知っておくべき身体と氣の関係

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、今回の記事は誤解されていることの多い身体と氣の関係について、僕の師匠・故・井口雅博師範から教わった合氣道習得への5つの段階に関連付けて話したいと思います。

合氣道の技を実際に使えるようになるには正しく身体と氣の関係を知っておく必要があります。技が思うように効かない合氣道修行者で氣を過大評価しすぎて夢を見すぎている人に特に読んでいただきたいと思います。

最近 、弟子を指導していてひしひしと感じる出来事が増えているため、技の進歩に行き詰っている修行者の人の指針になるのではないかと思います。

このブログでわかること

技を実際に使用できるためには、現在自分がどういった段階にいるかを知る必要があります。例えば目的地に行くには地図が必要で自分が、自分がどこにいるかがわかる必要がある訳です。そのためには自分が身体と氣の関係を理解し、僕の師匠が示した5つの段階を知ることで、地図が得られるとともに自分の位置がどの位置かが理解できます。

目次

5つの段階
誤解の多い身体と氣の関係について
意の段階・神の段階

5つの段階

僕の師匠が示した合氣道習得の5つの段階というのがありますが、それは以下のようになっています。
 ①形の段階
 ②体の段階
 ③氣の段階
 ④意の段階
 ⑤神の段階

形の段階というのは、合氣道の形を規定通りのステップで規定通りの動きで技を覚える段階です。

実際は相手の身体の大きさ、力加減など様々です。ですから、たまたま自分の覚えた形にピッタリ合う人以外では固定した形にこだわっていると技がかかりません。そこで、体の段階とは相手の身体をどう持っていくと導きやすいか、自分の身体をどう使うと効率的かということを理解して、状況に応じて臨機応変に動ける必要があります。それが体の段階です。

体の段階で技を覚えるのはまだ理屈で動いているので、これを感覚で動けるように変える必要があります。僕の師匠は「体は氣に従う」と言われました。そこで氣を使うことで体を操作するという氣の段階に入る必要があります。

ところが氣の流れを意識しているよりもさらに高度な段階が存在すると師匠はいいました。それが意の段階です。氣の流れを意識するには出発点から終了点までの気の流れを感じる必要がありますが、意識しただけで自然と気が流れるようになる段階が意の段階です。

さらに意識もせずとも「動けば即合気」というわれるように、無意識で最高の状態を作れるようになるのが神の段階です。

誤解の多い身体と氣の関係について

合氣道修行者の中には氣に関して大きな誤解をされている方がいます。その誤解というのは「氣が自在に使えれば何でもできる」というもので、氣さえ使えれば身体操作など気にする必要がないというものです。 要するに超能力者になるというものです。

確かに僕も氣の可能性については否定しません。そういうことができる人がいるかもしれません。例えば、中国武術の総本山の嵩山少林寺ですら一指禅という人差し指一本で逆立ちをして禅を行う修行があるそうです。しかも修行が進むと数メートル離れた火のついたロウソクの炎を前後左右と自由に動かすことができるようになるといわれています。しかし、特別才能がある僧が専属に十数年も費やしてそうなるというものですから、仕事を持っている一般人が週に何度か1時間ほど稽古だけで一指禅以上のレベルになるのはを夢見るのはナンセンスだと僕は考えています。

また、そういった超常現象的な氣の扱いは呪術の部類に属しています。一方、合氣道では氣を身体に通すことで技を使い、それが完璧になると氣が合う相手に離れた状態で技が掛けられるようになり、さらに進むとそういった超能力的なことができるようになるといわれてますが、それはもはや呪術でしかありません。

呪術はかなり才能が必要です。一方、身体に氣を通すのは正しい体の使い方 さえできれば誰でもできることです。ただし、その気を通せる身体の状態にする方法を理解する必要はあります。それには身体と氣の関係を知り、氣が流れるためにの身体のポジションが確実にとれるようになる必要があります。そのため、気功であっても初心の修行者は当初はかなり厳密な姿勢に関する注意点を守って訓練します。

ましてや武道である合氣道では、物理的に強い影響を与えるためには氣の通る強い身体の使い方が必修で、さらに氣と相手の身体の関係性をどうすれば利用できるかという技術も必要です。それが理解できて初めて技が効く氣の使い方ができる訳です。

このため自分の身体の効率的な使い方、相手の身体をどう扱うかということを理解しておくことが次の氣の段階に行くのに必須なのです。

ですから、氣さえコントロールできればと氣のみにフォーカスしていると結局いつまでも技が効かないということになりかねません。効率的な身体の使い方が氣の流れる身体であり、相手の身体をどう扱うかというのが相手の氣をどう導くかにつながるわけです。

意の段階・神の段階

ここまでで合氣道の技では、単に氣という未知のエネルギーを意識するだけでは使えないというのが理解できたと思います。身体に気を通す体の使い方、相手の気を導くための相手の身体の扱い方を理解して、そこに氣を意識するということが必要になります。

次に意の段階とはどういうものかということですが、氣の段階を続けていると、最終的に氣をどこに導けばよいか?という点がわかるようになります。氣の最終ポイントを意識すると相手に技がかかるという段階が意の段階です。合氣道でいえば呼吸力が出るという段階です。この段階になると、例えば腰の曲がった老人の姿勢ですら大きな力がでるようになります。何故ならその姿勢において最大限に身体を効率よくできるポジションを自然にとれるようになるからです。

さらに意の段階を続けていると、あらゆる状況において身体が勝手に反応するようになり、いちいち意(こころ)を使う必要もなくなるといわれています。動けば即合気という神域に入るそうです。私たち合氣道修行者の最終的に目指すところです。そして、 僕の師匠である井口師範は「 この段階ではじめて神通力で氣の使い方を扱うべきで、それ以前のものがそういうことをすると邪道に走る」と言っておりました。確かに呪術的な氣の使い方をしたいのであれば宗教の方がよっぽど良いかもしれません。

  ◆   ◆   ◆

今回のブログはいかがでしたか? 氣という神秘的なエネルギーだけにフォーカスしている方にも少し参考になったのではないでしょうか? 氣の使い方にも身体を通す氣の使い方と呪術的な氣の使い方がある訳ですが、誤解されている多くの人はこの呪術的な使い方ばかりにフォーカスされていることがかなり多いように思います。私たち合氣道をしているものは、身体に気を流すにはどうするかという点にフォーカスした方が技に進歩が得られると僕は考えています。

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骨の合わせのポイント!

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、前回は手首取りの骨の合わせについてお話ししましたが、今回はその次に行うことについてお話ししたいと思います。

このブログでわかること

合氣道の修行者で「手首取りで骨の合わせによって相手の力の状態を読み相手とぶつからない状態になったのに動かそうとするとぶつかってしまう」という悩みを持っている人がいると思います。これは合わせの次に何をするかというのが明確でないからです。今回は相手とぶつからないために骨の合わせの次に何をするかについて具体的に述べていきたいと思います。(合氣道では実際はこれも合わせの中に入っているのですが、分かりやすくするために 骨の合わせとは 分けて説明します)

目次

合わせの感覚の確認
一瞬はできてもすぐにぶつかる理由
2つのポイント

合わせの感覚の確認

骨の合わせができた後に次に何を行うかということを説明する前に、合わせが本当にできているかを知る必要があります。合わせが中途半端だと、次のステップに進んでも相手とぶつかりができるだけで、相手を導くことはできません。そこでまず合わせの感覚とはどんなものかについて触れておきましょう。

骨の合わせができたときの感覚は、相手に手首を持たれたときに相手がしっかり持っているにもかかわらず、骨がクリクリと動く状態になっているような感覚です。

例えていうなら、鉄の棒を厚いスポンジで包んでいて、重さがあるのに持ちにくいというような、持てているがしっくりと来ないというような感覚を相手に与えるようになったときに骨の合わせができています。

感覚は人それぞれ違いますので、自分の手でもう片方の手首をつかんでその感覚を理解していただくとよいと思います。

なお、持たれている方の手では、僕自身の感覚でいうと、皮膚の毛穴から空気を吸引して相手の掌全体にくっついているような感覚がありますが、その感覚がわからない人は自分の手首をつかんでつかんだ手の感覚をまず作って、慣れてきたらつかまれた方のの手首の感覚を覚えてください。

一瞬できても、すぐにぶつかる理由

合わせの感覚がどのようなものか分かると、一瞬はできるのですがすぐにぶつかるということで悩むこととなります。

その理由は相手を動かそうとした際に合わせの状態から抜け出してしまうからです。では、持続するにはどうするか?ということですが、これにはいくつかの注意点がありますが、その目的は相手に悟られないということに尽きます。

その相手に悟られないためにはどうするか?といいますと、持たれている点で変化が起こらないようにする必要があります。そのためには、心理的なポイントと物理的なポイントがあります。

心理的なポイントとして「持たれている点を意識しない」ということが肝心です。相手と接触している場合、何故か自分が意識しているところは相手に伝わりやすくなります。ですから、相手との接点はできる限り意識しないということです。

物理的なポイントとして「相手の関節を意識して動くべき方向に動かす」という点です。こういうとときどき「相手の有利になるのでは?」という質問がかえってくるときがありますが、そんなときは「例えばドアを開けるときあなたはどうしますか?」と答えます。

例えば、ドアには開き戸と引き戸がありますが、引き戸でいくらドアを開こうとしてもドアはうごきません。人間の体も動く方向にしか動かないのです。合氣道では相手に有利か不利を考える場合は、バランスが取れているかどうかだけが問題で、相手の関節に無理をかけるのではないのです。

2つのポイントが同時!

前項では心理的ポイントと物理的ポイントを分けて書きましたが、実は行うことは同じことを示しています。物理的ポイントを実行するためには心理的ポイントも実行している必要がありますし、反対も同じです。

かなり無意識の領域の話になるのですが、自分の体をコントロールする際は人は必ず関節使って動かそうとしています。要するにタコなどの軟体動物の足のように動かそうと、骨の真ん中を折って動かそうとする人はいません。人が例えば腕を使おうとしたとき、腕の中間点を意識する人はいないのです。

ところが相手に手を持たれたとき、その部分を意識して無理やり動かそうとしてしまいます。ところが相手に持たれた部分が骨の中央と考えるとそこを意識するのはナンセンスということがわかると思います。要するに、相手と自分の接点を骨の真ん中とみなすことで、相手の関節が自分が曲げるべき場所だとわかるのです。( これが実は相手と一体になるということにも通じるのです)

そういう意識があると合わせができた部分でぶつかることが無くなるのです。要するに、骨の合わせでは相手の骨格を読む力が必要となるのです。

何故なら、相手が崩れるように骨格全体を読みつつ、相手の関節で曲がることを意識する必要があるからです。

合氣道では骨の合わせのことを単に「力を抜け」と指導されますが、「力を抜け」の本来の意味は骨の合わせを行うことにあるのです。ですから、「力を抜く」というのは非常に難しく骨格の読みができることが必修条件なのです。

  ◆   ◆   ◆

今回は骨の合わせについてお話しましたが、ここまで読まれた方は、「合氣道は氣で行う武道ではないのか? 何故骨格など読む必要があるのか?」と思われた方もいらっしゃるのではないでそうか? 次回はそのことをお題とした合氣道習得の5つの段階について述べたいと思います。

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最も基本の骨の合わせ

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、今回は前回の合わせの技術の続きで、当会で呼んでいる「骨の技術」の中の合わせについてお話ししたいと思います。

このブログでわかること

合氣道での脱力状態と力をいれてない腑抜け状態との違いが理論的にわかり、 合氣道で「力を抜け」といわれる本当の意味を理解し技に応用するヒントを得ることができるようになります。

目次

骨の技術とは?!
骨の合わせの技術とは?!
骨の合わせを実現するには?!
ゼロ状態を作ると?

骨の技術とは?!

IAM護身術では僕が学んだ合氣道や中国拳法などの技術から力の弱い人にでもできる技術を整理統合して体系化したものを会員に伝えています。特にメインとなるのが井口雅博師範から学んだ合氣道の技術に様々な名称を付けて指導しています。

その技術は次の4つの柱で構成しています。
・骨の技術(物理学的な技術)
・皮膚の技術(生理学的な技術)
・皮膚感覚の技術【生理学と心理学的な技術)
・空間感覚の技術(心理学的な技術)
なお、この名称は当会独自のモノです。

今回はこの4つの柱の内の骨の技術、その中の合わせの技術について説明したいと思っています。

物理的な現象を扱う技術を骨の技術と呼んでいるのは、人体は骨格によって支えられ運ばれるため、骨格の運用自体が物理の法則によって支配されるためです。

具体的な内容としては、強い骨格の使い方から力を伝達する技術までが含まれています。その中で特に力の伝達については相手とのぶつかりを如何に無くしスムーズに力を伝達することが肝心です。その技術が骨の合わせの技術です。

骨の合わせの技術とは?!

合氣道では手首を取られた場合の技のトレーニングがたくさんあります。実際に護身を考えたとき、特に男性の場合は現代社会ではあまりないのではないでしょうか? どちらかというといきなり胸倉をつかまれる、殴ってこられるという方が確率的には高いかもしれません。

それでも敢えて合氣道では手首どりの技を稽古します。僕が合氣道を始めた当初はこのありえない想定に対して疑問を持ったものです。それで、本など読みあさって得られた回答は「昔は刀を持っていたため刀を素手で制するには手首を持つ必要があったから」ということでした。『じゃあ、現代社会じゃ必要ないんじゃ?』と考えたものでした。

それに対して私の師匠の井口師範の回答は「そんなもの稽古するために必要やからにきまってるやろ」ということでした。要するに合氣道独自の感覚を身に付けるには手首取りが最も有効だからだったのです。

具体的には手首取りは、
①相手との接触時間が長い
②直接皮膚に触れている
以上の二点において合氣道に必要な感覚を訓練するのに非常に適しているということなのです。

ちなみに合氣道に必要な感覚というと沢山ありますが、今回のブログでは骨の合わせという技術について述べているので合わせるということについて述べたいと思います。

合氣道はその名の通り氣を合わせる武道で、具体的には、相手とぶつからず相手を導いて相手を無力化する武道です。ですから古流武術の技術としての合気とは少し意味合いが異なり、もっと広範囲の意味を持っています。

そのため、この氣を合わせるということですが、実は技術的に述べるとかなり多岐にわたる技術の集合体ということになります。その中で最も基本となるのが骨の合わせで、これは実際に相手と物理的にぶつからない状態にする技術です。

骨の合わせを実現するには?!

この骨の合わせとは 具体的に 何かといいますと、「相手とぶつからない」という感覚を実現する技術です。骨の合わせとはその名の通り自分の骨をコントロールしてぶつかりをゼロにする技術です。

手首取りを例にとると、相手とぶつかりを感じるとき必ず手首のどこか一か所にぶつかりを感じるはずです。骨の合わせとは相手が手首に力を加えた方向に手首の骨を合わせることで握られた部分の当たりをゼロにします。

この当たりゼロという感覚は実はかなり微妙で本の僅かでもあたりがあると相手にこちらの意識が読まれてしまいます。完全にゼロに合わす必要があるのです。

そのためには相手に持たれるのではなく相手に持たせるという意識が非常に大切で、己がコントロールしやすい態勢で相手に持たせることです。そうすると相手は握っているのに握っていないような一種独特な感覚を感じます。

ところで、このゼロ状態の合わせと力を完全に抜いた腑抜けな状態と混同する人がいますが、それは全く別物です。骨の合わせを作るには、最も大切なのが手に気が入っている状況でのゼロ状態です。

言葉を変えていうなら、元合気会師範部長、気の研究会の故・藤平光一師範が指導した折れない腕の状態である必要があります。それにより、相手には腕という重い棒を持たせている状態にしておくのです。これがポイントです。

腑抜けは相手に持たれている状態、骨の合わせは相手に持たせている状態です。この違いを理解して脱力というのは筋肉を腑抜けにするのではなく、相手とのぶつかりを消滅させる技術であるということを理解しておく必要があります。

ゼロ状態を作ると?!

この骨の合わせによるゼロ状態を作るとどいうことが起こるのかというと、完全にゼロ状態になると相手の最も弱い軌道が一瞬で感じることができます。その軌道に移動するとほとんど力を使わずに相手を導くことができるようになるのです。

しかし、少しでもぶつかりがあるとその軌道はまったく感じられません。こういうと骨の合わせの稽古段階の修行者にとっては非常に難しい要求になり、これだけを目標にすると殆どの修行者が脱落することになるでしょう。

しかし、途中段階の人でも効かせる方法があります。それは、以前のブログで紹介した陽の技法と陰の技法をつかうことです。

陽の技法を使う場合の注意点は、手首の感覚がゼロ状態になったときに手首の位置を変えずまずは身体のみ動かすことです。

また陰の技法を使う場合の注意点では、ゼロ状態の感覚をキープすることに留意しながら陰の技法を行うとよいでしょう。

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ゼロにする合わせとは?!

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、前回はタイミングを読まさない技術として当会の陽の技術を説明しましたが、今回はもっと根源的な技術である「合わせ」についてお話したいと思います。

このブログでわかること

合氣道を始めとする筋力を主体としない武道では相手の力とぶつからないということが最も大切です。今回のブログを読むことで、相手と力がぶつかる理由がわかります。それによりぶつからないためにはどうすれば良いかということが理解でき、さらには何故ぶつからないと相手をコントロールできるかということまでわかるようになります。そう理解することで合氣道の技に対して投げたり固めたりという視点ではなく、もっと根源にあるものに気づくことができます。

目次

相手と力がぶつからないのが可能な理由
相手と力がぶつかる理由
ぶつからない合わせの技術とは?!

相手と力がぶつからないのが可能な理由

実は相手と力がぶつからないというのは誰でもできることなのです。ところが相手を投げたり固めたりする場合、形にこだわってしまうがゆえに、相手と力がぶつかってしまいます。そこで相手と力がぶつからないのが可能な理由を理解し、力はぶつからないものなのだという確信をもっていただき、ぶつからないようにするにはどうするかを理解していただくためのお話しをまず最初にしたいと思います。

実は人間が二足で立っているというのはかなり不安定な状態です。例えば、人形を立たせる場合を思い出していただくと如何に人形が立っている状態というのは不安定かを思い出すことができるのではないでしょうか? 本当に軽くつついただけでも簡単に倒れてしまいます。

では、何故人間は安定して立っていられるのでしょうか? それは無意識に周りの状況を判断して常にバランスを保っているからです。ですからその判断ができない状態になると人間というのは簡単に倒れてしまうのです。その例が意識を無くしたら人は倒れてしまうという現象からわかることではないでしょうか?

このように実は二足の状態の人というのは非常に不安定なわけです。合氣道では相手が察知できないような方法で相手を崩すことで相手の意識を奪って気絶させることなく相手を倒しているわけです。そういった手段や技術を用いることで人形を倒すように本の軽い力で相手を投げたり固めたりするのが合氣道の根本なのです。

相手と力がぶつかる理由

私たち人間は 相手がいる場合に本能的に相手とコミュニケーションを取ろうとする傾向を持っています。そのため相手を投げたい・固めたいと思ったとき、相手の状態を探るために力を加えつつ探りを入れます。すると相手はその探りを感知してバランスを取ろうとします。

さらに、本能的に人間は相手を崩そうと力を加える際に相手を支えとして自分は安定して相手を崩すように動きます。すると相手もこちらの力を利用しつつ力に抗うようにこちらを支えにバランスを取る訳です。要するに力がぶつかるというのは互いに支え合うためなのです。

このようにしてお互いに支え合うことで相手と力がぶつかり、相手を思うように導けず、相手に技が効かないという結果となるのです。このため少しでも合氣道を知っている人に対し、特に力の強い男性には技のポイントを押さえていても中々技がかかりません。

それゆえ、何年修行を行っても中々護身に使えるレベルまで到達できないと自信を持つことができない男性がたくさんいるわけです。というこの記事を書いている僕もその一人だったのですが…。そのため空手を習いに行ったり、中国拳法をかじったりしました。

話はそれますが、ここで男性とかいたのは、日本の合氣道界では女性には比較的男性は優しく接し、技が効かなくても効いたふりをして技に掛かってあげるため、女性には比較的自覚していない人が多く、ぶつからない技術を知らずして黒帯を持つと「もう相手が何人でも大丈夫!」「短刀取りを教えてもらったのでナイフでも大丈夫!」など自信を持っている女性が多いと聞きます。

それはともかくとして、相手と力がぶつかる原因というのは相手と支え合う状態になってしまうためということを理解してください。

ぶつからない合わせの技術とは?!

合わせの技術を一言でいうのは非常に難しいです。といいますのは、合わせの技術というのは様々な要素が複合された技術だからです。そこでそのコンセプトだけを述べると、 相手と支え合う状況をつくらないという前提条件のもと、 相手にこちらの意図を読まさない状況を守りつつ、相手が立っている人形のようにわずかな力で加えることで崩すせる状態にしてしまう技術といえるでしょう。

端的に言うと、合わせの技術とは相手とのぶつかりをゼロにする技術の総称です。ところで何故合わせの技術というかといいますと、相手とぶつからない状態というのは実は全く力を抜いた腑抜けた状態でも可能なのです。しかし腑抜けた状態では相手を導くことができません。そういった腑抜けた状態と区別するため「合わせ」という言葉を使っています。

合わせの状態、すなわち、相手を支えとして使わず相手の力とぶつからない状態を作るとどうなるかといいますと、相手側からこちらの力を全く感じない状態となります。そうした状態でこちらの動きや重み(運動エネルギーなど)などを与えてやると相手はもろに影響を受け、思わず導かれてしまいます。

しかし、この動きや重みを伝える際にも相手に意図を読まれるとぶつかりの原因となり、相手を導くことができません。しかし、この伝える技術はまた別の技術であることをご理解いただく必要があります。まず大切なのは合わせの技術を身に付けることです。その上でさらに相手にわからない伝達の技術が使えると相手を崩せるようになります。相手が崩せれば、後は投げたり固めたりは簡単にできるようになるわけです。

  ◆   ◆   ◆

今回はいかがでしたでしょうか? 合わせとは相手にこちらの意図を全く感知させず、相手と支え合うことを回避する技術だったわけです。次回からは、もう少し具体的に合わせの技術を述べていきたいと思います。次回は最も基本的になる骨の技術の合わせについて述べたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。

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タイミングを読ませない!

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、前回は相手とぶつからない技術の話をしましたが、実は相手とぶつからないためには前提条件があります。それは「相手にタイミングを読まれない」ということです。

自分のやろうとすることが相手に悟られると当然相手はそれを察知して対抗しようとします。そうなるとすべての技が封じられ、結局相手とぶつかるという現象となってうまく技がかからないという結果に終わってします。

そこで今回から相手にタイミングを悟られない技術についてお話していきたいと思います。

このブログでわかること

合氣道でタイミングを読まさないということで相手に悟られない技術というのはたくさんありますが、今回は陽の技術についてお話します。陽の技術は自分の動きを相手に伝える技術ですが、問題はその伝え方が非常に大切です。

陽の技術に慣れていない人が技を受けると伝え方に関係無く確かに効果が出ますが、術理が分かっていてその動きを読んでいる相手には伝え方が悪いとこの技術が通用しません。

しかし伝え方を習得すると相手が理屈が分かっていても十分に技に掛かりますので、その伝え方を理解することで技の効き方が大きく変わります。またこのブログでは陽の技術の稽古方法を説明しますので、この稽古方法を真剣に稽古された人は自分の動きをスムーズに相手に伝えることができるようになります。それにより他の人の一つ上を行く技をかけることができるようになります。

目次

陽の技術について
陽の技術の稽古方法
タイミングを相手に読まさない

陽の技術について

陽の技術というのは、自分の動きを相手に伝える技術です。合氣道では「気の流れを途切れずに技を行う」「一度動きを起こすと止まらずに流れるように技を行う」という点に留意して技を行うように指導されています。

これは実は理科(物理学)でいう運動エネルギーを利用するということを示しているのです。というのは誰でも重いものが移動するとそれにエネルギーがあるというのは経験的に知っています。

例えば、50キロの荷物が地面に置かれているのをみても誰も避けようとしませんが、50キロの荷物が頭上1mから落ちて来るのが分かったらたいていの人は避けるでしょう。これは経験的にそんな大きなものが落ちてきたらケガをするのが分かっているからです。

50キロといっても動きがあるのとないのでは全然違うとうことです。50キロというと多分女性の体重ぐらいでしょうが、これでも動きがあると大きなエネルギーを持つということです。

ただ一般的に、私たちは人が動くことに見慣れすぎていてそれほど大きなエネルギーがあるように思っていませんが、そこに誤りがあります。実は人が動いている自体で大きなエネルギーがあるのです。そういった運動エネルギーを使うのが陽の技術と当会では呼んでいます。

陽の技術の稽古法

では、陽の技術の稽古方法をお話します。これにより伝えるという感覚が身に付き相手の力とぶつからない感覚が身に付きます。

陽の技術の稽古方法は下図の①~③に示す段階で行います。
①相手の肩に手を置いて手を伸ばした位置に立ちます
②肘を曲げつつ相手に素早く近づいていきます
③②の時点で相手を後ろに突き飛ばしつつ前にさらに進みます

               陽の技術の稽古法

注意事項としては①で相手の肩に置いた手は軽く触れている程度にし、②に至るまでその触れている圧力を変えず、③の位置に来た時点で相手を後方に押します。ただし、押した際に相手と力がぶつかる感覚がある場合や相手に抵抗される場合は動きの伝え方が上手くいっていません。

陽の技術の目的は、一つは動き(’運動エネルギー)をまずは作ること、2つ目はそのエネルギーをぶつからずスムーズに相手に伝えることです。スムーズに相手にエネルギーを伝えるため大切なことは伝えるタイミングを相手に読まさないことです。

タイミングを相手に読まさない

相手と力がぶつかったり、抵抗されて失敗する場合は、明らかに相手にいつどのタイミングで押してくるのかというのがあらかじめ伝わっているからです。

その理由として挙げられる問題点としては
 ①初めから押すタイミングを決めている
 ②初めから力が入っている
 ③途中から徐々に力が入ってくる
 ④押し出すときに掌の一点に力が集中する
などが考えられます。

まず①について述べてみましょう。この稽古で大切なのは相手に読まれないということです。そのためにはまずは相手を後方に押そうという気を無くす必要があります。人は接触をしていると、相手の意志が案外読めるもので、あらかじめどのタイミングで相手を押そうと決めていると、大概の相手は最初の時点でその意思を読むことができます。そのため押し出したときにはもうすでに相手に逆らわれるということがおこるのです。

②についてですが、自分は力を抜いているつもりでも案外と肩や腕に力が入っていることが多いです。わずかな力でも入っているだけで小さなぶつかりが最初からできてしまいます。すると相手はその力の変化を読み取ることができ、対抗されてしまいます。

③ですが、徐々に力が入ってくるとこの地点が危ないと相手は察知してしまいますので、最後まで力を入れないことが大切です。

④ですが、動きを伝えようと思うことで、つい掌に力が入り、掌底の一点に集中する動きができ読まれます。

以上問題点を上げましたが、この動作を行うコツは指全体を含む掌全体をまんべんなく相手に当てることで相手はこちらの動作が読めなくなります。

何故このような4つの問題点が出るのかといいますと、ちょっとした意識の変化で手が勝手に動いてしまうことが原因なのです。それで掌全体が相手に触れているということでその微妙な変化がもろに相手に伝わるため簡単にこちらの次の動きが相手に読まれてしまいます。

ですから、この動作で100%相手に読まれない稽古をすることで相手に動き(運動エネルギー)の伝え方が理解できるようになります。それによって形稽古にこの伝える技術を入れていくとさらに技が良くなるのです。

  ◆   ◆   ◆

合氣道の技の要は、投げ技や固め技ではなく如何に相手に読まれない動きができるかという点です。ですからどの角度で捩じるとかいうのもある面は大切ですが、技を知っている相手だと完全な角度を知っていてもうまく逃げられてしまいます。

これに関しては、コツがわかるとすごく技が他の人に掛かるようになりますが、周りそのコツになれてくるとまた技がかからなくなるという現象を合氣道をしている方なら経験があると思いますが、これが投げたり固めたりの部分のみに意識が行っているためなのです。

私の亡くなった師匠である井口師範は「投げたり、固めたりは枝葉」といいましたが、まさしくそのことを言われていたのだと思います。

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力がぶつからない技術

皆さん、お元気ですか? 僕はめちゃくちゃ元気です。

さて、合氣道の修行者の皆さんは相手と力がぶつかって技がかからないということを経験することがあるのではないでしょうか?

そんなとき、『相手が意地悪をしている。もっとちゃんと技に掛かってほしい』と考える人と、『自分の技が未熟だからできない』と考える人とがいると思いますが、実は意地悪でも未熟でもなく、【ぶつからない技術】が使えていないだけなのです。 当会ではこのぶつからない技術のことを【核の気】と言っています。

この核の気については前々回の「当て身の稽古は地と繋がる為」というところでも述べましたが、今回はこの核の気についてもう少し深掘りしていきたいと思います。

このブログでわかること

ぶつからない技術というのは、相手の力を自分の体を通じて地面に流す技術です。相手の力が地面に流れれば相手とぶつかることがありませんので技が掛けやすくなります。また手が触角であることや、力を抜くということの大切さ、タイミングの重要性がわかり技がより上達しやすくなります。なお、核の気がわかると、座り技呼吸法を行ってもわずかな動きで相手を倒せるようになります。また投げ技でもわずかな力で相手を投げることができるようになります。

目次

相手の力を地に流す技術・核の気
核の気のポイント
投げたり固めたりは本の枝葉

相手の力を地に流す技術・核の気

前々回に核の気についてお話ししました。この核の気の感覚を養うためには当て身の稽古が最も有効と思われます。そして当て身の稽古をやっている中で拳の衝撃が地面とつながるという感覚ができた時点で核の気が使えているということになります。

この感覚を養成するためには、最も大切なのは体全体に力が入らないことです。要するに体全体の筋肉を引き締めないということです。ある種の打撃系武術では体の筋肉を一瞬に引き締めることで打撃力を上げるということをやりますが、合氣道の当て身の場合はこれとは真逆になりますのでこの点が非常に大切です。

具体的にいいますとボクシングでは最もやってはいけないという「手打ち」というような打ち方で合氣道の当て身は稽古を行います。ちなみにボクシングでいう手打ちというのは、腕の収縮だけでパンチを打ち出すことで、体重も乗らず、相手を倒すだけの力が出せない最も良くない打ち方を指します。

前々回のブログでもお話ししましたように、この手打ちのようなパンチが地面とつながると強大な力がでます。これは相手と接触が生じたとき拳が直接地面とつながる為です。要するに地面というのは地球ですから地球を味方につけ、地球と相手をぶつけるわけです。

ところで、核の気の使用にも、最低限は衝撃に耐える腕の強さが必要になります。ですから、幼児が強力なパンチが打ち出せるかというとそうではありません。その点は注意が必要です。

核の気のポイント

核の気を使うのに大きなポイントがあります。それは合わせと誘導との2つのステップが必要であるということです。

【合わせ】
合わせというのは 相手の力を感じるため相手の力に当たることを言います。

合わせを行うには、手を触角として使うために最初は脱力させ、次に相手の力を感じるため相手の力に当てます。相手の力に当てる場合誘導したい方向に相手の力が当たる個所を探します。

【誘導】
誘導とは合わせで力の方向性を知覚したなら、自分の腕をコントロールすることで足の裏に力が伝わる方向を見つけることです。相手の力が地面に伝わると突然相手が動き出します。

相手の力と当たる個所が見つかると、自分の腕をコントロールして相手と自分の足の裏がつながるところを探します。相手の力と地面がつながると相手は勝手に誘導したいと思う方向に移動を始めます。

誘導についてもう少しわかりやすい例でいいますと、コーヒーカップの耳を持つ手をイメージしてもらいたいと思います。コーヒーの量がかわると当然カップを持つ指の力加減は変えないとコーヒーをこぼしてしまいますが、こぼす人がいないということは人は無意識にコーヒーの量によってカップを持つ指の力加減を変えているのです。

足の裏に力を伝えるというのはこのコーヒーカップを持つ指のような微妙な力加減と同様のことを腕全体のコントロールを行うことで相手の力を地面に伝えることなのです。決して体全体を固めて足に力を伝えることではないことに注意が必要です。

そのようにできたとき初めて相手が動き出します。ちなみにことき感じる感覚は当会の陰の技法を行うときに得られる感覚が非常に参考になります。そのため基本動作として陰の技法を稽古しておく必要があります。

投げたり固めたりは本の枝葉

核の気を使用した技を考えたとき、合氣道で大切なのは合わせと導き(誘導)であるということがわかります。

私の合氣道の師匠である故・井口師範は「投げたり固めたりは本の枝葉」ということをよく言われていました。要は投げたり固めたりというのは単なる結果に過ぎず、その前段階までが本当は大切だということでした。

要するに投げたり固めたりするその前にプロセスがあってそのプロセスこそ重要なのだということです。そのプロセスこそが当会で教える核の気です。師匠は「体の中心から気が出て力となったときこそが呼吸力がでるのだ」といいましたが、この中心(コア)からでる感覚があるため当会では核(コア)の気として核の気と呼んでいるのです。結果的には相手を合わせて誘導することなわけです。

井口師範は「元を忘れるな。何が幹であるかを知ることが大切」とおっしゃいました。そのため当て身の稽古をするように常々言われていたのです。

  ◆   ◆   ◆

今回は、当会が指導する核の気について少し深掘りしました。核の気というのはコアから出る気ということなのですが、身体を固めず(リラックスしていて)、腕の力加減をコントロールすることで足底に相手の力が流れる場所を探して相手の力と地面をぶつけるという技術なのです。

最もわかりやすい稽古は、手打ちのパンチを行って拳に感じた衝撃が直に地面に伝わるという感覚を養うことです。このとき重要なのは手の動きだけでパンチを行うということです。この当て身の稽古方法は前々回で詳しく説明していますのでそちらを参考にしてください。

核の気を使う当て身では前方向のみに力をぶつけるというやり方をしましたが、 核の気を合氣道の技で使う場合はこの感覚を四方八方に使う必要があります。ここがやはり難しいのですが、これも稽古次第です。

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合氣道と護身の間合い

皆さん! お元気ですか?
僕はめちゃくちゃ元気です!

さて、今回は一般の人にも役に立つ護身術の基本的な考えと護身の間合いについて話していきたいと思います。間合いというのは合氣道では相手との距離をいいます。護身を考えた場合、犯罪者と自分との間の距離ということです。

今回のブログでわかること

護身術の基本的な考え方がわかります。その考えから犯罪者と自分との間の距離で何をすべきかを理解することで、未然に安全が確保できるようになります。

これは一般的な護身だけでなく、合氣道のような護身を想定した武道において非常に大切な考えであり、技の稽古においてもこの考えをもって行うことが大切であり、合氣道を特に護身術として考えている人には必須の考えですので、是非理解して日ごろの生活でも意識するようにしていただくと、未然に危険から回避できるようになります。

目次

護身術の基本的な考え方
危険に関する3つの距離
犯罪者のリズムを見る

護身術の基本的な考え方

護身術というと暴漢などに襲われた場合を想定して、相手がどう攻撃したらどう避けるかという議論がよくなされますが、最も大切なのは安全確保です。

ですから護身術というのは戦闘術や格闘術とは全く違うものです。相手と接触するというのは最悪の場合であって、その際に用いる術(体術)を使うことが無いように努めるのが本当の護身術です。

このように話しますと、「じゃあ、体術は必要ないのか?」と誤解されますが、その最悪の状況において、少しでも状況を好転させるために用いるのが体術だと考えておく必要があります。ですから体術を使うことが起こるというのは最悪の状況であるということをまず頭において下さい。

そしてその最悪の状況において少しでも優位に立てる方法を取るのが護身術です。そのためいくら腕に自信があっても正々堂々と戦うという発想を持たないことです。

まず推奨できるのは、危ない状況になりそうな段階で、武器に使えるものを想定できることが大切です。例えば、相手に見えないようにボールペンを握っておいて、相手が攻撃してきたらボールペンを突き刺すなど相手の意表をついて攻撃を仕掛けることです。そう考えると、日ごろから身の回りのものを如何に武器にするかということを考えておくととっさの時に便利です。

そして武器が全くない状況において、初めて体術を使うという選択肢をもっておくことです。特に女性の場合は体術を知っているのといないのでは雲泥の差がでます。

何故なら性的暴行を狙う暴漢は弱そうな相手を狙って襲う傾向があるといわれていますから、襲った相手が手ごわいだけで逃げ出す可能性が高いといえるからです。

危険に関する3つの距離

前項でお話ししたように護身術は自己の安全確保ということが目的であるという点が大切といいました。そのためには危険な場所には近づかないというのが大切です。

しかし、仕事で遅くなるなどで、一人で夜道を歩く必要があったり、旅行などで一人で知らない街を歩く必要があったりすることが無いとは言えません。

そんな場合、犯罪を未然に防ぐために犯罪者と自分との間の距離を理解しておく必要があります。

それには3つの距離というものがあります。合氣道においては畳1枚分、畳3枚分、畳6枚分です。これでは一般の人にはわかりにくいので、2m、6m、12mと考えていただくと良ろしいでしょう。

まず遠い距離からお話しますと12mというのは、街中では暴漢から走って逃げるには十分な距離です。ですからこの距離で暴漢を見つけられると、走って安全な場所(人の多いところなど)に逃げることができるということです。

次に中間距離の6mですが、暴漢がすぐに襲える距離ではないということで、相手に隙があればすぐに逃げることができる距離です。また間に障害物のあるところに入れば相手は危害を加えることができなくなる距離です。ただし、多くの犯罪において犯罪者を6mまでで発見できないことで起こるといわれています。

ですから、危険と思われる場所を仕方なしに通らねばならない場合は、犯罪者を6メートル以上離れた距離で判断できる必要があるということを頭に入れておいてください。

最後に2mの距離ですが、これ以上近づくと非常に危険といわれる距離です。人が判断して反応するのに約0.5秒かかります。また2mは犯罪者があなたに近づくのにかかる最大の時間が0.5秒でもます。ですから2mの距離を確保できると、冷静であれば相手の刃物の一撃も躱すことができる距離でもあるのです。

ですから2m以内というのが最も危険な距離であり、体術が必要な距離ということです。合氣道においても最初の間合いが畳1枚分というのは非常に理にかなっています。

このように距離の知識をあらかじめ知っておくと、如何に暴漢にいち早く気づけるかというのが護身の要になるということがわかるのではないでしょうか。ですから、危険と思われる場所に一人で踏み込む必要がある場合、周りをよく観察することが大切であるというのは言うまでもありません。

犯罪者のリズムを見る

最後に、犯罪者をいち早く知るためのヒントを述べたいと思います。合氣道の師匠・故井口雅博師範によりますと、犯罪者が獲物を狙うとき独特なリズムになるといわれていました。

合氣道において「見る」というのは非常に重要な要素に位置しています。合氣道では見ることで相手のリズムを知り、合わせによって相手を制するわけですから、見るというのも特殊な見方が存在します。その味方を使って犯罪者のリズムを見るのです。

まず犯罪者のリズムについて説明しますと、例えば、人ごみの中でスリを働く人がいる場合、スリがターゲットに向かったときに独特のリズムができるというのです。

具体的には、街中の人ごみの中では、川の流れのように人は全体的に同じリズムで動いているそうなのですが、犯罪者はそのリズムとは違った動きをするというのです。ですから、よくよく観察していると簡単に見分けがつくということです。

ところが「よくよく観察する」なんてできないと思われる読者の方もいらっしゃると思いますが、井口師範が言われているよくよく観察するというのはじっと観察するということではありません。 リズムを見る目で見るということです。

合氣道には独自の見方、眼法があります。しかしそのやり方を説明するより、科学的な説明をした方がわかりやすいでしょうから、科学的な説明をしていきたいと思います。

人の目というのは、中心視野と周辺視野というのがあって、中心視野というのは静止したものをじっくりと観察するための視野であり、周辺視野というのは動きを観察するためのものです。これは特に草食動物によく発達しているもので、草を中心視野で確認しながら、周辺視野に映る遠くの肉食獣の動きをいち早く判断できるようになっています。

この周辺視野でみるようにすることで全体のリズムのなかの違和感を感じるリズムがわかります。ですから、全体をぼんやりと眺めるような目つきで様子を探るという癖をつけると、暴漢の接近がわかるようになるわけです。

  ◆   ◆   ◆

今回のブログでは護身の立場から間合いについて述べましたが、合氣道修行者もこの距離を常に意識する必要があると思います。

といいますのは、武道において大切な考えに「先」というのがありますが、この「先」をいつ取るかという点においてこの距離感が必要訳です。 ただ単に動く だけで、先を取る意識無くして武道が成り立ちません。

具体的には合氣道の稽古でこの点が抜け落ちることがよくあるのです。例えば、他の武道経験者に指摘されることなのですが、形稽古において相手を投げ技で投げた後、投げた相手が受け身をとって立ち上がってこうようとしている際に、有段者でも不用意にこの距離内でぼんやりと待っているというケースです。

これは相手が格闘経験のある相手なら、すぐさま攻撃を仕掛けてこれる状況であるという自覚がないまま、こちらが準備できるのを相手が待ってくれるという前提で稽古を行てしまうというようなことを平気でやっていることになるのです。

ですから、この距離(間合い)についてよく理解し、相手がいつかかってきても良いように、形稽古においても、気を抜かずちゃんと相手をよく観察しておくこと、いわゆる残心を忘れてはいけません。形稽古においてつい忘れがちになりますが、今一度間合いについて肝に銘じておくことが大切です。

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当て身の稽古は地と繋がる為

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

今回は近年の合氣道ではあまり稽古されなくなった合氣道の打撃法である当て身の稽古の意義についてお話ししたいと思います。 近年、合氣道の当て身についてはほとんど言及されなくなっていて本来の合氣道の当て身がどのようなものかもわからなくなっているのが現状ではないでしょうか。

そのため当て身の必要性を感じる合氣道修行者も他の打撃系の武道の打撃法を学んで当て身として取り入れる人もいるようです。 今回は本来の当て身の修行が如何に大切かについて体験から得られたことを書いていきたいと思います。

本ブログでわかること

今回の記事を読むことで、合氣道の当て身の威力がどれぐらいかがわかります。さらには当て身の稽古を行うことで得られることの重要さを知ることができます。それによって、当て身の稽古で身に付けた身体の使い方は投げなどの技における身体の使い方の基礎を養うことができるという事実が理解できます。

そして当て身の稽古は一人稽古ができる非常に優れた稽古方法であることが理解できますので、中々一人稽古ができないで悩んでいる合氣道修行者には大きなメリットとなります。しかも合氣道の上達に直結することがわかるようになり、当て身の稽古の意義と素晴らしさを実感していただけます。

目次

合氣道の当て身の威力を知る!
合氣道の当て身は地面と結ぶ
地とつながる当て身の稽古法

合氣道の当て身の威力を知る!

僕は実は井口師範より合氣道の当て身をかなり学んでいたのですが合氣道をやっていた当時は合氣道の当て身で人に打撃をしたことがありませんでした。大概はコンクリートの建物の壁や立木や電信柱を叩くということばかりやっていました。

しかも、他の武道で僕が経験したような力を溜めて突くようなやり方ではなく軽くポーンと壁や立木や電信柱に拳をぶつけるというようなやり方だったので、内心はこんなので効くことはないだろうとさえ考えていました。

ところが、井口師範が他界されて合氣道が学べなくなった後、ジークンドーという武道を行ったときに、パンチのトレーニングがあまりにもハードだったので、あるとき手を抜いて合氣道風のパンチを出したことがありました。

パンチングミットでパンチを受けてくれていたパートナーの人が、「急に極端に打撃力があがりましたね!」というのです。内心は『手を抜いただけなのに…』と思いながら非常に不思議に感じましたが、でもまだそのときは『樂できてラッキー❤』的な意識しかありませんでした。

しかし、 しばらくして打撃技のスペシャリストである空手の高段者の方とスパーリング(試合形式の稽古)を行う機会がありました。そのときに合氣道の当て身の恐ろしさを実感することになったのです。

相手は空手のシニアクラスの常時入賞者でしたので、僕はかなり気合が入っていました。何とかこの人に打撃を当てたいと思って戦いに臨みました。

そして、戦っている最中に思わず合氣道の当て身が出てしまったのです。合氣道の当て身の特徴は出だしが読みにくいという点にあります。ですからスルッとその空手の高段者の方の胸にパンチが命中したのでした。

イメージ的にはそんなに強く打ち出したという感じはなかったのですが、驚いたことに相手は後方2メートルほど吹っ飛んで、尻もちをついてひっくり返りました。

軽く出したはずのパンチで相手が吹っ飛んだのですから出した当人である僕の驚きといったら言葉に表すことができないのは言うまでもないでしょう。この体験で初めて合氣道の当て身の威力の恐ろしさを知ったのです。 もしこれが顔面に当ていたらと思うとゾッとしました。

ちなみに、この時使用した当て身というのは「核の気の当て身」と当会で呼んでいる技術です。井口師範がときどき「体の芯から気がほと走らせて当て身が打ち出せたら大したもの」と言われていたため、芯から出る気ということからコアという意味で核という言葉を使って「核の気」と呼んでいるわけです。

下の動画は会員にその実例を示したものです。見た目かなりショボいパンチ (僕の意識では10%ぐらいのイメージ) ですが、受けの方が後方に弾かれています。ちなみに受けの方はフルコンタクト空手の経験もある元格闘家の方なので、パンチを受けたのが初めての素人ではありません。

合氣道の当て身は地面と結ぶ

前項の動画を見ると、ボクシングにおける悪いパンチの例とされる「手打ち」のような打ち方をしています。ですから本当に効いているのかと多分プロボクサーでも思われるのではないでしょうか? ところが、実際に受けてみるとかなりの衝撃を感じます。

ではこの当て身の秘密はどこにあるのか?と思われたと思います。この秘密は実は打撃が相手に当たった時点で、パンチ表面に衝撃として力を感じますが、それを感じたと同時にその力を地面に結びつける点にあります。

当て身を長年稽古していると、ある時点で「パンチに衝撃が加わったと同時に足の裏にその力が感じる」という経験をします。するとこの時、足が地面に根が生えたようになるとともに、体の芯から力がほとばしり出る感覚が起こります。

体の芯からでるといいますと、丹田という臍下にある体の重心からほとばしり出ると誤解されることが良くありますが、これは飽くまでも体の芯、コアから力あるいは気が出るという感覚であります。そのため足に根が生えたように地面とつながった感覚がでるのです。そこで当会では「核の気」と呼んでいます。

この「核の気」の感覚が体に出始めると、この感覚は投げ技にも使えるということがわかります。またこの感覚を経験すると天の鳥船の行(船漕ぎ運動)のやり方も変わり始めます。

どう変わるかというと、相手の力を感じたとき常に地面と結びつくようになるのです。これは天の鳥船のような一人稽古においても動きが地面と連動するような感覚になります。

そうなると、体の転換などの動作においても地面と結びつき簡単に相手を誘導することができるようになります。これは優れた一部の人だけができるという特殊な技術ではありません。誰でもできる技術です。

下の動画は当会の会員の稽古風景を一部切り取ったものです。両手でしっかりと持った自分よりも体格の大きい相手を己が地面と結びつくだけで左右に誘導しています。動画では受けの人が勝手に歩いているように見えますが、逆らおうとしているため止めようとする足の力により足の踏み込む音がかなり大きくなっている点に注目してください。

ちなみに実演者には「核の気」の技術を2か月ほど前に教えたばかりなので、動画の前半では感覚の調整に時間がかかって誘導できていませんが、感覚ができるとともに相手を誘導しているのがわかると思います。

地面につながる当て身の一人稽古法

まず大切なポイントに拳の握り方があります。素手で硬いものを叩く場合、拳の握り方は非常に大切です。ボクシングの様にグローブをはめる格闘技では拳はほとんど握らないのが普通ですが、素手で硬いものたたく場合、拳を握らないと骨折をしてしまいます。

また、拳を固めるといってコチコチに握ると、意識が拳の中に滞ってしまい、気が拳を通じて流れなくなります。合氣道では拳を握っては技がかからないというのは実はこのことを言っているのですが、これを誤解して合氣道では拳を握るのは良くないとして、当て身でも手刀を使うようにといわれる方もいらっしゃるほどです。

しかし、僕が学んだ井口師範は、「拳を一度思い切り力いっぱい握って、ゆっくり緩めて拳に意識が行かない程度まで緩んだとき本当の拳ができる」といわれました。

そのようにして拳を握ると壁や立木を拳で軽くたたいても痛みがかなり少なくて済みます。それは拳に弾力性がでるためです。しかもある程度握っているので拳の中で骨折するということもありません。これが合氣道の当て身的には正しい握り方となります。

さらに、当て身の稽古をする場合、力を抜いて、立木やビルの壁に軽くドシーンと響くように拳をぶつける稽古をします。僕の場合は、手に傷をつけたくなかったので軍手をして稽古をしました。そうこうしている内に、拳の衝撃と足の裏で感じる地面がつながってくるようになります。

  ◆   ◆   ◆

僕の合氣道の師匠である井口雅博師範は合氣道において当て身が非常に大切であると常々話していました。また、合氣道開祖・植芝盛平翁先生は合氣道の実戦において「当て身7分に投げ3分」と言われていたとも言われていますが、井口師範は当て身の稽古は合氣道の身体を作るといいましたが、これは地面とつながるということだったのです。

ちなみに、最初の項でジークンドーの稽古の話や空手家の人とのスパーリングの話をしましたが、合氣道の当て身が他の武道の打撃技より優れていると言っているのではないということをご理解いただきたいと思います。

あくまでも合氣道は打撃をメインとする武道ではありませんが、かなりショボいパンチでも地面につなぐと威力が出るということを心にとめていただくとよろしいかと思います。他流批判ではありません。空手や中国拳法でも一撃で人を簡単に死に至らしめる打撃力を持った方はたくさんいらっしゃると聞いていますので誤解をされないようにお願いします。 当然、僕のパンチではそのようなことはできません。

打撃系武術には打撃系武術の秘術があり、その秘術をもってすれば僕ができる当て身の何十倍もの威力の打撃ができるということです。

僕の当て身を受けた空手家の人の名誉のためにも言っておきたいのですが、動画で見てわかる通り見た目非常にショボく見えるパンチです。当然当人はなめてかかったと思います。その上、今までに経験のない打撃法を受けたため、 人間は知らないことには対処ができませんので上記のようになっただけです。2度目は効果があるかというとそうではないかもしれません。

ただ護身といったレベルで考えると是非女性にも習得してもらいたい技術だと思います。

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骨格と姿勢反射

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の合氣道の師匠・井口師範は合氣道習得の段階として形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 があると話してくださいました。

現在当ブログではその中の体の段階について述べいます。さらに、体の段階では4種類の技術があり、それらは、骨の技術、皮膚の技術、皮膚感覚の技術、空間感覚の技術です。前回は骨の技術の内の相手の骨格の捉え方について説明しました。相手の骨格をとらえるのにもう一つ理解しておく必要があります。それは身体には反射が起こるということです。今回はその点について話したいと思います。

このブログでわかること

合氣道で技をかける際にあまり重視されないことに反射があります。合氣道で利用する反射は、人間の骨格構造上で常にバランスを取っているため骨格の変化によって自動的に反応が起こるという現象です。これがわかると合氣道の技は相手を導くといわれる意味が分かるようになるだけでなく、最小限度で相手を崩すことができるようになります。

目次

姿勢反射
肩甲骨の位置と反射
背骨と膝の反射
骨格の変化により相手を導く

姿勢反射

人間の身体は、 全身の状態を知覚するためのセンサ の機能をもった受容器があり、それによって、自動的に体の位置や姿勢や運動における平衡を保つことができるようになっています。これを生理学では姿勢反射といいます。

そのため人間の身体はある状態になったとき勝手に反応するわけです。私たち合氣道修行者はこの特性を利用して相手の無意識の反応を引き出し、技につなげることができます。

言い方を変えると骨格上である部分が変化するとそれに応じて他の骨格が自動的に変化するということです。ですから私たち合氣道修行者はこの特性をよく知っておく必要があります。以下では合氣道修行者が利用しやすい反射について述べていきます。

肩甲骨の位置と反射

合氣道で相手を導くということをよく言われますが、そのためには相手の肩甲骨の位置とバランスの関係を知っておくと非常に便利です。

相手を前面に倒したい場合、肩甲骨を前にずらすと前方に崩しやすくなります。いわゆる巻き肩のように肩甲骨をが前にずれると前に倒れやすくなります。これは一教~四教、回転投げなどで利用できます。

また相手を後方に倒したいのであれば、肩甲骨を後ろにずらします。すると相手を後方に倒しやすくなります。代表的な技としては小手返し投げや入り身投げ、隅落としなどに利用できいます。

当会の稽古では、肩甲骨部に連なる筋膜に伸展の刺激を与えることで肩甲骨を前方にずらして相手を崩す「きりもみ」という名前の技術を入れています。これはこの肩甲骨の位置による身体の反射を起こるのを理解するためです。

背骨と膝の反射

背骨は大きく分けて、頚椎、胸椎、腰椎の3つのパートに分類されています。頚椎は首の部分で7つの骨から成り立っていて、胸椎は胸の部分で12個、腰椎は背骨の下部である腰の部分で5個の骨で構成されています。僕たち合氣道修行者が狙うのは頚椎と腰椎の2か所です。

基本的には頚椎が後ろに反ると、反射として腰椎が反り、腰椎が反ると反射的に膝が前方に移動してバランスを取ろうとします。また、背骨を屈すると反射的に尻が後方に引けます。これが背骨に関連して起こる反射です。

骨格の変化により相手を導く

骨格がどのようになると反射が起こるかといった特性を理解していると、合氣道修行者のやることはどのように導けば反射が起こるかということを考え、実行することです。

そのためには、反射が起こる条件を知る必要があります。反射が起こる条件というのは、力づくで行うのではなく、自然にその位置に導くということです。力づくで行うと、力のぶつかりが生じ、相手はそのぶつかった力を利用してバランスをとろうとしますので、理想的には相手との力のぶつかりが無いのが好ましいといえます。そのため相手をその位置、その状態に導く必要がある訳です。

僕は師匠の稽古で「導かなあかん」と言われたとき、
 何をどう導くのか?
 導くとはどのようにするのか?
等、わかりませんでした。師匠は「相手が自然に倒れるように導くだけ!」と言われました。要するに、自然に倒れる位置があったわけです。それが反射が起こる位置というわけです。

  ◆   ◆   ◆

2回に渡って骨格について述べてきましたが、骨格を考えることは合氣道修行者にとってとても大切だと感じていただいたと思います。合氣道の師・井口師範から「体は気に従い、気は意に従う」と聞きました。当初僕はこの捉え方を誤っていて、体は気に従うのだから気を鍛えれば技が上達すると思っていました。

ところが正しい体の運用ができなければ、気が流れないのです。気を正しく流そうとするには、正しい体の運用が大切だということだったわけです。

僕たち人間の体は物理法則を全く無視することができません。物理法則にのっとった動きを行ううちに、気の感覚が起こり、気の操作で身体操作ができるわけです。ですから、 正しい体の運用ができ気が意識できるようになった段階で初めて気を意識することで正しい体の運用ができるということだといえます。

それが「体は気に従う」ということだったわけです。

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相手の骨格を読む

皆さん、お元気ですか? 僕はメチャクチャ元気です。

さて、私の合氣道の師匠・井口師範は合氣道習得の段階として形の段階・体 の段階 ・気 の段階 ・ 意 の段階 ・神 の段階 があると話してくださいました。

現在当ブログではその中の体の段階について述べいます。さらに、体の段階では4種類の技術があり、それらは、骨の技術、皮膚の技術、皮膚感覚の技術、空間感覚の技術です。前回は骨の技術の内の自分の骨格を利用する技術として肩甲骨の使い方について述べました。今回は骨の技術の内の相手の骨格の捉え方について説明していきたいと思います。

このブログでわかること

合氣道の修行者の中で相手の骨格を意識している人は案外少ないように思います。相手の骨格を意識できるかどうかで、「相手とぶつからない」状態が可能になります。特に自分より力の強い人に逆らわれると技がかからないという人は相手の骨格を意識することでかなり技の自由度が増しますので是非最後までお読みください。

目次

相手の骨格を意識するとは?
相手の関節を意識するとは?
力の強い相手の場合は?

相手の骨格を意識するとは?

では、相手の骨格を意識するとはどういうことでしょうか? ご存じのように人間の体は骨によって支えられています。骨がなければ、立っていることすらできません。さらに骨は、筋や筋肉によって接続され自在に動くことができるようになっています。

また、私たちは、自分の身体の骨格を意識することなく自在に手足をコントロールしています。自由にコントロールしているといっても、実際は骨格の接続部である各関節で折れ曲がったり、回転したりして自在に動いているにすぎません。ですから、骨の途中で折れ曲がるようなフレキシブルな動きをしているわけではありません。

各関節をコントロールする筋肉が無意識レベルで協調して動いてその自在性を実現しているのです。ですから結局は人間の動きというのは各関節で折れ曲がったり、回転したりしたりして総合的に目的の動きを達成しているにすぎないのです。

ですから人間は誰もが関節を意識して動かすということをしていません。そのため人間は自分の関節に異常が起こった時に初めて自在に動かせないということを知るのです。

逆にいうと、相手の関節を意識して、相手をコントロールするということを行うと、相手はそのことに中々気づきにくいものです。そこで私たち合氣道修行者は相手の関節を意識して、それをコントロールしようとすることで相手とぶつからない技が実現できるのです。

相手の関節を意識するとは?

では具体的に相手の関節を意識するとはどういうことかを述べていきたいと思います。

例えば、相手の腕を曲げさせる場合を考えてみましょう。通常相手の腕を曲げさせることを考えた場合、下図のように、肘と手首に圧力をかけて曲げようとするか、手首をつかんで抉(こじ)る力で肘を曲げようとするかのいずれかでしょう。

特に、肘と手首に力を加える場合の力の加え方で行う場合、腕の固定端となる相手の肩と手首から加える下の力と、肘関節を上から押す食い違う力によって強制的に肘を曲げようとします。ところが実をいうとこの力の入れ方は非常に非効率なのです。何故なら肘が曲がった状態というのは相手と相手の手首が接近している状態であるので、相手の肩が固定端となっていことで接近した距離を作り出すのが難しいのです。

モデル的にいうと下図のように両端を支点で支えている状態で、ゴムを伸ばすように下に引き伸ばしているような力の加え方だからです。

腕がゴムのように伸びるのであれば肘のところで容易に曲がるのですが、実際は腕は伸びませんから、力の加え方としては非常に非効率といえます。

また、手首をもって抉るように曲げようとしても、多くの力は骨を折る方向への力となって無駄に消費されてしまいます。ちなみに、これは座り技呼吸技などで手首を持たれたときに相手の腕を曲げさせよと手首部分に圧をかけて抉るのとまったく同じ原理です。

一方、関節の可動範囲を意識することで腕が曲がったときどのように手首が移動するかを意識して力の与え方を工夫した場合、最も効率よい力加減で相手の腕を曲げることができます。

要するに、相手の肘を曲げさせるには、円運動の軌道を描くという意識が必要なのです。この意識があると、最初の肘と手首を食い違いに力を加える場合でも、手首の位置は肘を折り曲げるのと同時に相手に近づける必要があるということがわかります。

そうすることで最も効率よい力で相手の腕を折り曲げることができるのです。私たち合氣道修行者はこのように関節においてどこに導けばよいかを意識して技をかけることで最小限の力ということがわかるようになります。

このように相手の関節を意識し、どのような軌道で相手を導くかをイメージするというのが非常に大切なわけです。

力の強い相手の場合は?

ところで確かに関節を意識すれば最も効率の良い力加減で関節部を折り曲げることができるのは理解できます。ところが相手が力の強い場合は効果がないのではないかという疑問が生じるのではないでしょうか?

実は人間の筋肉の構造上、力を入れられるのは一方向のみに限られています。ですから何も力が加わっていない方向に自分の筋力が加わると関節か勝手に曲がるか伸びるかどちらかになってしまうのです。ということは、相手に逆らわれるということは自分の力の入れる方向に相手の筋力が逆らっていることに他ならないのです。

さらにもう一点、運動生理学で分かっていることですが、相手がこちらの力の方向が読めない場合、気づいてからそれに対抗するのに0.5秒かかります。

しかも、人間の関節というのは相手の腕をコントロールするという点だけに限定しても、肩関節、肘関節、手首関節などがあり、さらにねじり方向など含めると、相手が力を加える方向性を考えたとき幾通りもの選択肢が考えられます。

ですから技の掛け手の視点から見ると、関節の可動範囲を考えるにもどの関節を意識するかというだけでも多くの選択肢があります。ということは相手にどの関節を狙っているかを悟られさえしなければチャンスはある訳です。

理想的をいえば、一つの関節から相手を崩したなら連動して次々と関節を変えていくことで常に相手の先をとれたなら、相手を自由に扱えることになります。これができると例えば相手に人差し指を持たせた状態で指一本だけで相手の腕をコントロールできるようになります。これには流れるように自分の意識をそれぞれの関節に持っていく必要がありますが稽古次第で誰でもできることであり、不可能なことではありません。

◆   ◆   ◆

今回は相手の骨格を読むということでお話をしましたが、正確には相手の関節を意識して軌道がどうなるかをイメージして技をかけるということでした。相手の骨格を読むといいますとまだまだ様々な要素があるのですが、また別の機会にお話ししたいと思います。

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合気道と護身と健康を考えるブログ