して「内殻の気」に影響させないというのが原則ですので、あまり強くすると「内殻の気」に影響がでます。

そんなので効くかと思われると思いますが、心理学ですというのが答えです。相手はこちらが危害を加えないと「防衛本能」が働かないのか不思議と何もし返そうとしないのです。このようなそれぞれの動作が合気道では合わせと言って、相手と一体になり、相手の反応を起こさないということを導きます。その結果相手は、訳も分からず投げられてしまいます。

すると投げられているのに笑いが出てきたリします。敵意むき出しで、力づくで投げられると、かなり悔しさがこみあげて、笑い出すと言うことはおこりませんが、合気道で意味が分からず投げられると笑いがでてくるのです。まさに、世界平和を目指す合気道ならではと思います。

手首取りの技の意義について15

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!
さて、手首取りの技の意義について今回で15回目となりました。前回は「内殻の気」で相手の「内殻の気」もコントロールできるということをお話ししました。「内殻の気」を遮断すると相手は思うように力が出せなくなるということでした。

手首取りの技もかなりの技術が濃縮されているというのが分かったと思います。このように合気道の技というのは、二重、三重と何重にも様々な技術が含まれていて、一体どの技術を使われたのか分からなくなるようになっています。そのため、達人が行う技は全く検討がつかない訳です。

今回は「外殻の気」の利用についてお話ししましょう。「外殻の気」の利用は、片手取り回転投げなどの片手取り一教系の技術と一旦取られた手を切る片手取り小手返し系の技術の2つが代表的なものになるでしょう。

「外殻の気」については実際に技を通じて体験しないとわからない面があります。というのは「外殻の気」の利用は、当会では「火の技術」に属し、別名「皮膚感覚の技術」と呼ぶもので、かなり感覚的なものなのです。ですので、文章上の説明ではその感覚を伝えることができないので、知識としてお読み頂ければと思います。

心理学で説明すると、「生理学的に相手の注意をそらせて、運動エネルギーを使って予想外の方向に相手のを導く」というものになります。学問で言うとそうなんですが、かなり感覚に頼る部分がおおきいので、桃の味を知らない人に桃の味を説明できないように、やはりその感覚を知らない人にはできなものです。

ですので、今回は分かりやすくするため、持たれた手を切る片手取り小手返し投げの技で説明していきます。尚、当会のやり方での説明になるため、途中当て身が入りますが、悪しからずご了承ください。

また、実際は手首を取らせますが、表現としては「捕まれた」と一般的な書き方に合わせて書いています。なお、文字数が多くなるので詳細の説明は次回ということで、動きだけ説明しておきますので、読者の皆さんの宿題としますので、どこで「外殻の気」をとっているのか少しご自分で考えてください。

そのヒントとして、「外殻の気」を捕らえる際は決して「内殻の気」に影響させないというのが原則です。あまり強くすると「内殻の気」に影響がでますし、自分の「外殻の気」が集まり相手に動きがばれてしまいます。

では小手返し投げの説明をしておきます。

①先ず、左手首を相手の右手で捕まれた場合、己の右手で相手の顔面に当て身を入れる。
②すかさずその右手で相手の皮膚の表面を撫でるように、相手の前腕に沿わせるとともに、左手を相手の右手から抜き取ります。
③沿わせた右手をそのままにして、左手で上から相手の手を小手返しをしやすい位置で軽く抑えます。それと同時に、左足を軸に相手に対して横になるように転換し、相手の手をつかみます。
④さらに逆ターンすると同時に小手返しを効かせ投げます。

手首取りの技の意義について14

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!
さて、手首取りの技の意義について今回で14回目となりました。前回は自分の「内殻の気」を利用して、「外殻の気」を相手との接点に集めない方法を述べました。

さらに今回は相手の「内殻の気」をコントロールする方法について述べたいと思います。といいますか、実は前回で、実は相手の「内殻の気」をコントロールする方法は述べているのです。

というのは、自分の「手を張り、指を開く」ことで自分の「内殻の気」を指先に集めたといいましたが、実は「手を張る」ことで、自分の「内殻の気」が手首を伝って手先に集まるときに相手の「内殻の気」が遮断されているのです。そのため、相手が非常に敏感な人なら、急に握力が抜かれた感覚を感じているはずです。

そこで、ちょっとした実験をしてみたいと思います。道具は一切いりません。人もいりません。一人でできますが、ただ両手が使える必要はありますので、怪我などされている方には申し訳ありませんがご了承ください。

では実験です。先ず、右手首を左手でつかんでください。そして右手を開いて張る訳ですが、「内殻の気」の流れが手首から指先に流れるというのを意識して、手を張って下さい。そうすると、右手首が太くなったような左手の握力が出しにくいような感覚がでませんか?

これが自分の「内殻の気」による相手の「内殻の気」の遮断です。これを座り技呼吸法のときにやると、相手はあなたに逆らえなくなり、簡単に倒れます。実は「内殻の気」が遮断されると腕力も入りにくくなるのです。

この「内殻の気」の遮断の威力は予想以上のものがあります。この効果が分かれば技も非常に面白くなるので。当会に所属している非常に熱心な会員が入門前に体験した話をしましょう。

彼はかなりがっしりした筋肉体系の男性で、ボクシング経験者ということで当会にこられました。そのとき、私は彼とボクシングのスパーリングをして完全制圧し、そして、当会の技は力を使わない技術なのでその証拠にと、彼よりも一回りは小さい女性と力比べをしてもらいました。

力比べというのは、その女性との座り技呼吸法を体験してもらったのです。私も彼に比べると体格的には随分と不利だとは思ったのですが、ここでもっと印象を焼き付けておこうと、彼女にやってもらったのです。筋肉質の彼がどんなに必死で彼女を押し倒そうとしても、簡単にコロンと倒されます。何度挑戦しても結果は同じでした。ということで、彼はめでたく入門してくれました。

未だに、彼はその時の驚きを口にします。やはり当会に入門した一番の切っ掛けはやはり彼女にどんなに力を出しても押し倒された驚きだったそうです。こんなことがあるんだと驚いたそうです。

実は、この女性はそれよりも随分前に座り技呼吸法で二人ほど、合気道歴十年以上のベテランと対決し、取りでも受けでも相手を制圧していました。ですから、この張りを使って「内殻の気」を使えると非常に強い味方になるというのがわかったと思います。

手首取りの技の意義について13

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!
さて、手首取りの技の意義について今回で13回目となりました。前回は自分の「最外殻の気」をコントロールする方法として「内殻の気」の利用例をあげました。それは、座り技呼吸法で行う「手を張り、指を開く」ということを例で示しました。

しかし、どの技でも「手を張り、指を開く」と効くかというとそうではありません。そのため、今回は「内殻の気」の流し方について述べていきます。その例で分かりやすいのが、体の転換です。

ご存知とは思いますが、師範によって呼び方が若干ことなる場合があると思うので説明の都合上、確認のために体の転換について述べておきます。現在多くの道場で行われている体の転換というのは、片手をつかませると同時に、自分が相手の外側に回り、相手を導いて相手を移動させる技術となっています。ちなみに、昭和32年発行の『植芝盛平監修 植芝吉祥丸著 合気道』においては、「相手に片手を取られた時、自己の左または右足を軸として転換し、自己を相手より最も安全な、しかも相手を容易に制し得る場所に移動する方法である」と述べられていて、相手の横に入るのが目的だったようです。現在、相手を振り回すことを目的にしていたのと異なる記載が書かれているので、元々は如何に相手を振り回すかというものでは無かったようです。

それはさておき、体の転換ですが、相手に手首を取らせたならすぐに両手先にに力を入れ内側に手首を曲げ張ります。このとき「内殻の気」が指先に集まり、そこで足を軸に外回りをすると、相手は「内殻の気」に引かれ移動を始めます。

これが「内殻の気」の使い方です。ですから、相手を導く方向に、手先を張るということが大切なのです。そうすると、後ろ取りであっても手首から引っ張るのではなく、手先から引っ張るという意味がわかると思います。

Youtubeなどで映像で見ていると手先で引っ張っていない方がいらっしゃいますが、それだと「内殻の気」は使われていなく、前回の「最外殻の気」のみが使われている技となります。

しかし、「内殻の気」を意識して稽古をしていると、身体の色々なところに「内殻の気」を集めることができるようになります。気の研究会(現・心身統一合気道)で有名な藤平光一師範はこの気を肘にもってきたり、指先にもってきたり、膝にもってきたりして、技を掛けておられたようです。また、和歌山の別の武道団体で有名な達人のH氏は肘に集めたり、胸骨に集めたり、膝に集めたりした技を披露していますが、ご本人の説明にはないのでご自覚はされていないのだと思います。

このようなことは一部の才能のある人だけの話になるので、是非「内殻の気」を自覚して、先ずは手先に「内殻の気」を集め技に熟練されることをお勧めします。

手首取りの技の意義について12

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!

さて、手首取りの技の意義について今回で12回目となりました。前回は手首取りで「最外殻の気」が自分の手首に集まらないために、別の空間を意識し、そこに「最外殻の気」を集め、そこに向けて手を動かすという方法を説明しました。

しかし、この方法だと、何度もやっていると相手は自分の発した「最外殻の気」の居所をすぐに判断し、その方向に手が行かないように抵抗されるようになってしまいます。そこで次に登場するのが、「内殻の気」を用いた方法です。

合気道の座り技呼吸法の際に一般的に言われる注意事項で「手を張って指を開きなさい」というのがありますが、実はこれは「内殻の気」を扱う最も簡単なやり方の一つなのです。指を開き、指を意識することで「内殻の気」が指に集まります。その結果、実は「最外殻の気」も指に集まります。

手首には「最外殻の気」の層もあり、「外殻の気」の層もあるため、相手は「最外殻の気」が移動したのに気づきません。すると、動作が起こる起点が指先になるため、あなたが手を動かしたとき、相手はタイミングがずれあなたに逆らうことができなくなってしまいます。

運動生理学では、目で見て反応するのにかかる時間を反応速度といい、0.3秒から0.7秒の時間さがでると言われています。ですから、相手がこちらのタイミングを読みさえできなければ手を自由にできるわけです。

では、座り技呼吸法で巧くいかない人がいるのは何故でしょうか?
それは、折角「内殻の気」を使うために指先を開いているのに、「最外殻の気」が手首に集まっているからです。「最外殻の気」が手首に集まれば、当然、相手に自分のすることが先読みされてしまいます。

ですから、意識は「指先」に持ってくること、そして手首を見ないことで、「最外殻の気」は手首に集まるのを防ぐことができます。

さらに、この指先を開く動作でもう一つ大切な点があります。それは相手が自分の手首を持った時点に指先をパッと開くと言うことです。初めから指先に意識をもっていると、手首を持たれた際に自分の意識が手首に向かうからです。そうすると自分の「最外殻の気」が手首に集まり、結果として技が効かないという状態になってしまいます。以上の点を十分意識して行うことが重要です。

手首取りの技の意義について11

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!
さて、手首取りの技の意義について今回で11回目となりました。といっても最近は「当て身」の話ばかりになり、手首取りはどうなったと思われている人もいるでしょう。

今回からは手首取りの話に戻りたいと思います。ただし、具体的な技ではなく手首取りのための稽古法の話になります。

前回まで「最外殻の気」の制御ということで「当て身」の話をずっとしてきたわけですが、「当て身」で「最外殻の気」が動かなくなっても実は、相手に手を取られるとやはり、「最外殻の気」はその取られた手首に集まります。

「最外殻の気」が手首に集まると、すぐに自分の動きが相手に伝わります。ですから、例えば手を挙げる動作をしようとすると、その前に相手に察知され抑えられてしまいます。井口師範がおっしゃられた「ああしよう、こうしようとしない」ということですが、これは言い方を変えると「『最外殻の気』を手首に集めない」ということに他なりません。

それぐらい相手の接触というのは非常に厄介です。空間にある「最外殻の気」ですら感じられてしまうのですから、接触していると余計に「最外殻の気」は相手に感じ取られてしまいます。そういう意味で、先ず相手の接触なしに「最外殻の気」をコントロールする稽古が必要だったのです。そこで、ようやく手首取りにおいて如何に「最外殻の気」を動かさないかという話に入って行ける訳です。

実は手首を持たれた状態で「最外殻の気」を動かさないというのはかなりハードルが高いのです。では、どうするかという話ですが、話は簡単です。手首を意識しなければいいだけです。しかし持たれているところを意識しないというのは読者の方もかなり難しいでしょう。

そのため、手首に自分の「最外殻の気」を集めない稽古をします。ここでは、手を挙げるという動作に絞ってお話ししていきます。先ず相手に片手で自分の手首を握ってもらいます。そして、一切自分の手を見ず、空間の手を持ってきたいところだけを見つめます。すると、あなたの「最外殻の気」はあなたの見つめたその空間に集まります。

その時点で、あなたの手がその空間に出現したと思って、その空間に出現するよう動かしてください。あなたの意識がもし手首になければあなたの手はすぐにその空間に向けてあがるでしょう。

これが自分の「最外殻の気」の性質を使った技術です。しかしこれにも限界があります。というのは、自分と相手の力差が大きいと、この技術が効かないことがあるからです。

言い換えると後ろ取りで無理な位置に手を持ってこられると、こういうやり方をすると関節を痛めたりする恐れがあります。ですから、器用な人以外は後ろ取りではかなり危険ですのでしない方がいいです。とにかくこの稽古方法は、「最外殻の気」を手首に集めないためのもので第一ステップだと思ってください。

手首取りの技の意義について10

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!

さて、手首取りの技の意義について今回で10回目となりましたが、手首取りからかなり話がはずれ、今は「当て身」の稽古ということになっていますが、飽くまでも手首取りで「最外殻の気」を動かさないということでの話ですので、「木を見て森を見ず」にならないでくださいね。

前回は、かなり具体的に「最外殻の気」を出さない当身の稽古の内容を話しました。しかし、誤解しないでいただきたいのは、当て身をする際に「最外殻の気」を一切動かすなということではありません。

何故なら、正面打ち、横面打ち、正面突きの各技は、相手の「気」をコントロールするための稽古ですので、受けが「気」を出さないと稽古できないからです。この点、「最外殻の気」が動かなくなっても注意してください。

というのは、「最外殻の気」を動かさない「当て身」を、以前に自称運動オンチの女性に合気道を教えてほしいと言われ、徹底的にこの「最外殻の気」を動かさない「当て身」を教えました。すると、この女性は「当て身」をする際に全く「気」が動かなくなってしまったのです。

その結果、合気道の稽古が成り立たなくなっちゃったのです。何故なら、正面打ちの技をやろうと思っても、いつ正面打ちが来るかわからないと、取り(技の掛け手)は技の掛けるタイミングがわからないことになってしまいます。

当会には、ボクシング、空手などの格闘技経験者も所属していますが、この女性の打撃にはかなり手を焼いています。また、柔道、空手、総合格闘技などをやってきたベテランでも、この女性が受けをするのを嫌います。それぐらいわからないのです。この女性、徹底的に「当て身」で「最外殻の気」を変化させない方法を身に付けさせてしまい、「当て身」で「気」を出す稽古を一切していないから、いくら後から教えてもすぐ「気」が消えてしまいます。本当に厄介です。

というのは、ケンカや格闘技どころか、スポーツで狙って打つということを中学生以来ずっと十数年来やっていない人間が、一切「気」を出さずに打つ「当て身」を学んだんだから、「気」を出す打撃の仕方の上に「気」をださない打撃の仕方を上書きしてしまったようです。だから、「気」をだすようにするには、さらに上書きをしないといけない状況になっています。

正面打ち、横面打ち、正面突きの技というのは、「気」の面で話をすれば、相手が出す「気」に反応して、相手の「気」を導く技術の錬磨ですので、「気」が変化しないと非常にこまるのです。ですから、読者の皆さんには「気」も出せるし、「気」も消せるとうように両方できるようになってほしいと思います。特に、指導者を目指すならこれは必須だと思ってください。

相手と自分の両方の「最外殻の気」のコントロールこそが合気道の大切なポイントであるということ、ご理解いただけたでしょうか。

手首取りの技の意義について9

みなさん!
こんにちは、お元気ですか? 僕はめちゃ元気です!

さて、「手首取りの技の意義について」から、かなり話が外れ、今回は手首取りの話の方に戻りたいとおもいますが、「当て身」の話になりました。しかし、「気」を考える際には「当て身」の稽古はどうしても外すことができません。手首取りの技の意義ではどうしても必要な事として、もう少し「気」についての話にお付き合い願いたいと思います。

今回は、「最外殻の気」を動かさない具体的な「当て身」の稽古方法について述べていきたいと思います。ただ、公開のブログでは「最外殻の気」を動かさない具体的な秘伝は述べられません。そのため、読者の方には「行間を読む」という読書の技術を実行していただきたいと思います。これは文章から文字にかかれていない事実を抽出し理解する技術ですが、どうか読者の方にはよろしくお願いします。

では、説明に入ります。先ず、読者の方の下準備として、合気道の「当て身」、正面打ち、横面打ち、正面突きの稽古を十分しておいてください。この稽古の際、「気を出す」ことが非常に大切です。できれば「当て身」の稽古の際、「当て身」が当たるという瞬間に気合いを出していただいた方が後々の稽古に非常にプラスになります。

当て身に十分体重がのり、強力な当て身がだせるようになったら、次に「殺気」を消して相手に入るということを考えて稽古されると良いでしょう。それだけでもかなり変化が起こります。

変化が起こり始めたら、さらに「当てる時だけ瞬間に殺気を出す」稽古を入れます。それには、具体的には中国拳法でいわれる寸勁というパンチのやり方のような稽古を行います。やり方は、目標(サンドバッグなど)から拳や手刀を数十センチ~数センチぐらいにおき、そこから拳や手刀を一気に出して打撃する稽古です。そして打撃力を上げていっていただきたい。初めはタイミングがつかめず巧くいかないかも知れないがいずれ衝撃が帰ってくるようになります。

ちなみに、私は立ち木で稽古をしましたが、立ち木や壁で稽古する場合は、徐々に回数を増やしていくことをお勧めします。私は井口師範に言われ、いきなり一日八十八回思い切り叩く稽古を一日8セット行ったところ、体に無理が生じ、脾臓が腫れ、変な咳がでるようになり、結局2週間入院するということになりました。ですから、あまり無理をせず徐々に回数を増やしていくことをお勧めします。目安は、肩甲骨の間の部分(菱形筋、小菱形筋)が異様に凝るようですと、やりすぎです。

やりすぎにはかなり気を付けて下さい。私は今でも体調が落ちてくると原因不明の咳がでます。このときの影響だと思います。

また、打ち込むときは、「ィエイ!」と気合いを出した方がいい。何故なら、体と声は共に反応するからです。要するに条件付けということです。「ィエイ」と言うだけで、体が覚えていて、そのた距離の打撃が出るようになります。

そうすると、後は殺気なく相手に近づく稽古をし、「ィエイ」と言えば体が反応するという回路ができますので、「最外殻の気」が殆ど動かない状況ができます。

ちなみに、船漕ぎ運動(天の鳥船の行)も、声と体の反応という点では非常に良いので併用して稽古するのもいいと思います。

【別の土俵で闘う】4

皆さん
今日は! 元気ですか? 僕はメチャ元気です。

さて、前回の内容は、かなり科学的に書きましたが、内容的には非常に抽象的になりました。でも、意識が自分の動作にかなり影響が出るということは理解はできたと思います。そして、その意識の持ち方を研究することで、「意識して動く」と「意識せずに動く」以外の第三の方向性が見いだせたのではないかと思います。そして、我々に必要なのはどう意識すると、相手はどう動くかという経験を積む必要があります。

その初歩的なヒントとして、【別の土俵で闘う】という点で、少し手首取りの話をしていきたいと思います。

合気道では、手首取りという技があります。具体的には、片手取り、両手取り、諸手取りなどですが、通常は、師範は「持たれたら」という言葉を使います。

でも、本当は「持たれたら」、もう遅いというのが武道的な考えです。例えば、殴るという動作を考えてみたらどうでしょう。「顎を思い切り殴られたら」と、師範が技を見せたらあなたはどう思うでしょう。

ボクサーのパンチはかなり速いです。その上パワフルです。未だかつて、顎にクリーンヒットがあって、相手のパンチを返したボクサーはいません。確かに古武道と呼ばれる分野で、殴らせても大丈夫というパフォーマンスを演じる人はいますが、それは心理学的な手法をとって、クリーンヒットを避けているからです。

余談になりましたが、要するに「顎を思い切り殴られたら」というと、答えは「倒れてしまいます」です。それと同様に、「持たれたら」本当は終わっています。「刺されたら」終わっています。

何を言いたいかというと、「持たれる」のではなく、「持たせる」という心構えが必要になります。何故かというと、武道では先を取ることが最も大切だからです。持たれるというと相手に先を取られているわけです。持たれた瞬間、実戦では相手は次の行動に入っています。仲良しクラブじゃないので、持たれても後は何もしないって言うことはありません。

さらに、「持たせる」と何故、先を取れるかということですが、ただ相手が持つのを待っているだけではなく、罠を張っているという気持ちがあるためです。ですから、大切なのは、例えば片手取りの場合なら、片手を取りに来た瞬間を狙うことだけを考えて手を差し出します。

この瞬間について少し詳しく説明しておきましょう。相手の手首を取るというのは、ターゲットである手首まで手を持っていき、そこで握るという2つの動作が必要です。だから、手首に触れた時点から、握るという動作が終了するまでタイムラグが生じます。触れた瞬間、握れているということでないわけです

しかも、相手が握ろうと思った瞬間から手の指が握れるまで、動作がとまらないというのが生理学的特性があります。この握ろうとした瞬間から、握り込むまでの時間を利用すれば、相手を思い通り扱えるわけです。

そのため、ただ手首を持たれるのじゃく、こちらが、罠を仕掛けるがごとく、相手に手首を差し出し持たせるわけです。この点が技がきれいに決まる大切なポイントです。

結局、ちょっとした意識の持ち方を変えるだけで、相手の土俵で戦うように見せながら、実は自分の土俵に相手を引き込んでいるわけです。

【別の土俵で闘う】3

前回、合気道では相手に敬意を払うことを、「合わせる」といいましたが、その意味を今回少し考えたいと思います。

合わせるというと何だかかわかったような気になりますが、合わせるというのは、実は動作だけの問題ではありません。合気道ではこの合わせるという行為は修業者にとって非常に厄介です。何故なら、見た目は、まるで相手に逆らっているように見えるからです。

そして、達人は言います。
「相手と一体になって行ったとき、簡単にできるものです。心がつながれば、相手は自分の思い通りに動いてくれます」
「相手と繋がっていると意識すれば、相手が右手を押して来たら、相手の力を、相手と繋がっているその右手で、相手に送ることができる。だから相手は自分の力が返されるのです。」

これだけの話を聞いて、相手にそのまま力を返すことができる人もいます。でも、いくらやっても出来ない人もいるでしょう。確かに、それは達人の言っている通りなんだけれど、一度できたとしても、原理が分かっていないと、またできなくなったりします。それは、実は相手がそれに慣れて対処できるようになってくるからです。普通の人は、相手が変化に対応した時点で、また自分の力でやろうとしてしまうからです。そうすると繋がりが無くなってしまうわけです。

そこで、本質を科学的に説明しておきましょう。二足で立つというのは非常に不安定な状況なので、人間が力を込めようとしたとき、体の位置、腕の位置などかなり精密にバランスがとれないと力が入りません。そういう訳で、二本の足で立っている人間が、ある位置である方向に力を加えようとすると、最高の位置というのは唯一つの状態しかなく、その状態でしか最大のパフォーマンスが発揮できないのです。ですから、その最高の位置を少しずらせば、力が急激に小さくなります。これが科学的な原理です。

そして、相手は最大のパフォーマンスを出す位置を経験から小脳で自動的に計算しているので、こちらが相手と繋がろうとする意識が働くと力の方向が若干変わるのですが、相手の経験がそういう経験を通っていないから、実際に相手が最大のパフォーマンスが出る位置と食い違いが生じるため、十分な力がなくなります。その結果相手はついてくるわけです。

このように合気道では、面白いことに、意識と現象が全く正反対になります。相手に敬意を示すと、逆に相手がついてくるというのはこういうことです。これが合気道の面白さなんです。