身体の動きを有効活用する擺腕(はいわん)

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、最近は合氣道の技術を上げる補助訓練として気功法をご紹介していますが、今回は擺腕(はいわん)です。

このブログでわかること

合氣道で技をかけるときに一番気にしなければならないこと、それは自分が行おうとする意図が相手に伝わることです。意図を伝えない動きを習得するため当会では練氣功の擺腕という動作を合氣道用に使えるように若干変更して行っています。今回はその擺腕のやり方を覚えるていただき、動作で相手に意図が伝わらない動きの習得を可能にします。

目次

・擺腕の効果
擺腕のやり方
擺腕の応用

擺腕の効果

 本来、擺腕は手足を使い全身に気を発生させるトレーニングです。そのため健康に対して様々な効果が考えられます。 船井総研ホールディングス の創立者・船井幸雄氏が日本中に広めた腕ふり運動は、関英雄工学博士が台湾で気功の甩手(すわいしょう)を学びそれを船井氏に教えたといわれますが、腕振り運動の腕を振る動作だけでも、健康面のみで次の効果があったといわれていますので、擺腕も同等の効果は期待できます。

【腕振り運動の効果】
・肺癌(午前2000回、午後2000回、夜2000回を5ヶ月)
・関節炎
・食道癌
・頚部淋巴線癌(1日1000回)
・半身不随(5、6ヶ月)
・肝硬変
・白内障(朝800回、夜1000回で4週間)
・トラコーマ、色盲、まぶたに生じるこぶ
・心臓病、高血圧
・神経症、精神分裂症
・腎臓病

腕振り運動のやり方は、肩幅に足を開いて立ち、そのまま手を前後に振るという非常にシンプルなものです。やり方については次回の甩手(すわいしょう)で説明します。

擺腕は腕振りだけではなく足の動きも加わるのでさらに効果が期待できます。

なお、当会では、擺腕はそういった健康面の効果は無視はしないものの、あくまでも技を正確に行えるためのトレーニングとして位置付けていて、次の目的で行っています。

・心と身体の動きの一致
・肩(三角筋)に頼らない動きの習得
・身体の動きおよび氣を手に伝える感覚の習得
・心身の統一

技は掛ける手前で相手に読まれるとかけることができません。特に力を使わない合氣道の技ではちょっとした動きから相手に悟られることで技にかからないことが多いです。その大きな原因が肩の筋肉の緊張にあります。特に三角筋の小さな動きは腕の先端に行くほど大きな動きになるため、三角筋の緊張は相手にすぐに伝ってしまいます。そこで、三角筋を余り使わないで相手をコントロールする技術を習得する必要がありますが、擺腕はこれにうってつけです。

擺腕のやり方

擺腕には前後の擺腕と左右の擺腕があります。当会で行う前後の擺腕と左右の擺腕では違った意図をもって行っておりますので、まず前後の擺腕を説明し、その後左右の擺腕を説明します。

【前後の擺腕のやり方】
①足を一歩前に踏み出す
②両手を前に振り上げて若干体をそらせる
③「シューッ」と息を吐くとともに体を曲げる
④体が45度ほど曲がったところで手を解放して後ろに振る
⑤体が45度のまま息を吸って腕を戻す
⑥腕と体の角度が90度になったら体を反らせる
⑦③~⑥を繰り返す(最低60回以上)

この動作で大切なのは腕を振るタイミングです。見た目はただ腕を振っているだけのように見えますが、実は体が45度になるまで腕と体の角度は90度のままにキープしています。

【左右の擺腕のやり方】
①腕を力を抜いてダランと垂らして立つ
②息を吐き、身体を横に反らせてから手を横方向に跳ね上げる
③上に腕が上がったら息を吸いながら身体をもとに戻す
④腕が身体の両側に戻ったら、息を吐きながら反対側に上げる
⑤息を吸いながら腕と身体を元に戻す
⑥②~⑤を繰り返す(最低60回以上)

擺腕の応用

擺腕の応用として武道で使う場合は前後の擺腕と左右の擺腕では若干使い方が異なるので、それぞれ分けて詳しく解説したいと思います。

【前後の擺腕の確認】
①相手に両手で支えてもらう
②合わせを使って相手とのぶつかりを消滅させる
③擺腕の動作を行い、体を倒す

以上の動作をして、ぶつかりがなく、持ち手(受け)の人がついて来るようになれば前後の擺腕のトレーニングが完成していることになります。この動作には核の氣(当会では呼吸力のことを、コアから出る氣ということで核の氣と呼んでいます)を使います。

【左右の擺腕の確認】
①片手を相手に持ってもらう
②合わせを行って相手とのぶつかりを無くす
③左右の擺腕の動作を行う

以上で相手が無理なくついてくれば左右の擺腕が完成していることになります。左右の擺腕の場合は、当会の陽の技術の応用で、当会で言う核の氣の力で運ぶものではありません。

  ◆   ◆   ◆

以上、擺腕のやり方や擺腕の効果、さらには武道的な使い方など解説しましたが、擺腕は非常に優れたものだとお分かりいただいたのではないでしょうか?

立禅、天の鳥船の行、振魂の行に加えて擺腕を取り入れるだけで、かなり一人稽古がしやすくなると思います。是非頑張ってください。

次回の記事は太極拳のトレーニングでも有名な甩手(スワイショウ)を予定しています。

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呼吸投げに効果を発揮する:振掌

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

前回は道場では学べない合氣道の技のレベルを上げる基礎稽古法としての気功法の中の短式呼吸法というのをのべました。今回は呼吸投げなどに役に立つ気功法である振掌ご紹介していきたいと思います。

このブログでわかること

今回ご紹介する気功法の振掌を行うことで、
①足腰の強化
②合氣道の技を行う際の体の沈ませ方がわかる
③膝の落とし方がわかる
などのメリットを得られる。しかし、最大のメリットは一人稽古ができるようになるということです。この振掌を続けると、呼吸投げが非常にスムーズにできるようなり、非常に素晴らしいトレーニング法を獲得できます。

目次

・振掌とその効果
・振掌の効果
・振掌の応用

振掌とその効果

 僕は青少年時代非常に体が弱かったので様々な健康法をやりました。その中にヨガや気功法などの教室にも通いましたが十分な効果を得ることができませんでした。といいますか身体がそれらについていかず途中で残念しました。ところが、ビデオで見つけた高藤聡一郎氏の仙道気功法は割と効果がある上、気分が悪く成ることなく行うことができ、長年続けることができました。

 さらには、後に学んだ井口師範の合氣道の秘伝を解読するのに非常に役立ちました。特に、振掌(しんしょう)、擺腕(はいわん)、摔甩(すわいしょう・すわそう)、単人粘勁(たんじんねんけい)は井口師範の技を研究するうえで直接関連があり、現在はこれらを合氣道用に若干変更して伝えています。今回は振掌を説明します。

振掌は体を垂直に落としながら、掌から気を発し地面にぶつけるような動作を行う気功です。

効果としては、
・掌から気を発射するタイミングがわかる
・思った以上に足腰の鍛錬となる
・正しい膝の落としができるようになる
・重心の上下が自在になり、合氣道の技に直結する

などです。

振掌のやり方

振掌のやり方は非常に簡単です。やり方は次の通りです。

① 立禅の姿勢をとり、手を脱力して肘を若干曲げて前に出す
② 「シュー」と息を吐きながら膝を緩めて、垂直に体を落とす
③ 膝が曲がると同時に掌に力を伝え手首を折る

注意点としては、膝を折ったとき、状態が斜めになるのを防ぐということと、背筋を真っすぐしてストンと真下に体を落とすことがこの振掌での動作の要となります。

これができると、垂直方向に呼吸力を出すときに正確に行えるようなります。

振掌の応用

振掌の応用は地球の重力を利用して身体を落とすところで発生する運動エネルギーを利用することです。振掌は体を落とすことで、身体の位置エネルギーを運動エネルギーに変え、手に伝えるという運動ですので、そのエネルギーを相手に伝えれば技として使えます。

運動エネルギーが生じたときのエネルギーを効率よく相手に伝えるためには伝えるタイミングが大切です。

そこで、適切なタイミングを得るために、パートナーに手を持ってもらい最適なタイミングを習得してみましょう。

相手に力を伝える目安は、運動エネルギーが出来てから伝えるということですから、初めから力が入っていると巧くつたわりません。

当会では合わせ(はじめは相手と力がぶつからない状態)を作って、相手に逆らわず運動エネルギーができた時点で相手に伝えるように指導しています。

相手に手を持ってもらって相手が崩れるようになったら、次は相手の襟をもって崩せるように稽古しましょう。

なれるとTシャツのような薄い伸び易い生地でも痛めずに相手を倒すことができるようになります。

この稽古により、合氣道の呼吸投げが非常にスムーズにできるようになり、投げられた相手は非常に不思議な感覚で投げられるようになります。

  ◆   ◆   ◆

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打たれ強い体を作る短式呼吸法

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

前回まででは、禅に始まり、天の鳥船の行・振魂の行などのシステムは合氣道においてどのような地位にあるかということを示しました。特にそのチェック方法を通じて非常に有効であるということが分かったのではないでしょうか?

今回からは、当会で会員の指導している段階で発見したそのシステムを補強するトレーニング法をご紹介していこうと思います。この補強法は元々は氣功の鍛錬法から拝借したものです。

元は中国仙道研究家の高藤聡一郎氏の練氣功という気功から合氣道に合った形にアレンジしたものですので、オリジナルと若干異なるところがりますので予めご了承ください。

このブログでわかること

今回は腹式呼吸法を使った身体の強化方法を扱います。 短式呼吸にフォーカスしてやり方を詳しく解説するとともに、徹底的に打たれ強い体の作り方を説明します。これに基づいて鍛錬することで腹筋で固めた体よりも打撃が数倍効きにくい体になることができます。

目次

・合氣道と腹式呼吸法
・仙道の練氣功の短式呼吸法
・逆腹式呼吸法
・呼吸による身体強化法

合氣道と腹式呼吸法

合氣道の道場での一般の稽古では余り呼吸の仕方の指導はされないのが普通ではないでしょうか? ところが、技のような 身体活動において呼吸もまた大切な要素の一つです。

具体的には、臍の下にある臍下丹田(下丹田)に意識を置いて肚(はら)に気を充実させて技を行いますが、このとき使われるのが複式呼吸です。

腹式呼吸には二種類あり、息を吸うときに腹を膨らませる通常のやり方と逆腹式呼吸といわれ息を吐くときに腹を膨らませるやり方があります。

通常の複式呼吸のやり方で技を行う場合、大切なのが吸う・止める・吐くのタイミングが大切です。通常の腹式呼吸では技の極める際に、すなわち呼吸力を出す際には止めるタイミング行います。

また逆腹式呼吸ができるようになっている場合は、息を吐く際、息を止める際、どちらでも呼吸力が発揮できますので、技の内容によって臨機応変に使うことができます。

どちらにしても、合氣道では腹式呼吸をマスターしておく必要があります。通常合氣道では禅のときにこの腹式呼吸を行いますが、習得のしやすさからいうと、次にご紹介する仙道(気功のもととなった仙人の修行法)の練氣功で使われる短式呼吸が武道用の呼吸法としてはかなり有効です。

仙道の練氣功の短式呼吸法

短式呼吸法は通常は立って行います。やり方は次の通りです。なお、呼吸は腹式呼吸で息は吐くときは口から、吸うときは鼻から吸います。

  1. 足を肩幅に開き左右の足を平行にし、腰に手を当て立つ
  2. 「シュー」という音がでる強さで口から息を吐き膝を緩める
  3. 鼻から息を吸いながら膝を伸ばしもとに戻ります。
  4. 2~3を1秒から1.5秒間隔で何度も繰り返します。

繰り返しの基準は60回です。

逆腹式呼吸法

ある程度日数続け、腹式呼吸に慣れてきたら次は逆腹式呼吸で行ってください。 膝を緩める際に息を吐きながら下腹部を膨らませ、息を吸いながら膝を伸ばしつつ下腹部をへこませます。

はじめはちぐはぐな感じがして、やりにくいでしょうが、逆腹式呼吸に慣れてくると、お腹を膨らませるとかなりの内圧(腹圧)ができるようになることに気づくでしょう。

この内圧はまるで空気のはいったボールのような感じがします。腹筋に力を入れなくても、腹部が固くなり非常に強くなります。ちなみに昔の仏像のほとんどがお腹が飛び出しているのは、腹圧をかけているのを現しているということです。例えば金剛力士像(仁王)もお腹だけがポッコンと 膨れています(写真)が これも腹圧がかかっている状態を示しているのです。

また、良く一般の人たちの会話で、お腹が出ている人をみて貫禄が出てきたなどということがありますが、実は禅などの修行でお腹が仁王のようにポッコンと膨れてきたのを元々はさしたようです。

呼吸による身体強化法

逆腹式呼吸で腹圧が強くなり、お腹が外に張り出して、まるで空気の満タンになったタイヤのような感じがでたら、次は腹部を打撃による強化法を行います。これは私の合氣道の師匠である井口師範からも学んだことですが、仙道の方がより明確なやり方がしめされていますのでそちらで説明します。まず仙道では立禅の状態で、次のような手順で呼吸を使いながら打撃を行います。

  1. 立禅の姿勢で立つ
  2. 手を軽く握る
  3. 拳の掌の小指側の側面の分厚い部位(鉄槌)で息を吐きながらお腹を膨らませた状態にして打ちます。

初心者は軽く、慣れるにしたがって強く打ちます。鳩尾(みぞおち)部分はかなりゆるく打っても気持ちが悪くなりますので徐々に慣らしていきます。

鳩尾の鍛え方としては、鳩尾周辺で軽くたたいてあまり応えないところから始め、慣れるに従い徐々に日数をかけて鳩尾に近づいていくと良いでしょう。

先日のブログでご紹介したように2月26日(日曜日)に空手教室にて統一体を指導しましたが、その際に、空手黒帯の100キロ級の人の渾身のパンチを鳩尾に数発受けましたが何ともありませんでした。

体重100キロ級の渾身のパンチを腹で受ける

この様に呼吸を伴って腹圧を鍛えると非常に強いお腹が出来上がります。是非皆さんも試してみてください。

  ◆   ◆   ◆

以上が短式呼吸です。ほとんどの合氣道の道場では具体的な腹式呼吸法は教えていないと思いますが、これは開祖が指導されていたころは様々な武道経験者が直弟子であったため必要がなかったからだと私は考えています。

私の場合も井口師範に腹式呼吸の仕方をお聞きするまで全く教えていただくことがありませんでした。井口師範は無意識で鼻をフンッとならす癖がありましたが、息を吐きながら身体を鍛えた名残だったのだと思います。というのは、身体を叩く指導を受けたときやはり鼻をフンッと鳴らしていましたからです。

今回までは、合氣道の稽古で学んだ鍛錬法を述べましたが、次回からは、合氣道の動きに関連する気功法に関してのべていきます。

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本当は凄い!天の鳥船!

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、立禅、天の鳥船の行、振魂の行と説明をしてきましたので、今回は今一度、合氣道開祖・植芝盛平翁先生が取り入れた天の鳥船という凄いシステムについてまとめてみたいと思います。

このブログでわかること

古い合氣道の稽古システムを見直すことで、さまざまな発見があります。禅・天の鳥船の行・振魂の行などの武道的意義を再確認し、翁先生が構築された稽古システムを理解し、より深い合氣道の稽古ができるようになることで本当に大切なこと、例えば本当の呼吸力の意味といったことがわかるようになります。

目次

・開祖の偉大さがわかる動画
・立禅・天の鳥船の行・振魂の行の武道的意義
・宗教ではない天の鳥船の行

開祖の立禅・天の鳥船・振魂の動画

少し前から立禅、天の鳥船の行、振魂の行の説明をしてきましたが、それに関する翁先生動画を見つけましたので、共有したいと思います。

やはりこれを見ると翁先生は偉大だとつい思ってしまいます。映像では編集されているので、順番が分かりにくいですが、神への礼拝から始まり、立禅、天の鳥船の行と振魂の行など行い、体捌き、その後、合氣道の技の稽古という流れはまさに奇跡的だと思ってしまいますが、僕がそう思う理由を天の鳥船の行から述べてみたいと思います。

立禅、天の鳥船、振魂の武道的意義

前回まで立禅、天の鳥船の行、振魂の行について詳しく述べてきたので、それぞれの記事を読まれている方はすでに分かっていると思いますが、それぞれの武道的意義は次の通りです。

  1. 立禅の武道的意義
    静的な統一体の訓練に最も適している
  2. 天の鳥船の行の武道的意義
    前後の運動での統一体の訓練に 最も適している
  3. 振魂の行の武道的意義
    垂直方向で力を用いる統一体の訓練に 最も適している

このような武道的な意義を考えたとき、翁先生の合氣道は非常にシステマティックになっているということが分かります。

①立禅で静止した状態で統一体を作り上げる
②さらに天の鳥船の行と振魂の行で動きのある統一体を作る
③さらに捌きの稽古で統一体に自由度を上げる
④完全な統一体で合氣道の技の稽古に入る

というように、準備運動の中にさまざまな意義が含まれつつも、段階的に身体を練り上げていくシステムとなっています。

そしてその中核といえるものが禅・天の鳥船の行・振魂の行であり、これなくしてこのシステムは成り立たないと言えます。

天の鳥船の行の価値

それでも宗教はちょっと避けたいと考える修行者もおられるでしょう。一部の合気道の道場でも天の鳥船や振魂の行はしないと聞きますから、宗教アレルギーの人は気になるのかもしれません。

しかし、神の名前を唱えるから宗教というのは早計過ぎだと僕は思います。日本の神話を読みますと、神の行いが神を生むという話がたくさん出てきます。

要するに古来の日本では事象も概念も神であったのです。言い方を変えると、概念をイメージ化したものもまた神と言えるわけです。そういった意味でとらえた場合、「大祓戸大神」も心身の不調である氣枯れ(穢れ)を祓い活性化する概念と考えられるわけです。また「天照大神」も、完全な状態になる概念、「天御中主大神」も宇宙そのものということで無限のエネルギーという概念に置き換えられます。

この様に考えたとき天の鳥船の行では、第一の鳥船でマイナスの状態をゼロ状態に、第二の鳥船でゼロ状態をプラス状態に、第三の鳥船でプラス状態を無限大と自分の状態をイメージすることで最高の状態にしていると考えることができます。

このように神の名前も概念の名前と捉えれば、宗教に抵抗のある人も気にせずできるのではないかと思います。それよりも何よりも大切なのは、精神と肉体の両方を統一することです。

この統一するところこが合氣道の良いところであるのですから、ここを磨かないというのはもったいないと思います。

再度、これらの宗教の儀式を武道的意義でとらえ、大きなシステムの一つとしてやっていくと非常に得るものが多いのではないでしょうか。

  ◆   ◆   ◆

今回は立禅・天の鳥船の行・振魂の行のまとめ的な意味で私の考えを思いつくままに書きました。
前回これらの行で作った統一体の成果がどのようなものかという実演をした記事を書きましたところ、打たれても平気な体の作り方はどうするのかというメールでの問い合わせがありました。

実は 当会では、立禅・天の鳥船の行・振魂の行の効果をより出しやすく、感じやすくするため、これらの行法だけでなく、高藤聡一郎師伝の気功(仙道の練氣功)の一部を採用し、合氣道に応用しやすくするため若干の変更を加えて、合氣道に特化した鍛錬を行っています。次回からは、その練氣功について紹介したいと思います。

次回は、打たれ強いお腹を作る短式呼吸法について書きたいと思います。

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統一体の威力を実演!

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

ここ数回、立禅・天の鳥船運動・振魂運動と詳しい説明をしてまいりましたが、今日、それらで養った統一体の威力を実演する機会に巡り合いましたので今回報告を兼ねて急遽ブログを書きました。

本日は和歌山県かつらぎ町の紀北農芸高等学校の体育館で行われている 伊都空手道教室 に伺い、統一体について指導してきました。
今回はその様子をお話したいと思います。

僕は朝8時半に自宅を出て、44キロ離れた紀北農芸高等学校に車で向かいました。始まるのが10時からと聞いていましたが、万が一のためと思い余裕をもって出かけました。

到着が9時半を少し回ったころについたのですが、すでに師範をはじめ伊都空手教室の面々が待っていて出迎えてくれました。

前情報では小・中学生の指導と聞いていたのですが、高校生、大学校生、大人も参加してくだったお陰で、統一体のすごさを披露することができました。

大学校生は 空手黒帯 の身長189センチ100キロ越えというプロレスラー並みの体格の持ち主でした。僕は彼を見たとき
『メチャクチャ、ラッキーやん!』と心の中で叫びました。

何故なら、 この大学校生を相手にデモンストレーションをすれば効果絶大と思ったからです。

僕は身長179センチ68キロですから、そこそこの体格です。小・中学生相手だと僕がデモンストレーションをしても、「強いの当たり前」と思われても仕方がありませんから、この人の存在はめちゃくちゃ大きかったです。

早速、彼に声をかけ、前に出てもらって彼を相手に統一体のデモンストレーションを行いました。

空中腕相撲、突きに対しての投げ、呼吸投げ、相手の打撃を腹や鳩尾(みぞおち)で受ける(本気で十数発打ってもらいました)など見せ場がたくさんありました。

僕のために2時間取ってくれていたためとても濃い内容で指導することができました。

体験者全員の集合写真
体重100キロ級の渾身のパンチを受ける

空中腕相撲は非常に興味深い結果になりました。僕が統一体になって100キロ級の大学校生を相手にすると何度やっても相手を簡単にひっくり返り返すことができるのです。

ところが僕が渾身の力で普通に腕相撲をやると2メートルぐらい飛ばされました。受け身が出来なければ大けがするところでした。

体重差三十数キロでの体力勝負では全く歯が立たないということが体感できました。特別な技術なしでは体格の大きさはまさに武器であるということを思い知らされました。

今回、ある塾の先生の依頼で、統一体を見せるということで伊都空手教室にお邪魔をしました。統一体ができると、相手が空手の有段者でこのような体力差・体格差があっても十分対抗できるということを示すことができとても満足しています。

このように、立禅、天の鳥船運動、振魂運動などの統一体を作るトレーニングを続けていると必ずできるようになるのです。

だから、立禅・天の鳥船運動・振魂運動は 学生時代体育が1か2の超運動オンチの僕に、強靭な若い人を圧倒できる奇跡を起こしたのです。

伊都空手教室の師範・樋川先生をはじめ道場生の皆さん本日はありがとうございました。

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天地から力を受ける振魂

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、前回は天の鳥船の行について述べましたが、この鳥船運動の後に行われる振魂の行がどのように武道と関係があるかについて述べたいと思います。

このブログでわかること

振魂は単なる古神道の精神的な行ではありません。これを行うことで武道的な効果が十分得ることができます。このブログではどのようにすれば振魂でこのような効果が得られるかを述べ、如何に武道に役に立つかを示します。そのことで合氣道修行者の人は一ランク上の合氣道の稽古ができるようになります。

目次

・振魂について
・ 振魂 のやり方
・ 振魂 のチェック法

振魂について

振魂(ふるたま、ふりたま)は、古神道の行法で、身体内にある魂を奮(振る)い立たせ、氣枯れ(けがれ)を祓い、氣の力を強くして、病や怪我を直したり、寿命を延ばしたりするものです。

振魂を行うと次の効用があると山田誠人著の「古神道の科学」には記載さています。
1.ストレスを発散できる
2.気力が湧いてきて、怠惰な気持ちが消える
3.皮膚呼吸が活性化される
4.邪気が飛散して身体が軽くなる
5.血色がよくなり、病気が軽減する
6.皮膚に張がでて、皮膚や眼光が澄んでくる
7.若返る

以上が古神道における振魂の意義や効果ですが、これらを見てみるとどちらかというと精神的な面の変化やそこからくる変化のようなものに感じられますが、実際は武道としての効果が十分期待できるものでもあります。それはどのようなものか 振魂 のやり方から武術的効果の見方など説明していきましょう。

振魂のやり方

ここでは武道的な効果を示すため、私が学んだ合氣道をもとに、振魂のやり方を説明します。合氣道の振魂は古神道の系譜でいえば川面凡児の禊流の振魂となっています。

足は肩幅に開き、手は玉印を結びます。 玉印 は右手(水)を下に、左手(火)を上に組みます。 玉印 を組む時は手をパッチンと柏手を打ち印を組みます。

手を上下に振って、神言(かみごと)を唱えながら、膝を上下に揺すります。第一の鳥船の後の神事は「大祓戸大神(おおはらえどのおおかみ)」です。まずは穢れ(氣枯れ)を祓い、氣(エネルギー)が出る状態にするというイメージを持って行います。

第二の鳥船の後は十言神咒(とことのかじり)「天照大神(あまてらすおおみかみ)」を唱えます。十というのは完全を示す数字です。第二の鳥船では自分が完全である状態をイメージします。

第三の鳥船の後は「天御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ」と唱えます。 天御中主大神 は宇宙の中心の神であり、自分を宇宙と一体とイメージします。

古神道伝では膝を揺さらないようですが、井口師範から教わった振魂は膝を揺します。その理由は井口師範から教わったやり方をつづけていると天地から力を借りることが体感できるようになるからです。要は体感が得られやすいというメリットのためです。

そのための膝の屈伸において秘伝があり、公開の場では述べることができませんが、この秘伝を使うと、あるとき天地の力が自分に来ていると感じられる兆候が感覚としてやってきます。

振魂 のチェック法

振魂が確実にできるようになると、まずは地面と繋がった感覚が出ます。さらにこれを続けていると天に向かう感覚が出てきます。この感覚が出てくると天や地の力が借りられるようになります。天の力というのは体が天に上る感覚を伴う力で、地の力とは地に繋がる感覚です。また人により、地の力を使う場合は自分の体重がずっしっと重くなったように、天の力を使う場合はその反対に感じる人もいます。

【振魂の練度チェック1】
まず第一段階のチェックです。振魂で地の力を借りることができるようになると地面と繋がった感覚がでてきますが、この感覚が本物かどうかチェックするためパートナーに両手首を掴んでもらって固定してもらい、地の力を借りて相手の力を地につなぎます。次に、腕の動きだけで上にあげることができるかをチェックします(下図参照)なお、腹筋や背筋を使わず行う必要があります。ですから体を反ったり、足を屈伸させたりせずに苦も無く上げられれば合格です。

【振魂の練度チェック2】
振魂で天の力を借りることができるようになると、振魂をやっていると 手の振り下げに合わせて 真上に体が抜ける感覚が出てきます。そのような感覚が出てきたら、パートナーに両手首を掴んでもらって固定してもらい、それを下に下げることができるかをチェックします(下図参照)

上記のチェックをして合格すれば、下図のように正座した状態で上から手首を抑えられても、簡単に上に跳ね返すことができるようになります。

  ◆   ◆   ◆

以上が振魂を続けているとできる身体的な変化です。

今回は振魂をご紹介しましたが、禅、天の鳥船の行、振魂の行を行うことが合氣道の基礎力を上げ、それに伴い合氣道独特の力である呼吸力を練り上げることができるようになります。

次回は開祖・植芝盛平翁先生の天の鳥船の行のYoutube映像をご紹介して、翁先生が如何に合氣道を効果的に稽古できるようにシステムとして取り入れたかという点について述べてみたいと思います。

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呼吸力をつける船漕ぎ運動

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、現在このブログでは古い合氣道の準備運動の中に呼吸力を養成する隠れたシステムが含まれているという話をしています。その一つが禅があり、さらに天の鳥船の行と振魂の行がそれだと以前にも書きました。

合氣道では、全体のバランスを大切する武道であるというのは言うに及びませんが、それは合氣道の技だけではなく稽古を行う流れにも同じことが言え、ここでは静と動を巧みに組み込んでいます。この隠れたシステムでは、禅は静にあたり、天の鳥船と振魂は動、要するに動禅といえます。

今回はこの動禅である天の鳥船ついて焦点を当ててみます。

本ブログでわかること

天の鳥船と振魂は古神道の行法であることは良く知られた事実ですが、これが技にどのようにつながるかという点について述べられることが少ないと思いますが、今回はこの天の鳥船と振魂を行う意義とそれによって得られる具体的な効果について知ることで、より合氣道の技を深く理解し技の深度を増す指針となるでしょう。

目次

・天の鳥船の行とは?
・古神道と開祖ではやり方に違いについて
・天の鳥船の成果を試す

天の鳥船の行とは?

天の鳥船の行とは、明治から昭和の初期にかけて活躍した神道家・川面凡児の開示した神伝禊法で、3つの鳥船運動とそれぞれの後に行う振魂で構成されています。

ここでは、川面凡児の天の鳥船のやり方で説明します。(当会の会員の方が驚くかもしれませんのでここで言っておきますと、当会では井口師範から教わった天の鳥船の行を行っていますので違いがあります)

【第一の鳥船】
左足を前に出し、意識を丹田に置き、両手は親指を中にして握りしめます。「イエーッ」という掛け声とともに手を押し出します。
次に「エイッ」という掛け声とともに手を引き戻します。これを繰り返します。(下の写真は神道研究家・山田誠人氏)

自分のやりたいだけ行うと、「大祓戸大神」と唱えながら振魂を行います。

【第二の鳥船】
右足を前に出し、意識を丹田に置き、両手は親指を中にして握りしめます。「エーッ」という掛け声とともに手を押し出します。
次に「ホッ」という掛け声とともに手を引き戻します。これを繰り返し、 自分のやりたいだけ行うと、「天照大神」と唱えながら振魂を行います。

【第三の鳥船】
左足を前に出し、意識を丹田に置き、両手は親指を中にして握りしめます。「エイサッ」という掛け声とともに手を押し出すとともに五指を開きます。
次に「 エイサッ 」という掛け声とともに握りながら手を引き戻します。これを繰り返し、 自分のやりたいだけ行うと、「天御中主大神」と唱えながら振魂を行います。

以上が川面凡児伝の天の鳥船です。

古神道と開祖のやり方の違いについて

今残っている開祖の動画を見てみますと、上の山田誠人氏の動作と若干異なった動きをしているように見えます。

前項の山田誠人氏の動作では手を差し出すとき腕を伸ばしたのに対し、開祖は上の写真では手を差し出すとき振り子のような動作で手が伸びたままで前に出しています。この動作はまず体を加速してその反動を利用して手を出す動作です。要するに運動エネルギーを有効に生かす動かし方をしています。

私が井口師範から学んだ天の鳥船も同様にしていました。 井口師範 はこの動作の中に呼吸力を養成するための動きであると言われていましたが、井口師範が天の鳥船の行を勝手に解釈しているわけではないというのはわかると思います。

また、腕についての注意事項ですが、腕の付け根は体の真ん中にあるというイメージで、手が前に行った際に気が腕を伝って前に出、手を引いた際に気が戻るというイメージを持つことも大切です。

ですから、純粋に古神道の行法を稽古の中で行っているのではなく、稽古の中に古神道の行法を取り入れつつも、武道として使えるように天の鳥船を取り入れていたと思われます。

次に、下図に示したやり方ですが、武道的な意味での船漕ぎ運動という点で余り効果が期待できないやり方なので注意してください。武道的な使い方として十分に期待できるのは、重心が前後に動く必要があります。

天の鳥船の成果を試す

【第一のチェック】
安定して天の鳥船運動ができるようになると、正しくできているかをチェックするため、パートナーに手首を持ってもらったうえで天の鳥船運動を行い、相手が前方に誘導できるかをチェックします。この際の注意点として、決して意識は手首にあってはいけなく、相手との力のぶつりはない状態で行う必要があります。しかも腕は気を充実させている必要もあり、腑抜けた状態ではないということです。また、パートナーは相手に前方に送られないようにしっかりと踏ん張って抵抗する必要があります。

【第二のチェック】
さらに天の鳥船運動で感覚が研ぎ澄まされると、胸を押している相手を押し返すことができるようになります。このときの注意点として、相手を胸で押し返す意識を持つとバランスを失い、決して相手を押し返すことができません。図のように相手の腕つかみ、胸で相手の力がぶつからないようにして相手を押しやります。パートナーはしっかりと支えて抵抗します。これでパートナーを押し返せれば呼吸力がついてきたといえます。

【第三のチェック】
さらに、呼吸力がついて来ると、体の軸を作るだけで強く押されても押し返すことができるようになります。この際は前進移動する意識も必要なくなります。これができると相手の力がすべて地面に逃げていくという感覚が出てきます。この感覚がでると非常に強い呼吸力が出せます。

   ◆   ◆   ◆

天の鳥船の熟練度のチェック法に関しては、まだ何通りかあります。今回は比較的簡単に行える前方方向に押し出すチェック法を示しました。他のチェック法については、リアルな指導が必要なので今回は紹介しません。

統一体が出来て、呼吸力がでるようになるとこのようなチェック法をしなくても、いろいろなことができるようになります。是非皆さんも禅と天の鳥船の行と振魂の行をしっかりと稽古して統一体を身に付けてください。次回は振魂について述べたいと思います。

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統一体を作る立禅

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、前回は統一体というのは合氣道の稽古において非常に重要な位置を占めていて、しかも古い稽古ではシステムとしてちゃんと組み込まれていたというお話をしました。

具体的には合氣道の準備運動の中に座禅、古神道の天の鳥船の行や振魂の行などがそのシステムをなしていたということでした。

なお、この古いシステムでは、統一体をつくる基礎として座禅を使っていますが、当会ではより応用がきく中国武術の立禅を採用しています。そこで今回はその立禅を紹介したいと思います。

このブログでわかること

合氣道の準備運動に組み込まれている禅の真の意図が理解できます。さらに、その意図をより効果的に実現できる立禅のやり方を覚えていただくことができ、より一段と高い稽古ができるようになります。また統一体が理解できることで様々な方面で応用ができるようになります。

目次

立禅の意義
立禅の注意点
立禅のやり方
立禅の完成度チェック法
立禅と日常の姿勢と統一体

立禅の意義

合氣道の準備運動で座禅が組み入れられている道場があると思います。ところがどうして座禅をするのかということについてはかなり曖昧に精神統一の一つと教えらえることが多いように思います。

古い合氣道では準備運動の中に、システムの一環として座禅、天の鳥船の行、振魂の行が入っています。これは後にくる形稽古にリンクできるように一連のつながりをもって組み立てられていて、ここを理解していると呼吸力と呼ばれる力が得られやすくなります。

当会ではその流れに従いつつも座禅の代わりに立禅を採用しています。その第一の理由は、座禅より統一体が自覚しやすい点です。具体的には立禅は統一体になっているかどうかのチェックが容易なのです。

中国武術では立禅を站椿(たんとう)と呼んで必ず稽古の中に含まれています。站椿では足腰の鍛錬も含まれていますが、当会では統一体を作る目的で行っていますのであまり低い姿勢での立禅は行っていません。

この項の最後として立禅のメリットを挙げておきます。
・身体の安定感が養われる
・精神が非常に安定する(はっきりと自覚できる)
・内臓の働きが良くなる
・集中力がつく

立禅の姿勢は注意が必要!

立禅のやり方を説明する前に、立禅での姿勢での大切な点について説明します。といいますのは、スポーツ科学で言われる正しい姿勢と立禅での正しい姿勢があまりにも違うため誤った立禅をしないように誤解を最初に避けておくために「立禅での姿勢」について最初に話します。

一般的に正しい姿勢というのは、下図の右側の図のようにヒップアップ (骨盤を前傾) し、背骨がきれいなS字を描く姿勢です。

一方、立禅の姿勢は、下図の左側の図のように背骨が縦に直線に並ぶように立ちます。 この立ち方では、地面からの力が損失無く直接リアルタイムで時間損失無く伝わることで、地面の力を借りて安定が得やすいというところにあり、合氣道独自の力の呼吸力を出す基礎でもあります。

ただし飛んだり跳ねたりするには向かない姿勢でもあります。飛んだり跳ねたりする場合は、やはり西洋式の良い姿勢の方が 、背骨に直接掛かる圧力をS字で上下方向にたわむことで吸収して分散させ、圧迫骨折などの危険から免れる 効果があります。

ですから場面によって使い分けが必要です。

立禅のやり方

前項の背骨をまっすぐに立てるということを踏まえて、立禅のやり方を説明していきます。

まず足幅は肩幅に開き、左右の足を平行になるように立ちます(ハの字や逆ハの字は無効)。

膝を少し曲げ(体力のない人は軽く曲げる程度で良い)、骨盤を後傾(性器を前に突き出すようなしぐさ)させて、背骨をまっすぐに立てます。基準ですが、どれぐらい真っ直ぐにするかといいますと、柱のコーナーに背骨を当て、尾骶骨から首の元まで隙間がなくなる位にします。はじめは多くの人は腰当たりが浮き、指が入りますが、密着できるように訓練が必要です。

さらに体が前後に傾斜しないように、まっすぐ立てて、手を真下に垂らし、掌を少し反らして力を籠めます。

中国武術の立禅(站椿)で多いのが手を前に向かい合わせにするのが多いですが、当会では、太極拳のある流派の初級の立禅に習い地面を感じることができるように下に腕を垂らします。

これは合氣道の基本である一教での腕を抑えたときの呼吸力をつけるためでもあります。

視線は前方に向け、視野を広くとり、周りの状況を広く見渡せるようにします。目は半眼といって、目を細めます。

立禅の完成度チェック法

立禅がうまくできていると、身体は統一体となり非常に安定した姿勢となります。そこで統一体のチェックとして、左右の真横から力を加えてみます。その際、押した側にふらつかずどっしりとした感覚があればOKです。

次に手を折れない腕を作る際のように気が入っているのをイメージしてもらい、チェックする人に腕を上方に力を加えてもらいます。体がぶれず、チェックする側の人がかなりの重さを感じたなら、腕の状態はOKです。

立禅と日常の姿勢と統一体

立禅を指導しますと、日常の生活や運動する際にこれをどう取り入れるかという質問がときどきありますので、ここではそれに対する回答を述べたいと思います。

立禅は飽くまでも安定性を感じるための立ち方であり、中国武術の特殊な力である勁や合氣道の呼吸力が最も習得しやすい形であるというだけで、実際は様々な姿勢それぞれに統一体といえる姿勢があります。

例えば横になった場合、立禅の姿勢は有効になりません。しかし、呼吸力は横になった状態でも発揮することができます。これはこれで、立禅で得られた感覚を使用して寝た状態で最大の統一体をつくることで可能になるのです。

このように、大切なポイントは統一体ができることで、立禅の姿勢ではありません。別の言い方をすれば、西洋スポーツ式の姿勢ではその姿勢の中にも統一体と呼べるものがあります。西洋スポーツでも、一流の選手は一流の統一体を作って行っているものです。

ちなみに、立禅は静止したままで行いますが、動きのある場合もその中での安定した統一体があります。古い合氣道をはじめ当会では、天の鳥船(あめのとりふね)の行や振魂(ふるたま/ふりたま)の行で動きの中で統一体を作る指導をしています。

この様に立禅の姿勢に余り拘りすぎると場合によっては安定を無くす原因にもなりますので注意が必要です。大切なのは目的です。立禅の目的は統一体を自覚するためのもので、この立禅が統一体を作るのに非常に優れた方法だということです。

   ◆   ◆   ◆

今回は、古い合氣道のシステムである禅⇒天の鳥船の行⇒振魂に連なる最初の禅の部分で大切な統一体の作り方を立禅を例に説明しました。次回は天の鳥船の行に関して述べるつもりです。

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武道の姿勢と統一体

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

最近、ある塾の先生からご指摘を受け、武道の基本の大切さをより深く知ることができました。そのご指摘というのが「せっかく武道で姿勢、特に統一体というのを教えてるのなら、もっとそれを多くの人に広めてはどうだろう?」ということでした。

その先生も生徒の成績と姿勢の関連性を以前から気になっていたそうで、私が武道で教えている統一体に目を付けたわけです。

今回から統一体というものについてお話ししたいと思います。

このブログでわかること

合氣道では心身が統一できる統一体を作って武道の方を繰り返し稽古をします。統一体こそが合氣道の出発の原点であり、到達点でもあります。 統一体の大切さをより深く知り、日ごろ統一体を意識するのを疎かにしている修行者に原点に復帰していただき、それにより技をより深いものにする指針をえることができます。

目次

統一体とはどのようなものか
統一体のメリット
統一体の段階
統一体の作り方

統一体とはどのようなものか

 人は嬉しいことがあると、顔は上を向き、手を大きく上に広げたくなります。一方、つらいことがあると俯き、手をギュッと知事メタくなります。このように心の変化により、体がそれに従うのをよく経験することではないでしょうか?

 一方、つらいことがあっても、顔を上に向け、手を大きく上に広げて、「わーい、わーい」と言っている間は、落ち込むことに集中することができません。

このように心と体は密接につながっています。ですから、心を集中するには、姿勢も非常に関係がある訳です。武道では最大限に集中して技を行う必要がありますが、当然最大限に集中するための姿勢も存在しているわけです。それを統一体と呼びます。

統一体のメリット

合氣道で統一体になったとき、単に集中力が上がるだけではありません。合氣道での統一体では、数多くのメリットがあります。

①精神が澄んで集中でき、 視野が広がる
②体が非常に安定する
③呼吸力と呼ばれる大きな力が出る
④効率的に身体が動く

などです。①に関しては精神的な面もありますが、技術的には目の使い方が重要になります。②については単に精神的な集中ではなく、実際に身体も安定しないと統一体にならないことを示しています。③についてですが、安定した体から出る力は地面を味方につけるため非常に力強い安定した力がでます。④ですが、統一体で動く場合、例えば当て身という打撃法を例にとると、一々手を引いてから打ち出す必要がなく、現在あるその手の位置から当て身がだせるようになります。

さらに、統一体を続けていると、
・身体が上部になり病気が治る
・必要なときに統一体を作ると不動心ができる
・運動能力が一気に跳ね上がる
・思いが実現しやすくなる

などのメリットもあります。

統一体の段階

この様に統一体を作ると、力の弱い女性でも男性に十分対抗できるようになるなど大きなメリットがあります。

ところが、統一体を作るためにはそのための稽古が必要になります。しかも、それには段階があります。

①静止した状態で統一体を作る段階
②水平方向の力を流す統一体を作る段階
③垂直方向の力を流す統一体を作る段階
④統一体を実際の動きの中で作る段階

単に統一体と言っても、このように段階があり、それぞれで統一体が作れないといけません。いくら静止したときに強い体ができても、動き出すと統一体が崩れるようでは役に立ちません。

統一体の作り方

実は開祖・植芝盛平翁先生が教えておられたころの合氣道ではこの統一体を作るシステムが組み込まれていました。それは、準備運動の中に、座禅、天の鳥船の行(船漕ぎ運動)が入っていますが、実はこれがその段階に応じたものなのです。

まずは座禅によって、静止した状態での身体の安定性を養い、その感覚を使って動の状態での安定性を養うために、動作である船漕ぎ運動や振魂(ふるたま)運動によって平行な動きと垂直な動きによって力を伝える感覚を養うようになっています

要するに、静で軸を作って安定した状態と感覚を養い、その後、動の状態での安定性を鍛えていくという過程になっています。

さらに、技の稽古にそれを取り込み、動きの中で必要な安定と不安定のバランスをコントロールし、相手に影響を及ぼすことで、技として完成するという形で技の稽古の流れとして組み立てられています。

このように合氣道では非常に緻密なシステムとして技の稽古が組み立てられているのです。その意図が分からないまま行うのと行わないのでは技に雲泥な個人差が出るのです。

   ◆   ◆   ◆

今回のブログでは、古い合氣道では統一体を作るシステムが組み込まれていたという話を書きましたが、次回からもう少し詳しく見ていきたいと思います。

なお、当会では、座禅の代わりに中国武術から拝借した立禅を採用しております。ですから座禅の説明の代わりに立禅について次回はお話したいと思います。

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祝いと呪いの言葉

みなさん、新年明けましておめでとうございます。
本年もどうか当ブログをよろしくお願いします。
さて、皆さんはお元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、今回は新年ということで、言霊について書きたいと思います。

このブログでわかること

古い合氣道では言霊(ことだま)を大切にします。こういうと迷信?と反発する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、言葉を大切にするというのは武道の上達に非常に関係があります。この言葉の効用を知ると言霊の大切さがわかるだけでなく、武道や芸事の習得に限らずあらゆる人間生活を豊かにするうえで非常に大切なことが理解できます。

目次

●人生をダメに呪いの言葉
●人生を良くする祝いの言葉
●誰でも呪いは受けている
●脳科学と呪いの言葉

人生をダメにする呪いの言葉

私たち人間は日常生活において多大に言葉の影響を受けています。しかもその言葉の影響は心の奥底、潜在意識レベルで私たちに大きな作用を及ぼしています。

実は、僕は1月3日に一人で立禅をしていましたところ、ふと自分がかなり深いレベルで言葉の影響を受けていることを感じたのです。それは何かといいますと、常に僕の心の中に「僕は人の何倍も努力しないと普通の人並みについていけない」という呪いのような思いが潜在意識にあるということに気が付いたのです。

僕は母親にとても感謝しています。この世に産んでいただいた母親に対してを悪くいうようで気が進みませんがお話ししたいと思います。

僕の母親は「謙譲の美徳」が最高だという信念を持った人した。その結果、母親は人に対して僕を紹介する場合、僕の悪いところばかりを述べるのです。「この子は体も弱いし、運動もドンくさいし、頭も良くないので困っているの」というのです。それでも周りの人が「それでもみー君(僕のニックネーム)はいつもおとなしくコツコツと一生懸命やるのはすごい」と褒めると、「いやいや、コツコツやるだけで、全然大したことがないの。何とか皆についていける程度ぐらいなの」と母親は僕を落とすのです。このように、僕の目の前で自分の息子を落とすことが最高の美徳と思っていたようです。

そういう僕はというと、子供のころから青年期にかけてとてもとても体が弱く、また学業など頑張る割にはあまり報われないという人生を歩むこととなりました。ですから、僕の子供のころは悲惨でした。コツコツとやる割には勉強ができる訳ではなく、スポーツはからっきしで、何もこれといった得意なことがないので何をするのも自信がなく、ドラえもんののび太君のようでした。

僕のように極端でなくとも、周りから何気なく言われる言葉が潜在意識に沁みついて人生に大きな影響を与えていることは、少なからず誰もにあるものです。

と言っても、どの親もそうでしょうが、僕の母親も僕がこんな不憫な人生を歩まそうという意図は全くありませんでした。僕のことを常に気にかけ、僕の幸せを常に願っている母親でした。でも、僕に与えた言葉の力の方がずっとずっと大きかったのです。まさしく言葉の呪いだったのです。

人生を良くする祝いの言葉

今、思い起こしてみると、言葉のかけ方で人生を良い方に一変することもあります。僕は体が弱かったのですが、人のならないような病気で中二の時は学校を何か月も休むような大病もしました。その結果、あまり得意でなかった勉強もクラスで最下位を取るほどひどくなったのです。そして高校も最底辺の高校しか行けない成績しか取れませんでした。

と言っても毎日毎日一生懸命勉強したのですが、全く成績が上がらず、当時の担任の先生も僕のために時間を割いて教えてくれたのですが全くダメでした。特に中二の谷口先生には本当にお世話になりました。今思い出すたびに感謝の気持ちであふれてきます。

余りにもひどいので、中3の夏に家庭教師を雇うことになりました。今木先生という先生です。ほぼ毎日家庭教師に来てくれて2週間ほどしたある日、「この子はとても頭が良いのに、何故こんな成績しかとれないのか不思議だ。必ず成績が良くなるはずだ」といったのです。すると夏休みを挟んで本の1か月で僕の成績が急上昇したのです。それで最底辺高校しか行けない成績から、急に当時では一番難しい高校がちょうど入れるレベルまで跳ね上がったのです。とはいっても田舎の高校ですから大したことはないのですが…結局、成績は一番の高校に入れるレベルでしたが、自信が持てず結局二番の偏差値の高校に入りました。

それからもう一つですが、僕は運動神経が非常に鈍いです。でも32歳の時に極真カラテを学んだ時に、合氣道をやった素養もあったのでしょう、黒岡師範から「橋本は才能がある。20歳のときに出会っていたら、身長もあるから日本でも有数の選手にしてやれたのに」と言っていただいたのです。

その結果、僕は初めての試験で、飛び帯といって10級(オレンジ帯)の試験を受けたとき8級(青帯)に3階級昇進したのです。運動神経が万能な人なら当然と言ってもいいでしょうが、僕のように運動オンチが3階級昇進というのはあり得ません。

この様に、偶然言われた言葉が人の能力を極端に上にあげるものもあるのです。それこそ呪いの反対の言葉もあるわけです。まさしく「祝いの言葉」と言える言葉です。

誰でも呪いは受けている

僕のような経験をされた方もたくさんおられると思います。僕たちは、呪いの言葉によってかなり影響を実は受けているのです。

僕たちは実は無限の可能性があります。皆さんも一度は聞いたことがあると思いますが、ノミの法則あるいはコップのノミという話があります。

ノミのジャンプ力は非常に強力で身長の100倍~150倍の高さを飛べるそうです。ですから体長2,3ミリのノミだと30センチぐらい飛べるのです。ところがこのノミを高さ10センチのコップに入れて蓋をすると、ノミたちは10センチしか飛べないノミになるちおうのです。

僕たちは様々な点でこのノミと同じようになっていませんか? 僕たちはもっともっと可能性があると思うのです。それは周りから与えられた呪いの言葉によって潜在意識に沁みついています。呪いの言葉はいくら否定しても永遠に呪いが発動したままです。それを取り除くのが祝いの言葉です。自分の可能性を信じ呪いを一つ一つ取り除く必要があるのです。

ですから、「やっても無駄」「無理」など否定的な言葉はできるだけ慎まないといけません。やはり肯定的な言葉「必ずできる」「嬉しい」「楽しい」「感謝」「愛している」などの言葉を多用して自分の潜在意識の呪いから解放していく必要があると思います。本当に言葉は大切だとつくづく感じます。

脳科学と呪いの言葉

呪いの言葉は口にするだけでなく、心の中で呟いていることもあります。自分自身に言っていること、他人に言っていること、他人に言われたことを何も考えず取り入れたり、すべてに自分は影響をうけています。

実は、脳科学の方でもそのことを明らかにしています。ですから科学的にもかなり解明されているのです。例えば、脳神経外科医の林成之先生の「脳に悪い7つの習慣」という本があります。この著者はオリンピックの競泳日本代表チームに招かれ多大な影響を与えておられます。自分自身へ、他人へ、他人から自分へなど、言葉の影響を考えさせられる内容ですので、 この本にのっている脳に悪い7つの習慣をあげておきます。

①「興味がない」と物事を避けること
②「嫌だ」「疲れた」とグチをいうこと
③言われたことをコツコツやること
④常に効率を考えること
⑤やりたくないのに我慢して勉強すること
⑥スポーツや絵に興味がないこと
⑦めったに人をほめないこと

以上です。どれも、自分自身へ、自分から他人へ、他人から自分への言葉がけのヒントになるものばかりだと思います。

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