井口師範の秘伝1

井口雅博師範は「秘伝には名はない。一々名前などあるとそれにこだわりができる。合気道は自然の理を体得しなければならない。こだわりがあったらあかんのや」とおっしゃいました。

しかし、こだわりがないと、覚えないのです。それに気づいた私は、井口師範から秘伝を教わるたびに適当に名前を付けて覚えていきました。

そして、あるとき教わる秘伝技術に共通点があることに気づきました。それは、物理学(力学)的な技術、身体の反応を起こす生理学的な技術、心理を利用する心理学的な技術、さらにそれらを組み合わせた技術となっていました。それらをさらに整理し、名前をつけ直しました。それを図式にあらわすと下記のようになります。ただし秘伝といっても4つだけと言うわけでなく、師範に教わった秘伝が①~④のどれかに分類できるということです。

①骨の技術 → 力学的な技術を中心とした秘伝
②皮膚の技術 → 生理学的な技術を中心とした秘伝
③皮膚感覚の技術 → 皮膚の技術を高度化した秘伝
④空間感覚の技術 → 心理学的な技術を中心とした秘伝

骨の技術は、力学的な技術といっていますが、てこの応用とか見た目でわかる技術のことではありません。骨の技術では、「気」を運動エネルギーと捉えて、運動エネルギーを起こす技術と伝える技術の総称です。

当初は「当身の技術」とか「当身八法」などと名づけていましたが、当身だけでなく、修行していく中、投げにも必要な技術がそこにあることがわかり、「骨の技術」と名づけました。

というのは、人間に骨がないと、力学的なエネルギーを効率よく伝えることができません。ですから、「骨でどうこうする」というわけではなく、要は「運動エネルギーを作り伝える技術」です。

皮膚の技術は、まさしく生理学的な反応を利用する技術で、この技術がないと、「力をつかわない護身術」とはならないといっても過言ではないぐらい重要な技術です。。合気道を十年以上して二段・三段・四段になって、結局「ウエイトトレーニングをするしかない」とか「他の武道をやらないと合気道だけでは無理」とかいう人が後を立たないのは、この皮膚の技術がわからないからです。

当会で、皮膚の技術を習得された方は、それぞれの道場に戻ると、「座り技呼吸法では、高段者を含めても誰にも負けることがない」といわれる所以です。是非合気道をされている方はマスターして欲しい技術です。そしてこの技術が完全にわかると、合気道を十年以上した人の中で本の一部の人しかできない「三角座り(体育座り)で肩を押されても、倒れない」ということができるようになります。

実は、私はSNSのmixiで5・6年前から2・3年前まで、この技術を懇切丁寧に説明をしてきましたが、結局、その技術が元々できる人以外は、だれも理解してもらえることができませんでした。ついには、兵庫県、愛知県、広島県からわざわざこの技術を習いに来られた方たちがいました。というのは一度、技を受けないと分からない技術であるからです。

さらに、空間感覚の技術は、例えていうなら、「止まっている電車に乗っているときに、反対側の電車が動き出すと、止まっている自分の電車が動いているように感じることは多くの方が経験すること」だと思います。このような心理学的な反応を利用する技術です。

私は、できる限り多くの合気道を愛する方に、井口師範の秘伝を知って欲しいと願っています。またブログでは少しずつそれぞれの技術の説明をしていきたいと思っています。